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虹にのらなかった男

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P4

アブルホールをMS形態に変形させて避難の補助をしていると不意に通信が入った。

母艦…ホワイトベースからの直通だ。

ガンダムとも繋がっているらしい。

『サイド7に残ったガンダムの部品は破壊しろ!』

『なぜです?まだ三機分くらいは…』

『ジオンに機密を渡せと言うのか!』

どうやら残った部品をどうするかで揉めているらしい。

「待て!ブライト少尉!技術士官としてそれを認める訳にはいかない!
アレはこれから必要になる!」

『ガンファイターにも…!
子供が口出しするな!』

んだと?軍歴6ヶ月のひよっこめ…!

「私はV作戦RX計画副長アベル・ルセーブル技術中尉!貴様より階級も軍歴も上だバカ!
ガンキャノンとガンタンクの部品は最悪捨てていい!ガンダムとあぶ…ガンファイターの部品だけは回収しろ!」

『なんだと…!?』

「命令だノア少尉」

『くっ…了解した』

「カシアス中佐もよろしいですか?」

カシアス中佐とは、以前会って話した事がある。

ホワイトベースの艦長は、V作戦の要と言える人物であり、RX計画とも深く関わるからだ。

『君が…言うのなら、そうしたまえ…うぅ…!?』

「カシアス中佐!」

くそっ…。

「アムロ君。積み込み急ぐぞ!」

『はい!わかりました』

side out











時は少し遡り、コロニー隔壁内部第384通路内では三人の人影が駆けていた。

ズンッという振動が三人を襲う。

「ぐっ…ローザちゃん、大丈夫かい?
アオちゃんは?」

「だ、大丈夫でしゅ…」

「問題ないっすよ」

アオはアベルに言われた通り、ローザとヴェルツを捕まえ、384通路からホワイトベースへ向かっていた。

「ジオンの攻撃…アベルは何か知っていたのか…?」

「ヴェルツ大尉?」

「アベルの態度…ジオンの攻撃タイミング…まさか…アベルの奴スパ…」

ヴェルツは最後まで続ける事が出来なかった。

叩かれたからだ。

パイロットスーツのうえから、腰の辺りを叩かれた。

叩いたのは、ローザだった。

「お兄ちゃんはスパイなんかじゃないもん!
お兄ちゃんはガンダムとアブルホールつくったもん!
ジオンをやっつけるんだもん!」

「ああ、えっと、ごめんよローザちゃん。
俺もこの状況で頭がおかしくなってたみたいだ」

「ちがうもん…お兄ちゃんはれんぽうの士官だもん…」

「ああ、そうだな」

「ま、私は副長がスパイじゃないって確信あるっすけどね」

「「?」」

「副長のロザミィちゃんを思う気持ちは絶対に本物っすよ。
だから、あの人がロザミィちゃんの身に危険が及ぶような事、するわけないじゃないっすか」

その言葉は、ヴェルツの心にストンと落ちた。

仲睦まじい義兄妹の愛情を見てきたからだ。

「よし、じゃぁお兄ちゃんを信じて頑張ろうローザちゃん。
ホワイトベースまであと少しよ!」

「うんっ!」

再び三人が走り出す。

ここで一つ思い出すべきはサイド7は最も新しいサイドであり現在この1バンチですら建設途中という事だ。

そこらじゅうに建設途中のエリアや重機がある。

ズンッ…という振動が辺りに響く。

ピシッと音がした。

小さな音だった。

だが、それは予兆だったのだ。

「伏せろ!」

ヴェルツが叫びながら、二人に覆い被さった…










side in

「アベル・ルセーブル。着艦します」

飛行形態のアブルホールをホワイトベースに着艦させる。

アムロはスーパーナパームで本当にどうしようもなく壊れた部品を焼き払いに行った。

アブルホールもウェポンコンテナにスーパーナパームを搭載できるがデフォルトで装備できるガンダムの方がいいだろう。

「こちらルセーブル。ブリッジ、技術士官は収用しているか?」

出たのはノア少尉だった。

『収用しています。現在は怪我人の手当てを…』

あ…そっか。そっちか。

「数人でいいからこっちに回してくれ。ガンダムとガンファイターに弾薬を積み込む」

『では五人ほど』

「頼んだ」

通信を切る前のノア少尉のしかめっ面は、年下に命令される屈辱だろうか。

アブルホールから降りて取り敢えず一人で準備していると、アオを初めとした技術士官がやって来た。

「無事だったかアオ。ローザも無事だな?」

「はいっす…でもヴェルツ大尉が…」

「ヴェルツになにかあったのか!?」

「私とロザミィちゃんをかばって腕と肋骨を…。
でも命に別状は無いらしいっす」

ああ…よかった…。

よくはないが、不幸中の幸いだ。

