| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

FILE16 強化詐欺の実態!

オズマとレイナは、ウインドワプスとの狩りの最中に、ダガー使いの少年プレイヤーのユッチを助ける事となった。
彼を主街区に送り届けた後、レストランで食事をし、平穏な時間を過ごした直後の事であった…… by立木ナレ



そいつは、俺達がレストランを出て、すぐそばの路地裏でメソメソと泣いていた。デスゲーム化したソードアート・オンラインでは、ログアウトが出来ない事や、ゲーム内でHPが0になったら死ぬとか言う、過酷な状況下に悲観して、その辺で泣き崩れている奴を何度も見たわけだが……俺は今までそんなのに一々声を掛けて慰めたり、鼓舞を掛けたりとかした事など一度も無かった。

だが――そいつは、ほんの少し前に、俺とレイナがモンスター達の群れに襲われて窮地に陥っていた所を助けた、ダガー使いのユッチだった。

このSAOでは、感情表現が結構大袈裟に表現されるらしく、ユッチは目から大粒の涙を零し続けるだけではなく、鼻水も目に見えて分かるほど流し、その姿はまるで大切にしていた玩具を亡くしたりでもした子供のような姿だった。

俺「お前……せっかく新しいレア武器を作りに行ってきて、なんで一時間もしない内に号泣なんだよ?」

ユッチ「え……あ、お、オズマさぁん!!」

俺が声を掛けると、ユッチは大袈裟に泣いたまま、俺に気が付き、俺の名前を呼んで泣き叫ぶ。これじゃ、まるで俺がこいつを虐めたように見えちまう……

アルゴ「いーけないんだ、いけないんだ~、オズ坊が年下の子を虐めてるんだナ~」

俺「何時から、そこで高みの見物してたんだよ。ガチャモンとモック並みに神出鬼没なんだよアンタは……」

まるで、俺の懸念を読み取ったかのようなタイミングで、情報屋の鼠のアルゴが姿を現し、そして俺の懸念通り、俺が虐めたなどと、ニタニタした顔で指を指して言いだしていた。

レイナ「……私の索敵スキルでも、見つけられなかった」

アルゴ「にゃはは、オレッちは情報屋だからナ。危険な場所でも安全に行動する為の隠密行動はお手の物なのサ」

自慢げにそう公言するアルゴだったが、今はこいつに用はない、取りあえず俺は泣きじゃくるユッチを一旦レストランの中に連れて行き、一通りの事情を聞く事にした。

どう言うわけか、話の席にはアルゴも勝手に加わるが……取りあえずユッチから一通りの話を聞いた俺は、強烈な不信感を感じる事になった。




俺「ストロングダガーの製造には成功したけど、そいつをプレイヤーの鍛冶師に依頼して強化したら、強化失敗のペナルティで消滅しただって?」

ユッチ「はい……ストロングダガーが出来上がった時は、僕も凄い……嬉しくって嬉しくって……!これで、僕も最前線で戦えると思ったのに!こんなのあんまりっすよぉ―――!!」

自分で思い出しているうちに、また悲しみにが込み上げてきたのはユッチは顔を上げて再び泣きじゃくり始める。
これだと話がなかなか進まず、多少の苛立ちを感じつつも俺は気長にユッチが説明し終えるのを待つのだった。

ユッチの説明によると、ストロングダガーは+4までは順調に強化に成功し、ユッチは残りの強化素材で+5への強化も依頼したのだったが、その5度目の強化は、成功率80%の状態でありながら、運悪く失敗したばかりか、強化失敗時に発生したペナルティが俺のウエイトソードの時と同じく消失ペナルティが発生してしまい、+4まで強化させたストロングダガーは完全に消えてなくなってしまったのだと言う。

レイナ「……昨日のオズマのウエイトソードの時とほとんど同じね」

俺「そうだユッチ、お前が強化を依頼したNPCの鍛冶屋ってどんな奴だった?」

ユッチ「ぐす……えっとぉ、僕よりは大きいっすけど……男にしては割と小柄で、年齢は、お、オズマさんとあんまり変わらないくらいだったと思うっす……」

俺「またアイツかよ……」

俺の脳裏に浮かんだのは、昨日の俺のウエイトソードの強化を失敗して、ウエイトソードを消してしまい、そして今日の真昼間にはリュフィオールのアニールブレードの強化に4回連続で失敗し、+4だったアニールブレードを+0のエンド品にしやがったあの、鍛冶屋の姿だった!

