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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE31 新ギルド結成!

キリトは直立した姿勢から腰を折り、深々と頭を下げた。

低いざわめきが広い広間に流れる。戸惑うプレイヤー達に、キリトは言った。

キリト「まず、最初に、みんなに謝る。ボスを倒した後の、ギルドフラッグの取り扱いについては事前にきちんと話し合っておくべきだった。フラッグがドロップしたらどうするか、しなかったらそれをどうやって確認するか、そういう大事な事を後回しにしてしまったのは俺のミスだ。そのせいで、いまこうして、みんなにお互いを疑わせてしまっている……」

キリトは体を起こすと、今度は俺達の顔をしっかりと見つめていた。今まで、俺と話すときもそうだったが、妙に人の顔から視線を逸らしながら話す事が多かったキリトが……

キリト「……ただ、ALSとDKBが、フラッグを巡って争うような事にはなってほしくない……これからも両ギルドが協力して最前線の攻略を続けてほしい、そう願ったからこそ、みんなはこのレイドパーティーに参加してくれたはずだ。それはボスと戦う前も、そして勝利した今も変わらない……俺はそう信じる」

俺「…………」

俺は当初、目の前の黒衣の剣士キリトを、その他大多数のベータテスター達と同じで、一般プレイヤー達顧みる事無く、美味いクエストや狩場を独占し続けてきた奴らの一人として見なしていた。―――だからこそ、俺は第一層で、躊躇なくキリトに対して、ベータテスターであると言う証拠を掴み、それをネタに強請るような事も平気でやってのけたのだったが。

果たして、今のキリトはどうなんだ?俺が思っていたような利己的で弱者を顧みずに行動していたベータテスターなのか?

俺がキリトに対して、そんな複雑な疑問を抱いていると――腰を折り曲げていた。現合間で頭を低く下げ、その姿勢のまま言葉を発した。

キリト「……ギルドフラッグが誰にドロップしたのかを、システム的に確認する方法は、もうない。だから、どうか、頼む。俺に渡してくれとは言わない……取り扱いを、この場の全員の意思に委ねてほしい。攻略集団の為に……下の層で待っているプレイヤー達の為に……そして、いつか誰かが、このデスゲームをクリアする日の為に」

ざわめきは完全に消えていた。完全な沈黙が僅かな時間の間だが、その場を漂い、そして――鈍い金属音の足音が鳴ると、その足音の主はキリトの傍まで近づくが、キリトは頭を下げたままの姿勢を崩さなかった。

オコタン「顔を上げてください、キリトさん」

キリト「…………」

キリトはゆっくりと顔だけを持ち上げて、目の前の人物が、レイドパーティーで最年長のメンバー、ALSのオコタンである事を確認したのだった。

オコタン「……キリトさん、そして皆さん、本当にすみませんでした。ドロップしたギルドフラッグを申告しなかったのは、私です」

深々と腰を折りながらの謝罪と告白の言葉の直後、後方からくぐもった声が響いた。

リーテン「オコさん……どうして……!?」

一歩前に出たリーテンが、アーメットのバイザーを跳ね上げると、くぐもったエフェクトが消えて、明確に女の声で続ける。

リーテン「あんなに言ってたじゃないですか……攻略集団は力を合わせなきゃならない、二つのギルドでゃり遭ってる場合じゃない、って。なのに……どうして!」

両眼に涙を溜めたリーテンが口を閉じると、オコタンは振り返り――――

ユッチ「どー言う事なんだよ!?ギルドフラッグを隠匿してどうする気だったんだよ!?―――も、もしかしてアンタ……ALSの強硬派のスパぃ――――」

アスナ「ユッチ君、黙りなさい!」

オコタンが何かを言う前に、ユッチが再び切れて、喚きだしたが、最後の言葉を口にする前にアスナが一喝すると、ユッチは全身をビクッとはね上がらせて、それでもう完全に押し黙っていた。

俺「悪い、俺もこいつの口から手を離しちまってたしな……」

アスナに軽く詫びの言葉を口にすると、オコタンはリーテンに向けてもう一度頭を下げた。

オコタン「すまない、リーテン。君の信頼を裏切るような事をしてしまって」

そして、オコタンはアイテムストレージからドロップしたアイテムをオブジェクト化させた。オコタン自身が背中に装備しているハルバートよりも更に長い、長槍(ながやり)だった。

