| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

FILE21 下される詐欺師への制裁!?

第二層フロアボス戦は辛うじて犠牲者を出すことなく、勝利したものの――直後に始まったのは、詐欺師への追及!
オズマらに問い詰められた詐欺師は自らの罪を自白!詐欺被害者が多く集まるボス部屋は、詐欺師に対する非難の声に包まれるのであった! by立木ナレ




轟音が詐欺師に浴びせられる中、右手を高く掲げながら進み出たのは、レイドのリーダーを務めていたリンドだった。
俺達もリンドに場所を譲ると、ここで一旦、広間を満たしていた怒りの声が収まった。

リンド「まず、名前を教えてくれるか」

ネズハ「…………ネズハ、です」

詐欺師――ネズハが名乗ると、リンドは二度、三度頷く。そして咳ばらいをして、低い声で言う。

リンド「そうか。ネズハ、お前のカーソルはグリーンのままだが……だからこそ、お前の罪は重い。システムに規定された犯罪でオレンジになったのなら、カルマ回復クエストでグリーンに戻る事も出来るが、お前の罪はどんなクエストでも雪げない。その上、弁償ももうできないと言うなら……他の方法で、償ってもらうしかない」

リンドの言う、他の方法での償いが何か―――まずは聞いて見なくては何とも言えないが、少なくとも命で償えとまでは言わないだろう。

リンド「お前がシヴァタ達から奪ったのは、剣だけじゃない。彼らがその剣に注ぎ込んだ長い、長い時間もだ。だからお前は―――」

恐らくリンドは、ネズハに、これからのゲーム攻略での貢献と、収入からの徐々に弁済を命じるつもりだろう。
ディアベルだってきっと、その裁決を下すだろうし、俺がリンドの立場でも同じ採決になるだろうから、この辺りが妥当と言ったところか―――

「違う……そいつが奪ったのは時間だけじゃない!」

後方から甲高い声を叫んだそいつは、走り出して前に出る。緑服のキバオウ隊のメンバーだった。
「オレ……オレ知ってる!!そいつに武器を騙し取られたプレイヤーは、他にも沢山いるんだ!そんで、その中の一人が、店売りの安物で狩りに出て、今までは倒せてたMobに殺されちまったんだ!!」

再び大広間が静まり返った。数秒後、シヴァタの隣の青メンバーが囁く。

「……し……死人が出たんなら……こいつもう、詐欺師じゃねぇだろ……ビッ……ピ……」

その先の言葉を言おうとして言え無さそうな様子だったが、さっき喚いていた緑メンバーが、右手の人差し指を突き出して叫ぶ。

「そうだ!!こいつは、人殺しだ!PKなんだ!!」



Pkとは―――とは、オンラインゲーム、特にMORPGやMMORPGにおいて、他のプレイヤーに対し、何らかの目的で他のプレイヤーを殺す事、あるいは殺す行為を示す言葉であり、その行為をプレイヤーキル (Plaと言い、これをPKと略す。

このソードアート・オンラインにおいては、近年のMMORPGとしては珍しくPKが可能となっており、街中でこそ犯罪防止コードによって守られているが、ひとたび圏外に出る事によって、その恩恵は消える事になる!! 

そして何よりも、ゲーム世界での死が現実での死に直結するデスゲームと化したSAOにおいて、PKは単なるローカルプレイやゲーム内でのマナー違反行為などでは済まされず―――実際の殺人行為に他ならないのである! by立木ナレ

キバオウ隊の痩せたダガー使いは、指を指したまま更に叫ぶ。

「土下座くれーで、PKが許される分けねぇぜ!どんだけ謝ったって、いくら金積んだって、死んだ奴はもう帰ってこねーんだ!どーするんだよ!お前、どーやって責任取るんだよ!言ってみろよぉ!」

俺はその甲高い叫び声を聞いているうちに、第一層での事を思い出して、隣でその様子を冷静な眼差しのまま生還しているレイナに話しかける。

俺「確かアイツって、第一層のボス戦の後にキリトの事を『こいつベータテスターだ!』とか騒いでた奴じゃなかったか?」

そして、俺がキリトを強請る計画を破談させてくれた、最大の張本人とも言えなくもない奴だった。レイナは、俺の方を振り返らないまま、小声で――しかし、俺に聞こえるように答える。

レイナ「……オズマの記憶通りよ。名前は―――覚えてないけど、キバオウからはジョーって呼ばれてた気がするわ」

やっぱりそうか、あの時もそうだったが、何かあるたびにこう尽く喚かれると、この先こいつをフロアボス戦に参加させ続ける事に妙な不安を感じる。
だが、そんな俺の杞憂など、どうでもよくなるような招かれざる者たちが現れたのはその直後―――



ガチャモン「フェイフェイ……君が逝ってから、もう28年が経つんだね。毎年こうやって君との別れを思い出すとさ、君が上野動物園のアイドルだった頃を思い出すよ……」

モック「ガチャモン、もうフェイフェイの事は休ませてあげましょうよ……生まれてから12年間もの間、人間の見世物にされてさぞお辛かったですな~……」

緊迫した空気、殺伐とした雰囲気、一瞬触発の状況下にまるで空気を読む事無く、上野動物園に昔いた、ジャイアントパンダの命日を悼んでいるかのような、振る舞いで現れたのはSAOのマスコットを自称しているガチャモンとモックだった。

