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繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ

作者:エギナ
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06.そうだ、刑務所に逝こう。
  第7回

 聖月と一鶴が、琴葉の後を追い、襲撃の様子を見に行ったときには、既に全ての看守が血を流して死んでいた。軍の構成員の圧倒的な力を前に、ただの人間が勝てるわけが無い。

「ウソ………どうして、たった一人に…………」口元を押さえながら、聖月は小さく震える。一鶴も、ショックで声が出ない。自分が確認しに来たときは、未だ誰も死んでいなかったからだ。

「分かった? 此れが私達の問題。君達の問題な訳ないでしょ?」琴葉は冷たい視線で聖月と一鶴を見る。「此れでも、君は私達の問題に手を出したい?」

 静寂。この場に駆け付けた看守は今、全員死んだ。

「…………どれだけ危険でも、この刑務所を守るのも私達、看守の仕事よ。私は絶対に逃げない」琴葉を見て、聖月は力強く言い切る。一鶴もその後ろで、琴葉に強い眼差しを向ける。
「其処まで言うなら、もう後に退く事は出来ないよ?」琴葉は確認として、もう一度問い掛ける。その間にも、軍の構成員はジリジリと近寄ってくる。

「何があっても、私達は逃げない!!」

 聖月の言葉を聞き、琴葉はニヤリと口の端を持ち上げる。そして、軍の構成員の方を向き、高笑いをする。「じゃあ、絶対に守ってあげるよ! 逃げたら如何なるか、知らないからね!!」

 琴葉は息を大きく吸い、唱える。

「【事実改変】! 此の看守達は死んでいない」
 死んだはずの看守達が躰をゆっくりと起こしていく。何時の間にか、コンクリートを赤く染めていた血も、全て無くなっている

「さぁ、死にたい奴は掛かって来な!! 先ずは重力で打っ殺してやる!! 【重力操作】!!」
 軍の構成員の内、前衛の構成員が浮き、そして直ぐに地面に叩き付けられる。そして、地面に放射線状の皹を作る。辺りに血が飛び散り、一帯が紅く染まる。

「次は影に切り裂かれたい奴!!」
 琴葉が腕を横に素早く振ると、琴葉の影から一筋の黒い帯のような物が生成され、構成員の躰を切り裂く。構成員の上半身が揃って地面に落ち、断面から出てきた血が血溜まりを作る。

「さぁさぁ、どんどん行くよ! 次は光で焼き殺されたい奴!!」
 琴葉の手に、途轍もない光を放つ光球が生成され、其処から細い光が出る。それは構成員の躰を貫通し、海の方へ消えていく。躰の至る所に穴が空いた構成員達は、そのまま後ろに倒れる。

「次、空間と共に死にたい奴!! 【空間操作】!!」
 構成員が、琴葉が創り出した黒獣のような生き物の中に呑み込まれる。琴葉が手を握ると、その黒獣は姿を消す。そして、構成員の存在はこの世から消える。

「そろそろ最後にしようじゃないか。残った奴、覚悟しろ。【消滅】」
 残った構成員の周りに、赤黒い球体が生成され、そして中心へ向けて集束する。球体があった場所には、地面も海水さえも残っていなかった。

「………さぁて、夏だからかき氷でも食べようかなぁ! あ、葉月のかき氷にデスソースかけよ。フランさんのかき氷にはチョコレートでもかけようかな」
 大きく伸びをして、刑務所の中へ入る琴葉。


 取り残された聖月と一鶴、そして蘇生された看守達が刑務所内に入ったのは、駆け付けた看守長に心配されたときだった。


 ◇ ◆ ◇


「かき氷が美味し過ぎる!!」目を輝かせ、かき氷を口の中に入れていく琴葉。「此れから任務終わりには毎回かき氷食べるかなぁ………ってか、百倍の多さのかき氷作ってみたい!!」
「子供か!!」其処に突っ込む葉月。「って、誰だ俺のかき氷にデスソースかけやがった奴!!」
「君はデスソースがかかっていたのかい!?」フランが反応する。「私はチョコレートだったのだけど!?」
「あー、作ったのは全部姐さんですからねー」カル○ス味のかき氷を食べながら、紗耶香は言う。「かき氷でロシアンルーレットやろうと思ったら、真逆姐さんはここまで本気を出してくるとは……」
「……見た目は全て白いのにな」凛が、自分が持っているかき氷を見ながら言う。そう、このかき氷、かかっているものは全て白。デスソースも、チョコレートもだ。見た目も全て同じ。「普通に考えて有り得ない」

