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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE5 情報屋のアルゴ、山賊討伐のクエスト

デスゲーム、ソードアート・オンラインが始まってから約一週間が経過しようとしていた!
オズマとレイナはクエスト達成の為に討伐しなくてはならない山賊のNPCの一団を探す為にはじまりの街へと帰還した。
露天商をしていた少女プレイヤーのリズベットとの会話で元ベータテスターの情報屋である鼠のアルゴの存在を知ったオズマとレイナははじまりの街の宿屋の一室にてアルゴ本人と接触する。 by立木ナレ


※ ※ ※


アルゴ「成程ナ、山岳地帯にある村のパーティー用のクエストを受けて、山賊のNPC達を探してるって事なんだナ」

早速、俺とレイナは情報屋のアルゴにクエストに関する事を説明して、はじまりの街のどの辺りに、そしてどの時間帯に出現するのかを訪ねてみた。

俺「これについては何か知ってる事は無いかと思って、お前を訪ねてみたんだ」

アルゴ「おう、オレッちを頼ったのは正解だったナ」

流石は元ベータテスターの情報屋と言ったところか、多少の俺の不安を振り払うように、アルゴはあっさりと自信ありげにそう答えた。

アルゴ「そのクエストならβテストの頃にもあったからな、クエストの内容がそっくりそのままならオレッちの情報で見つかるはずだぞ」

俺「んで、その情報量は幾らなんだ?」

アルゴ「にゃははっ!良い心がけだナ、オー坊は。ちゃんと、金を払って情報を買うつもりで来たんだナ~」

俺「始まったばかりのゲームでは、知らないことだらけな分、情報の価値が高くつくのはお決まりだからな。だが、クエストの報酬以上の金は当然出せないからな」

今回のクエストで得る事が出来る報酬は(コル)だけでも3000コル(クエストを受けたパーティーに対して)と高額で、俺とレイナは二人だけのパーティーなので山分けで1500コルを得られる上に、更についでにこの第一層では入手手段が極めて限られる結晶アイテムが手に入ると聞いている。
アルゴならば、その事も知っているのでクエストの高報酬を理由に高い情報量を吹っ掛けられないかと考えたが、俺のそんな疑念は直ぐに勘繰り過ぎだと気が付く事になる。

アルゴ「そ~だな。初依頼だしな、今回は二人で600コルで引き受けるぞ」

俺「一人につき300コルか……現時点ではそこそこの額だが、情報の対価としちゃまだ良心的か……」

アルゴ「にゃははっ!おねーさんはゲームクリアのために頑張る連中を情報でサポートするって決めてるからナ。がめつい商売をする気なんて少ししかないぞ」

レイナ「……少しはあるの?」

アルゴのどうでも良い冗談を真に受けたレイナが、首を小さく横に傾げて態々聞き返していた・

俺「んな事よりも、お前も300コル出して情報を買うって事で良いのか?」

レイナ「……それで良いわ」

アルゴ「交渉成立だナ。それじゃ、早速オレッちのマネーストレージにコルを振り込んでくれ。そしたら、教えてあげるからナ。―――オズ坊とレーたんが探してる山賊のNPC達をナ」

結局、俺とレイナはそれぞれ、アルゴに300コルずつを支払って、情報を買う事にした。600コルの支払いを確認したアルゴは早速ベータテスト時代からの経験で得た山賊NPCの一団を討伐するクエストに関する情報を分かり易く教えてくれた。
明確な出現場所、出現時間、敵の人数や攻撃パターンを説明された。
山賊のNPCが出現する時間まで、まだ数時間以上の時間があったので俺とレイナはその日は山賊NPCの出現時間まではじまりの街に戻れる範囲で再び狩りに出る事となった。


※ ※ ※


俺「やっぱり、はじまりの街の周辺はモンスターの出現率がやたら低くなってたな」

レイナ「……当然よ。はじまりの街に未だに留まってるプレイヤー達に狩り尽くされて枯渇してるはずだから」

山賊のNPC達が出現する時間は夜の8時だと聞いた俺達は、一時間前である夜の7時の時点で狩りを切り上げて、はじまりの街に戻っていた。
だが、はじまりの街の周辺ではモンスターの出現率が、ソードアート・オンラインの正式サービス開始時に比べて明らかに減っているのが、目に見えて分かった。
金と経験値を求めて、モンスターの出現待ちをしているプレイヤーの数も少なくなく、連中も効率の良い狩りを本格的に始めたいのであれば、流石にそろそろ活動拠点を移動せざるを得なくなるだろう。

レイナ「……山賊のNPC達は、夜の8時になると北門の近くにある下水道の入口から5人組で出てくるはず」

俺「んで、例のクエストを受注してるパーティーがそいつらに接触すれば、普段なら安全圏内でお互いにダメージを与えられない街の中でも、その辺り一帯だけ安全コードってのが解除されてダメージが与えられるようになるから、そこで山賊達を倒せばいいってわけか」

