| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

FILE10 フロアボス戦に向けて、ディアベルからの依頼

第一層ボス攻略会議は、実務的な議論は行われぬままであったが、それでもプレイヤー達の指揮を上げる効果はあった。
第一層迷宮区二十階はかつてない速度でマッピングされ、会議の翌日の十二月三日土曜日の午後にはついにディアベル率いるパーティーがフロアの最奥の巨大な二枚の扉を発見した。

ディアベル一行はその場でボス部屋を確認した後、その日の夕方に再び、トールバーナの噴水広場で開かれた会議でボスの報告を行った。

ボスは身の丈二メートルほどの巨大なコボルトで名前は《イルファング・ザ・コボルドロード》武器は曲刀。取り巻きにハルバードを装備した《ルインズコボルド・センチネル》が三匹との事だった。

そして、会議の最中に同じ広場の隅で店を広げていたNPC露天商にいつの間にか例の攻略本が委託販売されていたのだった。

いうまでも無く会議は一時中断され、参加者全員がNPCから攻略本を貰い中身を読んだ。

俺「相変わらず、見事な情報量だな、これもこの中に紛れ込んでるベータテスターが流したのか?」

レイナ「……ボスの名前以外にも、推定HP、主武装のタルワールの間合いの剣速、ダメージ量、使用ソードスキルの詳細……実際に対峙して見なければここまでの詳細は分からない」

そして、本を閉じた裏表紙には、これまでのアルゴの攻略本には存在しなかった一文が赤いフォトンで並んでいた。

【情報はSAOベータテスト時の物です。現行版では変更されている可能性が有ります】

申し訳程度の注意書きが妙に目立っていた。

俺「ま、この攻略本のおかげで面倒で危険な偵察戦を省略できそうなのはありがたいな」

レイナ「……偵察戦で死人が出るかもしれないから?」

俺「ああ、偵察戦は否応でも初見になるからな……ベータテスターの連中は除いて、な」

一方で、ディアベルは尚も数十秒、何かを考えるように顔を伏せていたが、やがて姿勢を正すと張りのある声で叫んだ。

ディアベル「―――みんな、今は、この情報に感謝しよう!出所はともかく、このガイドのおかげで、二、三日はかかるはずだった偵察戦を省略できるんだ。正直、すっげー有難いってオレは思ってる、だって、いちばん死人が出る可能性が有るのが偵察戦だったからさ」

広場のかしこで、色とりどりの頭がうんうんと頷く。

ディアベル「……こいつが正しければ、ボスの数値的なステータスは、そこまでヤバイ感じじゃない。もしSAOが普通のMMOなら、皆の平均レベルが三……五低くても充分倒せたと思う。だから、きっちり戦術を練って、回復薬いっぱい持って挑めば、死人なしで倒すのも不可能じゃない。や、悪い、違うな。絶対に死人ゼロにする。それは、俺が棋士の誇りに掛けて約束する!」

ディアベルのリーダーシップは本当に流石な物だった。40人そこそこのパーティーの中にこれだけのカリスマ性とリーダーシップを持ったプレイヤーが一人だけでもいた事はこのデスゲームを進めるうえでの数少ない幸運と言うべきか。

ディアベル「―――それじゃ、早速だけど、これから実際の攻略作戦会議を始めたいと思う!何はともあれ、レイドの形を作らないと役割分担も出来ないからね。みんな、まずは仲間や近くにいる人と、パーティーを組んでみてくれ!」

俺「だってよ、まずは俺達でパーティーを組むのは決まりで良いな?」

レイナ「……そうね」

俺はレイナにパーティー申請をして、レイナがそれを受諾する事で、ひとまずは二人のパーティーになった。
あと4人、早い所パーティーを組んでしまおうと思っていたのだったが、ディアベルが指示を出してから一分足らずで、あっさりと七個の6人パーティーが完成していた。
この場に集まっているのはレイドパーティーの最大上限人数には満たない46人だ。
一つのパーティーが最大で6人で、それを8組まで組めるので、6×8でレイドパーティーの上限人数は48人となる。
つまり、4人だけの未完成なパーティーが一つだけで来てしまうと言うわけで――――

