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Fate/BBB ー血界戦線・英霊混交都市ー

作者:海戦型
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ハンバーガーは雑な食べ物という主張はマッ〇と〇スの違いが分からない奴の理屈だってはっきりわかんだね、っていう短編

 
 アルトリア・オルタは反転しても本質的にはアルトリアであることに変わりはない。
 故にヘルサレムズ・ロットにたどり着いたとき、彼女は特に迷いもなく人類側についた。

 ただしライブラとは協力関係にありながら一定の距離を取っている。理由はいくつかあるが、協力しつつも敢えて距離を置くサーヴァントは他にも存在し、理由は大別すると二つのパターンがある。
 一つは既に自分の帰る場所を決めている場合。もう一つはとんでもない事件が横行するこの町でより直接的に犠牲を減らす為に警邏の真似事を優先している場合だ。ロビンフッドなどは後者に当たり、今も町のどこかで義賊を続けている筈だ。

 ではアルトリア・オルタはどうなのか。

 そんなもの、決まっている。 
 ジャック&ロケッツのハンバーガーをより効率的に購入したいからに決まっている。

「……君のそれは最早一種の呪いではないかね?」
「それを言うならこの世界に来てからの貴様の料理狂っぷりも呪いだ」
「むっ……」

 呆れた顔をしたアーチャー・エミヤにそう返すと、得意の皮肉も出ず口ごもった。

 ヘルサレムズ・ロットの食べ物はありとあらゆる意味で常軌を逸している。普通の食べ物も当然あることはあるのだが、それ以上に特殊なものが多い。味はいいのに製造過程がぶっ飛んでいたり、客が食う筈の料理が客を食う料理になっていたり、どう考えても美味しくなりそうにない素材を予想外過ぎる方法で絶品にしたり、とにかくここの料理は異界寄りになればなるほど革命的だ。革命的すぎて多くの英霊は着いていけないようだが。
  
 この世界にあるとあるレストランで料理を振舞われたエミヤは、そこで何か、可能性のようなものを見たらしい。死んだ魚のような目でライブラに戻ってきた彼は、「私の料理など児戯だった」と告げ、その日からHL式の料理研究に没頭し続けている。その日以来彼の料理は加速度的に美味く、そしてよくわからなくなっていっている。時折ライブラメンバーに料理の味見を頼んでいるが、どんなに絶賛しても「しかしこれでは届かない」と呪いのように何やら呟いている。
 その姿は一種、千子村正に似た狂気を帯びている。

「……まぁ、おかげで隔離居住区の貴族(ゲットー・ヘイツ)付近での微妙な事件の処理がスムーズになっているから組織的に問題はないのだがね。ところでレオ君は今日は一緒ではないのかね?」
「奴は今日、マタ・ハリから弁当を受け取っているのでノーバーガーだそうだ」
「相変わらず彼は妙に様々な人に好かれているな……いや、どこぞの未熟者のように背中を刺されかねない関係にはなっていないが、何というか……」

 普段レオはザップとツェッドの3人でランチを食べに出かけているのだが、2人が一緒じゃないときは頻繁にハンバーガーを食べに出かける。その関係で彼はAオルタと共にエミヤが住み込みで働く飲食店街の前を通るのだが、エミヤとしては彼が気にかかるようだ。
 気持ちは分からないでもない。尋常ならざる眼球を持つ彼は自衛能力が皆無に等しく、なにかとひやひやさせられる。あれでもザップが最低限死なないよう護衛をしているらしいが、彼は臆病であっても引けないときは引かない性格なのが厄介だ。
 そして、そういったカルデアのマスターを彷彿とさせる部分のせいか、不思議と英霊に好まれる。

「アグラヴェインから愚痴を聞き、呪腕のハサンと談笑し、ニトクリスの相談に乗り、アンデルセンには頻繁に絡まれ、ジャック・ザ・リッパーには何度もかくれんぼに誘われ、巴御前とオンラインゲームでフレンドだとも聞いているぞ。他にも燕青とは……」
「ちなみに私の把握する限り、レオナルドの仕事以外の友人はどいつもこいつもドがつくほど人のいい奴ばかりだ。人間でないのも多いが」

