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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE9 第一層ボス攻略会議

2022年12月2日。既にデスゲーム、ソードアート・オンラインが始まってから一カ月近くが経過していた。既に二千人近い人数のプレイヤーが脱落し、今だ第一層の攻略すら敵わぬと言う絶望的な状況!……そんな中、ようやく第一層の攻略に向けて、フロアボス攻略会議が開かれようとしていた! by立木ナレ


※ ※ ※


攻略会議を呼び掛けたプレイヤーは、この場に集まった四十数人のプレイヤーの一部がちいさくざわめくほどの、男達の目から見ても分かるほどのイケメンの青髪の青年だった。
髪の毛の色は恐らく、髪染めアイテムで染めているんだろうが、少なくとも第一層では店売りしてないので、モンスターからドロップしたのだろう。

ディアベル「今日は、俺の呼びかけに応じてくれてありがとう!知ってい人もいると思うけど、改めて自己紹介しとくな!俺はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます!」

噴水近くの一団が、口笛や拍手に混じって『本当は勇者とか言いて―んだろ!』とか言う声が飛んだ。

レイナ「……SAOにはシステム的に(クラス)なんて無いはずなのに……」

俺「その場を和ませたり、盛り上げたりするためのトークだろ」

レイナ「……そうなの?」

俺「そう言う事にしておけ」

記憶喪失で、どこか人間らしい感情も欠落しているようなレイナにはその辺りのユーモアと言うのが理解し難いようだった。

ディアベル「さて、こうして最前線で活動してる、言わばトッププレイヤーの皆に集まってもらった理由は、もう言わずもがなだと思うけど……今日、俺達のパーティーが、あの塔の最上階へ続く階段を発見した。つまり、明日か、遅くとも明後日には、ついに辿り着くって事だ。第一層の……ボス部屋に!」

どよどよとプレイヤーがざわめく。俺もこれには感心せざるを得なかった。第一層の迷宮区は二十回建てで、俺とレイナが潜った最深部が19階だったのだが、ディアベルのパーティーは既にその19階をほぼマッピングし終えていると言うわけだ。

ディアベル「一ヶ月。ここまで、一ヶ月も掛かったけど……それでも、オレたちは、示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームそのものが何時かクリアできるんだって事を、はじまりの街で待っている皆に伝えなきゃならない。それが、今この場所にいる俺達トッププレイヤーの義務なんだ!そうだろ、みんな!」

再びの喝采。今度は、ディアベルの仲間たち以外にも手を叩いている者がいた。事実、ディアベルの言っている事は的を射ている。
もし、第一層がクリアされれば、死のリスクを恐れる余り、はじまりの街に籠り続けているプレイヤー達も希望を見出し、戦線に赴き、何れはゲーム攻略に貢献できる戦力にもなり得るはずだ。

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

そんな声が低く発せられたのは、その時だった。歓声が止まり、声が聞こえた方を振り向くと、その先に立っていたのは、小柄な体格の、そして何より特徴的なのは、見事なまでもサボテンの様な頭髪の男だった。

「そん前に、こいつだけは言わしてもらわへんと、仲間ごっこはでけへんな」

そんな、不躾な乱入に対してもディアベルは表情をほとんど変えずに、余裕に満ちた笑顔のまま手招きして言った。

ディアベル「こいつっていうのは何かな?まあ何にせよ、意見は大歓迎さ。でも、発言するなら一応名乗ってもらいたいな」

キバオウ「…………フン、ワイはキバオウってもんや」

盛大に鼻を鳴らしてから、サボテン頭はキバオウと名乗った。キバオウは鋭く光る両目で広場のプレイヤーを睥睨した。

キバオウ「こん中に、5人か、10人、わびぃ入れなあかん奴らがおるはずや」

ディアベル「詫び?誰にだい?」

ディアベルが、様になった仕草で両手を持ち上げると、キバオウはそちらを見る事無く、吐き捨てるように言った。

キバオウ「はっ、決まっとるやろ。今までに死んでいった2千人に、や。奴らが何もかも独り占めにしたから1ヶ月で二千人も死んでしもたんや!せやろが!!」

キバオウが何を言おうとしているのかは、俺に限らず、ほぼ全員が理解してるだろう。その言葉により途端に重苦しい空気が流れた気がした。

ディアベル「キバオウさん。君の言う奴らとはつまり……元ベータテスターの人達の事、かな?」

キバオウ「決まっとるやろ」

ディアベルが腕を組んだまま、今までで最も厳しい表情で確認すると、キバオウは当たり前だと言った様子で肯定した。

キバオウ「ベータ上がり共は、こんクソゲームが始まったその日にダッシュではじまりの街から消えよった。右も左も解らん九千何人のビギナーを見捨てて、な。奴らはウマい狩場やらボロいクエストを独り占めして、ジブンらだけぽんぽんうなって、その後もずーっと知らんぷりや。……こん中にもちょっとはおるはずやで、ベータ上がりっちゅうことを隠して、ボス攻略の仲間に入れてもらお考えてる子鶴い奴らが。そいつらに土下座させて、溜め込んだ金やアイテムをこん作戦の為に軒並み吐き出してもらわな、パーティーメンバーとして命は預けられへんし預かれんと、わいはそう言ってるんや!」

