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真田十勇士

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巻ノ百四十九 最後の戦その十一

「本当に満足しているからな」
「だからか」
「ああ、それこそな」
「あんたも曇ったものはないか」
「顔にも出ているだろ」
「成程な、しかしわしはな」 
 由利は再び分銅を何十も一度に出す様な勢いで繰り出しつつ道化に話した。
「もうこれ以上はないまでに満足しているからな」
「今もか」
「このまま闘う、殿と共に」
「本当にいい主に巡り合えたな」
「そう思っているさ」
 道化に応えつつ闘う、そしてだった。
 二人は激しく闘い続けた、その場所で。
 幸村は次第に家康のいる場所に近付いていた、途中出て来る侍や忍達は退けていくが今度はだった。
 茶室の上に音精がいた、音精は妖艶な笑みで幸村に言った。
「真田殿、お茶を飲まれますか」
「その茶を飲みか」
「はい、お下がり下さいませ」
 こう幸村に言うのだった。
「こも度は」
「出来ぬと言えば」
「その時は私が相手をします」
「そうか、では」
「いや、殿ここはです」
 海野がだ、すっと前に出て幸村に話した。
「それがしがです」
「引き受けるというのか」
「はい」
 幸村に笑って答えた。
「そうさせて頂きます」
「そうか、では頼むぞ」
「そうさせて頂きます」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 幸村は他の者達と共に先に向かった、そして海野は茶室の前から茶室の上にいる音精に対して声をかけた。
「茶を飲むか、共に」
「では茶室の中で」
 音精も妖しい笑みで応えた。
「お話をしますか」
「存分にな」
「では」
 二人は一旦姿を消した、そして茶室の中に入るとそこは思ったより広く少しした道場程あった。その茶室の中でだ。
 海野は音精と対峙しそのうえで言った。
「わしはおなごと闘うつもりはなかったが」
「それでもですか」
「この場合は別だ」
「おなごと闘わぬのは武士ですね」
「忍はまた違う」
 忍同士の闘いはというのだ。
「お主の様なくノ一もおるからな」
「それでは」
「これから闘うか」
「そうしましょう」
 こうしてだ、二人で激しい闘いに入った、音精は笛を吹きそこから衝撃波を繰り出し海野は水を何処からともなく出してだ。
 攻防に入った、だがここで。
 その攻防の中水の巨大な一撃をかわしてだ、そうして言った。
「今の攻撃は並の者なら」
「大抵はか」
「かわせなかったわよ」
「しかしお主はかわせた」
「私だからかわせたのよ」
 音精は素早く笛を吹き曲がる衝撃波を幾つも出してそれぞれの複雑な軌跡で海野を攻めつつそのうえで言った。
「十二神将の私だからこそ」
「伊賀者の中でも腕利きの」
「そうよ」
 まさにというのだ。
「伊達に十二神将になっていないわ」
「服部殿に任じられてだな」
「そうよ、その腕にかけてね」
「わしの攻撃もかわしてか」
「貴殿を倒すわ」
「そうか、しかしな」
 海野は音精の衝撃波を己の周りに次から次に水の壁を出してそれで防ぎつつそうして彼女に対して返した。 
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