アルゴ「ん?オズ坊はなんか心当たりがあるみたいだナ~」

俺「あるもなにも、そのプレイヤー鍛冶屋が強化失敗で、依頼人の武器を駄目にしちまったのは、俺が知る限りでこれで三度目なんだよ。しかも昨日と今日の出来事でな―――」

俺は自分の身に起きたウエイトソードの消失の一件と、ユッチがほんの少し前に起きた、ストロングダガーの消失。
この二つのケースを、第一層の迷宮区で経験した事のある、とあるモンスターの手口と微妙な近親感を感じ、まさか―――と思い。

俺「ユッチ、お前がウエイトソードを鍛冶屋に託したのって、どれくらい前の話だ?」

ユッチ「え、えっとぉ……」

ユッチは正確な時間は覚えてないかもしれないが、これはおおよその時間でもなんとかなるかもしれない。
ユッチに時計の時刻をチェックさせて、俺はユッチからどれくらい時間が経っているのかを聞き出す。

ユッチ「まだ……一時間も経ってないと思うっす」

俺「なら、まだ間に合うかもしれねーな」

ユッチ「え……ま、間に合うって?」

レイナ「……どういう事?」

俺の言葉の意味を当然だが、すぐには理解できずにユッチは呆けた表情で困惑し、レイナも無表情だが、俺の言っている言葉の意味を計りかねてるのは明らかだ。

俺「すぐに証明してやるから、取りあえずユッチ、俺の言う通りに行動しろ!まずはウインドウを出して可視モードだ!」

ユッチ「え……えっとぉ……」

俺「急げ!」

ユッチ「は、はいっす!」

多少威圧的な口調でそう言うと、ユッチはビクッと身体を震わせながらも、俺の言う通りの動作を続けていく。

俺「最期は全アイテムのオブジェクト化だ!《コンプリートリィ・アイテム・オブジェクタイズ》とか言うのがあるだろ?それを押すんだよ!」

ユッチ「こ、これっすね、分かりましたっす!」

アルゴ「お、オズ坊?それ押したら、この辺り一帯が結構ヤバい事に―――」

珍しく狼狽えたような様子のアルゴだったが、そのアルゴの懸念は直ぐに現実のものとなった。

直後――

ガランゴロン、ドスンガチャン、ボットボト、そんなサウンド音を鳴らしながら、ユッチが持っているアイテムが次々と全て、レストランの床一帯に積み重なっていく。

「な、なんだ!?アイツら一体何おっぱじめてんだよ!?」

「アイテムストレージの全アイテムをオブジェクト化しやがったんだ!」

周辺のプレイヤー達の驚きの声が漏れるが、それに構っている場合ではない。早速オブジェクト化したアイテムの山を俺達は探し回らなくてはならない。

俺は両手をパン、パンと音を鳴らしながら叩いてから、レイナ、アルゴ、ユッチの三人に対してまとめて言う。

俺「おらおら、ボーっとしてんなお前ら!この山の中から探せ探せ!」

レイナ「……何を探せばいいのか分からないけど、分かったわ」

ユッチが訳の分からぬと言った様子のまま、ボーっとしているのに対して、レイナの行動は迅速で早いもんだった。―――もしかしたら、レイナは既に俺の意図に気が付いているんじゃないかと思いたくなるくらいだ。

アルゴ「やれやれ~、オズ坊は人使いが荒いんだナ~……おねーさんをここまで扱き使うからには、何か面白いのを見せてくれなくちゃ割にあわないナ」

俺「お望み通り、面白いのを見せてやる。だから探せ!」

レイナとアルゴが俺の言われた通り、オブジェクト化されたアイテムの山の中を探り探り、一つ一つ確認し始める中、当のユッチ自身は何が何だかわからぬと言った様子で呆けた表情を浮かべたままだった。