まるでベータテスター達のせいで2000人も死んだと言う、キバオウの言っている事は少々極論な気もするが、一方で奴の言うように、この中にベータテスターが紛れ込んでいるのは間違っていない。
集団から離れた所に、赤いフードで顔を隠したプレイヤーと、その隣に俺が強請のカモとして狙いを定めているキリトと言うベータテスターが既に一人いる。
それに、殆どのベータテスターが上手い狩場やクエストを独占したのもまた、否定できないだろう。

ガチャモン「キバオウのバカ!」

殺伐とし始めた空気をぶち壊すように、乱入したのは攻略会議に参加していたプレイヤーではなく、毎度毎度、唐突に出現するガチャモンだった。

キバオウ「ああん?いきなり勝手に現れおって、なんやねんジブン!?てか、誰がバカや!」

ガチャモン「何よ意気地なしっ!二千人のプレイヤーが死んだのをベータテスターのせいにして!キバオウの甘えん坊!怖がり!意気地なし!どうしてできないのよ そんなことじゃ一生サボテン頭だよっ!それでもいいの!?キバオウの意気地なし!僕もう知らない!キバオウなんかもう知らない!」

モック「いやはや、お騒がせしますですな~。ガチャモンってば最近になって、70年代の名作アニメにドハマりしてるんですよ~。まぁ、どの作品も最終回とその数話前の話しか見ないんですがね。所謂、にわかファンとか言う奴ですなぁ~」

キバオウ「やかましいわ!バーターは黙っとらんかい!」

モック「どえぇ――――!?な、なんですか私に対するその邪険な扱いわ!?」

キバオウは昔のアニメキャラを真似て、自身を罵倒するガチャモンだけでなく、ついでに登場しているモックに対しても感情的に声を荒げて喚き散らしていた。

キバオウ「つーか自分ら!自分らは知っとるんちゃんうか?この中に紛れ込んどるベータテスターどいつか?ホンマは分かっとるんちゃうんか!?知っとること全部喋らんかい!」

それは流石に言うだけ無駄だろうに、と思っていた俺の予想は当然の如く的中する事になる。ガチャモンは両手を後ろに組むと、不敵な笑い声をあげながら言った。

ガチャモン「ふふふ、ベータテスターが誰かだって?――――その情報が知りたければ……300万コルを耳を揃えて持って来い!!」

キバオウ「そんな金持っとるわけあらへんやろうがボケんだらぁ!てか、耳のあらへんれんちゅーに耳を揃えてこいとか言われても滑稽なだけやしな!」

モック「はいぃ―――――――!?ちょ、ちょっとキバオウさん!そ、それは我々の様な耳を持たない者たちに対する身体的な特徴を貶す差別的発言ですぞ!!」

ガチャモンが要求する天文学的な金額のコルに対してキバオウがガチャモンとモックに対して皮肉を交えた言い返しをすると、今度はモックがムキになって喚きだす。

俺「こいつらが話に加わると、毎度毎度、意味不明な方向に話が流れるんだよな……」

俺がキリトを強請ってる時に奴らが出てきた時も、そうだったが、誰かが話の軌道を修正しない限りはキリが無くなる。
そんな、不安を俺か感じていた矢先に、落ち着き払った声がヒートアップしているキバオウを遮るように割り込んだ。

ディアベル「用が無いのなら、ここは消えてもらえないか?我々はこれからのゲーム攻略を左右する重要な話し合いをしていて、遊んでいる場合じゃない事くらいわかるだろ?」

表情こそ穏やかなディアベルだったが、ガチャモンとモックに対するその目付きは、明確な敵意がうっすらと感じされる目付きでもあった。
ディアベルに軽く邪険に扱われたガチャモンとモックはしばらくお互いに顔を見合ってから―――

ガチャモン「ハイハイ……アメリカンジョークが通じないと、心が寒くなるのは寂しいね~」

モック「今回はこのへんにしてあげますけどね!我々は忘れませんぞ!そこのキバオウとか言う人が、我々を辱めるような言葉を口にしたことは絶対に!」

二人とも同時に、その場から姿を消して、再び静寂が訪れた。


「発言、良いか」

そんな時、張りのあるバリトン声、夕暮れの広場に響き渡った。人垣の左端の当たりから立ち上がったその男は、慎重派190㎝ほどもありそうな巨体で、頭は完全なスキンヘッドの上に、肌は全身黒茶色と、日本人離れした、と言うか、見るからに黒人の様な、圧倒的な威圧感と迫力ある外見の大男だった。

