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真田十勇士

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巻ノ百四十九 最後の戦その六

 十勇士達が来た、皆闇夜に揚げていた大凧からむささびの術で来た。幸村達は事前にその凧を揚げてから来たのだ。
 十勇士達は幸村の前に来て闇色の術に使った生地を収めてから幸村に言った。
「殿、我等もです」
「今ここに来ました」
「それではですな」
「これより」
「そうじゃ、大御所殿の御前に向かうぞ」
 幸村も十勇士達に答えた、そしてだった。
 一行は城の中にさらに行こうとする、だがここで後藤が幸村に問うた。
「もう駿府城の中はか」
「はい、実は既にです」
「大坂の戦の前にか」
「天下の城のおおよそは頭に入れておりました」
「それで駿府の城のこともか」
「全て頭に入っておりまする」
 こう後藤に話した。
「それこそ大御所殿のお部屋の場所まで」
「そうか、ではな」
「はい、それがしが案内させて頂きます故」
「わかった、では先に進もう」
「さすれば」
 幸村は自ら先頭に立ち一行を先に導こうとした、だが今度はだった。
 多くの侍達が出て来た、後藤はその彼等を見て言った。
「どの者もな」
「かなりの腕ですな」
「そうじゃな、ここはわしが食い止めるか」
「いえ」
 後藤が前に出ようとするとだった、彼より前にだった。
 明石が弓矢を構えて出て来てだ、そうして彼に言った。
「ここは拙者にお任せを」
「その弓矢でか」
「はい、例え矢がなくとも」
 明石は鋭い声で言った。
「明の書でありましたな」
「確か列子だったか」
「あの書にある通りに」
「気も使ってか」
「ここは食い止めますぞ」
「そうか、ではな」
「ここは拙者が食い止めます故」
 先の長曾我部と同じくというのだ。
「皆様方は先を」
「わかり申した」
 幸村は明石にもこう応えた。
「それでは我等は」
「はい、先に」
「行きまする」
 こう明石に言ってだ、一行は明石が矢を嵐の様に放ち一発一発で侍達の胸や足を貫き動けなくする横を風の様に駆けてだった。
 先に進んだ、だがまたすぐにだった。
 新たな侍達それに伊賀者達が来た、一行は今度はそれぞれの武芸で切り抜けんと槍や刀を振るった。しかし。
 その彼等の前にだ、橋の上に一人の男が出た。その男はというと。
「むっ、貴殿は」
「伊賀十二神将の一人双刀」
 双方は自ら名乗った。
「ここは通す訳にはいかぬ」
「双刀殿か、それでは」
 その双刀を見てだ、根津は自ら前に出てだった。幸村に言った。
「殿、ここは」
「お主がか」
「引き受けまする」 
「そうか、ではな」
「殿はお先に」
「済まぬ」
「では双刀殿よいか」
 根津は刀を構えそのうえで双刀に問うた。
「貴殿にとっては殿を足止め出来ぬことは残念なれど」
「確かに残念、しかし」
 双刀も己の二振りの刀をそれぞれの手に持ちつつ応えた。
「根津殿だけでも止められるなら」
「よいと言われるか」
「そう思う次第、それでは」
「うむ、死合おうぞ」
 根津は己に対している双刀に返した、そしてだった。
 激しい剣撃の応酬に入った、両者はそれぞれの刀を振るい闘う。双刀はその中で根津に対して問うた。 
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