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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE33 リアルのレイナ

プレイヤー達がガチャモンとモックによって見せられたのは、白黒のアニメであった。だが、それはただのアニメではなく。各々のプレイヤー達の家族、友人達が自分達がSAOに囚われて以降、どうしているかについてを描いた内容であった!動画と写真の信憑性は未だに不確定であるが―――それを見た者達の反応は千差万別!ある者は一刻も早く、現実世界に帰らねばと言う焦燥感に駆られる者……ある者は現実世界への失望感に打ちひしがれる者……そしてある者は、特に気にする事も、関心を示す事すらなかった者……そして、プレイヤー達は強制転移される前の場所に戻されたのであった。 by立木ナレ



俺達は丁度、第14層フロアボスの攻略会議の最中であった。今の時点では偵察戦も行われておらず、その内容を決めている最中に、ガチャモンとモックに召集されたので―――戻った時には俺達は攻略集団の面々と再び同じ場所に集まっているのだが、一同の表情は召集前に比べて大きく変わっている者達が溢れていた。

キリト「スグ……ごめんな本当に!俺の……俺の事で」

俺の後ろの方でキリトが、そんな誰かに対しての罪悪感を感じさせる言葉を口にしていた。――だが、独り言を口にしているのはキリトだけではない。

アスナ「母さん……兄さんの、父さんのせいにしてるなんて」

アスナの方は、家族の関係に何か重要な問題が起きたのか、目から微かに涙を浮かべて、歯を食いしばっていた。

ユッチ「あ、あれ?み、皆どうしちゃったんっすかね?あ、あんな、どーでもいい白黒アニメや写真位で―――?」

俺「俺もこっちに戻ってくるまでは、お前と同じこと考えてた―――けど、中には、自分達がSAOに囚われた後に、家族とかダチとかが、かなり厄介な事になってたり、知りたくもねー姿を見ちまった奴もいるみたいだぞ」

俺がそう言うと、ユッチはへつらった表情で苦笑しながら語る。

ユッチ「は、はは……そう考えると、ぼ、僕はまだマシな方かもしれないっすね。クラスの連中が……僕が学校に来なくなった事なんて、ものの数日で誰も話題にしなくなったって事くらいっすから」

俺「そりゃ、確かに大したことねーよな。俺もうちの親父が記者会見で適当な受け答えしてたり、爺さんがマスコミに謝礼要求してたりとか、どーでもいいような内容だったからな」

お互いに、ガチャパットの動画と写真を見ても、特に何も焦る事も、失望する事も無かった俺とユッチは互いに苦笑いを浮かべ合っていた時だった――――

リーテン「は、速くゲームをクリアしなくちゃ!!」

ALSの女タンクで、第5層のフロアボス戦を共にしたリーテンが、アーメットのバイザーを外した状態の地声で、その場のプレイヤー達が思わすビクッと身体を強張らせてしまう様な大声で叫んでいた。

オコタン「リ、リーテン……急にどうしたんだ?」

リーテンをALSにスカウトした、同ギルドの最年長のオコタンが、急に大声をあげたリーテンを心配し声を掛けていた。
リーテンとは個人的に親しいDKBのシヴァタも、そんなリーテンの様子に困惑しているようだった。

リーテン「皆さん!もうフロアボスの部屋は既に分かってるんです!ですから、今すぐにでもボス戦に行きましょう!」

キバオウ「な、なにをゆーとるんやジブン!!んな事ぉ勝手に決めるんやあらへんわぁ!それに先に偵察戦があるやろうが!」

リーテンの無茶な提案に、流石にリーダーのキバオウが大声で咎めるが、リーテンは止まらなかった。

リーテン「偵察戦なんて必要ありません!」

キバオウ「な、なんやって……!?」

リーテン「だって、安全マージンは充分に取れてるじゃないですか!今までのフロアボス戦だって、警戒して戦ってきたけど、なんだかんだで殆ど死者は出さずに済んでますよね?だったら、もっと積極的にペースを速めるべきだと思います!今の攻略速度では、第100層までクリアできるのに何年も掛かってしまうんですよ!そんなに―――そんなに待ってる余裕なんてありません!!」