エギル「オレの名前はエギルだ。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元ベータテスターが面倒を見なかったからビギナーがたくさん死んだ、その責任を取って謝罪・賠償城、ということだな?」

キバオウ「そ……そうや」

キバオウは僅かに、気圧されたように片足を引きかけたが、すぐに前傾姿勢を取り戻すと、エギルと名乗る斧使いを睨んで叫んだ。

キバオウ「あいつらが見捨てへんかったら、死なずに済んだ二千人や!しかもただの二千ちゃうで、ほとんど全部が、他のMMOじゃトップ張ってたベテランやったぞ!あほテスター連中が、ちゃんと情報やらアイテムやら金やら分け合うとったら、今頃ここにこの十倍の人数……ちゃう、今頃は二層やら三層やらまで突破できとったに違いないんや!!」

二千人の犠牲者の責任が全てベータテスター達にあると言うのはやはり、流石に極論だと俺は思うが、ベータテスター達の積極的な協力があれば、確かに今ほどの状況を招かずに済んだ可能性は高いし、キバオウ以外にも同じように考えている者は決して少なくはないだろう。

エギル「アンタはそう言うが、キバオウさん。金やアイテムはともかく、情報はあったと思うぞ」

エギルはそう言いながら、大型のポーチから簡易な本アイテムを取り出した、表紙には、丸い耳と左右に三本ずつの髭を図面化した鼠マーク。
あれには、俺も見覚えがあるし、俺も何度か見ている代物だった。

エギル「このガイドブック、あんただって貰っただろう。ホルンカや目鯛の道具屋で無料配布してるんだからな」

エギルの言った通り、あれは情報屋のアルゴが制作し、配布しているエリア別の攻略本だった。詳細な地形から出現モンスター、ドロップアイテム、クエスト解説などが一通り書かれており、表紙下部にでかでかと書いてある【大丈夫。アルゴの攻略本だよ】と言う、どこかで見たようなゲーム雑誌の様なキャッチフレーズまで書かれていた。

キバオウ「―――貰たで。それがなんや」

エギルは攻略本をポーチに戻すと、腕組をしていった。

エギル「このガイドは、オレが新しい村や町に着くと、必ず道具屋に置いてあった。あんたもそうだったろ。情報が速すぎる、とはおもわなかったのかい」

俺「そうか……あの本の情報源はベータテスター達だったわけか」

レイナ「……アルゴ以外にもあの本を作るのに手を貸したテスター達がいたってことね」

そうだ、そいつらは自分たちがテスターである事を明かして、積極的に他のプレイヤーの面倒を見る事はしなかったものの、自らの素性を隠しながらの消極的な情報提供程度ならアルゴを通してと言う形で協力していた奴らの事だろう。

エギル「いいか、情報はあったんだ。なのに、たくさんのプレイヤーが死んだ。その理由は、彼らがベテランMMOプレイヤーだったからだとオレは考えている。このSAOを、他のタイトルと同じ物差しで測り、退くべきポイントを見誤った。だが、今は、その責任を追及してる場合じゃないだろ。俺たち自身がそうなるかどうか、それがこの会議で左右されると、オレは思っているんだがな」

エギルの態度は堂々としたもので、言っている事も真っ当でキバオウも噛みつく隙を見いだせずに黙りこくっていた。
しばらくは忌々しそうにエギルを睨んだが、そこまでで、何も反論が出ないまま、ディアベルがもう一度頷いてから言った。

ディアベル「キバオウさん、君の言う事も理解できるよ。オレだって右も左も分からないフィールドを、何度も死にそうになりながらここまで辿り着いたわけだからさ。でも、そこのエギルさんの言う通り、今は前を見るべき時だろ?元ベータテスターだって……いや、元テスターだからこそ、その戦力はボス攻略の為に必要なものなんだ。彼らを排除して、結果攻略が失敗したら、何の意味も無いじゃないか」

爽やかな弁舌でキバオウを諭すディアベル。それによって、殺伐とした空気は徐々にだが再び穏やかに落ち着きを取り戻しつつあった。

ディアベル「みんな、それおれ思う所はあるだろうけど、今だけはこの第一層を突破する為に力を合わせて欲しい。どうしても元テスターとは一緒に戦えない、って人は、残念だけど抜けてくれて構わないよ。ボス戦では、チームワークが何よりも大事だからさ」

キバオウ「…………ええわ、ここはあんさんに従うといたる。でもな、ボス戦が終わったら、キッチリと白黒付けさせてもらで」


こうして、第一層攻略会議は幾度も波乱になりかけたものの、ディアベルのリーダーシップとエギルの弁舌により、無事終了! by立木ナレ 
 

 
後書き
今回はほぼ、原作の分をなぞるような形になってしまいました…… 
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