「と言う事で、『かき氷十秒クッキング』!!」
「は?」
「①先ずは海水を用意します!」
「水じゃないの!?」
「②海水を別空間に送り、塩だけを向こうに置いてきます!!」
「出来るか!!」
「③凍らせます!!!」
「一瞬で凍る訳……あったわ」
「④そして出来た氷を木端微塵にします!!!!」
「え」
「⑤皿に突っ込んでシロップをかけて完成です!!!!! 如何ですか? 簡単でしょう!?」
「簡単な訳ねぇだろ」

「まぁ、今回は新味だからさ、食べてみてよ」琴葉が十秒弱で作ったかき氷を、目を点にして驚く一鶴に渡す。それを、ぎこちない動作で受け取り、一口食べる。「如何、如何? 新しい、苺牛乳味のかき氷は?」
「…………おいしいッス」

「他にも、苺、檸檬、ブルーハワイにマンゴー、○ーラとかカ○ピス、うどん、蕎麦、醤油ラーメン、塩ラーメン、豚骨ラーメン、担々麺………」
 琴葉が其処まで言ったところで、葉月が反応する。「おい待て待て待て!!」
「お前、そんなラーメン好きだったか!? つーか、如何為てラーメンがシロップになってんだよ!! うどんとか蕎麦も!!」

「まぁ私のシロップの製造法は秘密なんで」琴葉はそこで言葉を止め、一鶴の方を向く。後ろには、先程の襲撃に立ち会った看守が。「君達にもかき氷あげるよ!」



 そして、全員で輪になってかき氷を食べながら、説明は始まる。
「さて、先ず私達の説明だよ」琴葉は五杯目のかき氷に手を付ける。「ノアさんと交流が或る場合、知っているかも知れないけど、フランさんは不思議な力を遣うことが出来る。私達は、その力を『能力』って呼んでる。そのまんまだね。私達は、全員能力を持っている。私は能力を操る事が出来る能力、葉月は時間を操る事が出来る能力、時雨ちゃんはモノの状態を操る事が出来る能力、白凪君はモノの形状を操る事が出来る能力。そして、フランさんの能力は―――」

「私の能力は、空間を操る事が出来る。だから、此処とは別の空間に或る世界から、空間を操って此処に来た。囚人の中の吸血鬼達に聞けば、直ぐに分かるさ」フランは、チョコレートのかかったかき氷を如何にか食べ終え、次は○ルピス味のかき氷に手を付ける。「因みに、ノア君には能力が無い。だから、普通に私より弱い。琴葉君より弱い。王様にそんな事を言って大丈夫かって? 私はトクベツなのだから、大丈夫なのだよ!」

「じゃあ明日の作戦会議」琴葉はかき氷を食べる手を止めない。「あのさ、明日は取り敢えず何とか適当にやれば勝てるから。で、こっからは真面目な話」
 最初から真面目に離せよ、と看守達は全員思ったとか。
 琴葉はかき氷を食べる手を漸く止める。

「明日は、今日来たヤツらが沢山来るよ。数は今日の五倍くらいかな。其処まで数が居ると、絶対に足場が足りなくなる。ので、ヤツらが来る前に、私が今日襲撃があった場所の面積を能力で広げる。でも、此方より向こうの人数の方が多いだろう。だから、此方は出来るだけ強い戦闘員を揃えよう。残りはモニターが或る場所と、高い場所に置く。指示役と出来れば狙撃部隊が欲しいからね。慣れない武器で戦うわけにはいかないから、狙撃部隊は出来ればで。戦闘員は前衛と後衛に分ける。前衛は私と葉月と白凪君中心に、後衛はフランさんと時雨ちゃん中心に組んでいく。後衛とモニターが或る場所両方に頭が良く回る人が欲しいね。前衛は突っ込んで行くことが仕事だけど、まぁそんなに心配することはない。後衛は只管指示出しをする。まぁ、役割の説明は此れくらい。戦闘に参加する看守を選ぶのは、聖月さんと看守長さん。その二人には、戦闘員の持ち場も決めて貰う。二人には事前に私から説明を為てある。で、質問は? 無いね。それじゃあ、解散」

 そして、琴葉はまたかき氷を食べ始める。また何時もの巫山戯モードになる。
 それを見計らい、聖月は琴葉に声を掛ける。

「あの、琴葉さん。良かったら、刑務所の中を案内しましょうか?」聖月はフランの方にも視線をやりながら、言う。
「あ、お願いして良い? 作戦を行うのに役立つ」

 かき氷が入っていた器を、全て別空間へ送った琴葉は、聖月の後を追って部屋の外に出る。
 フランと葉月は、その後琴葉特製かき氷シロップに夢中だったとか。
 
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