シヴァタ「リっちゃ―――リーテンさん落ち着くんだ!どうしたって言うんだ?さっきから様子がおかしいじゃないか!!」

リーテン「あッ……」

シヴァタに叱責されて、リーテンはようやく我に返ったのか、周囲を見渡して、アーメットのバイザーを降ろしてから、ゆっくりと無言で後ろず去っていた。

ボス攻略会議の場が、陰険で騒々しさと陰気臭さで漂っている空気の中、手を上げて発言をしたのは、両手斧の使いのエギルだった。

エギル「皆、攻略会議は日を改めて、今日はお開きにしないか?とてもじゃないが、まともな会議が出来るような状態じゃないと思うが―――あんた達はどう思う?」

そう言いながらエギルが順番に視線を向けてきたのは、ALSリーダーのキバオウ、DKBリーダーのリンド、そして最近になってこの二大ギルドに次ぐ、攻略ギルドの主力として見られつつある俺達MBTのリーダーである俺だった。

先に答えたのは、頭を抱えながら深いため息を付いた直後のキバオウだった。

キバオウ「賛成や……あの着ぐるみ共がワイらに見せた動画とか写真が本物かどーかもわからへんし、ともかく今は落ち着かなあかへんやろ」

リンド「俺も、異論は無い―――正直、俺もあれを見てから冷静でいられる自信が無くなってるからな……」

リンドも、どうやら中々ショッキングな動画と写真を見せられたらしく。その表情は冷静さを装えておらず、額から冷や汗を流していた。

俺「こっちのお二方がそう言うなら、俺もそれで構わない。今からボス戦に行ったりでもしたら、手痛い返り討ちに遭いそうだからな」

結局、3つのギルドリーダーの意見が一致し、この日のフロアボス攻略会議は中止となり、そのまま解散となった。

エルダ「じゃ、私は中止になった攻略会議の代わり―――ってわけじゃないけど、少し下層で狩りしてるメンバー達のサポートに行ってくるわね」

ユッチ「僕はアイテムショップでいらないアイテムを売り払い終えて来てから休むっす……何か明日から色々と怖い事が起きそうで寝れるかどうかわからないっすけど……」

俺とレイナは、第14層の宿屋を寝床にしているが、エルダは他メンバーの狩りの手伝いをしに、ユッチはアイテムショップでアイテムストレージの不用品を売り払いに行ったのだった。

俺「行くか……レイナ」

レイナ「……うん」

レイナが無口なのは何時もの事だが、俺も今はどうにも、レイナに何を話せばいいのか分からずに、結果的に無口になってしまっていた。

記憶喪失のレイナはガチャパットで流された動画や写真を見たところで、それを本人は覚えてないんだろうが、それでも、現実世界のレイナの貴重な情報である事には変わりはない。
白黒のアニメーションは幾らでもウソが付けるから信憑性が怪しい所だが、実写の写真の方はその限りではないしな。

レイナ「……気になるの?私のガチャパットに流された動画と写真が」

俺「気にならないな……いや、ほんの僅かばかりどうなのか気になってるかもしれねー」

余り他人の事をことを詮索するのは趣味じゃ無いが、このデスゲームが始まってから最も長い期間を共に行動し、今ではギルドメンバーとなったレイナが現実世界でどうだったのか、そしてレイナの家族や友人は、レイナの事をどう思ってるのか、俺は僅かながら興味が湧いてしまっていた。

そして、そんな俺の些細な気の変化は、レイナには筒抜けだったらしい。

レイナ「……部屋に来て、そこなら他のプレイヤーに見られたりする可能性は低いから」

俺「分かった」

そして、俺とレイナは宿屋の客室で二人きりになった。俺とレイナは小さなベットに隣り合った状態で腰かけて座り、レイナは座ったままアイテムストレージを開くと、そこからガチャパットを選択して、オブジェクト化していた。

俺「随分とあっさりと見せてくれるんだな。覚えてないとはいえ、お前のリアルでのプライベートにかかわる事だろうに」

レイナ「……別に、隠さなくちゃならない事でもなかったから」

そして、レイナはガチャパットを操作して、例のプレイヤー達の現実(リアルの)家族や友人たちがその後どうしているのかを示唆する動画を再生するのだった。

『サワイ レイナさんの身内動画』

サワイ レイナ―――これがレイナの本名。つまり、理由は分からないが、レイナは自分の本名をそのままSAOでのキャラクターネームにしたと言う事になる。

ガチャパットには俺の時と同じ、白黒のアニメが映し出され、相変わらず登場人物は真っ黒のシルエットだった。
映っている人物は4人、病室と思わしきベットで二人並んで寝ている人影と、その近くで何か言い合ってる恐らく男女の二人組だった。

