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水の妖精

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第三章

「無理に決まってるでしょ」
「絶対にっていうのね」
「そうよ、絶対によ」
「だからさっき言ったでしょ」
「絶対はないっていうのね」
「そうよ、そんなことは」
「まあまあ。試しにあんたの国に行きましょう」
 少女はセシルに笑ったまま提案した。
「そうしてね」
「氷を溶かそうっていうのね」
「国を覆っているね、あんたも国は救いたいでしょ」
「私がしたことだから」
 どうにかしたい、セシルはその本音も述べた。
「やっぱりね」
「だったらよ」
「どうにかする為に」
「戻りましょう、国民の人達があんたに何か言ってきたり何かしようとするなら」
 その時はというと。
「私が全部引き受けるから」
「いいわよ、そんなの」
「着にしないで。私あんたの相棒になったしあんたを好きになったから」
「だからなの」
「一肌も二肌も脱ぐわ」
「そうしてくれるから」
「行きましょう、まあ任せて」
 こう言ってだ、少女はセシルに彼女の祖国に連れて行ってもらった。生き残っていた国民からの罵倒や非難は全て彼女が庇って引き受けてくれた。セシルは少女にこのことにその度お礼を言ったが少女は笑っていいとした。そうして氷を前にした時に自分が水の妖精であることを話して。
 彼女の力を使った、すると雨が降り下から温泉が噴き出てだった。
 氷を覆い徐々にだった、国を覆っていた氷が溶けて。
 遂には国が救われこれまで氷の中にあった国が再び動き出した、セシルはこのことに驚いたが。
「あんたも国も救われた、よかったじゃない」
「よかったって言うけれど」
「お礼をっていうの」
「何ていえば」
「いいのよ、私はあんたの相棒でね」
「私のことが好きだからっていうの」
「そうよ、冒険の間いつも助けてくれているし」
 戦闘やお金の使い方、そして料理等でだ。少女は実はお金の使い方は荒く料理も全く出来ないのでセシルが全部しているのだ。しかも文句も言わず。
「だからね」
「いいっていうのね」
「そうよ、気にしないでね」
 それでというのだ。
「このことを喜んでね」
「そうなの」
「それでどうするの?これから」
 国は救われた、それで少女はセシルにこれからのことを尋ねたのだ。
「あんたの国は元に戻ったけれど」
「けれど私がしたことは戻らないから」
 セシルは少女にこう返した。
「国にはね」
「戻れないのね」
「ええ、それに私冒険が好きになったしあんたもね」
「私もなの」
「好きになったから。だから」
「一緒になのね」
「冒険。続けましょう」 
 少女に笑みを浮かべて言った。
「そうしましょう」
「わかったわ、じゃあね」
「これからもね」
 セシルは救われた祖国には何も言わずそのうえでだった。
 妖精である少女と共に国を後にした、そのうえで冒険を続けた。かけがえのない友人となった彼女と二人で。


水の妖精   完


                   2018・8・29 
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