「えと。じゃぁ先ずはアブルホールに実砲を込めてくれ。今度はくれぐれも模擬弾なんて入れるなよ」

「うぇ?副長模擬弾で出撃したんっすか?」

「おう。ザクのメインカメラ潰してガンダムのサポートしてたぜ」

「…………」

あれ、技術屋連中が黙った。

「副長殿。貴方はお若い。無理をなされるな」

年寄りくさい口調で俺をなしなめるのはRX計画の技術者で最年長、御年76歳のレンフレッド・スミス教授だ。

元は大学の教授で定年退職していたそうだがテムさんと知り合いだったらしく彼が連れてきたのだ。

「若いから無理できるんですよ教授」

「おお、およしください副長。私に畏まってはいけませぬぞ」

「いやぁなんか教授の口調で言われると、ねぇ?」

と残りの奴らに聞くとウンウンと同意した。

「おや、私がアウェーですな」

「まぁ、この話は後でじっくりしよう。
アオは俺とアブルホールの給弾。
残りはガンダムの装備の準備をしておけ」

「「「「「了解!」」」」」

全員がテキパキと動いてくれる。

楽でいい。

だが問題が一つ。

「なぁ、アオ」

「どうしたんっすか?」

「実砲どこよ」

先の騒ぎで急いで搬入したせいかどこに何があるか全くわからん…。

「しょうがない。WB備え付けの物を少し失敬しよう」

WBの機銃は二種類。

対MS用60ミリ、対人対空防御35ミリ。

アブルホールのバルカンはガンダムと同じ60ミリ。

「了解。許可は…」

「あとでいい」

緊急時だ。問題ないだろう。

ブリッジには伝えず機銃用の60ミリを拝借する。

アブルホールへの給弾をしつつ、ガンダムに給弾するためのコンテナを用意。

「副長。ウェポンコンテナどうするんっすか?」

「ウェポンコンテナ?あるのか?」

これはウェポンコンテナがあるか否かではなくコンテナの中身についてだ。

ミサイル、機雷、ビームキャノン…

バリエーションはいくつかあるがだいたいこの3つだ。

「ビームキャノンは有志の技術士官が搬入して直ぐに用意してたっす」

マジか!?

「よし!ビームキャノンもってこい!
アブルホールに接続するぞ!」

「了解っす!」

技術屋連中はガンダムの給弾コンテナを用意し終えると、直ぐ様アブルホールのコンテナを用意し初めた。

ビームキャノンのウェポンコンテナはコンテナ本体がジェネレータ内臓ユニットでその上に二門のビーム砲…Gパーツのアレが乗っているデザインだ。

飛行形態のアブルホールの後ろにユニットが置かれ、その間隔は50センチ。

接続の直前だ。

『副長。有線回路接続したっす』

「確認した」

コックピット内のモニターで確認。

現在はウェポンコンテナから伸ばしたケーブルをアブルホールに繋げた状態だ。

コンソールを操作する。

カチッとアブルホールの後方のツメが開いた。

「接続してくれ」

『了解』

ガチャン…という音がした。

「ロック」

ツメがウェポンコンテナをロックした。

「教授!異常ないですか?」

『ありませんぞ』

アブルホールの換装を済ませたタイミングで辺りが騒がしくなった。

『ジオン兵が侵入!ホワイトベース全隔壁閉鎖!』

シャアが来たようだ。

となればガンダムが直ぐに帰投する。

案の定唯一閉じなかった第一カタパルトからガンダムが戻ってきた。

そして直ぐにカタパルトハッチが閉まる。

「アムロ君!ガンダムにバルカンの給弾を行う!ガンダムをこっちに持ってきてくれ!」

『わかりました!』

ガション…ガション…とガンダムが歩いてきて、所定の位置に着いた。

技術屋連中が即座にバルカンの弾倉部を開け、マガジンを入れ換える。

更にはビームライフルを持ってきてガンダムに持たせた。

この間僅か一分半。

やっぱうちの連中頭おかしいわ…

『副長が一番頭おかしいっすけどね』

「アオってニュータイプ?」

『違うっすよ。ま、女の感って奴っすよ』

わーこわーい。

そこで艦内放送が響いた。

出港だ。

「総員!気密室へ!」

『ハッチオープン!ガンダム!ガンファイター出撃用意!』

「バカか貴様!気密チェックしたのか作業員まだ居るんだぞ!」

『…………』

モニターの中のノア少尉がすごい顔で睨んでくる。

『副所長!技術士官及び作業員気密ブロックに待避しました!』

「ブリッジ!ハッチ開けろ!」

『ハッチオープン!ガンダム、ガンファイターはホワイトベースの左右に展開!』

「了解」

正面のハッチが開く。

ハッチが開いた先でベイのゲートが開いていく。

「アムロ君。俺が先に出る」

『お願いします。えっと…』

「アベル。アベル・ルセーブル中尉だ」

『わかりましたアベル中尉』

アムロ君との通信を切る。

「アベル・ルセーブル!アブルホール出るぞ!」
 
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