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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE14 SAO初の鍛冶屋

第一層フロアボス『イルファング・ザ・コボルドロード』が討伐され、第二層が解放されてから3日後の、2022年12月7日。
ここは第二層の主街区のウルバス付近のフィールドでの出来事であった! by立木ナレ



レイナ「……オズマ、片手直剣の武器をドロップしたわ」

俺「どんな武器だ?」

レイナ「名称は『ウエイトソード』よ」

俺とレイナはウルバスの比較的近い狩場で、第二層のモンスター達を狩り続けていた時だった。レイナが撃破した、蝗型のモンスターが俺が使用しているカテゴリーの武器である片手直剣をドロップした。

さっそく、見たことの無いその武器をヘルプ機能で詳細を見てみた結果、その片手剣は武器としての性能は俺が今持っている『フェザーソード+6』に比べて大幅に見劣りしており、しかも強化可能可能回数は4回までで、これでは素材アイテムを消費して強化しても結局のところ、今まで通りフェザーソードを使い続けていた方がよっぽど戦力になるわけだが、この武器の特徴は武器としての強さそのものではなかった。

俺「この武器でソードスキルを使ってると、熟練度の上昇値が従来の1.5倍になるのか……これはこれで便利だな」

レイナ「……まだ、第二層周辺のモンスターなら、この『ウエイトソード』でも、ある程度強化すれば問題なく今までの様に倒せると思う」

レイナの言う通り、第一層で安全マージン以上にレベルを上げて、既に俺のレベルは13になっており、ハッキリ言って第二層の雑魚Mob相手には過剰な位の高レベルと言えるくらいなので、武器が今よりも弱い剣になったところで、それで苦戦するような事は殆ど考えられないだろう。

流石にフィールドボスやフロアボス級のモンスターとやり合う場合は、フェザーソード+6で戦わざるを得ないだろうが。


そして、オズマとレイナは早速、手に入ればかりのウエイトソードを強化するべく、ウルバスに戻り、鍛冶屋のNPCに強化を依頼しようと訪ねようとした時だった。
オズマとレイナがNPC鍛冶屋のすぐ近くで見つけたのは、《ベンターズ・カーペット》と言う、街中の路上で広げる事で、そこを簡易的なプレイヤーショップにする事が出来る、それなりに値段の張る、駆け出し商人系プレイヤーには必須アイテムを広げている、一人の小柄なプレイヤーであった。

俺「あれって、プレイヤーの鍛冶屋か?」

レイナ「……看板にもそう書いてある」

第一層では鍛冶スキルを取っているプレイヤーは最前線にも、はじまりの街でも、いなかったようだが、ここにきてようやく鍛冶スキルを習得するプレイヤーが現れたようだった。

一般的に、大抵のMMOでは、NPCの鍛冶屋に比べて、プレイヤーの鍛冶屋の方が強化の成功率は高いので、値段にもよりけりだが、プレイヤーの鍛冶屋に頼めるのだとしたら、その場合はプレイヤーの鍛冶屋に頼んだ方が良いのがセオリーだ。

俺は直ぐに早速プレイヤーの鍛冶屋に頼む事を決めて、オブジェクト化した状態のウエイトソードを鍛冶屋のプレイヤーに差し出した。

俺「強化を頼みたいだけど」

鍛冶屋「では、プロパティを拝見させて頂きます」

俺のウエイトソードを受け取った鍛冶屋は小柄で、年齢も俺とだいたい同年代と思わしきプレイヤーだった。

鍛冶屋「ウエイトソード……試行可能回数は4回ですか。ソードスキルの熟練度の上昇を早めてくれる効果持ちの武器なんですね」

俺「ああ、だけど、このまま使ってると流石に心許ないって言うか……今よりも、雑魚モンスターを倒すにも時間が掛かったりして効率が落ちそうだからな、せめて今よりもプロパティを上げたくてな」