俺「さっさと……探せぇ――!!」

ユッチ「は、はいぃ!!」

一秒ほどの為の後に、俺がユッチの耳元で探せと怒鳴ると、ユッチもようやく、硬直していた身体を動かして、アイテムの山を一つ一つ探り始めるのだった。

そして、ユッチの持っていたアイテム、素材アイテム、食材アイテム、その他の雑貨品などを退けながら、アイテムの山を半分以上探したところでだった―――

アルゴ「んん?な、なぁ……ユー坊」

ユッチ「え……それって僕の事――――って、ああっ!そ、それ……それはぁ―――!!」

アルゴがアイテムの山から見つけた、俺が初めて見る、赤い柄のダガーナイフを見たユッチが、目から再び大粒の涙を零しながら、消して広くないレストランで大声を上げる。

ユッチ「ストロングダガーっす!僕が鍛冶屋に依頼したストロングダガーっすよ!プロパティは+4だから間違いないっす!き、消えたと思ってたのに――――ま、まさか、神様の奇跡っすか!?」

俺「んなわけあるか」



急展開!!強化失敗によって消失したと思われていたユッチのストロングダガーが全アイテムオブジェクト化によって、本人の元に復活!
それをユッチは神の奇跡と騒ぎ立てて号泣!―――そして、レイナとアルゴの興味が向くのは当然、なぜ、強化失敗によって消失したストロングダガーが戻ってきたかについてになる! by立木ナレ


※ ※ ※


その後、俺はどうしてこんな事が起きたのかについて、三人に説明する事にした。特に情報屋のアルゴの好奇心を大いに煽ったようで、ニヤニヤとした表情で『高く買うぜ、ダンナ』とか言いながら、肩を叩いてきた。

アルゴ「なるほどナ。これは《クイックチェンジ》を利用したアイテムのすり替えだったんだナ」

俺の説明を一通り聞き終えたアルゴは、多少は感心しあのか、腕を組んで目を細めて、首を縦に何度も降っていた。

俺「ああ、それで他人のアイテムを自分のストレージに入れると、一時的に所有権がそいつの物になるのは知ってるだろ?だが、完全に所有権を得るには、自分のアイテムストレージに入れた状態を一時間以上維持しなくちゃならないんだ」

レイナ「……だから、オズマはユッチのストロングダガーがすり替えられてから一時間が経過していないのに期待して、全アイテムオブジェクト化をやらせたのね。―――そうすれば、所有権を一時的に奪われているストロングダガーも本来の持ち主の目の前でオブジェクト化されるはずだから」

俺はアルゴの攻略本を取り出して、付け加えて説明をする。

俺「第一層の真ん中あたりに湧いて出てくる《スワンプコボルド・トラッパー》ってのがいただろ?あれがSAOで最初の武器落とし(ディスアーム)攻撃をしてくる奴だったわけだが―――お前のこの攻略本にも書いてあったよな?すぐに拾おうとするなって?」

アルゴ「ああ~、慌てて拾おうとすると、そんな事してる間に次の攻撃も的になっちまうから、注意書きしておいたんだけど……結局はあそこで結構被害者が出ちまったらしいナ」

自分の作った攻略本の情報をもってしても、多数の被害を防げなかったことは、アルゴなりに悔やんでいるのか、普段はあっけらかんとした表情が少しだけ曇ったように感じた。

俺「取りあえず、あのスワンプコボルドにドロップさせられた武器を一時間以上放置しても、所有権を失うのと同じ要領で、あの鍛冶屋の手口にピンと来たんだ」

アルゴ「だが、オズ坊さ。ダガーが戻ってきたロジックは大体わかったけどサ。それでだいたい半分ってところなんじゃないのか?」

そのアルゴの疑問には俺も軽く頷いて同意した。

レイナ「……オズマのウエイトソードもそうだったけど、鍛冶屋に渡した武器が消失する瞬間は確かに依頼人が目の前で見てるはず。……あの時に壊れた剣、そしてユッチの目の前で消えたストロングダガーの説明がまだついてない」

レイナの指摘は、当然の疑問だが、それに関しては現時点で俺が何を考えたところで正解に辿り着けそうにはない。

俺「そっちに関してはまだ確かに分からねーが。今の時点で、ハッキリと言えるのは―――俺のウエイトソード、ユッチのストロングダガーは鍛冶屋に渡してから、アンビル状態で消滅する段階で、同種の別アイテムにすり替えられたって事くらいだな」