エルダ「全長は3メートルくらいかしら……これだけ長いと、武器として使いこなすのも難しいわね」

レイナ「……それに、穂先は尖ってるけど、やっぱり槍じゃないわ」

レイナの言う通り、上部には純白の三角旗が付けられており、それが確かにフラッグである事を見た目で表現していた。

オコタン「キリトさんは、最初から私一人を見てましたね。どうして解ったのか、教えてくださいますか?」

キリト「あ……はい」

キリトが最初からオコタンに目を付けていて、オコタン自身もそれに感づいていたと言う事に、多少の驚きを感じたが。ここはキリトの説明を聞き続けよう。

キリト「ええと……オコタンさん、ここに来る前は、かなりヘビーなFPSプレイヤーでもあったんじゃないですか?」

オコタン「ええ……一時期はMMOよりもそっちにハマってましたよ」



キリトとオコタンのやり取りの結果、キリトがオコタンが目を付けた理由は、FPSゲームでは、両チームが、一本の旗を奪い合うゲームで、旗を運ぶプレイヤーの事を、英語ではフラッグ・キャリアーやフラッグ・ベアラー、略してベアラーと呼ぶ事から、オコタンがリーテンに対して『リーテンが、それこそベア、いや熊のように活躍してくれる』と言う発言から、それは熊を英語で言ったのではなく、ベアラーと言いかけたのだろうと推測した事―――これからはリーテンが旗持ちとして活躍してくれる……自身のストレージにフラッグがドロップしていなければ、そんな発言は出ないだろうとキリトは考えて、オコタンがフラッグをドロップした張本人であると推測したのであった!! by立木ナレ


オコタン「……こんな事を言える立場じゃないですが……キリトさんも、リーテンも、そして皆さんも……これだけは信じてほしいんです。私は決して最初から、ギルドフラッグをネコババするつもりでこのレイドに参加したわけじゃない。ALS上層部と通じていると言うわけでもないです。最初は、本当に、両ギルドの対立を何とか防ぎたいと……それだけを願っていたんです。でも……このフラッグが私にドロップし、しかも誰もそれに気づいていない、隠そうと思えばこのまま隠せると気付いた瞬間、思ってしまったんです。ギルドフラッグを交渉材料に使えば、二つのギルドを統合できるんじゃないか、と……」

つまり、オコタンはこのフラッグを交渉材料にして、両ギルドをいったん解散、その後新ギルドを発足し、そのギルドにALSとDKBのメンバーを入れる事で収める事を考えたのかもしれない。

オコタン「でも、そんなわけはありませんよね。ギルドフラッグがALS側から出てきたら、今日この場で私がネコババした事は、ハフナーさん達にも解ってしまう。そんなっ状態でまともに交渉なんか成り立つはずがない……。――バカな夢を見ました。私の愚かな行いを、改めて皆さんに謝罪します」

フラッグを持ったまま、オコタンがもう一度頭を下げた。その姿をじっと見ていたハフナーが、一歩前に出ると、両拳を握り締めて叫んだ。

ハフナー「―――確かに、アンタはバカな事をやった!下手したら二つのギルドが戦争になってたかもしれないくらいのな!でも……その夢はバカじゃねえ!!」

ハフナーは、少し声のボリュームを下げて語り続けた。

ハフナー「俺も、さっきの戦闘中に、ちっとだけ夢を見たよ。俺やシヴァタ、アンタやリーテンさんが、初めてのパーティーでもあんなに息を合わせて戦えるなら、いつまでもいがみ合ってる意味はねぇのかも……二つのギルドのメンバーをまぜこぜにして、理想的なパーティー組をした方が良いのかもっ、ってな。俺はその夢を捨てちまう気はねぇ。ギルド統合とまでは、まだ言えねーけど……いつかは、もしかしたら、って思うのはやめねーよ。だから……俺は、アンタを許す!」

唐突に宣言してから、ハフナーは他のメンバー達を見渡した。

ハフナー「オコさんをどうしても許せねぇ、なんかのペナルティを与えるべきだって思う奴、いたら手ぇ挙げてくれ!」

その呼びかけを聞いたエギルが、両手を大きく広げて苦笑する。

エギル「おいおいハフさん、そんないい方されて手ぇ挙げる奴なんかいるわけねーだろ」

エルダ「本当よね、彼を含めて今回の16人―――誰か一人でも欠けていたら、どうなってたか分からないボス戦だったんだもの。今更、この中の誰かにペナルティ何て、考えたくも無いわよ」