そして、俺は武器強化の内訳を鍛冶屋に説明して、強化に必要な料金も事前に聞いた上で了承した。強化成功率は、今ある素材で85%なので、失敗する可能性はたまにある程度だ。

鍛冶屋「それでは、強化を始めます」

鍛冶屋は左手に握られた剣を、カーペットに並ぶ商品の数センチ上にぶら下げる。そして、鍛冶屋のハンマーがウエイトソードをカァン!カァン!と叩くたびに金属音が広場に響き渡る。

そして―――数秒後には……

鍛冶屋「成功しました。ウエイトソードは+1に強化されましたよ」

俺「良いぞ、その調子でどんどん強化してくれ。次は+2だ、強化素材はちゃんとこっちで用意してあるからな」

まずは+1への強化は当たり前のように成功した。+2、+3と強化の段階が高まるにつれて、強化成功率を高めるのに必要な素材と種類は増えてくるわけだが、第2層が解放されてからの3日間の狩りやクエストで強化素材はかなり溜まっているので、+4くらいまでなら充分足りるだろう。


オズマの考え通り、ウエイトソードの強化は順調に進んだ。ウエイトソードは+1から+2へ、更に+3へと強化され、後はプラス4への強化を残すのみ!
まさに圧倒的絶好調!―――当然、オズマはプラス4への強化も鍛冶屋へと依頼をする! by立木ナレ


鍛冶屋「では、ウエイトソードの最後の強化を実行しますね」

俺「ああ、成功率は相変わらず85%だからな。よっぽど運が悪くない限りは+4になるはずだ」

やはりNPCの鍛冶屋に比べて、強化の成功率は高く。難なく、一度も失敗もする事なく、ウエイトソードは+3までの強化が進んだ。

俺は再び、ウエイトソードの強化を鍛冶屋に頼み、鍛冶屋は再びハンマーを振り上げると、カァン!カァン!と、聞き慣れた金属音を響かせながら、ウエイトソードを叩く。

俺「ウエイトソードが+4になったら、これで周辺のモンスター相手に狩りして、ソードスキルの熟練度を効率よくアップさせてやるか」

レイナ「……オズマが早く新しいソードスキルを覚えれば、私も戦いで助かるわ」

俺「ああ、お前の為にもな……って、そんな冗談はお前には通用しないんだった――――」

気障なセリフを言ってみて、レイナが全く表情を変えないのを見て、俺が苦々しい顔でそう言った矢先だった。
俺とレイナ、そして鍛冶屋の目の前で、俺が強化を依頼したウエイトソードは―――済んだ金属音を放った瞬間、切っ先から柄に至るまでが粉々に砕け散った。

俺「…………」

レイナ「…………」

鍛冶屋「…………」

数秒間、当事者である俺達は突如として起きた、予期せぬ強化中の武器の消滅と言う事態に、何の反応も示せずにいた。
これは、なんだ?システムエラーかなにかか?だったら運営にマスターコールでもすればいいのか――――バカな、そんな事が出来るわけがないんだ。
このデスゲームと化し、外部との一切の連絡が取れなくなったソードアート・オンラインにはな。

鍛冶屋「す……すみません!すみません!手数料は全額お返ししますので……本当にすみません……!」

鍛冶屋はその場で額に頭を擦りつけて、謝罪を連発する。

俺「手数料の返還は勿論だがな、こいつはいったいどう言う事だ?武器の強化に失敗したってのは、だいたい分かるがな、なんでそれで武器が消えるんだ?」

俺が今でも、どうにか覚えている、ベータ版のSAOの公式サイトにあったプレイマニュアルには、強化失敗によるペナルティで武器が消えるなんてのは無かったはずだ。

確か、強化失敗のペナルティは……

レイナ「……強化失敗のペナルティは《素材ロスト》《プロパティチェンジ》《プロパティ減少》その三つだけのはずよ」

俺が強化に失敗した場合のペナルティを思い出そうとしていたら、そこは俺よりもゲームシステムに熟知しているレイナがスムーズに説明をしてくれた。

すると鍛冶屋は頭をペコペコと下げて、視線を下に固定したまま細い声で言った。

鍛冶屋「お、恐らくですけど……正式サービス開始後か……ソードアート・オンラインがデスゲーム化した直後に、第四のペナルティが追加されたのかもしれません……確率はとても低いとは思いますけど……」

