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ソードアート・オンライン~遊戯黙示録~

作者:マローン
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FILE2 始まりを告げるデスゲーム


山谷で素寒貧な生活を送っていた少年、小田桐弭間ことオズマは、世界初のVRMMORPGであるソードアート・オンラインにログインし、仮想空間で剣を振るっていた。
だが、正式サービス当日にログアウトが出来ぬと言うトラブルが発生!全プレイヤーが強制的にはじまりの街に集められ、そして頭上に現れた真紅のローブはこう言った――――by立木ナレ

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

果たしてこの言葉は何を意味するのか!?そして、プレイヤー達はこれからどうなるのか!?by立木ナレ


※ ※ ※


俺「何言ってやがるんだ……あの赤ローブ?」

取りあえず、あの赤ローブが運営サイドのゲームマスターなのはなんとなくわかる。だからと言って改めて私の世界とか言うのも、どうかと思うが、赤ローブは構う事なく、更に言葉を発する。

「私の名前は茅場晶彦(かやばあきひこ)。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ」

俺「誰だよ一体……?」

聞いたことの無い名前を名乗るその赤ローブだったが、意外と有名人らしく、一部の連中が『茅場だと!?』とか『なんで茅場晶彦が?』と騒ぎ始めていた。

茅場晶彦とは、数年前まで数多ある弱小ゲーム開発会社に過ぎなかったアーガスが、最大手と呼ばれるほどまでの成長を遂げる原動力となった、若き天才ゲームデザイナーにして量子物理学者であった!
そして彼は、SAOの開発ディレクターであると同時に、ナーヴギアそのものの基礎設計者でもある!by立木ナレ

茅場「プレイヤー諸君は、既にメインメニューからログアウトボタンが消滅している事に気付いていると思う。しかしゲームの不具合ではない、繰り返す。これは不具合ではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である」

俺は直接確認したわけではないが、他のプレイヤー達の言葉でそれは既に気が付いていた。だが、それが不具合ではなく本来の仕様と言う言葉を聞き、俺はとてつもない悪意を感じてならなかった。

茅場「諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトする事は出来ない」

俺「城って……アインクラッドの事か?」

だが、茅場はそんな俺の疑問に答える事無く、それどころかそんな疑問どころではない言葉を発する事になる。

茅場「……まだ、外部の人間による、ナーブギアの停止あるいは解除も有り得ない、もしそれが試みられた場合――――ナーブギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、生命活動を停止させる」

なんだそれ?マイクロウェーブとか、信号素子とか、俺の知らない単語がゾロゾロと出てきやがってややこしいことこの上ない―――だが、しかし、否応でも最後の言葉の意味だけは分かった。

俺「それって、死ぬって事だろ……」

だが、ナーヴギアにそんな事が可能なのか?それは、ナーヴギアを単なるゲーム機としてしか見てこなかったこれには、必ずしもそんな事はあり得ないなどと言う根拠は無かった。

オズマが知ることではないが、ナーヴギアは、ヘルメット内部に埋め込まれた無数の信号素子から媚薬な静電気を発生させ、脳細胞その物に疑似的感覚信号を与える。
まさに最先端のウルトラテクノロジーと言えるのであるが、実は原理的には電子レンジと同様であり、充分な出力さえあれば、ナーヴギアは、プレイヤー達の脳細胞中の水分を高速振動させ、摩擦熱によって蒸し焼きにする事が可能なのであった。
そして、ナーヴギアの重さの三割はバッテリセル……すなわち、ナーブギアには、高出力の電磁波を発生させられるバッテリを持ち得ている!!by立木ナレ

茅場「より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み―――以上のいずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、既に外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人などが警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果―――残念ながら、既に二百十三名のプレイヤーが、アインクラッド及び現実世界からも永久退場している」

誰の声だか知らないが、細い悲鳴が上がった。だが周囲のプレイヤーの大多数は、放心していたり、薄い笑みを浮かべたままだった。
俺自身、未だに奴の言葉をすべて受け入れる気になれず、その証拠に奴の話を何時までもボーっと聞き入れているだけだった。
と言うかアイツ、213人のプレイヤーが死んだとか、あっさりと言ってのけやがった……もし奴が本当に茅場で、奴がこの状況を作り出したのなら、既に奴は大量殺戮者だと言うのに。

