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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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やらなくちゃいけないこと

 
前書き
最近スマホを変えたことでゲームがサクサク進む・・・
おかげで小説が全然進んでないです(笑) 

 
「レオン・・・」

水色の髪をしているものの、そこにいるのはシリルと共に切磋琢磨してきたレオンそのものだった。彼は現れた少年を見据えると、ニヤリと笑みを浮かべていた。

「ついに来てしまったんだね、シリル」

自分の肉体でもあり、最大の強敵と位置付けてもいい人物の登場のはずなのに、焦るどころか何やら計算通りのような素振りを見せるティオス。その姿にシリルは思わず背筋が凍った。

「カミューニ・・・」

俺と共にこの場にやって来たラクサスは大切な親友であるカミューニが意識を失っているのを見てティオスを睨み付けた。

「またお前か?性懲りもないな」

一度は自らが片付けたラクサスがまたしても挑んでこようとしていることに内心怒りのような感情を抱いているティオス。一方のラクサスも、恐怖心があるのかあと一歩踏み込むことができそうにない。

「アイスメイク・・・スノードラゴン!!」

ティオスが動くのかと思われた、それを阻止したのは新たに戦場に駆けつけた魔導士たち。そのうちの一人が氷のドラゴンを送り出したことにより、ティオスはそれを回避するしかなくなった。

「隙あり」
「!!」

ジャンプで攻撃を回避したティオス。そんな彼にオーガストは杖を向け、雷を落とす。

ドゴォン

多方面に警戒していなければならなかったこともありティオスは反応が遅れてモロに直撃した。だが、誰も決して余裕を覗かせることはない。なぜならこれでも、彼にダメージを与えられているかは謎だからだ。

「ラクサスの雷か・・・相変わらず仕事が早いな」

煙の中から現れたティオスはやはり無傷だった。おおよそ予想していた展開であったため、誰も動じることはなくなっていた。

「滅竜の力でも突破はできないか」

冷静な表情でティオスを見たあと、一人の少年に目を向けるオーガスト。

(彼がこの戦いのキーマンか)

水色の髪をしている女の子のような少年。彼が突破口であることを読み取った魔導王は、次に自分が何をするべきなのか、頭を悩ませていた。



















「天海を倒せるのはティオスだけ・・・だが、どうやってティオスに奴を止めさせるのだ?」

もっともな意見。ヨザイネの希望的観測はよくわかったが、それはそれで難しいところがあるのは言うまでもない。

「これはもう・・・あの子たちに任せるしかできないわ」

ティオスとぶつかり合うフィオーレの魔導士たち。そしてそこに向かうスプリガン16(セーズ)やまだ合流できていないフィオーレ軍。

「全員で団結すれば、ティオスはきっとわかってくれるはず・・・こんな争いが無意味であることに」

祈るように手を握り合わせる彼女を見て、ドラゴンたちはゆっくりと目を閉じた。

「信じよう、私たちの子を」


















ガンッ

掻き回されていく戦場。そして妖精の尻尾(フェアリーテイル)でも、ようやく巡りあった兄弟が己の目的のために血で血を洗う戦いを始めていた。
ナツの拳を同様にして受け止めたゼレフ。その腕をナツは払い除け、バランスが崩れた彼は地面に倒れる。

そこに拳を降り下ろしたがゼレフはそれを読んでいた。転がるようにして回避すると、そのまま飛び上がり回し蹴りを押し込む。ナツはそれを受け止めたものの、ゼレフの力業により壁に打ち付けられた。