レイナ「……オズマ、あそこに炙れている人が二人だけいるわ」

俺「よりにもよってアイツかよ……」

その炙れている二人の内の一人は、俺が今一番パーティーを組み難い、強請のターゲットとしている相手、キリトだった。
キリトの方も、俺達が二人だけである事に気が付き、俺とレイナがこちらに来るとキリトはバツの悪そうな表情で目を逸らしていた。

俺「パーティー申請をするけど、それでいいな?」

キリト「あ、ああ、分かった」

キリトの隣にいるフードを被ったレイピア使いは俺とキリトの合いで起こっている事を知らないようで、俺の接近に対して特に警戒心などを見せる様子はなかった。
俺はキリトとレイピア使いのカラー・カーソルに触れるとパーティー申請を出した、2人ともOKを推すと、左側視界にやや小さい二つ目のHPケージが出現した。

一本目は【Kirito】それはキリトだと言うのはすぐに分かる。そしてさらにその下には【Asuna】と表記されていた。
ローマ字読みだとしたらキャラクターネームはアスナと言う事になる、名前からして女を思わせるキャラクターネームだが、その顔は赤いフードを深く被っているので、良く見えない。


一方でディアベルは見事な采配と指揮能力で出来上がったパーティーを見分し、最小限の人数の入れ替えだけで、七つのパーティーを目的別の部隊へと編制!
そして、七つの6人パーティーへ作戦や役割を伝えたのち、最後にオズマ達4人だけのパーティーに近づくby 立木ナレ


ディアベル「君達は、取り巻きコボルドの潰し残しが出ないように、E隊のサポートをお願いして良いかな?」

俺「E隊って、キバオウさんがリーダーのパーティーだっけか?」

ディアベル「ああ、そうだよ」

ようするに、ボス戦の邪魔にならないように後方で大人しくしてくれ、とも取れる指示でもあったが、4人しかいないパーティーではそう言われるのも仕方あるまい。
レイピア使いのアスナが非友好的な反応をしそうになったが、キリトもそれを察して片手で制止て答えた。

キリト「了解。重要な役目だな、任せておいてくれ」

ディアベル「ああ、頼んだよ」

白い前歯を光らせて、ディアベルは噴水の方に戻って行った。途端に、左耳のすぐ近くで剣呑な響きを帯びた声が生じた。

アスナ「……どこが重要な役目よ。ボスに一回も攻撃出来ないまま終わっちゃうじゃない」

俺「やっぱり、そんなこと思ってたのかよ……ディアベルの前だけでは余計な事言って荒波立てなかったのはまぁ、良かったけどな……」

キリト「仕方ないだろ、4人しかいないんだから、6人パーティーに比べてスイッチでPOTローテするにも時間が全然足りないん」

アスナ「……スイッチ?ポット……?」

レイナ「……もしかして、知らないの?」

俺「マジか?」

アスナの訝しそうな呟きを聞いて、俺もレイナもこのレイピア使いは、所謂MMORPGの基本的な専門用語を理解してない、MMORPG初心者だと言う事は、今のやり取りを見る限り疑いようがない事だった。
それで、このボス戦に参加しようと言うのはどういう心境なのかはまるで分らない。

キリト「……あとで、全部詳しく説明する。この場で立ち話じゃとても終わらないから」

レイピア使いのアスナは数秒間の沈黙の後に、微細な動きで頷いた。取りあえず、このアスナと言うレイピア使いの基本的な指南役はキリトが請け負っている様子だった。


そして、二度目のボス攻略会議はA~Gまでナンバリングされた各部隊リーダーの短い挨拶と、ボス戦でドロップした金やアイテムの分配方法を確認して終了となった。
ドロップの分配の方は、コルに関してはレイドを構成する四十四人で自動的等割り、アイテムはゲットした人の物と言う単純なルールが採択された by立木ナレ