「信じねぇ……信じねぇぞオレは」

それは、先程キリトと呼ばれた黒髪剣士と行動を共にしていたバンダナの曲刀使いの声だった。奴に限らず、俺を含めた大半は、そんな話は信じたくないのは当然だ。
だが、茅場はあくまでも実務的にアナウンスを続ける。

茅場「諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ている事を含め、苦r帰し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される危険は既に低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の身体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間の内に病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護体制の下に置かれるはずだ。諸君には、安心して……ゲーム攻略に励んでほしい」

俺「バカ言ってんじゃねぇぞ!俺達をゲームの世界に閉じ込めて、何を安心して攻略しろだって!?」

淡々と事務的にとんでもない事を言ってのける茅場に対して俺は声を荒げていた。だが、茅場の抑制の薄い声は、俺の声とは正反対に穏やかに告げる。

茅場「しかし、充分に留意してもらいたい、諸君にとってソードアート・オンラインは、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ。……今後、ゲームに於いて、あらゆる蘇生手段は機能しない。ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に諸君らの脳は、ナーブギアによって破壊される」

ようするに、このゲームの状況を簡単にまとめるとこう言う事だろう。

このゲームから自発的にログアウトする事は不可能で、ログアウトするにはゲームを完全にクリアするしかない。

そして、このゲーム内でHPが0になれば、現実世界の俺達も命を失う。

問題なのは、ゲームを完全にクリアすると言うのは、具体的にどういう意味なのかであるが、その答えは直ぐに茅場本人の口から告げられた。

茅場「諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べた通り、アインクラッド最上部、第百層まで辿り着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされる事を保証しよう」

一万人のプレイヤーが沈黙した。やはり、茅場が最初に口にした、城の頂と言うのは、このゲーム世界である巨大浮遊城のアインクラッドそのものであり、第百層までクリアする事を示していたのだった。

俺「出来るのかよ……?確か、βテストでは、二カ月かけて6層しかクリアできなかったはずだよな?」

今はベータテストの10倍の人数である一万人がログインしているとはいえ、その人数で実際に第百層までクリアするのにどれだけの時間が掛かるのかと考えると……俺達が現実世界に帰還できる日はまるで見えてこない。
つまり、俺自身もあの狭いアパートで、隣人同士の喧嘩が絶えず、生活保護の爺さんと、雀ゴロの親父と実際に顔を合わせるのはずっと先―――いや、俺がこのソードアート・オンラインでHPを失ってしまえば俺の死によりそれは永久に訪れなくなる。

茅場「それでは、最後に、諸君らにとってこの世界が唯一の現実であると言う証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ」

それを聞くや、自動的に、俺を含むすべてのプレイヤーはアイテムストレージを開いていた。表示された所持品リストの一番上にそれはあった。
アイテム名は『手鏡』。

俺はこんなのが何になるんだと思いながら、その名前をタップして、オブジェクト化のボタンを選択。きらきらっという効果音と共に、小さな四角い鏡が出現した。

俺はそれを手に取るが、何も起こらず、鏡に映っているのは俺がゲーム開始前に作ったこのゲームの世界での仮の姿である、アバターだった。

―――と。

突然、周囲のプレイヤー達、そして俺を白い光が包んだ。視界が白い光で覆われて何も見えなくなったが、数秒後には元の風景が現れて……

俺「誰だよ、こいつら……?」

その変化に俺は瞬時に気が付いた。周囲のプレイヤー達の顔、と言うか容姿が著しく激変していた。俺は直ぐに自分の身に起きた変化も確かめるべく、再び手鏡を覗き込むと、その鏡に映っていたのはゲームの為に作ったアバターではなく、現実世界の俺の顔だった。

俺「灰色の髪の毛だけじゃなくって、身長や体型まで再現されてやがるじゃねぇか」

どう言う仕組みで、身長や体型までもが、そっくりそのまま再現されたのかは分からないが、恐らくすべてのプレイヤーが現実世界の自分と同じ姿になったらしく、よく見てみると男女の比率も大きく変化していた。
プレイヤーの大半は10代~20代の若者で、男女比は大体ではあるが、男が8割弱で、女はせいぜい2割強程度の比率だろう。
茅場晶彦は一体何のためにこんな事までしているんだ?

