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汝(なれ)の名は。(君の名は。)

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06神器、鉄の伝来

 四葉は異世界転生?して、なろう系ラノベ主人公になり、古代世界では誰も知らない知識だが、現代人なら常識レベルのことでイキって天狗になり、さらに周囲の人物から褒めそやされ神扱いされる、定番の二重にキモい展開になった。
 検索用スマホは持っていないが、神を降ろして天啓を受ける能力は持っている。

 俺TUEEEEは大昔のドラえもんだとか藤子不二雄作品群の昔から、当たり前のことで定番としてあった。
 未来の自分と入れ替わってしまったノビタ君や21エモンが、クラスメイトと宇宙に出てコンピュータが停止してしまい、後は2桁の掛け算の答えさえ出せれば全員助かり、回答できなければ月に激突して死ぬような展開になった。
 しかし、その時代では全員コンピュータに頼り切った生活をしていて、誰も掛け算なんかできない。
 さらに2桁ともなると人類には不可能な難問だと言うのに、現代人のノビタ君ならあっさり正解してしまい、全員に驚かれながら助かって称賛され、天才ぶりを発揮して新聞記事(30年以上前なのでネットという概念すらない)にまでなってしまい終了。
 当時の電子計算機すら身の回りに存在しない時代、コンピュータ至上主義を風刺する意味も込めての一話だった。
 ルパン3世でもあったように、未来もルパンの行動まで全て予測できる機械として、現在の2045年問題と同じく、AIによって人類が支配される、人類よりはるかに進んだ知能を持つと予測、恐怖されていた。
 取って付けたようなエンディングで、現代に行ったノビタ君は掛け算もできないガイジ扱いで、さらに高重力の地球で体育にも苦しみ、それでもマラソンを完走して苦労したんだとか、下らない教訓まで入るのがお約束である。

 そんな甘くユルい展開が大絶賛され、東南アジアの子供達まで汚染された。
 アメリカ軍から鬼のように恐れられた、ベトナムの共産主義指導者ホー・チミンおじさんの孫でも、悪魔と呼ばれ米軍の暗殺リストのトップに載った将軍たちの孫も、ドラえもんの魔力には屈して文化的には西側世界に敗北した。
 曰く「おじいちゃん、ドラえもんの漫画買って~、じゃないと肩モミモミしてあげな~い」と甘えられ拗ねられ、西側の資本主義社会で自由主義社会の文化侵略に、共産主義の悪魔達までが成す術もなく膝を屈し、敗北させられた瞬間である。
 鉄のカーテンの向こうにいた共産主義指導者たちが、何と西側の出版社に著作権料を徴収された。
 現在もディズニーとかミッキー、ポケモン、新旧のニンテンドーに金をむしり取られ続けている。
 ソビエトユニオンの解放改革(ペレストロイカ)情報公開(グラスノシチ)に倣い、ドイモイ政策などが行われ、西側の手法や言論の自由を認めたばかりに、優秀で勤勉だったベトナム人までが陥落、汚染。
 既に西側の文化で汚染されていたフィリピンの子供まで、日本製のアニメに屈服して、「ボルテスV(ファイブ)」が放送される時間には町中から子供の姿が消え、日本語の主題歌を子供全員が歌い始める大事件も起きた。
 ボルテスVは即座に放送中止され、最終回まで見られなかった子供達が、ボルテスロス症候群になった。
 ベトナムでも中国でもドラえもんの発禁が計画されたが、孫に泣いて縋られて、小さい手でポカポカ殴られ精神破壊。改革開放政策や南順講話に逆行する言論封殺は行われなかった、らしい。

 紀元前、冬守

「未来に行った我が分身で同一存在、シヨウから念話が入った。朝廷の奴らは加賀の国よりやってくる!」
 またも天啓を受けて、住民の前で神の言葉を告げる四葉様。
「おおっ、シヨウから?」
「奴らはここ冬守を通過せぬっ! 奴らは加賀から即座に諏訪に行って、出雲の神々を根絶やしにしようとしているっ、周囲の集落にも通知せよっ!」
「仰せつかりましたっ、直ちにっ!」 
「大和の奴らは冬守には来ぬのかっ、やったぞっ」
 今日も俺TUEEE状態の四葉様。未来の知識と神憑りによるシャーマニズムで天下を取っていた。
「鉄が無いのだな? 川に行って砂鉄を集めてこい、磁石を集め、無ければ山の上のご神体、隕鉄を降ろしてくるのだ」
 仏像か地蔵を彫ってある隕石と違い、磁化されている隕鉄の方を降ろして来るよう言い付けた四葉様。