午後五時半、攻略会議が解散となり、集団はばらけて酒場やレストランへ飲み込まれていった。俺とレイナも、キリトとアスナ組とはここで何も言う事なく自然に分かれて、どこか適当な場所で食事をしようと思っていた時だった。

ディアベル「オズマ君にレイナさん、少し話を良いかな?」

駆け足で俺達に近づき、声を掛けてきたのは、フロアボス戦のパーティーリーダーも務める事になった騎士ディアベルだった。
ディアベルの表情は、会議の時に見せていた爽やかな表情に比べて、少々険しい、真剣な話をするときの様な顔つきだった。

俺「俺達のパーティーに何か用があるなら、さっきの二人も呼んでくるか?」

ディアベル「いや、この話は彼らを除いた、君たち二人にだけに話しておきたいんだ」

俺「俺達4人パーティーではなく、俺とレイナにだけにか」

ディアベル「正確には、キリト君だけを避けて話したかったんだが、あのフードの人が彼にまだついているから、君たち二人にだけ声を掛ける事にしたんだ」

俺はディアベルが只ならぬ、話をしたそうな様子を感じて、提案してみた。

俺「まずはさ、落ち着いて座って話す場所を決めないか?」

ディアベル「そうだね、話の続きは近くのレストランでするとしよう、付き合ってもらうんだから飯代くらいはオレが奢るよ」

どんな話をするのかは知らないが、飯を奢ってくれると言うのなら、断わる理由はない。俺はレイナに対して、それで良いかと聞いてみるが、レイナの反応は予想通りの物だった。

レイナ「……別に、構わないわ」

ディアベル「話が分かるようで助かるよ。では、行こうか」

ディアベルが選んだのは、トールバーナのレストランでは比較的小さな規模の店だった。ここなら、人も少なく、少なくともキリトがここにいる事は無さそうなので、丁度良いと踏んだのだろう。
席に座って早々にNPCの店員が注文を聞きにやって来た。
俺達は店のメニューから適当に注文を選び、それをNPCの店員に伝えると、NPCの店員は丁寧なお時期と接客態度を取った後、それからすぐに注文したメニューが俺達の元に運ばれてきたのだった。

ディアベル「付き合わせてすまないね、これから君達に相談する話は4人だけのパーティーである君達G隊の本来の目的に関する話なんだ―――あ、話は食事をしながら出構わないよ」

俺「もう、食ってる奴もいるけどな……」

レイナ「……?」

レイナは話が始まる前に、自分のテーブルの前に届けられたトマトソースがたっぷりと掛かったパスタを食べ始めていた。
ディアベルは爽やかな表情で笑顔でレイナを見た後、すぐに真剣味を感じさせる表情を作り直し、話を再開した。

ディアベル「実はね、君達と同じパーティーにいるキリト君についてなんだが、彼は元ベータテスターである事を俺は突き止めたんだ。主に他のベータテスターらしきプレイヤーの会話の内容からね」

俺「へー、良く調べ上げたな、情報屋のアルゴですら誰がベータテスターだとかまでは売らないって話なのに」

キリトがベータテスターである事は俺も既に知っている事だが、話をスムーズに進めたいので、とりあえず今は知らない振りをして進める事にする。

ディアベル「だが、それだけなら何も問題ではない、重要なのはキリト君が―――ベータテスター時代に最もフロアボス戦でラストアタックボーナスを掻っ攫ったプレイヤーとして名前があげられている事なんだよ」

俺「そーなのか?そいつは、他のプレイヤーにとっちゃ面白くない話だな」

それは、俺も聞いたことの無い話だった。ソロで最前線まで来ている事から、かなり腕の立つ奴だとは思っていたが、ベータテスト時代からダントツでフロアボスのLA(ラストアタック)ボーナスを掻っ攫っている奴だったとはな。