俺「そんな、俺等にとって不都合な事が……」

レイナ「……けど、それを否定できる材料も無いわ」

レイナの言う事ももっともだったので、俺もそれ以上、鍛冶屋に何かを問い詰めても無駄だと判断した。
そもそもこいつに何か言ったところで、目の前で消滅したウエイトソードが戻ってくるわけでもないからな。

鍛冶屋「あの……お詫びと言っては何ですが、ウエイトソードは持ち合わせていませんので交換は出来ないんですが……。せめて、第一層のドロップ品にはなりますけど、《ブロードソード》でしたら代わりにどうでしょうか?」

鍛冶屋が言っている、ブロードソードは第一層の迷宮区のモンスターがドロップする事がある、片手直剣だった。
現時点ではドロップ限定の武器なので、店売りしている武器よりかは強力なのは確かだが、それでも俺が装備している製造武器のフェザーソードや、キリトが持っている、クエスト限定武器のアニールブレードに比べれば今一つ見劣りする性能なのは否定できない。

俺「そうだな、それじゃ、手数料の返金と、ブロードソードを受け取る事で、この話はこれで手打ちにするか」

レイナ「……良いの、オズマ?」

俺「仕方ねーだろ。武器失敗のリスクってのは、代行する鍛冶屋じゃなくて、依頼人が負うもんだからな。それに、この店の看板には、ご丁寧に、今のスキル値での成功率がちゃんと書かれてるんだからな」

失敗する確率は確かに低かったとはいえ、その低確率が起こってしまった場合は、その確率で依頼した側が妥協した事による事故として認めるしかない。
確かに、損した気分になるのは仕方ないがな。

レイナ「……オズマがそう言うのなら、分かったわ」

鍛冶屋「……すみません……」

謝罪し続ける鍛冶屋に対して俺は「もう、謝るなって」と言ってから、ブロードソードと手数料を受け取り、店を後にしたのだった。



が、しかし!オズマのウエイトソード消失の一件の翌日の事であった。――同じく、第二層主街区のウルバスの中心部で、それは起こっていたのだった! by立木ナレ



「ふ……ふざっ、ふざけんなよ!!」

俺「誰がふざけてるってぇ~?」

レイナ「……別に、オズマに向けられた言葉じゃない」

俺「知ってるって。ただの冗談だよ……」

レイナにこういう冗談は余り通用しないらしく、何度か同じ様な事をして見たが、尽く真顔で諭されるばかりだった。
こうなると、やっているこっちが恥ずかしくなるだけだった。

「も、戻せ!!元に戻せよ!プラス4だったんだぞ……そ、そこまで戻せよっ!!」

再び叫び声、大方、プレイヤー同士のトラブルだろう。

俺「ま、街の中なら、どんだけ大喧嘩になっても、それで殺し合いにはならないから良いか」

レイナ「……犯罪防止コード圏内だから、絶対にHPは減らないわ」

俺「つーか、さっきから喚き散らしてるあの三本ツノヘルメットのプレイヤーって、ボス戦では見なかったが、第一層のトールバーナで何度か見てるから、それなりに高レベルなプレイヤーだよな?」

レイナ「……確か、仲間達にリュフィオールって呼ばれてた気がする」

俺「よく覚えてたな、そんな他所のパーティーの何気ない会話まで」

レイナ「…………」

そして、レイナ曰く、そのリュフィオールは、剣の切っ先を足元の石畳に叩きつけながら叫び続ける。

リュフィオール「なんだよ4連続で大失敗って!プラスゼロになるとか有り得ねーだろ、これならNPCにやらせたほうがマシじゃねーか!責任取れよクソ鍛冶屋!」

俺「普通、プレイヤーの鍛冶屋の武器強化の成功率は、NPCの鍛冶屋よりかは高いはずだけど、流石に4連続失敗は怒鳴りたくもなるか……」

気持は俺にも分かる、俺も初めてのロト6を試しに一口買って、あっさりとはずした時、納得がいかぬままに更にもう一口、更にもう一口と、当たるまで買い続けた結果、最終的に5等の1000円を当てるまで買い続けて、気が付けば3000円以上を注ぎ込んでいたのは、確かあれは小学校を卒業して学校に行かなくなったばかりの頃だったかな。

