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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE8 オズマとキリト、強請る物と強請られる者

 
前書き
今日も更新しました。

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ベータテスター・・・デスゲーム開始直後、多くのベータテスト出身者は自身の生存を優先してテスター時代に培った膨大な知識と経験を独占した利己的な自己強化に走り、ハイレベルプレイヤーとして活動する一方、恐慌する初心者達をほとんど顧みる事は無く……それゆえに多くの一般プレイヤーはベータテスト出身者をひどく毛嫌いしており、ベータテスト出身者達は批判や中傷を恐れ自身の出自を隠して活動する事となる。
そして、この少年剣士、キリトもまたそんなベータテスターの一人であった!


※ ※ ※


アルゴ「妙な女だよナ。すぐにでも死にそうなのに、死なナイ。どう見てもネトゲ素人なのに、技は恐ろしく切れル。何者なのかネ」

語尾に特徴的な鼻音が被さる甲高い声でそう続けるのは決して大柄とは程遠い、俺よりも更に頭一つ以上低い、いかにもすばしっこそうなプレイヤーだった。
防具は俺と同じ全身布と革。武器は左腰に小型のクローと右腰の投げ針だった。

俺「知ってるのか、あのフェンサーの事」

俺が情報屋のアルゴに無意識に尋ねたのは、俺がさっき、迷宮区で助けたフェンサー使いの少女の事だった。―――助けたと言っても、俺が彼女からマッピングデータを貰った後に、彼女が倒れたので、取りあえずこのトールバーナの北門まで連れて来ただけだが。

アルゴは指を五本立てながら言った。

アルゴ「安くしとくヨ。五百コル」

俺「女の子の情報を売り買いするのは気が引けるんで、遠慮しとく」

アルゴ「にひひ、良い心掛けだナ」

ふてぶてしいにもほどがある台詞を吐き、情報屋、通称、鼠のアルゴはけたけたと笑った。

俺「で?今日もまた、本業の取引じゃなくて、何時もの代理交渉か?」

俺がそう聞き返すと、今度はアルゴが渋面になり、ちらちらと通りの左右を見渡すと、俺の背後を指先で押して近くの路地へと移動させた。
ボス攻略会議までまだ二時間あるのでプレイヤーの姿は少ないが、他人にはあまり聞かれたくない話らしい。

アルゴ「まあナ。29800コルまで引き上げるソーダ」

俺「ニーキュッパときたか……悪いけど、何コル積まれても答えは同じだ。売る気はないよ」

俺は苦笑し、肩をすくめてそう答えた。

アルゴ「オレッちも、依頼人にそう言ったんだけどナー」

アルゴの本業は情報屋だが、敏捷力極振りの機動性を生かしてのメッセンジャーの服ぎようも営んでいた。
そして、ここ一週間ほどアルゴ経由で俺に接触してきている何者かは、面倒な依頼人らしい。
その依頼人はなんでも、俺の持つ片手直剣、アニールブレード+6を買い取りたいと言うのだ。

俺「…………そいつが払った口止め料、千コルだっけ?」

俺の質問にアルゴは平然と頷き、言った。

アルゴ「そーだナ。上積みする気になったカ?」

俺「う~ん……1Kか…う―――ん!」

色々と考えたが、ここで俺がイエスと返事をして、次は依頼人の方も金額の上乗せにイエスをしてこれば、最終的に高い金を払った方が相手の名前を知ることが出来るわけだが、その結果、恐ろしい事に俺はこの剣の取引で実質的にお金を減らす羽目になる。
それはどう考えても阿保らしいの極致ではないか。