レイナ「……どうして、面白くない話なの?」

そこで、今まで黙々とパスタをほおばり続けていたレイナが、初めて口にパスタを含んだまま話に加わってきた。

俺「フロアボスにLAボーナスを決めれば、そのパーティーに莫大な経験値と金が……そんでもって、ゲーム内で一つしか存在しない超レアなアイテムがドロップするってのは前に話しただろ?」

レイナ「……ええ」

俺「そんな美味しいアドバンテージの塊を特定のプレイヤーがそう何度も何度も頻繁に掻っ攫ってたら、他のプレイヤーからして見たら不平等感とかから、いい気はしないって事だ」

レイナ「……そう言うものなのかしら?」

レイナにはあまりピンとこないのか、小首を小さく傾げてキョトンとしていた。この辺りはレイナももしかしたらMMORPGと言うものを、あまり経験したことが無いのかもしれない。
レイナが記憶喪失では、それを確認する術も無いのだが。

ディアベル「俺はね、こんな事を言うと失望を買ってしまうかもしれないが―――これから先、俺がゲーム攻略を進めるうえでのトッププレイヤー達のリーダーを続ける為には、誰よりも明確に強いプレイヤーであると言う事を皆に認識してもらう事も重要だと考えているんだ」

何となくだが、俺はディアベルが言いたいことが見えてきた、つまりディアベルは狙っているのだろう、フロアボスに止めを刺した者が得られるラストアタックボーナスを、特に一つしかないレアアイテムを。

俺「警戒してるんだな、キリトが初っ端からラストアタックボーナスを持って行っちまうのを?だから、俺達に奴がラストアタックボーナスを取れない様に、上手く立ち回れって事か?」

ディアベル「ああ……ズルい男だと思われるかもしれないが、同じパーティーである君達なら、キリト君と近くで戦う事が多いだろうから、つまり、彼を妨害するのに最も打って付けなのは君達なんだ」

ディアベルは自分でも後ろめたい事を頼んでいると言う自覚からか、その声は攻略会議の時のような爽やかで澄んだ声ではなく、微妙に震えや緊張感を感じさせる声になっていた。

ディアベル「無論、ただでこんな事を頼んだりはしないさ、君達が上手く立ち回って、俺がラストアタックボーナスを取れたときには、これを君達に渡そう」

ディアベルがそう言いながらアイテムストレージからオブジェクト化したアイテムは、俺がまだ見たことの無い、妙な文字が刻まれた紙切れのアイテムだった。
アイテムの詳細を見てみるとそのアイテム名は『装備強化奥義書』と書かれていた。

ディアベル「装備を強化する際に、この奥義書を使う事により、強化成功率が100%になるアイテムだ。一度このアイテムを使用して強化した装備はもう二度と奥義書が使えないと言うデメリットはあるけどね」

俺「そりゃ便利なアイテムだな」

武器強化をする場合は、必要な強化素材を揃えて、鍛冶屋のNPCだか、鍛冶スキルを持ったプレイヤーに依頼する事になるわけだが、強化に必要な最低限の素材だけだと強化成功率が不安定な数値になりやすい。
強化の成功率を高める為には、更に多数の強化素材を用意する必要がある。
だが、奥義書を使えば、一つの装備に付き、一度きりではあるが、それらの手間が全て省けて、必要最低限の素材だけで、強化成功率が100%になるのなら、これはかなり便利な代物だ。

レイナ「……どうするのオズマ?」


突如、ディアベルから要請されたキリトのラストアタックボーナス獲得を阻止せよとの依頼!報酬アイテムである装備奥義書を提示されたオズマの返答は……? by立木ナレ


 
 

 
後書き
ようやく10話目になりました。くどいようですが、お気に入り登録と評価をお待ちしています。

それによって作者が気を良くして、作品継続意欲になると思いますので(笑) 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