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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE13 忌むべき者、ビーター誕生

ボスが消滅すると同時に、後方に残っていたセンチネル達も四散!……その直後、そして、全プレイヤーの視界に同じメッセージが表示される。
それは獲得経験値、分配されたコルの額、そして獲得アイテム。それを見て、その場にいた者たち全員が、ようやく顔に表情を取り戻し、一瞬の溜めの直後に巨大な歓声をあげる!! by立木ナレ



エギル「見事な指揮だったぞ。そしてそれ以上に見事な剣技だった。コングラチュレーション、この勝利はアンタの……あんた達の物だ」

荒らしの様な人影の中から俺とキリトの近くに近づいてきて、そう言いながら右手の握りこぶしを突き出してきたのは両手斧使いのエギルだった。
俺はそれに合わせるように右手の拳を合わせながら言った。

俺「俺達だけで勝てたわけじゃない。これだけの戦力があったからこその勝利さ……んで、コングラチュレーションってなんだ?」

エギル「あ……ああ、それはな……」

俺の質問に対してエギルが妙に困惑したような表情を浮かべていた。大方、何かしらの英語なんだろうが、無論そんなの俺が知っているわけがない。

レイナ「……日本語に訳すと、おめでとう、と言う意味よ」

エギル「あ……ああ、そういう意味だ」

答えてくれたのはレイナだった。そんなやり取りを見ていたキリトが苦笑した後、エギルに拳を合わせようと右手を持ち上げかけた。

その時だった。

「――――なんでだよ!!」

突然、そんな叫び声が後方から弾けたのだった。その叫び声によって、広間の歓声は一瞬で静まり返った。

俺「あのシミター使いって、C隊の……ディアベルの部隊のメンバーだっけか?」

レイナ「……リンドよ」

レイナは、会って二日、三日で、しかも他のパーティーのプレイヤーの名前もしっかりと覚えていたようだった。
そんなレイナの記憶力の良さに感心している場合でもなく、シミター使いは限界までゆがめられた口から更に叫ぶ。

リンド「――――なんで、ディアベルさんを見殺しにしたんだ!!」

今の言葉で、その叫び声がキリトに向けられたものである事は直ぐに分かった。リンドの背後でも、残りのメンバー4人が顔をくしゃくしゃにして立っていた。
中には泣いている者もいる状態だった。

キリト「見殺し……?」

リンド「そうだろ!!だって……だってアンタは、ボスの使い技を知ってたじゃないか!!アンタが最初からあの情報を伝えてれば、ディアベルさんは死なずに済んだんだ!!」

血を吐くような叫びに、残りのレイドメンバー達のざわめきだしていた。そして、そのざわめきは徐々に広がりを見せていく。

て言うか、この状況は不味い。キリトがディアベルに代わって指揮を執っていた時点で、恐らくリンドを始めとした一部の者達は、キリトがあまりにも刀を使った技に関して知っているような事を何度も口走っていたので、それでキリトがベータテスターであると勘づいている者が現れ始めたかもしれない。

俺は心の中でキリトに、『上手く言い逃れろ!』と念じるが、それがキリトに通じるわけも無く、無言のまま強張った表情をしたままだった。

「オレ……オレ知ってる!!こいつは、元ベータテスターだ!!だから、ボスの攻撃パターンとか旨いクエとか狩場とか、全部知ってるんだ!!知ってて隠してるんだ!!」

ついに、俺の懸念していた事態が現実になりつつある。だが、E隊のメンバーのその言葉を聞いても、ディアベルが率いていたC隊のメンバー達の顔に驚きはなかった。

俺「やっぱり、初見のはずの刀スキルを見切ってた時点で確信してやがったか……」

「でもさ、昨日配布された攻略本に、ボスの攻撃パターンはベータ時代の情報だ、って書いてあったろ?彼が本当に元テスターなら、むしろ知識はあの攻略本と同じなんじゃないのか?」

「そ、それは……」

エギルのメンバーだったメイス使いが冷静な声で右手を上げながらそう言うと、E隊のメンバーは押し黙るが―――

リンド「あの攻略本が嘘だったんだ。アルゴって情報屋が嘘を売りつけたんだ。アイツだって元ベータテスターなんだかららタダで本当の事なんか教えるわけなかったんだ」

キリトはいったいこの状況をどうやって言い逃れるつもりなんだ?と言うか、言い逃れてもらわなくちゃ、ここでキリトがベータテスターである事が確定してしまったら。
キリトがベータテスターであると言う証拠の記録結晶を使ってキリトを強請って、キリトが持っている金や、キリトがさっき手に入れたであろうレアドロップアイテムを手に入れる計画が水の泡になってしまう。

