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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE6 現れた最悪のマスコットキャラクター

西暦2022年11月16日。既にデスゲームと化したソードアート・オンラインが始まり10日が経過。未だにアインクラッドの第一層すらクリアされる見通しは立っておらず、日に日にプレイヤー達の数は減り続け、明日は我が身に降りかかるかもしれぬ死にプレイヤー達は慄き続ける日々を送っていた! by立木ナレ


※ ※ ※


俺「…………」

レイナ「…………」

早朝の5時、この状慣れてきた俺だったが、毎日のように隣にレイナが無防備に眠る光景を目に焼き付けられる日々がこのまま、いつかSAOがクリアされた後も続けば良いと思うようになっていた。
初めてのパーティークエストをクリアした直後、既に深夜の12時となっていた為、俺とレイナは宿屋で休む事にしたわけだが。
レイナは二人で一つの部屋を使えば、宿代が一部屋分で済むからと言い、何のためらいも無く俺と同室で一晩を明かす事を提案してきたのだった。
その提案は俺としても願ったりだが、まさかレイナの方から申し出てくれるなんてと、内心で舞い上がっていた。
年頃の面倒な娘は、どれだけ金銭難で、例え無人島に放り込まれたとしても、寝床は必ず男女別である事を頑なに通そうとする者だと思っていたわけだが。
この記憶喪失の少女、レイナはまるでそれに当てはまる事無く、柔軟な思考力で自ら宿代の節約の為に二人で一部屋を使う事を提案してきたのだった。


歓喜するオズマ!無論、ゲーム以外の趣味の一つに女遊びを上げるオズマが同じ部屋での睡眠を共にするだけで満足するはずも無く、オズマは既にその先の展開を見据える!
下心、欲望、ここが命を掛けたデスゲームの世界であることに変わりないにもかかわらず……オズマ、目先の欲望に執着!!
だが、その日の朝の8時に届いたメールがそんなオズマの浮かれた気分を吹き飛ばす事にいずれ至るとは、この時のオズマは知る由も無かった! by立木ナレ


※ ※ ※


俺の元に、正確には俺を含めてすべてのプレイヤーの元に届いたのは、送り主不明のメールだった。
朝の8時ごろに、宿屋一階にある食堂で食事をしていた頃に、それはその食堂で俺達と同じように食事を始めていた全てのプレイヤーに届いたようだった。

『おはよう皆~(^^)/ ソードアート・オンラインの正式サービス開始から今日で10日だねぇ~。そろそろ僕たちも君達に挨拶しなくちゃと思ったところだからさ、今日の午後の3時に、生き残っている全プレイヤーの皆を僕たちのゲストルームにご案内しま~す』

そんな訳の分からないメールが全てのプレイヤーの元に送られていたのだった。このメールがいったい何なのか、全プレイヤーに対して同じメールを一斉に送信できるなど、思い当たるのは運営側としか考えられ無いわけだが、運営側が送ってくるメールとしては内容が妙におチャラけているとしか思えず。
結局、俺達は待つしかなかったわけだった。
メールの送り主が指定したその日の午後の3時を……

レイナ「……オズマ、後1分よ」

俺「ようやく分かるのか……?この意味不明なメールが何なのかを」

食堂にいたプレイヤー達の中には、『きっとこれは運営からのメールで、ゲストルームと言う所は、プレイヤー達をログアウトさせるための場所なんだ』などと、あまりにも楽観的な事を口にしだす者もいたわけだが、当然俺はこのメールがそんなおめでたい事だとは微塵も思わなかった。

レイナ「……午後の3時になったわ」

その瞬間、俺達の全身は転移の時に起きる現象と全く同じである白い光に視界を含めて包まれる事になる。
いったいどこに俺達を連れて行くんだと不安を感じながらも、流れに身を任せる。
そして、数秒後に俺の視界が元に戻り、そこははじまりの街でも、俺がこのアインクラッドで一度も訪れたことの無い、まるで――――

「何だここは!?どこの学校の体育館だよ?」

そんな、俺が丁度思っていたことをまるで代弁するかのように、そんな声が響き渡っていた。俺もその場所には見覚えがある。
小学校を卒業してからは一度も訪れていないが、そこは疑いようも無くまさに学校の体育館と呼ぶべき場所であり、一か所に集められた俺たちプレイヤーの正面にはマイクとステージもご丁寧に再現されていた。

俺「ちなみにだが、記憶喪失のレイナは、ここが何か分かるのか?」

レイナ「……学校の体育館だわ」

俺「成程、やっぱり現実世界での知識とかはちゃんと覚えてるままなんだな」

レイナ「……恐らく、一番一般的なエピソード記憶喪失型の記憶喪失だと思うわ」

レイナは自らの状態から、冷静かつ客観的に自分の記憶喪失のタイプを淡々と口にしていた。一方で、唐突にこんなところに集められたプレイヤー達の中からは、早くも騒ぎ声が目立ち始めていた。既に10日間もの間、ゲームからログアウト出来ず、外部からの救助の様子も無いままで、苛立っている者も多いのは言うまでもないわけだ。