レイナ「……まるで、実体験があるみたいな言い方ね」

俺「人の心を読めたとしても、黙って胸の底にしまってくれ」

レイナ「……それと、あの鍛冶屋は、昨日オズマが武器強化を依頼して、大失敗した、あの鍛冶屋みたいよ」

俺「え……アイツか!?」

その割と良心的な鍛冶屋は小柄な身体で、ひたすら頭を床に下げ続けて謝り倒していた。その姿をよく見てみると、確かにそいつは昨日、俺のウエイトソードの強化に+3までは成功したのはよかったが、+4にする際に失敗して、消滅ペナルティを引き起こしてしまった鍛冶屋だった。

俺「アイツ……また大ポカしちまったのかよ。しかも今度は4回連続でプロパティ減少のペナルティとはな……本当に店の看板に書かれてた通りの成功率なのか、もしくは―――よっぽどなんか悪い貧乏神にでも憑りつかれてるんだろうな」

レイナ「アニールブレードの強化試行上限数は8回だから、+4のアニールブレードの強化に4回連続失敗して、+0になった時点で、もう強化する事は出来ない」

無論、これも予期せぬ不運によるトラブルなので、鍛冶屋に責任を押し付けるのはお門違いになるわけだが、こうも理不尽なまでの失敗が起これば、腹が立つのも無理はないだろ。

そして、怒鳴り散らしていたリュフィオールの声が途切れた。見てみれば、奴の仲間二人が駆けつけて、どうにか宥めたようだった。

「ほら、大丈夫だってリュフィオール。また今日からアニブレのクエ手伝ってやるから」

「一週間かんばりゃ取れるんだからさ、今度こそ+8にしようぜ」

なんとも、良心的な仲間達だ。そんな良心的な仲間達の説得で、ようやくリュフィオールも落ち着きを取り戻したようで、肩を落としつつも広場から去ろうとした時だった。

鍛冶屋「あの……、ほんとに、すいませんでした。次は、ほんとに、ほんとに頑張りますんで……あ、もう、ウチに依頼するのはお嫌かもですけど……」

足を止めたリュフィオールは、鍛冶屋を見ると、力の無い声で言った。

リュフィオール「…………アンタのせいじゃねーよ。……色々いまくって、悪かったな」

鍛冶屋「いえ……それも、僕の仕事の内ですから」

そして、鍛冶屋は一歩踏み出して再び頭を深々と下げて言った。

鍛冶屋「あの、こんなことじゃお詫びにはならないと思うんですが……その、ウチの不手際で+0エンドしちゃったアニールブレード、もしよかったらですけど、八千コルで買い取らせてもらえないかと……」

ざわ……と周囲の野次馬がどよめいた。

俺「アイツ、相変わらず失敗した場合の補償に関しちゃ、気前が良いんだな。アニールブレードって血一度も強化してない状態で相場は16000コルとかだろ?」

レイナ「……8000コルは相場の半分だけど、+0のエンド品なら、相場はせいぜい4000以下だから、8000での買取は破格の申し出」

そして、三人はしばらく呆然していたが、やがて顔を合わせて同時に頷いた。

そして一連の騒動が片付くと、野次馬たちの姿が消えていき、俺達もそれ以上その場にいる理由も無いので、一度宿屋で食事をしに行くのだった。


だが、オズマ達はまだ気が付いていなかった―――この強化失敗の裏に隠された、許し難き実態を!! by立木ナレ 
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