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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE28 フロアボスの正体判明!虚ろな巨象の正体!

青いターゲットサークルから出現する巨大な手足がレイドぱパーティーを襲撃!その本体を見せる事無く、手と足で攻撃を繰り返してくるモンスターとの戦いが、初めてレイドリーダーを務めるキリトの指揮の元……開始! by立木ナレ



キリトの説明が終わった直後に声を上げたのはアスナだった。

アスナ「じゃあ、このままあこうしてても、ボスは攻撃してこないし、こっちも攻撃出来ないの?」

キリト「そう……だと思う。不幸中の幸いと言うか、フルレイドだったら絶対に全員がライン踏まないで制止なんか出来ないと思うけど、この人数だから何とか……」

俺「取り合えす、わざとラインを踏んで、そこからボス戦を始めるか、それとも一度階段のところまで退避するかどっちか決めたらどうだ?」

キリト「ああ、俺もそのどちらかを、みんなの意見も聞いてから決めて――――」

その時だった。

階段の真上。天井中央部のラインだけが勝手に動き始めた。

ユッチ「な、なんで勝手に動き出してるんだよぉ!僕たち何もしてないのに!」

エルダ「じっくりと話し合ってる時間なんて与えてくれないって事かしらね?」

再び慌て喚くユッチと、微妙に強張った表情で皮肉を口にするエルダだった。その光景を見たところでこちらからは何も出来ず、全員がその光景を見上げていると――――。

ごごん! と重低音を響かせ、天井が複雑な形に出っ張り始めた。やがて突き出した額、落ちくぼんだ眼、四角い鼻と横一直線の口。

俺「また随分とブサイクな造形の顔になりやがって……」

そして、俺達が声も無く見上げる先で、巨大な顔の上部に、6段のHPバーが次々と表示された。一本目だけが少し短いのは、今まで腕にヒットさせたであろうソードスキルのダメージなんだろう。

そして最後に、第五層フロアボスの固有名が、俺にはもちろん読む事が出来ないアルファベットで表記された。

『Fusucus the Vacant Colossus』

キリト「ベータと……名前も全然違う……」

俺「つーか、あれって何て読むんだ?」

レイナ「……フスクス・ザ・ヴェイカントコロッサスよ」

俺「よし、フスクスって呼ぶか」

そんな楽観的なやり取りの後、洞窟のような口から、迷宮区全体を震わせそうな雄叫びが迸った。それで驚いて、床のラインを踏んだ者はいなかったが、ボスの声が轟いた瞬間、全員のHPバーの下に防御力低下のデバフアイコンが点灯し、それまで静止してた青い線が一斉に動き出したのだった。

エルダ「防御も回避も不可能なデバフだなんて、流石フロアボスはやる事がえげつないわね!」

キリト「散開してラインの動きをしっかり見るんだ!極力避けて、もし踏んじゃったら床と天井を両方見て、サークルが出たら大きく回避!余裕があれば出てきた手足に攻撃!!」

広間のあちらこちらから、キリトの大声に対して応答が上がった。

キリト「壁際は隙間が大きいからラインを避け易い!動きが止まったら、チャクラムでデカ顔のデコの紋章を狙ってくれ!」

ネズハ「り、了解です!」

キリト「俺はワザとラインを踏むから、ソードスキルで攻撃の準備を!」

アルゴ「おいサ!」

アスナ「解った!」

俺「ああ!」

キリトが次々とレイドメンバー達に指示を出していく。そして、黒い床を動き回る無数のラインが、速度を落としていく……。

キリト「……行くぞ!」

その場でキリトは意図的に線を踏んだようだった。その直後、飛びずさったキリトの目の前に、黒腕が通り過ぎていた。

そしてその腕を四方から俺とキリトとアスナとアルゴで取り囲んだ。ここは同士討ちを避ける為に横に攻撃が発生するソードスキルは避けるべきと判断し、一同はキリトが縦二連撃のバーチカル・アークを、アスナは再びパラレル・スティングを、アルゴはクローを使った三連撃技を繰り出した。

俺はと言うと―――剣を鞘に納めたままの状態だったため、他の三人が何をしてるんだ!?と、言いたげな表情を見せるのに構わず、剣を鞘に納めたままの状態でソードスキルを発動した。

それは、蹴りと鞘での殴打を絡めた3連撃のソードスキルの『潜身脚(せんしんきゃく)』だった。

キリト「オズマ……今のはまさか!」

キリトだけでなく、この場にいる、レイナ、ユッチ、エルダ以外がその技を見て驚いた様子だったが、ベータテスターのキリトだけは今のソードスキルに見覚えがあるようだった。