 類は友を呼ぶ、とは敢えて言わないでおく。ちなみにレオは他にもアサシン・エミヤなどの取っつきづらい英霊にも「なんとなく」で積極的に声をかけており、その人の好さには呆れかえるばかりだ。まぁしかし、それを言い出せばライブラの他のメンバーも大概であり――。

「一番おかしいのはクラウス氏かもしれんが。清姫が正気でないことにもスパルタクスの筋肉会話も全く異常だと感じず普通に接していて、未だに狂化という概念を理解していないようだしな」

 何故か対バーサーカーのコミュニケーション能力が高いのはひとえにクラウスが天然だからである。天然恐るべし。



 = =



 さて、アルトリアオルタは世界でも指折りのバーガー狂いであるが、実はこのHLには彼女に匹敵するバーガー狂いがもう一人いる。その一人と公園で待ち合わせたAオルタは彼に声をかけた。

「待たせたな、ネジ。今日はレオが来ないから私が代理だ」
「おぉぉーーーー!!ありがとう、ええと……ハンアルトリアバーガーさん!!」
「アルトリア・オルタだ。面倒だからオルタでいいと言ったはずなのだがそっちの名前をバンズで挟むとは……」

 ハンバーガーに対する食欲が溢れすぎてとうとう相手の名前をバーガーで挟んでしまった彼は、人間ではなく異界人である。その名前はフルネームだと非常に長いので親しい者からはネジと呼ばれている。
 身長はポリバケツくらいしかなく、二頭身で真っ白な肌といいキノコに虫の口がついたような独特の形状から一目で人外であることがわかる。しかしながらその顔や声、性格は憎めない印象を与えた。

 彼の存在を知ったのは、彼がレオと仲良くハンバーガーを食べているのを見た時だった。他の何よりジャック&ロケッツのハンバーガーが好きな彼であるが、悲しいことに異界人を排斥する隔離居住区の貴族(ゲットー・ヘイツ)に店を構えるジャック&ロケッツのバーガーを買うには協力者が必要不可欠という宿命を背負っている。
 ちなみに前は物忘れが激しかったらしく、なんとレオは待ち合わせに5時間待たされたこともあるという。今もなかなかの記憶力をしていることは敢えて触れまい。
 
「えへへへへぇ~~。レオ君以外に一緒にバーガー食べる人が増えるなんて思わなかったですよ~」
「お前は本当にレオと仲がいいな」
「だってバーガー買ってきてくれるんですもん~!!」

 顔が人間ではないので判別が付きにくいが、きっと笑っているのだろう。言葉だけ聞くと食い気優先の酷い奴にも聞こえるが、Aオルタは直感でそれだけではない事をなんとなく感じ取った。

「それだけか?」
「えぇ~?」
「レオと仲がいいのは、バーガーを買ってくれるというだけか?」
「う~ん……分かんないや~。ぼく人間(ヒューマー)の友達ってレオくんしかいないもので~。あ、でもですね~!初めて会ったとき、なんとなく初めてじゃないような気がしたような気がしまして~!」
「曖昧に曖昧を重ねるな。それは正しい文法とは言えない」
「ふお~~~~!バーガ~!!」
「フッ、聞いてないな」

 袋に大量に入ったバーガーの包み紙を器用に剥がし、ネジは両手に二つずつ計四つのバーガーを並べる。彼は余りにもバーガーが好きすぎて、なんと4つ同時にバーガーを食べるという絶技を身に着けてしまっているのだ。実際にはこれは一つのバーガーを食べているうちに別のバーガーを他の人に食べられないようにと編み出したらしいが、幸せそうな顔を見ると説得力がない。

「いっただっきま~~~~~す!!」

 言うが早いか、四つのバーガーを上から均等にすさまじい勢いで貪るネジ。ちょっとした大道芸の域にすら達している様子を見て、Aオルタは自分も腹を空かせていることを余分に実感させられた。自分もバーガーの包み紙を剥がし、そして――。