エルダがそう付け加えて賛同すると、エギルの仲間達が頷き、アスナやアルゴ、ネズハも軽く笑みを浮かべる。

レイナ「……オズマ、何か面白い事でもあったの?」

俺「ん?ああ、まーな」

俺も――この時ばかりは軽く含み笑いを浮かべていたようで、隣でレイナが目を丸くして、キョトンとした様子で俺の顔をじっと見ていたのだった。


※ ※ ※


その後、第五層のボス部屋には、ギルドフラッグを預かっているキリトだけを残して、俺達は先に螺旋階段を上り第6層を目指す事にしたのだったが――――

ユッチ「あ~あ、アスナさん本当に行っちゃったっすねぇ~」

エギル「ほら、そんなにデカいため息つくなって、まだここには美人さんが三人もいるじゃねーか」

エギルがそう言いながら、レイナ、エルダ、リーテンの方に顔を向けると、リーテンは恥ずかしそうに顔を赤くしてアーメットのバイザーを被り顔を隠し、エルダは愉快そうに笑いながら『おだてても何も出ないわよ』と言い、レイナは相変わらず無反応の無言だった。

アスナはオコタンから、キャラクターネームの由来を聞いた直後に、面白からそれをキリトに伝えるなどと言ってボス部屋に戻ったのだったが、実際は―――

俺「アイツ、キリト一人でALSの連中に対して、上手く説明できるかどうか心配していったんだろーな。バレバレだっての」

オコタン「やっぱり、私もあそこに残るべきだったでしょうか?同じギルドのメンバーとして、キリトさん一人が糾弾されるような事にならない為にも―――」

レイナ「……それは止めた方が良い」

オコタンは、キリトに対する罪悪感がまだ残っているようで、そう言いだしたが、それをレイナが止める。

エギル「オコさん、レイナの言う通り、それは止めた方が良いぜ。キリトは多分……いや、間違いなく今回のボス戦に参加したレイドパーティーのメンバーが誰かなんて、もうすぐボス部屋に来るはずのALSのメンバーには言わねーはずだ」

俺「特にALSメンバーのオコたんさんや、リーテン。それとDKBのハフさんとシヴァタさんだって、今回のボス戦に参加した事がばれたら、それぞれのギルドでの立場が悪くなるはずなんだ」

オコタン「分ってますけど、やはり申し訳ない限りです……」

そんなやり取りの直後だった、ユッチが暗い空気になりそうなのを打ち破るように、明るい声で俺に声を掛けてきたのは。

ユッチ「つーかオズマさ~ん。今回のボス戦で思ったんっすけど、やっぱりギルド作りましょーよ!オズマさんをリーダーにした新ギルド!」

俺「まーた、その話かよ……ただでさえ攻略ギルドが二部化してる状態で、第三の勢力とかややこしくなるだけじゃねーのか?」

が、そんな俺の懸念に対して横槍を入れてきたのは、DKBの二人だった。

シヴァタ「いや、あながちそうとも言えなくはないぞ」

ハフナー「そーだよ!むしろ、二大攻略ギルドが対立してる状況だからこそ、第三の攻略ギルドが現れたら、何かしらのターニングポイントになり得るかもしれねーぜ!」

俺「おいおい、アンタら一体何を言い出して―――」

が、今度はALSの二人が、まるで同調するように、声を上げてくるのだった。

オコたん「そ、そうですよ!ALS側でもない、DKB側でもない、中立の立場の人たちが、それなりの力を持った新しい第三の攻略ギルドを作れば、両ギルドの潤滑油的な存在になり得ることだってあり得ませんか?」

リーテン「オズマさんなら、強いですし、人望もあるみたいですし、是非そうしてみたらどうですか?」

こいつら……いくらなんでも前向きに考え過ぎじゃないのか?俺が少し待てと言おうとした時だった、後ろからエルダが俺の肩を叩いて、楽しげな表情で言った。

エルダ「ギルド結成にアタシも手を貸すわよオズマ君!ユッチ君とレイナさんも良いわね?」

ユッチ「もちのロンっす!」

レイナ「……解った」

俺「お、お前らなぁ……ったく、あんまり色々と期待し過ぎないでくれ」

エギルとその仲間たちがガハハハッと豪快に笑い、アルゴがにゃははと楽しげに笑っているが、それに対して一々何か言い返す気も湧かない俺だった。



オズマ、ついになし崩し的に……あれよあれよと言う間にギルド結成!初期メンバーはリーダーのオズマを始め、レイナ、エルダ、ユッチの4人からのスタートとなった! by立木ナレ 
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