「ナツ!!」
「いってぇ・・・」

ルーシぃが大きな声を出すが当人は至ってピンピンしていた。しかし、ゼレフはある感触を得ている。

「やっぱり思った通りだ。イグニールの力は消えた。それでは僕には勝てないよ」

炎竜王の力を得ていた先の戦いとは異なり、ナツにはもうその力は残されていない。ハッピーはその原因が自分にあると感じており、表情が暗くなっている。

「まだ俺の力がある」

それでもナツには一切諦める言葉はない。彼は自らの力を信じ、勝利のために突き進もうとする。

「・・・それは楽しみだ」

だが、ゼレフはその弟の姿に内心希望が消え失せていた。しかし、彼も彼の目的のために進もうと目の色を変えた。



















「こんなことが・・・」

地面に手を付き体を震わせているアクノロギア。それを見下ろしている天海は不満げな目をしていた。

「これが竜王・・・か」

この世界で一番強いと言われていた竜王・アクノロギア。そんな彼でさえも、この男の前では歯が立たない。それが彼にとっては残念で仕方がなかった。

「お前のようなものがドラゴンの頂点であれば、やはりこの世界は大したことがないんだろうな」
「なんだと・・・?」

天海の挑発とも取れる発言に黙っていられるわけがない。これ以上の醜態を晒すまいとアクノロギアはその姿を変化させていく。

「我は竜の王、アクノロギア!!この世界で一番強い者なり!!」

黒竜へとその姿を変化させたアクノロギア。彼の真の姿を目の当たりにした天海は、人間の姿の魔力とは比べ物にならないそれに震えていた。

「これを待っていた・・・貴様が本気になるこの時を!!」

武者震いが止まらない天海。ひたすらに強者との戦いを望む彼ならではの反応ではあったが、アクノロギアはここまでの劣勢を感じさせないほどに余裕を見せていた。

「我の本気に、人間ごときが勝てると思うなよ」
















硬直状態と化している戦場。その理由は、ティオスとオーガストが互いににらみ合い、皆割って入れないからだ。

「いかがなさいましたか?オーガスト様」

ここまで慎重なオーガストを見たことがなかったアイリーンは不信に思い声をかけた。だが、彼は一切口を利こうとはしない。ただ静かに、物思いに更けていた。

(滅竜の力でもダメージを与えられない・・・天使の能力を最大限に生かしているからと言われればそれまでだが・・・)

かといってこのまま闇雲に攻撃を繰り返してもただこちらが消耗するだけ。そうなってはティオスにチャンスを与えるだけになってしまう。

(ダメージを与えられるとすれば、彼以外にはいないのか?)

ヨザイネの息子であるシリル。彼しか今のティオスにダメージを与えられる者はいない。それを理解したオーガストは、念話でティオス以外の全員に作戦を伝える。

『皆、聞いてほしい。ティオスにダメージを与えられるのはシリルしかいない』
「俺?」
『そうだ。だから皆、彼に攻撃のチャンスを作ってほしい』

全員が囮になりシリルの攻撃をティオスに当たるように誘導する。それさえできれば活路は見出だせるはず。それを聞いた魔導士たちは、視線を合わせた。

「やってやるぜ」 
「ギヒッ」
「俺たちでこいつを倒す」

中でも最も気合いが入っているのは滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)たちだ。後ろにはアクノロギアもいる。その姿を見れば、自然と気合いも入るというもの。

「雷竜の・・・」
「鉄竜の・・・」
「白竜の・・・」
「影竜の・・・」
「幻竜の・・・」 
「「「「「咆哮!!」」」」」

五人揃ってのブレス。これを見てティオスは片手を前に出しガードする。

(ここだ!!)

そのタイミングで動き出したシリル。彼はラクサスたちのブレスに隠れるようにしてティオスに接近していく。

「狙いはいい。だけど・・・」

ブレスが消えるとそこには向かってきていた水竜の姿。完全に不意を突いたように思われた。しかし・・・

「忘れるなよ、俺はお前でもあることを」

ティオスは何事もなかったかのように、シリルの拳を受け止めた。

「お前の考えていることなどおおよそ読める。お前の戦い方なら特にな」

掴んだ手を振り払うようにして薙ぎ倒す。シリルは地面を転がるが、すぐさま立ち上がる。

「ハァッ!!」
「ヤァッ!!」

その間にアイリーンとエルザがティオスに飛びかかる。が、彼は体を横に軽く反らすだけでそれを回避すると、頬を大きく膨らませ、ブレスで彼女たちを襲う。

「「きゃああああああ!!」」
「エルザ!!」

氷の波動でズタズタにされた緋色の親子は辛うじて意識がある程度。ジェラールが最愛の女性にすぐさま駆け寄る。

「無防備に俺に近付くとは、勇者だな」
「!?」

だが、それは自殺行為とも言えるものだった。エルザたちはティオスの目の前にいる。そのため、彼女たちに駆け寄るということは、彼に無防備に接近することになってしまうのだ。