 冬守に落ちたのも、鬼界カルデラからの噴石かも知れないが、あれだけのクレーターを形成するに至るには、大気圏を突破した物の第一宇宙速度を超えられない、つまり地球の引力すら脱出できずに引き戻され、再降下したような低エネルギー量では不可能である。
 地球の重力加速度をはるかに超えて、第一宇宙速度も超え、光速の数パーセントで宇宙を移動してきた物体、それも大気圏で破壊も粉砕もできない、着地時にエネルギーの全てを放出して溶けて大半が蒸散する隕石でもなく、御神体は隕鉄である必要がある。
 A1以上の恒星が爆発前に鉄原子になるまで核融合反応を終了、それ以上核融合ができなくなって自重で重力崩壊して、超新星爆発によって鉄のコアが放出され、さらに重い原子が核反応によって生成され、天文学的な確率で地球に到達し、分解蒸散しなかった残存物体、それが御神体。

「出雲の神が高天原の奴らに降伏などありえぬっ、戦えっ、者どもっ!」
「「「「「「「「「「応っ!!」」」」」」」」」」
 しかし邪馬台国は出雲攻略に成功して、次の足掛かりとなる京都方面も宗主を失い無血開城。
 近畿圏の阪神間、奈良方面、大和まで政略的な婚姻関係などで地ならしを終え、簒奪や自分たちの血族を皇子に建てるのも時間の問題。
 滋賀、加賀など物の数ではなく、使者と手紙だけで震えあがって降伏。出雲の神々のように「海に返された」末路だけは避けたかった一同。
 まだ情報も行き渡っておらず、出雲の神々が惨たらしい最期を遂げていた現実や、大社(おおやしろ)まで焼かれ、神像がゴミとして投げ出されているのが伝聞で伝わったとしても、信じる者の方が少なかった。

 第二次大戦レベルで通信網、電信網も行きわたり、新しいメディアであるラジオが街頭で鳴り始め、新聞記事も信用できるメディアとして扱われ始めても、大日本帝国の降伏を信用しなかった人物は多数いた。
 玉音放送を理解しなかった者も、最後の出撃を行った者、放送自体を差し止めてクーデターを起こし、天皇を松代から誘拐して臨時政府を開こうとした者までいた。
 南米やハワイでは「勝ち組」と呼ばれる連中が、降伏を認めた日系人と争いになり、希望的観測によって、妄想から「日本は勝った、負けてなどいない」と言い出して、殺人事件が多数起こるほどの混乱があった。
 曰く、「今まで信奉して来た神(天皇)が負けるはずがない、必ず神風が吹いて、米軍の船を全部沈める」と考えた。蒙古襲来からヒントを得た宗教的狂信である。

 人間とは、理解したくない情報を耳に入れられると全力で拒否する。
 チェルノブイリの原発事故を報告されても、共産党員と役人の第一声の殆どが「それは嘘だ、嘘に決まってる、間違いだ、君の勘違いだ!」で塗り固められた。
 放射線計を見せても、共産党幹部が「360シーベルトなのだから規定値以下で、これは原子力事故ではない」と言い切った。
 メーターの最大計測値が360だったので、それ以上は必ず人が死ぬ数値なので目盛りも数値も無かったが、その程度が人間が受け止められる情報の許容限度である。

 鳥インフルエンザ、豚インフルエンザ、SARS、どれも通報があった瞬間に役人の脳機能はシャットダウンされ、「日本でそのような感染は有り得ません、水際で阻止されています!」と大声で叫び始め、どんな事象を聞かされても「アーアーアー聞こえない」になるが、赤外線監視で熱を持った人物を「止めようと」しただけで、一切阻止されていない。
 豚インフルエンザも、発祥地のメキシコだけで猛威を振るい、フェイクニュースだったのか、「医療関係者が多数感染して死亡、治療に当たる人物が逃げてしまって、死体が積み上がっている」と報道された。
 それでも普通のインフルエンザと交雑してしまい、一瞬で無毒化されて、平年の死亡者数、老人と子供だけの被害に戻った。

 SARSは古来からの疾病で、ハクビシンやイタチ化の生物を自然宿主として、宿主を殺さない共生体として、日本人、帝国陸軍が支配していた地域住民は、耐性が付いていて死亡に至る例は少ないとも言われた。
 現に「スーパースプレッダ」と呼ばれる、感染しても一切発症せず熱も出さず、表を平気で出歩いて細菌を撒き散らす人物も多数出た。
 アメリカの「腸チフスメアリー」のように、数十万とか数百万人に一人しかいない、腸チフスに感染しても一切発症しない珍しい人物ではなく、SARSでは多数発見された。
 次回は中東発呼吸器症候群(マーズ)MERSがやってくるが、「日本にはそのような感染例は絶対に起こりえません!」の怒鳴り声が聞ける。
 今回もスーパースプレッダが赤外線検知など容易に抜けて入国する。