ガチャモン「さぁ!皆もフェイフェイの命日なんだからお線香をあげてあげて!皆だって好きだったよねフェイフェイ?」

モック「あの~、ガチャモン……この場にいる殆どの方々はおそらく、フェイフェイが無くなった後に生まれた世代の方々ですので、我々の話に付いてこれないのではないでしょうか?どちらかと言えば、彼ら世代にとって上野動物園のジャイアントパンダと言えば双子の赤ちゃんパンダの方じゃないですか?」

ガチャモンが俺達にまで、線香を上げろなどと、バカな事を言い出し、モックがそれを適切な言葉で止めようとすると、ガチャモンは露骨に不貞腐れたような声で言った。

ガチャモン「ちぇ~、これだから平成生まれは全くもぉ~。世代間ギャップを感じさせてくれるんだからさ~」

キバオウ「知らんわ!フェイフェイとか双子パンダとか今はどーでもええわボケ!」

そして、こんな時にガチャモンに対して真っ先に突っかかるのはやはりキバオウだった。流石に冷静さを欠いてガチャモンに攻撃を加えてしまう様な愚行は行わないが、右手の人差し指を突きつけて、さっきのダガー使い以上の喚き声をあげていた。

だが、この時ばかりはまさにキバオウの言う通りだ。フェイフェイとか双子パンダとか正直どうでも良い。
まぁ、双子パンダの方は小学4年生だった2018年に当時の仲間達と共に見に行ったことはあったが、その時に俺が率直に感じた双子の赤ちゃんパンダに対する感想は『ブサイクなパンダだな……』と思わず口に漏らした通りだった。

ともかく、そんな昔の話はどうでもよく、実際に奴らがこの場に現れたのは何なのかだ、前の様に単なる冷やかしならどうでも良いのだが、それ以外に目的があるのだとしたら―――

ガチャモン「年長者として、このSAOのマスコットキャラとして君達に一言アドバイスします!」

アスナ「何なのよ一体……?」

今度はアスナが不快そうに、鋭い眼光でガチャモンを睨みながら呟いていたが、ガチャモンは全く気にする事なく、ノリノリのテンションでトークを開始する。

ガチャモン「え~、ご存知の通り。このSAO内での様子は、現実世界の人達は殆ど把握していません。精々プレイヤーログから、どのプレイヤーがどこで誰と接触しているかをある程度調べるくらいの事が限度だろうね」

キバオウ「それが、何やっちゅうねん!?」

俺はこの時、ガチャモンの心の奥底から―――この騒動に更なる波乱を引き起こそうともくろむような悪意を何故か感じた。
そして、キバオウの叫ぶような問いかけに答えるようにガチャモンは言う。

ガチャモン「よーするに、この世界における法、秩序、掟は全て、君たちプレイヤー達によって決定するって事さ、なにも現実世界の常識やあり方に囚われる事も無いしね」

俺「まさか……こいつ!?」

この世界で行われる事が、現実世界の人間達に知られる事が殆ど無い事を敢えて伝える事によって、俺達が詐欺師に対してどのような制裁を下すようになるのかを試してやがるのか!?
だが、そんな俺達の疑問に当然答えるわけもないであろう連中で、それを証明するようにモックが口を挟む。

モック「そんな事よりもガチャモン!フェイフェイが大活躍していた当時のVHSが手に入りましたから、早速観賞会ですぞ!」

ガチャモン「モックったらナイスだよ~!と言うわけで、僕たちはこれで失礼するね。フェイフェイの大活躍していたVHSの映像はガチャパットでも期間限定で配信するから、是非よろしくね~」

それだけ言い残して、ガチャモンとモックはあっさりとその場から姿を消したのだった。残された俺達は、唖然としている者、険しい顔つきを浮かべる者、薄ら笑いを浮かべる物と多様だが、さっきまで直面していた問題が去ったわけではない。

そして、さっきまでの話を再開させる言葉を口にしたのは、問題の張本人であるネズハ自身だった。

ネズハ「……皆さんの、どんな裁きにも、従います」

ネズハの言う捌きの意味は何か……それは、さっきのガチャモンが言った、『この世界の法、秩序、掟はプレイヤーたち自身によって決められる』と言う言葉を聞いた直後だと、もはや誰が考えても一つしか考えられなくなってしまっていた。

ユッチ「なら、責任取れよ」

ユッチが、どう言う意味で、どんな責任を求めてその言葉を発したのかまでは分からないが、その言葉が切っ掛けに、ボス部屋の大音響が再び全体に広がる事になる。

「そうだ、責任取れ!」

「死んだ奴に、ちゃんと謝ってこい!」

「PKなら、PKらしく終われ!」

「命で償えよ、詐欺師!」

「死んでケジメを付けろPK野郎!」

「殺せ!クソ詐欺師野郎を殺せ!!」



そのプレイヤー達の叫びは、もはや詐欺師に対する怒りだけではなく、デスゲームに囚われた事に対する理不尽への怒りのはけ口をぶつけるかの如く、恨みの言葉、怨嗟となっていた――――既に、リンドにも、キバオウにも、この状況を収める手立てはなく、完全なる手詰まりと化していた! by立木ナレ


