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戦国異伝供書

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第七話 長可の修行その四

「戦で自ら戦うだけでなく」
「将として采配を執ってな」
「政でも」
「ならばよいな」
「はい、学ばせて頂き」
「修行もな」
「するであります」
 こう答えて実際にだった、長可は学問や茶もはじめた。そして座禅も組む様になったがそれは雪斎の寺で行った。
 その座禅を見てだった、雪斎は長可自身に話した。
「一日一日、座禅を組まれる度にです」
「よくなっているでありますか」
「はい、徐々に猛々しさが抜け」
 そしてというのだ。
「穏やかになっています」
「これまでは鬼とか言われていましたが」
「はい、その鬼がです」
 雪斎は長可に微笑んで話した。
「今はです」
「違っていると」
「少なくとも鬼ではなくなっています」
 そうだというのだ。
「猛々しさ、荒々しさが徐々に薄まり」
「ではこのまま座禅を続ければ」
「さらに穏やかになられましょう、しかし」
「しかしとは」
「勝三殿は戦においては」
「その時はでありますか」
「これまでの猛々しさを出されることが」
 それがと言うのだった。
「よいかと」
「左様ですか」
「はい、ですから」
「それでなのですか」
「貴殿はです」
 まさにと言うのだった。
「戦においては采配を執る時も」
「猛々しくですか」
「そうあるべきかと。しかし平時は」
 その時はというと。
「穏やかにです」
「政もですな」
「励まれるべきです」
「そうなのですな」
「猛々しくなる時もあれば」
「穏やかになる時もですか」
「人は必要と存じます」
 雪斎は長可に穏やかな声で話した。
「ですからここはです」
「座禅を組み穏やかさを得ると共に」
「猛々しさも忘れず」
 そしてというのだ。
「その切り替えも心得て下さればいいかと」
「そうですか」
「戦の場ではこれまで通りに鬼となられ」
「冷静でありながら」
「そして政の時は」
「穏やかにですな」
「そうです、この時も冷静であられるべきですが」
 それでもというのだ。
「さながら動と静です」
「その両方をですな」
「備えられて下さい」
 まさにというのだ。
「そうすれば必ず天下の為にこれまでよりも遥かに働ける様になりましょう」
「わかり申した、ではこれからも」
「禅を組まれて」
「学問と茶もです」
 この二つにも励んでいる、既に長可の暮らしはただ武芸に励み暴れるだけではなくなっているのだ。
「励んでおります」
「それはよいこと。では」
「その二つにも励み」
「精進されていって下さい」
「わかり申した」
「拙僧も実はです」
「聞いております、雪斎殿は今もですな」
 長可は彼に言った。 
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