 フビライハーンの軍勢が、中東、東欧に持ち込んだ黒死病(ペスト)。攻城兵器で病死体が城塞の中に投げ込まれたとも言われる。
 後に西ヨーロッパにまで伝搬し、西洋人の半数以上が死滅した災厄の中でも、死体処理と看病を命じられた奴隷、後の自由を約束されて志願した者の中から、100人に一人はペストに一切感染せず、自由の身を得てルネッサンス時代に出帆して行ったと言われる。
 馬に関係する仕事をしていた者、馬小屋で寝泊まりしていた家畜同然の者は、ペストを媒介するノミに嫌われ、羅病しなかったのかも知れない。

 小松左京先生の「復活の日」のように全人類が死滅する病原菌は、軍事兵器であっても難しい。
 あれは南極基地の人物だけが生き残るように設定されたお話である。
 終盤のスペクタクルシーンの変わりに、相互確証破壊時代の自動機械で東西両陣営の核兵器が発射されて核の冬が来て、今度こそ南極基地の残存人類まで死滅するのを防ぐオチになった。
 それも自動発射は不可能で、数名が鍵を入れてからでなければ発射されない「fail safe」が知れ渡ったのも、各種SF小説と映画の功績である。

 冬守

「決戦の場所は諏訪! しかし、その前に奴らを迎え撃つのだっ、邪馬台の奴らを通さぬよう全ての橋を落とせっ、険しい場所で待ち伏せて、石を落とし丸太で奴らを崖下に叩き落とすのじゃ、全ての集落に檄文を出し、出雲の神に忠誠を尽くす、飛騨と諏訪までの全ての場所から兵を出させるのだっ!」
 ヨツハ様のお達しにより、周辺の集落、そこからまた周囲の集落へと伝わって行く。
 冬守の地には出雲の神の使いであるヨツハ様が降臨なされ、神の技術である羽衣や青銅器の製造方法、新しい農法を下げ渡し下さり、敵に対応するための神器、鉄の製造まで行われると広められた。
 川からも砂鉄が集められ、草も生えない延焼の恐れが無い傾斜地には登り窯が設営された。
 鉄器製造のための高温、鉄の融点である1538度に近付けるまで、火力、温度を高めるための建築物、古代では建設できない煙突の代理品である。
 木や竹の燃焼温度では足りないので、炭焼きの窯も技術も伝来。
 燃料が足りないので、道端に生えているあらゆる雑草が刈り出され、日常の燃料として使用され、大型燃料は炭に加工される。
 ゴミの野焼きすら禁じられ、燃料の統制が始まり、村中総出で竹と材木の切り出しが行われ、ボウガンの増産、青銅器の供出、鉄器生産の準備が開始された。
 冬守での実験が成功すれば、すぐさま周囲の村でも「出雲側」でありさえすれば、同じ事が行われ、神々の技術が下げ渡される。

 光より早いと言われる女の噂話でも、綿花から糸、麻からも糸ができると知らされ、編み機、織機を作れば、神から下げ渡されていた「羽衣」を纏うことができるのだと、伝言ゲームで伝えられて行った。
 ヨツハ様の命令で蚕虫、蛾の幼虫までが探し出され、屋根裏部屋で桑の葉を与えて繭を作らせ、繭と蛹になった所を煮て、絹糸を生産する体制も始まった。
 中国の姫が嫁ぐとき、帽子の中に蚕を隠して嫁入りして、初めて他国に生産技術が漏洩したと言われるほどの、国家秘匿事項まで冬守に伝来した。
 女からすれば、化粧品や綺麗な衣服、宝石は「マリエ、最優先事項よ!」なので、こっちの方が大事件であった。

 ただ、ヨツハ様はやり過ぎてしまった。
 出雲の神という宗主を失い精神的な支えを無くして、日和見的な行動を取って援軍も出さず、諏訪の臨時政府まで焼かれ、残った神々まで打ち果たされていれば、心まで折られて朝廷に屈服して無血開城できた。
 新しい神から、神にしかできない技術や製品を与えられていれば、同じように驚かされ心酔して、農業指導、医療指導なども受ければ恩を感じて、もし子供の命など救われれば、一瞬で神への感謝を感じて、子々孫々まで感謝を伝える。

 しかし、出雲が陥落して焼かれ、京都、奈良、大阪、神戸、滋賀、富山、名古屋、あらゆる場所が出雲の残存兵力の受け入れを拒否して、直轄地であった諏訪にまで逃げるしかなかった旧勢力。
 既に勝敗は決していて、諏訪に立てこもった少数を討ち取られれば、日本は一つの勢力、渡来人による完全制覇が終わり、牛耳を執って覇を唱えられるはずであった。
 そこに神憑りによる巫女(シャーマン)が出現して、今までは神の技術でしかなかった文物を下げ渡し始め、明らかに朝廷よりも高級な品々と医療技術、農業技術を直接供与してくれる。
「すべての者っ、牛の痘瘡に感染しておけっ、さすれば痘瘡では死なぬっ!」
 その技術を賜るには、出雲側に残るしかない。
  
 

 
後書き
 またセリフが少ない病を発症して、誤字脱字の修正をするたびに脚注などが増えています。
 
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