エギル「おい、お前……」

アスナ「あなたね……」

沈黙し続けるキリトの背後で、エギルとアスナが同時に口を開いて何かを言おうとした時だった。いきなりキリトは二人を、両手の微妙な動きで制した。

そのまま前に一歩歩み出て、腹立たしい程にふてぶてしい表情でリンドの顔を眺めてから告げた。

キリト「元ベータテスター、だって?……俺を、あんな素人連中と連中にしないで貰いたいな」

リンド「な……なんだと……?」

俺「こ、コイツ……!」

いきなり何を言い出すんだこいつは!?俺のそんな慌てふためきそうな意図に構う事なくキリトは語り続ける。

キリト「SAOのCBT(クローズドベータテスト)はとんでもない倍率の抽選だったんだぜ。受かった千人の内、本物のMMOゲーマーが何人いたと思う。ほとんどはレベリングのやり方も知らないニューピーだったよ。今のアンタらの方がまだしもマシさ」

侮蔑極まりないキリトの言葉に、プレイヤー達が一斉に黙り込む。

キリト「―――でも、俺はあんな奴らとは違う。俺はベータテスト中に、他の誰もが到達できなかった層まで登った。ボスの刀スキルを知ってたのは、ずっと上の層で刀を使うMobと散々戦ったからだ。他にもいろいろ知ってるぜ、アルゴなんか問題にならないくらいにな」

「…………なんだよ、それ……そんなの……ベータテスターどころじゃねぇじゃんか……もうチートだろ、チーターだろそんなの!」

周囲から、そうだ、チーターだ、ベータ―のチーターだ、と言う声が幾つも湧き上がる。その言葉が混じり合ううちに、《ビーター》とか言うおかしな単語が響き渡るようになっていた。

キリト「……《ビーター》、良い呼び方だなそれ」

俺「まさか……こいつ!?」

キリトのにやりとした笑いを見て、俺は確信した。キリトの狙いが何なのかを!

キリト「そうだ、俺はビーターだ。これからは、元テスター如きと一緒にしないでくれ」

コイツは、自ら情報を独占する汚いビーターとなる事で、他のベータテスター達への憎しみや敵意が向くのを避けると同時に、自分がベータテスターだと言う事を公言したことによって、もう俺がこいつを記録結晶に録音した音声をネタに強請る事も出来なくしやがったんだ!!

そしてキリトは、今まで装備していた革コートの代わりに、先程ボスからドロップしたのだろう、漆黒の革製品のロングコートを装備した。

それは、俺がこのゲームを始めてから一週間近く、色んなモンスターを倒しながら、四苦八苦してようやく集めた素材アイテムで作り上げて、今装備している灰色の防具の『ダーク・スカイコート』の漆黒バージョンと言った感じのデザインだった。

キリト「二層の転移門は、俺が有効化(アクティブベート)しといてやる。この上の出口から主街区まで少しイールドを歩くから、ついてくるなら初見のMobに殺される覚悟しとけよ」

ボス部屋の奥にある小さな扉を開けようとするキリトをエギルとアスナがじっと見ていた、あの二人もキリトが自ら憎まれ役を担った事を知っている様子だった。それにキリトが気付いているかどうかは知らないがな。

そしてキリトは、玉座のすぐ後ろの第二層に繋がる扉を押し開ける直前に、俺の方を振り向いて、冷めた目付きで言った。

キリト「例の話だけど、やっぱり交渉は決裂って事で頼むよ。あの記録結晶は好きに使ってくれて構わない。」

俺「そりゃそう言うだろうな……もう隠す必要なんて無いだろうに……」

そして、このボス部屋にいる殆どのプレイヤー達から敵意の籠った視線を背に受けながら、キリトは第二層に続く部屋へと姿を消したのだった。
それから10秒ほどの沈黙が続き、誰かが何か言葉を発するのを、皆待っているような状態が続いたと思った時だった。

モック「アスカさん!23歳の誕生日、おめでとーございますですぞぉ――――――――!!」

ガチャモン「モックったら、相変わらず12月の4日になるとそれで、毎年大騒ぎしちゃうんだから~」

誰かに呼ばれたわけでもなく、重苦しい空気をぶち壊すかのように、場違いに騒がしいテンションで姿を現したのは、SAOの自称マスコットキャラのガチャモンとモックだった。
今回は珍しく、ガチャモンよりもモックの方が目立っているようだったが。

キバオウ「な、なんやジブンら!?なにわけのわからん事ゆーとるんや!?」

キバオウが真っ先に噛みつくように、怒鳴り散らすと。それに対して即座にモックが、キバオウの方を振り向いて―――

モック「訳が分からないのはアンタの髪形の方でしょうが!12月4日と言えばアスカさんの誕生日!!エヴァのファンなら当たり前の事でしょーが!これだから素人は困るんですよ素人は!!」

キバオウ「知らんわボケ!」

まぁ、モックが何に騒いでいるのか、それは俺は大体分かるが、態々そんな事を告げる為にこいつらはボス戦直後の俺達の前に現れたとでも言うのか?