レイナの母『どーして……どうしてレイナまでナーブギアを!!あ、あの子がフルダイブなんて、で、出来るわけがないはずなのに!』

レイナの父『これもそれも全て……あの男などと関わった事がそもそもの間違いだったんだ!!エリカと奴の付き合いをなぜ、今までずっと放置していたんだ!』

レイナの母『ま、待ってよ!貴方だって……エリカがあの人から色々な事を教わったり、研究のお手伝いをさせてもらってる事を為になるだとか、良い影響だとか言って、大歓迎してたじゃない!なのに何で私のせいにするのよ!?』

レイナの父『お前は私よりもずっと、娘たちと過ごす時間も、あの男と会う機会もあっただろう!そのお前がしっかりしてないでどうするんだ!?』

レイナの母『ひ、酷いわ……そんな、そんな……』

レイナの父『エリかもレイナも、下手をしたら二人とも二度と目を覚まさないまま、ゲームの世界で命を落としてしまうなんて事になったら、お前はどう責任を取るつもりなんだ!!』

そこで、動画は終了した。―――次に表示されたのは俺の時と同様、実写の写真で、その写真に写っているのはナーブギアを被った状態で眠っているレイナの側で夫婦喧嘩をしている、レイナの両親らしき人物たちだった。

レイナのとなりのベットで寝ているのは、レイナの姉か妹のエリカとか言う娘だろうが、エリカの姿は父親の後ろに隠れて丁度見えない状態になっていた。

レイナ「……これが、私の動画で、現実世界の私の両親みたい―――けど、記憶の無い、私には知らない夫婦の喧嘩にしか見えないの」

動画と写真を俺に見せ終えたレイナは、いつも以上に輪を掛けて、感情の籠ってないような声と表情でそう言った。

俺「だが、分かった事も少なくないだろ。お前には姉か妹がいて――その姉妹もSAOにログインしてるんだ」

しかも、あの動画の内容からして、レイナの姉妹もデスゲームが始まってすぐに死んだと言うわけではないらしい。

レイナ「……けど、私が姉妹に会っても、顔を覚えてない。それに向こうが会いに来る可能性も低いわね」

俺「まあ、会いに来る気があるのなら、向こうから来ても良いはずだよな……」

レイナはその端正な容姿もあって、攻略集団ではアスナと双璧を為す人気の美少女プレイヤーとして名が上がっている。
中層のプレイヤー達にも知られているのだから、もしレイナの姉妹がレイナと姉妹として会う気があるのなら、とっくに会いに来てもおかしくないはずなのだ。

なので、可能性として考えられるのは―――姉妹としてレイナに合い辛い何か事情があるのか、もしくは既にゲーム内で死亡しており、さっきの動画はレイナの姉妹がまだ生きていた頃の内容であると言う事くらいだった。

俺「俺がもう一つ気になってるのは、母親が言ってた『お前がフルダイブできるわけがない』って言葉だな。ありゃ一体、どういうことなんだかな」

レイナ「……それも、私には思い出せないわ」

レイナがナーブギアを被った状態なのは実写の写真で確認済みだ。つまり、レイナはナーブギアでSAOにフルダイブした事は確かなのだが、母親はレイナにはそれは不可能などと言っている。

結局、これ以上は考えたところで、現時点での情報では推測の域を出ない考えがあがるのみであった。

俺「んじゃ、一方的に見せてもらってばかりだと不公平だよな?俺のもここで見ておいてくれ」

レイナ「……別にどっちでも良いわ」

なら是非とも見てもらう事にした、俺の動画と写真をレイナにも。俺も親父がマスコミの質問に対していらない事を答えたり、適当な受け答えで困惑させたり――爺さんがマスコミに意地汚く謝礼を要求する姿を、レイナにも包み隠さず見てもらう事にしたのだった。

レイナ「……貴方のお父さんと、お爺さんって――一般的な世間体から見て、保護者失格?」

俺「まさにその通りだと思うが―――俺はそもそも奴らを保護者と思って無いから別に良いがな」 
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