なので俺はアルゴに対して見上げた商売魂だとブツブツと言った後、アルゴは̪シシシと笑った後、

アルゴ「んじゃ、、依頼人には今度も断られたって伝えとくサ。この交渉は無理筋だ、ともナ」

そう答えて手を振り、去ろうとしたのを俺はまだ話したい事があるので呼び止めた。

俺「なぁ、アルゴ。お前も迷宮区には潜ったんだろ?」

アルゴ「まーな、だけどオレッち一人で迷宮区のモンスターとやりあうのはちょいときついから、戦闘はなるべく避けてけどな」

俺は再度、周囲に他のプレイヤーがいないかを確認してから、小さな声でアルゴに囁くように言った。

俺「お前も気が付いてないか?迷宮区のボス部屋の場所が……ベータの時と変わってる事に?」

アルゴ「キー坊。やっぱりそう思ってたんだナ……だが、それが多分、第一層のクリアに一カ月近くも掛かってる理由の一つだろうさ」

これはベータテスター同士でなくては相談できない話だった。アルゴは他に大多数のベータテスターと違い、デスゲーム開始直後に自らがベータテスターである事を明かしたうえで情報屋を始めている。
なので、俺がこの手の話、取引が出来る相手は必然的に元ベータテスターで、そして向こうも俺の事をベータテスターである事に感づいているだろうアルゴだけだった。

アルゴ「ボス部屋の場所が変わってるせいで、迷宮区内での探索に支障をきたしてる元ベータテスターはきっと他にもいるはずだナ……」

俺「まて、アルゴ!」

アルゴ「…………」

俺が強めの口調でそう叫ぶと、アルゴは察しの良さで、なにも聞かずに口を閉じていた。俺は索敵スキルを再度発動し、隠蔽スキルを使っているであろうそのプレイヤーに対して狙いを絞って一か所を見続ける。
俺の索敵スキルは現時点では最前線のプレイヤー達の索敵スキル習得者の中でも高位であると言い切れるのだが、それを持ってしても、明確に見つけるのにここまで時間が掛かるとなると、奴の隠蔽スキルも相当高められているのだろう。

俺「そんなところで、こそこそ聞いてないで、話に加わりたいなら遠慮なく来ればいいさ、もう俺達の会話をだいぶ盗み聞きしたんだろ?」


※ ※ ※


アニールブレード+6を装備したその剣士、キリトは索敵スキルを使い、隠蔽スキルで姿を隠していた俺に気が付き、俺に出てくるように言って来た。

俺「ま、良いか。重要な会話は既にこの記録結晶に録音済みだしな、レイナ、向こうさんが及びだぞ―――!」

レイナ「……今、良くわ」

俺とレイナはNPCの民家の屋根からキリトと情報屋のアルゴの会話を盗み聞ぎしていた。俺はワザと右手に記録結晶を掴んだ状態で民家の屋根の上から降りてやった。
ベータテスト出身者なら当然、このアイテムがいったい何なのかくらい分かってるはずだからな。

アルゴ「な~んだ。オズ坊とレイたんだったのか~、おねーさんの秘密の会話を盗み聞きなんて感心しないナ~」

俺「別に今回はお前に用があって来たわけじゃねーよ。そっちの利己的なベータテスターさんに取引の話をしたくて来たんだよ」

キリトは俺に対して一定の警戒心を抱いている様子だったが、自分がベータテスターである事を指摘されても慌てて否定したり、狼狽える様子も見せなかった。

キリト「その前に、何故俺がベータテスターである事を知ってた?偶然俺とアルゴの今の会話を聞いたわけじゃないよな?」

そのキリトの指摘は最もだ、俺はキリトと言う名前のプレイヤーがベータテスターである事を事前に知っていた。
だからこそ、こうしてキリトと呼ばれたコイツを、マークしていたんだ。

俺「このゲームの正式サービスの当日―――茅場の奴に呼び出される前に、バンダナ頭の曲刀使いのプレイヤーに色々とレクチャーしてただろ?」

キリト「……まぁな」

キリトは俺の指摘に対してあっさりと認めていた。もはやバレているのなら無理に隠し通すつもりも無いと言った様子だそうだった。

俺「それで、その指南役がベータテスターだって事は容易に想像が付いた。そして、そのバンダナ頭はお前の名前を呼んでいたはずだ――『キリト』ってな。既にあの時見た顔とは違う顔になってるが、同じ名前で同じベータテスターが二人以上もいるとは思えないからな、お前があの時のベータテスターのキリトなんだ。あのバンダナ頭をどうしたのかは知らないがな」