ユッチ「決まったっす!オズマさんのエクストラスキル『納刀術(のうとうじゅつ)』のソードスキルっすね!」

エギル「剣を鞘に納めたまま攻撃出来るエクストラスキルなんてのがあったのかよ!?」

ユッチがまるで自分の事のように得意気に説明すると、エギルと他数名がそのエクストラスキルの存在に驚いていた。

元々、体術スキルを狙っていた俺が、この納刀術スキルに出会ったのは第4層のクエストをクリアしたのが切っ掛けだった。

本来どんな剣も、鞘から抜かなければソードスキルは発動出来ないし、通常攻撃を繰り出したとしても、鞘に収まった状態では攻撃力も激減してしまうのだが。
この納刀術スキルを習得した事によって、剣を鞘に納めたままの状態でも抜いた時と同等のダメージを与えられる事に加えて、納刀状態のときは抜刀している時とは別の――納刀術用のソードスキルが使えるようになり、その一つがさっきの潜身脚(せんしんきゃく)だった。

この納刀術スキルには、習得者は盾を装備出来なくなることと、体術スキルとの併用が不可能と言う、二つのデメリットを抱えているわけだが。
体術スキルを習得しておらず、盾の代わりにソードブレイカーを持っている俺にとっては大きな影響のないデメリットとして割り切って、この納刀術スキルを習得したわけだった。

レイナ「……ライン停止。天井にターゲットサークル出現」

俺の納刀術ソードスキルを見て、呆気に取られる者たちが大勢いたが、レイナがスグにその言葉で現実に引き戻した。

やる事はさっきと同じで良いだろう、ゴーレムの攻撃を回避しつつ、3~4人程度でタイミングを合わせてソードスキルだ。

ハフナー「要領は解った!次は俺達も攻撃してみる!」

エギル「こっちもやるぜ!」

オコタン「我々もやって見ます!」

キリト「任せた!!ぶちかましてやれ!!」



停止する瞬間にわざとラインを踏み、襲ってくる腕や足を回避しつつソードスキルを叩き込む。ボス顔のデバフボイスは、ネズハのチャクラムでキャンセルする。
急造のレイドパーティー達はその動きをパターン化し、三度目以降は危なげなくこなせるようになった!
両手両足へのソードスキル同時攻撃の威力は壮大なもので、一本目、二本目、更に三本目のHPバーが消滅するのにわずか数十分であった!! by立木ナレ



俺のバーチカル・アークで残り半分を過ぎて四本目に突入したが、今の所ボスの行動パターンに変化はなかった。
俺のバーチカル・アークの直後に、キリトも同じソード掬るを発動させた、その瞬間だった。

ネズハ「キリトさん!壁を!!」

ネズハの驚愕に満ちた声を聞いたキリトが、慌てて振り向いていた。俺も何事かと思い、そちらに視線を向けると、これまでは黒い無地だった壁に、床と天井から青いラインが伸びていた。

ユッチ「な、なんっすかこれ!?ま、まるで隙間を埋めるように動いてるっす!」

キリト「―――A隊、B隊、C隊の順に階段から待避!」

ユッチ「え、ええ!?せ、せっかくここまで削ったのにかよ!?」

キリトが咄嗟に指示した全員に対するボス部屋からの退避命令に対して、ユッチがそう叫んだ。ボスのアグロ状態が解除されるとせっかく減らしたHPも急激に全快してしまうのでそれを惜しんでるのだろう。

俺「初見での深追いは禁物だ!良いから走れ!」

ユッチ「は、はい……」

俺はごねるユッチの腕を掴んで無理やり階段まで走らせようとすると、ユッチは渋々と言った様子で走り出していた。

ハフナー「だが……!」

ハフナーがそう叫びかけるが、シヴァタが無言でマントを引っ張っていた。全員がこの場から逃げようとしているのを最後尾のC隊の俺は確認して、そのまま階段まで走り、その異変に気が付いてしまった。