だが、そんな騒ぎ声をまるで無視するように、場違いに明るく気楽な声が聞こえてきたのはその直後だった。

「な、なんだあのシルエット!?」

体育館のステージの上に二人分の黒いシルエットが出現した、そして、その二人分のシルエットはマイクの前に立つと、そんな不気味さとは裏腹に、高い明るい声でこう言ったのだった。

ガチャモン「ガチャガチャモンモン、ガチャモンでーす!初めまして、みんなぁ~、僕の名前はガチャモンだよ~」

モック「私はモックですぞぉ―――!!皆さん、私たちの姿がちゃんと見えてますですかなぁ―――?」

俺「着ぐるみじゃねーか……」

黒いシルエットが取りはらわれて、まるで着ぐるみのような姿を露にした、ガチャモンとモックと名乗る二匹を見て、俺は思わずそう言わずにはいられなかった。
ガチャモンは身体の右半分が緑色、左半分が灰色のモノクロの姿をした着ぐるみのような姿のアバターで、モックの方は体の右半分が赤色、左半分がやはり灰色のモノクロの姿をした着ぐるみアバターだった。

ガチャモンは半開きで眠そうな垂れ眼で口元からは前歯が2本飛び出しており、モックは体は毛むくじゃらで球状の目が飛び出ており、黒目部分は眼球の中に黒い玉が入っている姿だった。
まさにどちらも中に誰かが入っているような着ぐるみの姿をしているアバターだった。

ガチャモン「あれあれあれ~?皆どうしちゃったの~?元気の良い返事を期待してたんだけどな~」

モック「ガチャモン、これはきっとあれですよ。憧れのアイドルや俳優とかに、いきなり出会ってテンパっちゃうファンにありがちな反応ですよ~」

俺達が唖然としているのにも構わず、ガチャモンとモックは軽快なテンションで勝手に話を進めて、漫才の様な都合の良い解釈をしていた。

ガチャモン「あ、そっかぁ~、皆して恥ずかしがり屋さんなんだから~、そんなに固くならなくっても良いんだよ。僕たちは君達となるべくフレンドリーな関係を築きたいからね」

奴が何者なのかは全く分からないが、奴の言う事をこのまま鵜呑みにして、はい仲良くしようとか言う奴がいるわけが無く、誰もがガチャモンとモックのやり取りを見て呆けていた。

モック「さ~て皆さん、まずは何から始めましょうか?やっぱり自己紹介ですかね?え~、我々のプロフィールに関してですが~――」

「お、お前らは外部からログインしてる奴なんだろ!?」

ガチャモン「ほえ?」

モック「はい~?」

プレイヤーの集団の一人が、何時までも要領を得ないやり取りを続けているガチャモンとモックに対して、一人のプレイヤーが黙っていられずに、声を張り上げて誰もが聞きたがっていた事を聞いていた。
すると、ガチャモンとモックがそれに答える前に、プレイヤー達の集団から次々と質問の嵐が飛び交う。

「何時になったら出られるんだよ!?アーガスとか警察や政府は何してやがるんだ!?」

「もう大学を一週間も休んでるんだぞ!このままじゃ留年しちまうよ!」

「私達の現実の身体は大丈夫なのよね!?ちゃんとした病院に入れられてるはずなのよね!?」

ガチャモン「…………」

モック「…………」

絶え間なく飛び交う質問に対して、ガチャモンとモックは、さっきまでやかましく騒いでいたのとは一転して、何も答えず黙り込んだまま、両手を後ろに組んだまま全く何も答える様子が無い。

「おい、黙ってるんじゃねーよ!何とか言えよコラァ!」

「どうなんだよ!俺達は何時になったら出られるのか分かるのかよ!?」

「もうウンザリなのよ!一週間になるのよ!早くこの状況を何とかしなさいよ!私たちはどうしたらここから出られるのよ!?」

黙り込んでいるガチャモンとモックに対してプレイヤー達の質問は怒りを孕んだ声へと変わり、罵声や怒声が次々と二人に対して浴びせられていた。
だが、そんなプレイヤー達の喚き声は次のガチャモンの一言で一蹴される事となる。

ガチャモン「FUCK YOU……ぶち殺すぞ、ゴミめら!!」

俺「コイツ……!」

レイナ「…………」

ガチャモンの口調はさっきまでのふざけたような口調から一転して、怒気を孕んだ、威圧感のある口調に変化していた。
表情は全く変わっていないにもかかわらず、殆どのプレイヤーがいつの間にかガチャモンの威圧感によって圧倒されて押し黙っていた。