アスナ「用が無いなら帰って!貴方達に構ってる時間なんて一秒たりとも無いわ……!」

アスナがガチャモンとモックを睨み付けながら、鋭利な細剣に劣らず、鋭さを帯びた口調でガチャモンとモックにそう言い放つ。

エギル「そもそも、お前らはいったい何者なんだ?大勢のプレイヤー達が言ってるように茅場晶彦の仲間なのか?それとも―――全く関係の無い外部の者なのか?」

ガチャモン「元ベータテスター、だって?……僕を、あんな素人連中と連中にしないで貰いたいな」

俺「誰もそんな事ねーだろ……」

レイナ「……それに、その台詞はキリトがさっき言った言葉よ」

まるでエギルの質問の答えになっていないガチャモンの返答に対して、プレイヤー達の苛立ちが更に増長し始めているのが、ハッキリと感じされる。

ガチャモン「あれ?もしかして二番煎じだった!?いやぁ~、恥ずかしいな~……キリト君に先を越されちゃったか~」

俺「何をわざとらしく言ってんだよ……どーせ、さっきのやり取りだって聞いてたんだろうが」

大方、こいつらは俺達の側にいようが、いまいが、このゲーム内に存在するプレイヤー達の会話は何時でも自由に聞く事が出来るんだろう。
少なくとも、ゲームのシステムに干渉する権限を――どの程度かは知らないが有してるはずだ。

アスナ「私、ちょっと彼を追います、言いたい事とか沢山あるから」

エギル「なら、伝えてくれ。『二層のボス攻略も一緒にやろう』ってな」

先に第二層に向かったキリトを追おうと、アスナが扉に向かおうとしたところを、エギルが呼び止めて、伝言を伝えていた。

キバオウ「ワイからもええか……?」

アスナ「構わないわ」

意外な事に、キリトに対して露骨に敵意を向けていたと思ったキバオウもアスナに対してキリトへの伝言を頼もうとしていた。

キバオウ「『今日は助けてもろたけど、ジブンの事はやっぱり認められん。ワイは、ワイのやり方でクリアを目指す』やな」

そうか、キバオウも恐らくは、キリトが自ら憎まれ役を買って出た事に気が付いたらしい。アスナは無言で頷くと今度こそ、第二層に続く扉を開けた時だった。

ガチャモン「あ、なんか面白そうだから僕も一緒にお供して良いかな?」

モック「ちょっとちょっと!アスナさんにはこれから始めるアスカさんの23歳の誕生日パーティーに招待するんですから、そんな場合じゃないですぞ――!!」

アスナ「どっちもお断りよ!貴方達は邪魔だからどこかに消えなさい!!」

ボス部屋全体に響き渡る声で、ガチャモンとモックを怒鳴り散らして、アスナはそのまま扉の奥に消えていったのだった。

レイナ「……オズマ、これからどうするの?」

レイナが俺の傍にゆっくりと歩いてきて、普段と変わらない表情のまま、そう聞いてくる。レイナも俺達がキリトを強請る計画が既に失敗している事には気が付いているはずなのだが、そんな事を全く気にするそぶりも見せないほどに、その表情は冷静で焦りの一つも感じさせぬほどだった。

俺「奴のアイテムと金を根こそぎ頂く計画は失敗した……けど、第二層の転移門までにあるアイテムやら金を根こそぎアイツに全部持って行かせるのは癪だからな……」

レイナ「……なら、すぐに行かなくちゃね」

俺とレイナは、ボス部屋でこれからどうするかを決めかねているプレイヤー達の中から先立つ形で、ボス部屋を後にし、第二層を目指すのだった。


オズマのキリトをベータテスターである事をネタにし、キリトから金とアイテムを強請る計画は完全に破綻!!
ディアベルから依頼報酬を受け取る事も、キリトから金とアイテムを得る事も叶わず仕舞いとなってしまった!
そして、キリトは多くのプレイヤー達から忌み嫌われるビーターとして、ソロプレイヤーとしての行動を再開したのであった…… by立木ナレ

 
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