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戦国異伝供書

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第七話 長可の修行その一

                第七話  長可の修行
 長可は滝川の屋敷に行き彼からどの様にしたら何時でも冷静沈着でいられるのかを聞くことにした。
 それで滝川の屋敷に向かうが彼は己の隣で馬に乗る蘭丸に言った。勿論長可自身も馬に乗っている。
「お主もか」
「はい、それがしが父上に申し出まして」
「供をするのか」
「若し兄上が何かです」
「街のならず者でも見ればか」
「その場合早速です」
 それだけというのだ。
「そこで」
「刀を抜いてか」
「流血沙汰になりかねぬので」
「だからか」
「はい、お供させて頂いてです」
 そうしてというのだ。
「何かあればお止めします」
「それでは供というより目付じゃな」
「とかく兄上は血の気が多過ぎます」
 蘭丸も言うことだった。
「当家では慶次殿に匹敵する武芸の持ち主ですが」
「あの御仁にも負けるつもりはないぞ」
「そのことはいいとしまして」
「血の気の多さがか」
「慶次殿は滅多なことで刀を抜かれません」
 日頃遊んでいてもだ、喧嘩になって相手が刀を抜いても笑って殴り飛ばして倒してしまう。彼は自分が覚悟を決めた時しか刀は抜かず槍も手にしないのだ。
「柴田殿もですな」
「柴田殿は拳骨であろう」
 こう言い返した長可だった。
「そうであろう」
「兄上もよく殴られていますな」
「あの方と平手殿は誰でも怒るわ」
 その者が悪いことをしたならばだ。
「殿にさえそうなのだぞ」
「ははは、左様ですな」
「どちらの方もな」
 このことで定評がある、二人共信長にも諫言や直言を憚らないのだ。
「そうであってな」
「兄上にもですな」
「数えきれぬ位殴られてきているわ」
「今でもですな」
「慶次殿より上ではないか」
「それがしは全くですが」
「それはお主がいい子だからじゃ」
 それでというのだ。
「特にじゃ」
「怒られぬのですか」
「わしなぞそれこそな」
「悪いことをしてですか」
「それでじゃ」
 自分でわかっているのだった。
「怒られるのじゃ」
「ではそれをです」
「慎むべきか」
「また申し上げますが」
「自重か」
「はい」 
 まさにというのだ。
「そうされて下さい、そしてです」
「その為にじゃな」
「滝川殿にもです」
 彼にもというのだ」
「お会いしましょう」
「ではな」
 こうした話をしてだった、長可は蘭丸と共に滝川の屋敷を訪問した。滝川は幸いそこにいた。
 そうしてだ、長可からその話を聞くと滝川は彼にこう言った。
「そうじゃ、お主はじゃ」
「血の気が多いと言われますか」
「あまりにもな。戦でもな」
「血が頭に上ってはなりませぬか」
「むしろ戦の場でこそじゃ」
 そこでこそというのだ。
「頭を冷やしてじゃ」
「戦うべきですか」
「お主は確かに強い」
 滝川もこのことは認めた。 
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