| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ

作者:エギナ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

00.黑猫と白猫
第二章
  Phase.05

 レンは琴葉の執務室から出て、自分に与えられた部屋に戻る。琴葉の執務室程の広さは無いが、そこそこ広い部屋で、ソファやローテーブル等も用意して、何時でも幹部や首領が来ても問題が無いようにしてあった。

 黑猫は、元々は人外を排除しようとする白猫に対抗して作られた組織。なので、今も白猫と戦う事は多くある。
 実際、今紫苑が、白猫の息が掛かっている商店街を、丸ごと潰しに行っている。琴葉からの情報では、その商店街には白猫の研究員が居る事務所の一つがあるらしい。データを奪っても此方に利益は無いから、其れなら潰してしまえ、と言う琴葉の指示を受け、紫苑を隊長として、殲滅作戦を行う事になったのだ。

 物騒な組織だよなぁ、と思いつつ、次の任務の書類に目を通す。
 次の任務は、如何やら白猫拠点に乗り込み、幹部の情報を盗み取る事が目的らしい。だが、確か敵幹部の情報は既に在った筈。確認の為にもう一度手に入れる事が琴葉の目的なのかもしれないが、もう一度拠点に乗り込んで手に入れるとなると、犠牲者が出てしまい、此方にとって利益は無くなってしまう。そして、返り討ちにされたとなれば、敵の方に利益が生まれてしまう。

 「猫」では、首領が出した任務を、琴葉が受け取り、それをレンに回して作戦を立て、そして琴葉に戻して会議を開く、と言う流れで任務となる。だが、偶に琴葉が任務を出す事があり、次の任務がそのパターンだった。なので、作戦を立てる仕事を持つレンは、「作戦立案係」と言う係りに就いている。

 すると、急に廊下がバタバタと煩くなる。そして、ドアがドカン!と言う音を立てて開いた。
「作戦立案担当! 黒華幹部だ、失礼するよ‼」
 謎の声と共にレンの仕事部屋的な部屋に入ってくる琴葉。先程とは違い、青い帯が巻かれた黒い帽子を被り、黒い外套を羽織っている。

「ど、如何したんですか? 琴葉さん」
 レンが慌てながらそう問うと、琴葉は帽子を被り直しながら返した。


「敵襲だよ」


 レンは直に椅子に掛けてあった外套を持ち、仕事部屋を琴葉と共に跳び出す。そして、廊下を駆け抜けながら外套の袖に腕を通す。少し袖を捲ってから、琴葉の方に視線を向ける。「準備完了」の合図だ。

「私が出て、更に君を呼んだって事は分かると思うけど」琴葉がチラリとレンに視線を送る。それを感じたレンが、静かに言う。
「『幹部レベルの人間を含めた襲撃』って事ですよね」

 基本的に、襲撃に琴葉が対応する事は無い。戦闘員では無い、レンや宙もあまり対応する事は無い。戦闘向きではない構成員を出すまでも無いからだ。十分に鍛えられている戦闘員だけで、事は全て足りる。
 だが、幹部が出てくるとなれば話は別。まだ一度も幹部が襲撃に参加して来たことは無かった為、相手がどれ程強いのかも分からない。その状態で戦うのは危険な為、非戦闘員と幹部も対応にあたる事になったと、琴葉は言う。

「琴葉さん!」
 廊下の向こうから宙も走ってくる。宙も琴葉と同じ帽子と外套を着ている。

「レンと宙は後衛で指示出して。私は前衛に居る。涙があと前衛に居るよ。リサとユリは後衛からの援護を頼んである。紫苑は今引き返して来てるから、後で前衛に合流。輝が今後衛に居るから、早く合流して。襲撃はこれまでとは規模が違うって。かなり危険だから、身の危険を感じたら撤退するように伝えてある。二人も、絶対死ぬなよ?」
「はい!」と、鋭い返事が廊下に響く。それを聞いて安心したようで、琴葉は廊下の窓を開く。
「え、琴葉さん? 何をして……」

 そして、窓枠に手を掛け、琴葉は其処から飛び降りた。

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