「毒竜の握擊!!」

そんな彼を援護するためにエリックが飛びかかる。しかし、エリックはキナナを攻撃から守るためにダメージを受けていたこともあり、動きが鈍い。

「邪魔」

彼を左腕を振るうだけの風圧で吹き飛ばしてしまうティオス。彼はエリックが地面に転がるのを確認すると、ジェラールに向かってトップスピードで向かっていく。

「サンドウォール!!」
「!?」

ジェラールを仕留めようとしたその時、二人の間に割って入るように砂の壁が立ち塞がった。

「この魔法は・・・」

壁の直前で足を強く踏み込みそれを飛び越えるようにしようとしたティオス。だったが、彼の目の前に一人の女性が剣を構えて飛び上がっていた。

「ハァッ!!」

剣を振り下ろしたディマリア。ティオスはそれに間一髪で氷の盾を造形し事なきを得た。

「後ろがガラ空きだぞ」

ディマリアに意識が向いていたティオス。そのせいか、彼は背後にやって来ていたジェイコブに気が付かなかった。

「このっ・・・」

咄嗟に氷の盾を消し去ったティオス。それをチャンスと捉えたディマリアが勢いを殺さずに突っ込むが、ティオスは彼女の手首を掴みジェイコブにぶつける。

「キャッ!!」
「ガッ!!」

空中では自由が聞くはずもなく衝突する二人。彼女たちはそのまま地面へと叩き付けられた。

「アルバレスのスプリガン16(セーズ)!?」
「貴様ら・・・なぜ?」

ゼレフを守るための盾であるはずの魔導士たちが、フィオーレ軍についている。それも一人や二人の話ではない。全員が味方になっているのだ。

「私が声をかけたの」

そう言って名乗り出たのはブランディッシュ。彼女はルーシィに助けられた仮を感じていた。それを返すためにティオスを倒そうと決意すると、皆がそれに付いてきてくれたのだ。

「勘違いするなよ。俺はティオスを倒すためにやってるんだ」
「黄泉の世界へと誘ってやろう、ティオス」

ティオスに一度はトドメを刺されたものだけではない。ワールやブラッドマンまでもティオスと戦うためにやって来ているのだ。当然ティオスもまずいと感じているのだろう、額の汗を拭い、彼らを見据える。

(数だけ増えてきやがって・・・大したメンツでもないくせに)

彼はゾンビのように次から次へと沸いてくる敵に苛立っていた。彼はしばし沈黙すると、目線を下げる。

(この体にも大分慣れてきた。だが、不完全であることに違いはない)

カミューニの不意討ちにより片腕を失っている彼からすれば、この戦いはあまりにも不本意。慣れて動きが良くなってきているとはいえ、本来のそれからは程遠いことはわかっていた。

(この体を何とかしなければならない。しかし、そのためには奴が邪魔だ)

ティオスの視界に入る一人の老人。ティオスは彼に照準を合わせていた。

(強引ではあるが仕方ない。これしか方法はないだろうしな)

ニヤリと不敵な笑みを浮かべたティオス。すると、彼はなぜかダメージを軽減できる漆黒の翼を引っ込めたのである。

「?」

それに疑問符を浮かべたのはオーガスト。彼はこのタイミングでティオスがそんな行動に出る理由がわからなかった。

(これはチャンスなのか?はたまた何か裏があるのか?)

ティオスの意図を読み取れないオーガスト。彼はしばし沈黙していると、ティオスが先に動いた。

「氷神の怒号!!」

広範囲に広がる氷のブレス。それは一瞬で魔導士全員を飲み込み、辺り一面を銀世界へと変えてしまった。

「やっとこの体にも慣れた。もう不覚は取らないぞ」

その言葉を聞いてオーガストは確信した。ティオスはダメージを軽減するためだけに出していた翼を引っ込めたのは、極力本来の自分で戦いたいからなのだと。

(考えてみれば当然か。こいつの力があればあの翼を使うことはないはず・・・慣れない状態よりも、少しでも感覚を掴んでいる姿で臨みたい気持ちはよくわかる)

オーガストはティオスの罠にハマっていることに気付けなかった。いや、気付けるわけがなかった、なぜならそうなるようにティオスがマインドコントロールをしていたのだから。 

(餌は蒔いた。さぁ、食い付け!!)

笑っているティオスの思考を全く読み取ることなどできなかった。それだけオーガストはこの好機を逃してはならないと焦っていたのかもしれない。

「アイリーン、全員を守っておいてくれ」
「オーガスト様?」

突如頼りになる女性にそう告げたティオス。彼が何をしようとしているのかわからなかったアイリーンはキョトンとしていた。そんな彼女のことなど気にすることもなく、オーガストはティオスに接近する。

(食い付いた!!)