アスナ「……キリト君!」

キリトの名前を叫んだのはアスナだった、アスナはキリトにも見えるように天井を指差していた。そして、キリトもアスナが指さす方を見上げて、その以上に気が付く。

出現以降ずっとそこに張り付いていたはずの巨大な顔が、知らぬ間に消滅していた事に。

エルダ「何なのこれ……?顔はいったいどこに―――」

リーテン「シバ、だめっ!!」

くぐもった声で叫んだのは全身フルメイルのリーテンだった。俺たちは一斉に階段方向に目を向けていた。

そこで俺達が見たのは――――

レイナ「……階段があったはずの場所にボスの顔があるわよ」

ユッチ「本当にもー!さっきから一体どうなってんだよぉ!!」

つーか、問題なのはボスの巨大な口に腰辺りを加えられたシヴァタの方だった。

――下りの階段は何処にも見当たらず、シヴァタはボスに食われかけの状態、ここにきてフロアボス戦は急展開を迎えていた。

いや、下りの階段がどうなってるのかは、目の前で見ていたので俺を含めた数人はもう気が付いてるだろう。

ハフナー「階段が……口になりやがった!!」

ボスの口からシヴァタを引っ張り出そうとしながら、ハフナーが顔をキリトに向けて叫んでいた。

ユッチ「ま、マジで!?唯一の脱出口の下り階段がボスの口になっちゃったら、どうやって逃げりゃいいんだよぉ!!」

レイナ「……そうなったら、脱出は不可能ね」

ユッチ「そんあぁ!!」

俺「今は逃げる事よりも、シヴァタを助けるのが先だろ!」

エギル「そーだぜ……アイツの鎧は耐久値が高いみてーだが。鎧がもし壊されでもしちまったらよ……」

エギルがその懸念を険しい表情を浮かべながら呟いた。当然言うまでも無く、シヴァタの重装鎧が破壊されてしまったら、その瞬間に致命的なダメージが奴を襲うのは容易に想像が付く。

シヴァタ「ちっきしょ、またかよ……!」

序盤にも掴み攻撃を食らってるシヴァタが、両手でボスの口を押し開こうとしながら毒づき、リーテンもそれに協力しているが、巨大な口が緩む気配は全くなかった。

顔の反対側ではエギルが両手斧で、レイナが両手剣で何度も弱点の額を攻撃しているが、まるでビクともしなかった。

俺「どうしたってんだ?天井に張り付いてた時は、ネズハのチャクラムの一発で簡単にディレイしてたってのに……」

ユッチ「こ、こーなったらソードスキルで―――」

エルダ「待って!確かに通常攻撃じゃ大した効果が無いのかもしれないけど、いまあの口にソードスキルを叩き込んだらシヴァタさんまで巻き込んでしまうわ!」

ソードスキルの構えを取ろうとしていたユッチを、エルダが俺も想像していた懸念を理由にして止めていた。
事実、エギルとレイナも、シヴァタを巻き込むのを恐れてソードスキルの仕様を躊躇っているようだった。

エルダ「フスクス・ザ・ヴェイカントコロッサス……まさに名前通りの意味なのね」

俺「あ?どー言う事だよ……」

俺と違って英語もお手の物らしいエルダが、ボスのキャラネームから何かに気が付いたようだった。

エルダ「ヴェイカントは虚ろな、コロッサスは巨象……それはたぶん、この大広間の事よ」

アスナ「そう……部屋そのものが5層のフロアボスなのよ」

アスナもエルダと同じ答えに達したようで、その先の事を口にすると、エルダも首を縦に振って肯定した。

俺「お前らの推測通りなら、俺等16人は……フスクスの内部に閉じ込められちまったわけかよ……」

こんな状況下だと言うのに、俺は思わず不敵に笑ってしまっていた。笑って無くちゃ正気じゃいられねぇ気がしたんだ。

シヴァタ「ダメだ、外れない!」

ハフナー「諦めるな、シヴァタ!!」

リーテン「シバ、いま助けるから!!」

シヴァタが絶望的な叫びをあげて、ハフナーとリーテンが叫ぶが、その声も恐慌を感じているように思えていた。

シヴァタ「もう無理だ……鎧が壊れる!リっちゃん、口から手を離せ!!」

リっちゃんってなんだ?なんて今この状況下においてはどうでも良いツッコミを口にする者など誰もいなかった。
リーテンは激しく被りを振る。

リーテン「いやだ!!絶対……絶対助ける!!」

俺「そうだな……シヴァタのHP自体はフル状態に近いんだ、いっその事、奴の鎧が砕ける前にソードスキルを叩き込むか……」

それで巻き添えになったとしても、今ならまだ即死する事は無いだろう。

キリト「エギル!レイナ!ソードスキルで、額の紋章を攻撃するんだ!」

キリトも同じ考えに至ったようで、エギルとレイナにそう指示を飛ばすが、振り向いたエギルとレイナはエギルが激しく左右に首を振り、レイナは一往復だけ首を左右に振った。

レイナ「……弱点が無いわ」

エギル「ダメだ……こいつ、紋章がねぇんだ!!」

キリト「な…………」

俺「下り階段が口になったかと思ったら、今度は弱点の紋章が消えやがったのかよ!」

俺達の耳に響き渡り続けるのは、断続的に発せられるシヴァタの重装鎧が砕けつつある金属音だった。



脱出不可!弱点消滅!異常事態の連続に行き詰るレイドパーティーの面々!シヴァタの鎧の耐久値は刻一刻と減り続け、死が間近に迫りつつあった! by立木ナレ 
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