俺とレイナは歩きながら、改めてクエストの内容を確認し合っていた。最もアルゴ曰く、あくまでベータテスト中の場合はこうだったと言っていたので、正式サービス版である現在のSAOでは、内容が代わっているかもしれないからとも警告受けていた。

ひとまず、腹ごなしに俺とレイナはNPCが出している出店でサンドイッチを買い食いする事にした。

俺「面倒だよな、ゲームの中だってのに食わないと空腹を感じるんだからな」

レイナ「……システム上プレイヤーは生理現象が存在するわ」

俺が何気なく、ゲーム内で感じる、現実世界と遜色ない空腹感に対して軽く愚痴を漏らすと、レイナが隣でサンドイッチを小さな口でかじりながらそんな事を言い出した。

レイナ「……主に、食欲と睡眠欲。食欲の方は例え何も食べずに絶食し続けたとしてもそれでHPが減少したり、餓死する事は無いけど、その状態が続くと、耐え難い空腹感が続くわ」

俺「ああ、それなら俺が見たベータテスターのブログにも書いてあった気がするな。武器とかアイテムに使う金惜しさに、何も食わないで続けてたら、半端じゃねえ空腹でまともに戦えなくなったとかな」

レイナ「……睡眠欲の方は、バーチャルリアリティとはいえ、ゲームを何時間も続けている事には変わりないから、疲労感を感じるわ」

俺「現実世界で座りながらゲームやりっぱなしでも実際に眠くなってくるのと同じってわけか……」

そんな風にレイナと軽く話していて、俺はレイナに対して記憶喪失で現実世界での記憶が無いと言っている一方で、なぜこうもゲームシステムに関しては詳しいんだと言う疑問が湧いていた。

俺「お前、現実世界で何か思いだした事とかってやっぱりないか?」

レイナ「……今の所、なにも思いしてないわ」

レイナは、淡々とした口調のまま、特に自分の事に触れられても不快そうにする事も無くそう答えた。

俺「リアルでの記憶が全くない状態でSAOにフルダイブしてて不安に思う事とかって無いわけ?」

レイナ「……別に、知らない事を気にしても仕方ないし、現実世界の私の事を知るには、ゲームをクリアするしかないから」

俺「そりゃ、随分と合理的で冷静なんだな……」

今のレイナの、このあまりにも感情の起伏に乏しい性格は、記憶を失った事による影響があるのか、もしくは記憶を失う前の、現実世界のレイナも元からこんな性格なのか俺には知る由もないが、少なくとも、俺にとっては、事ある毎に感情的になったり、些細なセクハラや肌を見られたくらいで、露骨に顔を赤くして喚いたり、すぐに泣いたりする女に比べると、一緒にいて気が楽で付き合いやすい相手であるという実感は沸いた。

それは、ほんのひと時のオズマとレイナが共に過ごす休息であった。クエスト完了後、この二人が共に行動を続けると言う保証はなく、下手をすればそれっきりでその後は交流が途絶える可能性も無くはないわけだが、オズマはこのデスゲームと化したソードアート・オンラインで初めてパーティーを組んだ記憶喪失の少女とのこの一時に僅かながらの安らぎを感じていた……by立木ナレ


※ ※ ※


2022年11月12日の午後8時。俺達はアルゴから伝えられた情報にあった場所で、ようやくお目当てのターゲットを発見していた。

俺「ゾロゾロと雁首揃えて出てきやがったな」

山賊の人数は5人組だった。この辺りもアルゴの情報通りで、どうやらこのクエストはベータテスト版の頃と特に変わりが無いようだった。

レイナ「……ダメージを与えるには、イベントを進めないとダメ」

俺「出来ればふいうちで一人倒してから始めたかったが、それは出来ないらしいな」

不意打ち無しの正々堂々とやり合えと言うのなら、お望み通りそうしてやろうか。俺とレイナは下水道から姿を現した5人組の山賊NPCの前に隠れる事無く姿を見せると、NPCの山賊たちは装備していた棍棒やナイフを構えて、「見やがったな!」とか「俺達を捕まえに来やがったか!」と喚き声をあげた後、一斉に襲い掛かって来ていた。

俺「レイナ、スイッチってのは知ってるよな?」

レイナ「……当然」

俺「なら、安心できるかもな!」

スイッチとは攻撃する者が入れ替わることである。SAOでは最大の攻撃システムである、ソードスキルの発動直後は一定の硬直状態に陥る為、これらをカバーする手段として、ソードスキルを発動した直後の仲間を守る為に後列にいたプレイヤーが前列に出て硬直中の仲間を守る事が、両者の生存率を高める事となる! by立木ナレ

クエストで戦う山賊のNPC達はやはり、山岳地帯周辺に登場する山賊たちに比べて戦闘力が高く、一度に複数体を相手にするのは中々厄介な相手だったが、既に装備を整えている俺とレイナはソードスキル→スイッチの繰り返しでお互いをフォローし合い、一体ずつ山賊NPCを倒し続けて、最後に残ったのはリーダー格である大柄で大鉈を構えて、帽子を被った男だった。