それを見た瞬間、ティオスは笑いが止まらなかった。自分の予定通りに動いてくれる最重要人物。オーガストは自分が意のままに動かされていることに気付かぬまま、ティオスの腕を掴んだ。

「!!みんな!!自分の全魔力を防御に集中させて!!」
「「「「「え!?」」」」」

アイリーンはオーガストが何をしようとしているのか察した。だからこそ叫んだ。彼の決死の作戦を無駄にしないために。

「私は・・・生まれながらに強大な魔力を持っていた。ゆえに捨てられ、疎まれ、生きることの行き止まりの壁に着いたとき、陛下に命を救われた。だからこそ・・・」

オーガストはメイビスへと視線を向ける。彼女の心配そうな顔を見た彼は思わず笑ってしまった。

「お母さん、陛下を・・・いや、お父さんを止めてください。それができるのは、あなたしかいない」

最後の願いだった。父のやろうとしていることを唯一知っている彼だからこその願いだった。そしてそれは自分たちでは止められないことも理解していた。それができるのは、彼が愛した最愛の彼女だけであると。

「こやつは私が倒そう。この身ごと」

輝き出すオーガストの肉体。その光は大陸中を照らすほどだった。

「なんだこれは・・・」
「息が・・・」

その場にいた・・・いや、フィオーレにいたすべての人々が胸を押さえてその場にうずくまる。

(この魔法は・・・生物の血を蒸発させ、大地を溶かす禁呪・・・古代魔法アルス=マギア!?)

いくつもの魔法を知る彼女は自分の知識の中からこの魔法が何なのか探り寄せた。そしてこれがどれだけ危険な魔法であるかも彼女は理解していた。

「散れ、ティオス。灰となりて・・・我が人生としよう」

どんどん高まっていくオーガストの魔力。それを間近で受けているティオスの口から血が漏れた。

「やるぅ・・・さすがオーガストだ」

笑ってはいるものの、そこまでの余裕は彼にはないはずだ。この魔法は危険であるがゆえに古に忘れ去られた魔法。その事は彼も重々承知している。

「やめてオーガスト!!それはあなたの身も滅ぼしてしまいます!!」
「お母さん・・・止めないでください。もう、決めたんだ」

メイビスの願いも虚しくオーガストは魔法を止めることをしない。この魔法は大陸の生物すべてを仕留めるほどの威力がある代わりに、術者も必ずその身を滅ぼしてしまう。 それでもオーガストはこの魔法を選択した。それだけの覚悟があるということだ。

「全員!!もっと魔力を集中させて!!この街すら消し去ってしまう魔法なの!!何とかして自分の身を守って!!」

大気に付加(エンチャント)することで極限まで被害を押さえようとしているアイリーン。それでも完全ではない。全員の命が保証されることはない。だからこそ彼女は魔力を防御に変換させるように叫び、皆が言われるがままにした。

「お母さん・・・あとは頼みます」

次第に崩れていくマグノリアの街。その中でようやく母に存在を気付いてもらえた息子は、必死に命を賭けた。

「これで終わりだ、ティオス」
「あぁ、終わりだ」

父をも脅かす絶対悪。それを殺せるのなら自らの犠牲などどうでもいいと思っていた。最後に選んだ魔法の威力はあらゆる生物を殺せる禁術・・・いかにティオスであっても、これに耐えうることはできない。 

「お前がな」
「!?」

ニヤリと笑みを浮かべたティオスは漆黒の翼を再び背中から生み出す。それに気付いた時には、もう遅かった。

(はめられた)

ピカァッ

大きな輝きを発したオーガストの体。その日、マグノリアの大地が消え去った。


















光が収まったマグノリア。その場に居合わせた魔導士たちは周囲を見渡す。

「生きてるのか?俺たち」

奇跡と言ってよかった。オーガストの決死のアルス=マギア・・・それを受けても全員生存することができた。
もちろん無傷と言う訳にはいかない。多くの者が気を失っている。それでも確かに彼らは繋ぎ止めた命を。

「あぁ、生きてるよ」

ホッと一安心。思わず抱き合って喜びそうになった彼らだったが、その肯定の声に固まり、そちらを振り向いた。

「俺も含めて全員が・・・な」
「バカな・・・」
「なぜ貴様が・・・」

オーガストの魔法を目の前で受けていたはずのティオス。そんな彼は漆黒の翼を背中にし、平然と立っていたのだ。

(オーガスト・・・あなたの死を無駄にはしません)

そんな中、メイビスは一人決意していた。

(ティオスもゼレフも、私が倒してみせます!!そのためには・・・)

小さな少女の大きな決意。メイビスはティオスに気付かれないように、その場を駆け足で後にした。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
なかなかやりたい展開に持ち込めず投稿が予定より遅くなってました。
オーガストが決死の魔法でティオスを仕留めにいきましたが失敗。ここから果たしてどうなってしまうのか、お楽しみに。 
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