目の前でじっとしているキリトの顔は、どこか幼げで、中性的な女顔に見える顔で、あの時に見た、勇者然とした姿とはまるで別人だった。

キリト「で、そっちの要求は何なんだ?その結晶クリスタルに録音した、俺がベータテスターである事を証明できる会話の内容をタテに強請る気なんだろ?」

俺「理解の速い奴だ、そんじゃ、アイテムストレージとマネーストレージを見せてもらうぞ」

キリトは言われた通り、アイテムストレージとマネーストレージを他プレイヤーにも見えるように、可視化した状態で表示する。

俺「流石はベータ出身者だな。色々と持ってるじゃねーか」

レイナ「……要求するお金は、貴方の所持している総額コルの9割」

俺「それと、これとこれと、このアイテムを要求する。そしたら、お前の目の前でこの録音した会話の内容は直ぐに消去する」

俺の要求を聞いたキリトは深く溜息を付いた後、含み笑いを浮かべながら、感心しているような、呆れているような様子で言った。

キリト「嫌われ者のベータテスター達を利用して強請行為とはね、恐れ入ったよ……アンタさ、詐欺師とか恐喝とか、リアルでもそう言う事やってたりするわけ?」

俺「俺がやってるのは―――義賊だよ」

俺の事を詐欺師とか恐喝とか、呼ぶキリトに対して、俺はキリトがしたよう含み笑いを真似して、言い返していた。

キリト「義賊だって?」

俺「そうさ、鼠小僧とか、ルパンとかがそうだろ?アイツらってやってる事は泥棒で犯罪者のはずなのに、一般の大衆からは英雄扱いされたり、好印象だったりするだろ?」

キリト「まぁ、悪者扱いされてる感じじゃないよな」

キリトの感想を適当に聞き流して、俺は更に話を続ける。アルゴは妙に楽しげな表情で俺とキリトのやり取りを静観し、レイナは相変わらず表情を全く変える事無く、無言を貫いていた。

俺「それは、奴らの狙いが一般の大衆に向けられずに、弱者達からなけなしの金を搾り取って私腹を肥やしてる輩とか、貧しい連中を顧みないで自分達だけで利益を独占してる奴らを狙ってるからだ。だからアイツらは実際には犯罪者だってのに、一般の連中からは慕われる、そこでだ―――」

俺は少し間を置いてから、目つきを鋭くして、キリトとの距離を詰める。

キリト「――――!!」

キリトは一瞬、驚いた様子を顔に出したが、俺がそれ以上何もしてこないのを察して、それ以上の反応を起こすことなく、落ち着きを取り戻していた。

俺「このアインクラッドでは、お前みたいな利己的なベータテスターが、義賊に狙われる、金持ち連中ってわけだよ。仮に俺達がやってる事が一般のプレイヤーに露天したとしてもだ、狙われたのが全員ベータテスターなら、一般のプレイヤー達は『自業自得だ』とか『ベータ―共にはこれくらいの報いは当然だ』とか言うだろうよ」


自らを義賊と自称するオズマ!キリトは思考する、このオズマの要求に対して自分は今、この場でどんな返事をするべきかを――――だが、そんなキリトの思考を遮るように、奴らは唐突に現れる! by立木ナレ


ガチャモン「50Gと銅の剣だけでハーゴンが倒せるかぁ――――!!」

モック「が、ガチャモン!?いきなり出て来て、なにを仰ってるんですか!?」

ガチャモン「いやぁ~、世界を脅かす大神官を倒す旅に出る事を命じられた王子の心情を僕が代弁してみました~」

突如として、俺達の前に姿を現したのは、SAOのマスコットキャラを勝手に自称しているガチャモンとモックだった。
姿を現して早々に、古いゲームをネタにしたやり取りをガチャモンが一人で始めていた。