俺「この状況は不味いぞ……」

レイナ「……オズマの本来の目的にそぐわない展開になりそうね」

そうだ、本来であれば詐欺師にきっちりと、どれだけ時間を掛けてでも、俺達詐欺被害者への償いをさせるのが目的であったにもかかわらず、ここで奴を処刑なんて事になったら、補償できる物も保証できなくなってしまう。

この状況をどうやって収められる?俺自身その答えを出せぬまま、事の成り行きを見守り続けていた時だった―――

俺「アイツ、レジェンド。ブレイブスのリーダーの……」

レイナ「……オルランドよ」

オルランドを始めとしたブレイブスの5人が金属音を鳴らしながら、うずくまるネズハの前にたち尽くした。
そして、オルランドは剣の柄を掴むと、それを一気に抜きとった。

俺「アイツ、ネズハを処刑する気か!?」

だが、そんな奴をどうやって止めればいい?今更、『やっぱりこいつには生かしたまま補償をさせろ』とか俺が言ったところで、大半の者達が殺せと叫んだ直後では何の効果も無いのは目に見えている。

だが―――、俺がオルランドの微かに響いた声を聞いた時、俺はこのオルランドが、何者かを―――なぜここまで強力な防具を揃えて、強化まで行えたのか、全ての答えを知ることになった。

オルランド「……ごめんな。……ほんとうにごめんな、ネズオ」

ネズオと言うのはネズハの事だろうか?そんなどうでも良い事を疑問に思う間もなく、オルランドと、その仲間の4人は、ネズハの右隣りに移動すると、一斉に床に膝を突いていた。

オルランド「ネズオ……ネズハは、俺達の仲間です。ネズハに強化詐欺をやらせていたのは、俺達です」



※ ※ ※



第3層へ続く階段で座り込みながら、嗜好品アイテムであるタバコを加えていると、レイナが無言のまま近づいてきて声を掛けてくる。

レイナ「……ウエイトソードはやっぱりもう無かったけど、ウエイトソードに匹敵するコルを回収する事は出来るみたいよ」

俺「そうか……ボス部屋の方はどうだ?」

レイナ「……まだ、話し合いが終わるのは時間が掛かりそうみたい」

レイナが言った、話し合いと言うのは、キバオウとリンドを中心に話し合われている、詐欺集団であるブレイブスの処遇の話し合いの事だった。
最終的に、ブレイブスの連中が、装備している高価な防具や武器を売り払う事で、弁償が可能となり、それによって、ネズハを処刑しろと騒いでいた連中も、頭が冷えたようで――――ともかく、処刑は行われる事は無かった。

だが、それでも俺の気分は靄が掛かったままのような、大して晴れない気分だった。

俺「キリトの奴――――あいつは、気が付いてたらしいな。ネズハがブレイブスの仲間だったって事に」

レイナ「……それは、私もキリトに直接問いただしたわ。―――キリトは認めた、そして、キリトがネズハにチャクラムを譲った事や、体術スキルの習得方法を紹介した事も」

俺「ったく……また俺はアイツに遅れを取っちまったわけか――――」

第一層で俺はキリトに対してベータテスターである事をネタに強請ろうとしたが、それはキリト自身が悪のビーターを自称する事で破綻した。

そして、今回の第二層でも俺はネズハを無縁孤立させて、奴に破滅的な大打撃を与えようと考えたのだが、それだと、狩りにネズハからの弁償が出来たとしても、主犯であるオルランド達を逃がしてしまうわけだった。

レイナ「……けど、真のフロアボスのLAボーナスはオズマが取ったことに変わりないわ」

俺「ああ、そー言えばそうだっけな―――」

ボス戦直後の騒動で俺は、トーラス王からドロップしたレアアイテムを確認するのを忘れていた。アイテムストレージを開いて、新規獲得順でアイテムを確認してみると、そこには確かに始めてみる、ゲーム内に一つだけであろう、背中に『兆』と書かれている、灰色の防具アイテムが存在していた。

俺「オブジェクト化するぞ」

レイナ「……剣豪の防衣(けんごうのぼうい)(きざし)……凄い、第二層で手に入る防具にしては破格すぎる性能ね」

レイナの言う通り、この灰色の革製の防具は、第二層で装備するにはあり得ないほどのステータスだった。
だが――――

俺「レベル35以上じゃなくちゃ装備出来ない、条件付きだとさ。俺がこれを着れるのはかなり先になりそうだな……」

俺は苦笑いを浮かべながらそうぼやいた。レベルな35なんて、今のレベルの倍以上だった。なので、今の俺は当分は、今装備している《ダークスカイコート》を使い続ける事になりそうだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