「もっきゅもっきゅ」

 その光景を見た人は目を疑ったろう。確かに先ほどまで彼女の手には両手でも包み切れないバーガーがあった筈なのだ。しかし次の瞬間その質量は消え失せ、そしてAオルタの口の中にはバーガーと同質量のふくらみがハムスターの頬袋のように存在感を主張している。その口の大きさで一口とか物理的にありえないように思われるのだが、ここは因果さえ操るHLなので気にしてはいけない。

「ほわぁぁぁ~~~。バーガーオルタさんそれどうやって食べてるんですか~?ぼくじゃ真似できないな~」
「私からすればお前の4つ同時食いの方が真似できないのだがな……あとオルタでいいからバーガー呼ばわりはやめろ」

 謎のキノコ異界人と人形のように白く美しい少女はそんな他愛もない事を言いながら――計30個にも及ぶバーガーの山をわずか数分で全て空にした。さて、栄養補給を終えたからにはごみを捨てて町を回るか――そう思いゴミを整理しようとすると、何やらネジが熱心にバーガーの包み紙を一つ掴み上げてフオオ、と唸っていた。

「その包み紙がどうかしたか?」
「知らないの~!?ジャック百面相ですよ~!!」

 言われて見てみると、包み紙の内側にジャック&ロケッツの公式キャラクターであるジャックの面がプリントされていた。何とも貧弱そうなアメコミヒーロー風の男が絶妙に腹立たしい顔をしている。というか、実際にコミックもあると聞いた気がする。
 ジャンクフードの分際で妙な所に妙なものを入れているな、とAオルタは若干ジャック&ロケッツの評価を内心で下げた。彼女は無駄を嫌うからだ。

「本当は店内で食べる奴にしか付いてないってレオくんが言ってたけど~、店員さんが間違えたのかなぁ~?こんな間違いなら何度でも期待しちゃうかも~!」
「こんな無駄な物の何がそれほど喜ばしいのか私には理解できん」
「うーん……」

 ネジは暫くその紙を物欲しそうに眺めていたが、やがて意を決したように「はい!」とAオルタに突き出した。

「何だ?捨てるのか?」
「あげる~!」
「………」

 いらない。それがAオルタの頭の中で瞬時に弾き出された結論だった。しかし、そんな微妙な顔を知ってか知らずかネジは紙をAオルタの手の上に乗せる。

「本当はものすごく欲しいけど~、ぼくもう一つ持ってるので~。それにオルタさんはレオ以外で初めての人間(ヒューマー)の友達だから~!」

 友達――人間の。多分彼は、この身が英霊である事を知らないのだろう。しかもその中でもブリテンの王たる自分に友達などと、知らないとはいえよく言えたものだ、とAオルタは冷めた思考で考えた。

 Aオルタは別段ネジを友達だと思ったことはない。バーガー好きであることは一つ評価する点ではあるが、あくまでレオを介しての知り合いでしかない。いや、そもそも自分に友達と呼べる存在など――いや、と思う。

「……契約の証として受け取っておこう。我が身は時によってはメイドでもある」
「……?よくわかんないけど、大事にしてくださいね~!」

 後になって思えば、いらぬ思考だったと思う。
 だがAオルタはその何の価値もない紙くずを、「レオが来れない際の代理としてバーガーを届ける役割をこなす契約書」と考え直すことで、紙に価値を付与した。もちろんその紙には誰のサインもなく、ただジャック&ロケッツのロゴと共に無駄に濃ゆい顔があるだけだ。それでも、無価値と切り捨てる気にはなれなかった。

 もしかしたら、友達などと呼ばれて柄にもなく嬉しかったのかもしれない。
 これは、ただそれだけの――他の何でもない話だ。
  
 

 
後書き
ネジは可愛いんですよ。個人的には不夜城のアサシンくらい可愛いです。そう、ネジ書きたかっただけです。大谷育江さんボイスな上に登場回がすごく泣ける話だった……。

他にもいろいろ書きたい話はあるんですが、FGO知識と血界知識が追い付かない。
アビー、ナイチンゲール、ジキル&ハイド辺りは書きたい。けど知識が足りないです

アッくんは普段はスターフェイズさんといっつも良からぬこと企んでると思います。
クラウスさんはマリーとも相性よさそう。というか実際結構似てるのでは。 
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