アルゴ「ああ~、ドラクエⅡだよナ?確かにオレッちもあれは酷な話だと思ったんだ。王様なんだから、一人息子の王子の旅立ちにもっといろいろと持たせてやって欲しいもんだよナ~」

何故かアルゴがガチャモンとモックの会話に自然に加わる。

モック「いやはや、喋れない主人公と言うのは困りものですな~、嫌な事に対してNOと言えないなんて、現代社会に生きるサラリーマンの皆さんみたいじゃないですか~」

俺「ドラクエの話はもう良いんだよ、お前ら何が言いたいんだ一体?」

余計な話に時間を取られたくないので、俺はさっさとガチャモンとモックが何しに現れたのかを聞く。
どうでも良い話だったら、即座にその場でこいつ等にはご退場願いたいもんだ。

ガチャモン「はいはい、21世紀生まれの世代の子達は本当に慌てんぼうなんだから~―――あのね、今日の午後の4時から、この街《トールバーナ》で、第一回ボス攻略会議が行われるから、時間には気を付けてって言いに来たの、ガチャモンの気の利いたお知らせでした~」

まるでいい仕事をしたと言わんばかりの様子のガチャモンに対して、俺は軽く苛立ちを感じながら容赦なくハッキリと言ってやる。

俺「その話ならもう聞いてるぞ」

キリト「ちなみに、俺もその話ならもう知ってるぞ」

アルゴ「にゃはは、実はおれっちも知ってたりしてな~」

レイナ「……迷宮区付近で活動してれば知っていてもおかしくはない」

ガチャモン「…………」

4人のプレイヤー全員が知っていると言い切り、ガチャモンは空回りした事を実感したのか、口を閉じて黙り込んでいた。

モック「あ、あの~、ガチャモン……って消えちゃったじゃないですかぁ!!」

気を使って声を掛けたモックを他所にガチャモンは勝手に一人で転移して姿を消す。だが、俺としてはこれで良い。

モック「あ~もう!アンタ達少しは空気を呼んでくださいですぞ!ガチャモンは一度機嫌損ねると面倒なんですからな―――!」

そして、モックは俺達に対して勝手な愚痴を零しながら、その直後に姿を消すのだった。余計な連中がいなくなった後、キリトは俺の方を向きなおしてから話を切り出す。

キリト「お前のその要求に対する答えだけどさ、第一層のボス戦の後とかまで返事は保留じゃダメか?」

俺「そうだな……」

少し考えて俺は、そのキリトの時間稼ぎに用に思える提案が、俺にとって優位になる事に気が付いた。迷宮区の最奥のボス部屋に出現するフロアボスを倒すと、止めを刺したプレイヤーはラストアタックボーナスを獲得出来る。

フロアボスのラストアタックボーナスである獲得経験値と獲得アイテムは共に雑魚モンスターから獲得するそれとは桁違いの高さの上に、ドロップするアイテムは、ゲーム中で一つしか入手できない、言うならばユニークアイテムと呼ばれるレアアイテムだ。

もしキリトが、ラストアタックボーナスを決めてレアアイテムを手に入れれば、アイテムストレージから、そのレアなユニークアイテムも奴から頂く事が出来る。

俺「ああ、すぐに結論を出せとは言わない。第一層のフロアボス戦の後まで待たせてもらうとするさ」

こうして、キリトに対して強請を掛けたオズマとの交渉は一旦ここは保留となった!ベータテスターに対して強請を擦るオズマは自らを義賊と自称し、その金とアイテムを狙う! by立木ナレ 
 

 
後書き
ここで初めてキリト視点になりました。

オズマとはベータテスターである事をネタに強請られる事になりましたが、この先の展開をお楽しみに。 
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