そして、俺はあの鍛冶屋に対して、今になって無性に腹立たしくなり、自分でも分かる位に怒りの帯びたような声で言った。

俺「あの鍛冶屋は……鍛冶屋の皮を被った詐欺師野郎だったってわけさ!」

俺が履き捨てるようにそう言い放つと、それまで黙って俺の説明を聞いているだけだったユッチが、目に見えて分かるように顔を真っ赤にして怒り心頭と言わんばかりの表情で立ち上がった。

ユッチ「あ、あの詐欺師野郎!強化に失敗して武器が消えた時は、本気で申し訳なさそうに頭下げまくって平謝りしまくって!強化素材アイテムの代金の返金だとか……詫びに代わりの武器だとか、気前の良いこと言ってやがったのに……腹の奥底では『騙されやがってざまーみろ』とか思ってやがったのかよ!!」

レイナ「……最低でもこの詐欺で三人は騙されてる。きっとその詐欺で得られるお金(コル)は莫大な利益になってるはずね」

ユッチ「許せねぇ……!許せねぇ!!」

俺「ばっ!どこ行くんだお前っ!」

俺の目の前で走り出そうとしたユッチを俺は間一髪でその左腕を掴んで止めた。ユッチは目から涙を零して、怒りと悔しさが籠った表情をこちらに向けながら叫び散らす。

ユッチ「決まってるじゃないっすか!あの詐欺師野郎をとっちめてやるんっすよ!あんな事して、お咎めなしなんて冗談じゃないっすよ!」

やっぱり、そんな事を考えてやがったか……頭にくる気持は当然、俺も分かるが、今ユッチが怒りに身を任せてやろうとしている事は、詐欺師にとってむしろまだマシだと言える行動だ。

俺「そんな事したところで、せいぜい騙されたお前一人に対して、何万コルかの口止め料を取る位でお終いだろうな。その程度の額で済むんなら、むしろ詐欺師にとっちゃ安いもんだろ。お前が口止め料を受け取って行ったあとで奴は腹の底でまた『馬鹿な奴』とかほくそ笑むに決まってるんだ」

レイナ「……口止め料以上の金額のコルなんて、詐欺行為で幾らでも取り戻せるはず」

レイナが相変わらず、感情を感じさせない表情と静かな声でそう補足する。

ユッチ「そ、それじゃ……一体どうすりゃいいんっすかぁ~……?」

ユッチが泣きながら項垂れてくるが、ここで暴走されるよりは遥かにマシだ、取りあえず俺の話を聞こうとしているユッチに、これから先、俺が考えている事を手短に説明してやる事にしよう。

俺「そもそもあんな詐欺は何時までも上手く続きはしない、被害者は今の所第二層で狩りをしてる、最前線のプレイヤーか、それに準ずる連中だ。そっちの方が効率よく稼げるんだから、それは当然だろうが、そんな事が続いてれば、最善全のプレイヤー達を中心に、何れ噂が広まるぞ、プレイヤーの詐欺師に強化を依頼したら、武器が消えただの、連続失敗でエンド品になっちまっただのとな――――それで、その時に詐欺師が吊し上げになって、全てを白状した時、奴が一部のプレイヤーに口止め料を払ってた事まで暴露しちまったら、口止め料を貰ったプレイヤーも何かしらの制裁を受けるに決まってるだろ」


そう、オズマが懸念していたのは、詐欺師から口止め料を強請り取る事によって、後々その事がばれた際に被る風評被害! by立木ナレ


俺「そもそも、口止め料で済ませたりとか……その程度の軽いお仕置きで済ませてたら、奴らの様な輩は限界までやりやがる……人様が苦労して得た利益を難なく横から掠めとる悪辣なやり方をな!」


オズマの怒りは、現実世界での山谷の生活を送る中で、無知であるがゆえに、悪徳な企業に賃金をピンハネされている事に気が付かぬ日雇い労働者達や、少ない賃金の中から苦労して溜めた預金をヤクザの詐欺師にあっさりと根こそぎ取られたと泣き喚く老人たちなどと言った、無知ゆえに搾取される者達を見てきたが故の怒り!搾取された経験があるが故の激しい怒りである! by立木ナレ



俺「あのクソ詐欺師に味合わせてやるんだ……最大限の報いを……破滅的な大打撃をな!」

気が付けば、俺達の側からアルゴがいなくなっていたが、詐欺師に対する怒りに燃えていた俺は、そんな事に気を回す事は無かったのだった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