山賊「死ねぇ―――!」


俺「うおっと!」

勢いに任せて振り下ろされた大鉈の一撃を、俺は左手のソードブレイカーで受け止めていた。
ソードブレイカーは武器として使える短剣でありながらも、盾の代わりに装備する事も可能な為、俺は右手の片手直剣と併用して、左手にソードブレイカーを持つ事でサブ武器のように使う事にしていた。
だが、通常の盾に比べて防御性能は確実に劣る為、長時間は大鉈の攻撃を耐える事は出来ないのは言うまでもない。
だが、すでに敵は一人となった今、多少の時間を稼ぐだけで充分だ。

山賊「ぐわぁっ!」

レイナ「…………」

隙の出来た山賊に対してレイナが発動した単発上段斬りの両手剣ソードスキルのカスケードが襲った。俺のソードブレイカーと押し合っていた為、全く美味を守る事が出来ぬまま、レイナのソードスキルをまともに食らい、山賊のHPバーが一気に減少してグリーンゾーンからイエローゾーンへ、そして危険域であるレッドゾーンにまで減少していた。
そして、レイナのソードスキルを食らった事で、俺のソードブレイカーとせめぎ合っていた大鉈は奴の手から離れて地面に落下し丸腰となった。
レイナはソードスキル発動直後の硬直ですぐには攻撃出来ないので、ここは必然的に俺が止めを刺す事になる。

俺「こいつでクエスト達成だ!」

山賊「っくそぉ―――――!!」

その山賊の最後の雄叫びは、周辺にいた何人かのプレイヤーが振り向いていた。俺の片手直剣ソードスキルのスラントは単発斜め斬りのソードスキルだった。
右上からの斬り下ろしと左下からの斬り上げの二つのバリエーションがあるのだが、どっちにしろHPがレッドゾーンの敵の止めを刺すには十分で、その一撃でHPを完全に全損した山賊のリーダーはその場に倒れてその身体は青白いポリゴンと化して四散し、消滅していった。

そして、クエストの報告をする為、既に夜遅い時間だったが、俺とレイナは直ぐに山岳地帯の村に戻り、クエストの依頼人であるNPCに依頼完了を報告して報酬を受け取った。
俺とレイナで3000コルを1500コルずつで山分けして、肝心なのはもう一つの報酬である結晶アイテムの《記録結晶》だった。
アイテムウインドウからヘルプを選択し、アイテムの詳細を表示して見ると、このように表記されていた。

『使用回数は3回までで、発動中は周囲の音声を録音可能。録音した音声は任意で削除可能』

俺「こいつが一個だけじゃ、2人で分けっこなんて出来ないわけだが……」

オブジェクト化されて、青白い光を輝く結晶アイテムを見ながら、俺はレイナに対して新しい提案をしようとしていた。
レイナはと言うと、その結晶アイテムに興味が無いのか、興味があっても表に出さないだけなのか、相変わらず表情一つ変える事はない。

俺「こいつの使い道とかもあるし、これからもしばらく組まないか?」

レイナ「……私と貴方で?」

レイナが小さく首を傾げながらそう聞き返した。

俺「他に誰がいるってんだよ」

ぶっちゃけ、この提案の理由の半分くらいは下心が占めている。全てのプレイヤーが現実世界と全く同じ姿となった今のSAOプレイヤー全体の中で、女性プレイヤーの数は恐らく2割強。
更にその中で、俺と同年代で容姿端麗である女性プレイヤーなど、この先何人も出会えると言う保証はない相手だ。
今日俺は、このレイナを含めて三人の女性プレイヤーと関わっていた。情報屋のアルゴも、露店をやっていたリズベットも比較的、容姿は恵まれているとは思うのだが、レイナの美貌はその二人を確実に上回っており、更に都合の良い事に、この三人の中でレイナが俺と共に過ごした時間が長く、この三人の中ではレイナが最も、ここで組む事が出来る可能性が高い。

レイナ「…………」

俺「…………」

数秒間の沈黙が、異様に長く感じた。レイナは俺の心の中を占める下心を読み取っているんじゃないか?
ぶっちゃけ、ゲーム内とは言え、うまい具合に事が進んで、レイナと色んな事が出来るチャンスが巡ってくれば良いなとか思っているのも事実だ。

レイナ「……それで良いわ」

俺「え……?お、オッケー……なのか?」

レイナ「……ええ、オッケーよ。貴方は強いから、一緒に戦う戦力として心強いから」

オズマ、その心中は凄まじく舞い上がっていた!オズマが今まで生きてきた14年間の中でも屈指の美少女と言えるレイナとこの先も行動を共にする事が決定!
オズマは見出したのであった……デスゲームの中での生き甲斐を!食欲、睡眠欲を遥かに凌駕する性欲を満たせるかもしれぬ相手を!……by立木ナレ 
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