だが、俺のそんな疑念に対する答えは、すぐに奴自身の口から出てくる。

茅場「諸君は今、なぜ、と思っているだろう。なぜ私は―――SAO及びナーヴギア開発者の茅場晶彦はこんな事をしたのか?これは大規模テロなのか?あるいは身代金目的の誘拐事件なのか?と――私の目的は、そのどちらでもない。それどころか、今の私は、すでに一切の目的も、理由も持たない。なぜなら……この状況こそが、私にとっての最終目的だからだ。この世界を創り出し、観賞するためにのm私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた」

俺「マッドサイエンティストが……!」

おそらく、俺がそう毒づいているのなど気が付いていないか、まるで気にしていないのだろう。無機質なままの茅場の声が更に響く。

茅場「……以上でソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤーの諸君の―――健闘を祈る」

その言葉を最後に、巨大なローブ姿が音も無く上昇し、空を埋めているシステムメッセージに溶け込むように同化していく。
天井一面に並ぶメッセージも同じように消滅していった。

気が付けば、ゲームは本来の姿を取り戻していた。だが、幾つかのルールが、以前とは途方もない程に激変していた!by立木ナレ

「嘘だろ……なんだよこれ、嘘だろ!」

「ふざけるなよ!出せ!ここから出せよ!」

「こんなの困る!このあと約束があるのよ!」

「嫌ああ!帰して!帰してよおおお!」

悲鳴。怒号。絶叫。罵声。懇願。そして咆哮。わずか数十分の事であった、ゲームプレイヤーから囚人へと変えられた人間達は頭を抱えて蹲り、両手を突き上げて、抱き合い、あるいは罵り合う!
一方でオズマは、そんな無数の叫び声を聞いている者達に対して、冷静で……そして、冷めたような感情を抱いてこう呟いていた。by立木ナレ

俺「喚いてどうする……!こいつら――つくづく救えねぇ!」

俺は何時までも喚き散らしている連中を尻目に、いち早くはじまりの街を出る事を決意していた。このゲームがデスゲーム化した以上、生存率を高める為に他のプレイヤーと手を組むのが有効だとは思ったのも一瞬だった。
とてもすぐに戦える様子ではなく、こいつらが落ち着くのを待っていたらすぐにβテスター達に出し抜かれるのは必須だった。

何故なら、MMORPGは基本的にプレイヤー間のリソースの奪い合いになり易い。はじまりの街の周辺フィールドは短時間で狩り尽くされてしまい、そうして枯渇した場合はモンスターの再沸出を待ち続ける羽目になるし、βテストで一般プレイヤー達よりも効率の良い狩場や、クエストを知っている奴らは、自分達の生存を最優先して、そんな狩場やクエストを独占しようと目論む者が現れるだろう。

ここでモタモタしていたら、そんな事を考えている連中にあっという間に出し抜かれてしまう。

俺「つーか、負けたら死ぬなんて、なにもこのゲームの中だけじゃないしな」

オズマが生まれ育った町、山谷地区はもとより、借金を抱えて破産した者、職も家族も家も失い孤独になった者、そんな者たちが多く集まる街であり、オズマは目の当たりにし続けていた――――負け続けた者達の末路を!負け続けの人生を送って来た者の末路は大抵は悲惨、ある者は路上で酔い潰れたまま凍死、ある者は借金苦に喘ぎ自殺、ある者は端金を巡る金銭トラブルで殺される……ともかくオズマは嫌と言うほど目の当たりにしてきた、負け続ける事によって訪れる無残な末路を!
オズマにとってはこのソードアート・オンラインも、現実世界も、負け続ければ死の世界!故にいち早く覚悟決めて戦う決意を固める!by立木ナレ 
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