ガチャモン「お前たちは大きく見誤ってる!!……この世の実態が見えていない!!まるで3歳か4歳の幼児のように、この世を自分中心、求めれば周りが右往左往して世話を焼いてくれる……臆面もなくまだそんな風に考えてやがるんだ!甘えを捨てろ!」

誰も何も反論する事もままならぬまま、ガチャモンの理不尽で支離滅裂な説教はさらに続く。

ガチャモン「そんな事だから、おまえたちは 這って這って這って…… 這い続けてるんだ………… ゴキブリのように…………!!このアインクラッドの最下層を!!―――お前たちの為すべきことはただ一つ、ただクリアする事……このソードアート・オンラインを第100層までクリアする事だ!!」

そして、ガチャモンは表情を全く変えないまま、俺達を見渡してから更に大きな声を荒げる。

ガチャモン「人は勝たねばゴミィ!!勝たなくては!……勝たなくては!……勝たなくては……!!」

モック「あ、あの、ガチャモン……ガチャモ~ン……」

ガチャモンの容赦の無い罵倒を交えた説教を前にプレイヤー達が閉口していると、隣のモックがアタフタとした様子でガチャモンに声を掛けていた。

モック「我々はあくまで、このソードアート・オンラインのコミカルなマスコットキャラ的なポジションと言う設定の存在ですぞ……!そ~んな風に凄んで怖い事ばっかり言ってるから、皆さん怖がっちゃってるじゃないですか~」

ガチャモン「…………あ、しまったぁ!!僕としたことが自分のキャラをすっかり忘れちゃってたよぉ~」

モックに指摘されて、ガチャモンは思い出したように元のおチャラけ多様な喋り方でそう言い始めた。

ガチャモン「皆ゴメンね~、このソードアート・オンラインの事は嫌いになっても、僕の事は嫌いにならないでね~」

俺「一昔前のアイドルの卒業の時の台詞みてーだな……」

最も、元ネタと思わしきアイドルが言った言葉とは前後が真逆になっているわけだが。
と、そう思っていた矢先だった。どのプレイヤーがやったのかまでは気が付かなかったが、誰かが投擲スキルを使用して石を投げ飛ばし、その小さな石ころはステージの上のガチャモンに直撃していた。

モック「あわわ―――!だ、大丈夫ですかガチャモ――ン!?」

ガチャモン「痛いな~、今、石を投げたのは誰なのさぁ~?」

斧使い「て、テメーら……いい加減にしろよさっきから!!チャンと俺達の質問に答えやがれ!!」

すぐにその答えは、石を投げつけた斧使いのプレイヤーが大声で怒鳴り付けた事でハッキリと明らかになった。
その斧使いの表情は、顔中に皺が寄っており、顔は興奮で赤くなっており、既にその怒りが爆発している事が伺えた。

ガチャモン「もぉ、ダメじゃんか~。人に向けて石を投げちゃいけないって大人の人に教わらなかったの~?」

斧使い「黙れ黙れ黙れ!訳の分かんねー事ばっかり言ってんじゃねーぞ!!」

モック「困りましたなぁ~、答えろと言ったり、黙れと言ったり」

斧使いの怒りを受けてもまるで意に介する事無く、ガチャモンとモックは相手を苛立たせるようなやり取りを続ける。

斧使い「テメェらどうせ茅場の共犯者だろ!?ゲーム内の様子を直接フルダイブして確認してくるように言われてきたんだろ!」

その斧使いが怒りに身を任せて発言した言葉も、あながち間違いとは言い切れなかった。茅場晶彦は、今俺達がSAOの世界で右往左往してる有様を現実世界から監視しているのかもしれないが、奴には共犯者となる人間がいて、そいつらが茅場の手によってフルダイブして送り込まれている可能性も十分あり得る。

斧使い「茅場の共犯者だってなら許さねー!ぶち殺す!俺達をここから出さねーって言うのなら今すぐにぶち殺してやらぁ―――――!!」

斧使いはついに斧を両手で持ち上げて、そのままステージの上にいるガチャモンとモックに向かって走り出していた。

モック「殺すですって、あ~んな物騒なこと言っちゃってますけど、どうしますかガチャモ~ン?」

ガチャモン「良いね良いね、嫌いじゃないよ僕は。血気盛んな若者は大好物だよぉ~」

オズマはこの時、瞬間的に悟った、奴らに手を出すような真似をしてはいけなかったと。そして、オズマの最悪の予感は予想を超えた形で的中する事となる! by立木ナレ

 
 

 
後書き
今回登場したガチャモンとモックの元ネタは言うまでも無く、あのフジテレビの教育番組のマスコットキャラですね。 
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