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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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第61話

その後演習地に到着したリィン達は状況を整理する為にデアフリンガー号に入り、ミハイル少佐達と今まで手に入れた情報を共有し、今後の作戦を伝えた。



~デアフリンガー号~



「ふう………殿下、さすがに考え直してはいただけませんか?」

オリビエ――――オリヴァルト皇子によるリィン達の加勢を知ったミハイル少佐は疲れた表情で溜息を吐いてオリビエに考え直すように頼んだが

「いやいや、ボクはあくまで”愛の狩人”オリビエだからね。ヴァイス――――ヴァイスハイト皇帝陛下にも(一応)筋は通したし気にしないでくれたまえっ!」

「あ、あはは……」

「いや~……相変わらずッスねぇ、殿下。」

「クク、さすがはあのヴァイスハイトが”友”と認めた男だな!」

「もう……笑いごとではありませんわよ……」

(クスクス、”ただの新妻”を名乗っていた”某女神”を思い出すわよね♪)

(い、言われてみればそうですわね……)

オリビエは笑顔でミハイル少佐の嘆願をスルーし、その様子をトワやランディが苦笑している中、口元に笑みを浮かべて呟いたランドロスの言葉を聞いたアルフィンは呆れた表情で溜息を吐き、小声で囁いたレンの言葉にセレーネは冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。



「ハハ、2年前の通商会議がついこの前のようにも感じるね。ティータ君にしてみればこの格好は4年ぶりになるかな?」

「ふふっ……そうですね。お姉ちゃんたちと、アガットさんとシェラさんとオリビエさん、レンちゃん……浮遊都市(オーリオール)に乗り込んだのがつい昨日みたいに感じます。」

「うーん、懐かしいねぇ。クローディア姫やジンさん、それにリウイ陛下達もいたしねぇ……」

「フフ、気づけばあれから既に4年も経っているのですね。」

オリビエとティータ、サフィナの話を聞いていたリィン達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「そ、そちらはそちらで物凄く気になる話ですけど……」

「またの機会ということで今は”星見の塔”を目指そう。………ユウナ達はどうですか?」

「……まだ駄目みたいだな。立ち直ってくれると信じてるが。」

「でも、リィン君たちが動くなら第Ⅱとしても全面的にバックアップはするつもりだよ!――――ですよね、少佐!?」

「コホン、それについては元より私としても異存はないし、クロスベル帝国政府からもクロスベルに潜伏している結社の残党に対する第Ⅱ(我々)の軍事行動の許可も取れている。引き込み路線も確保できたし、”例の段取り”で問題はないな?」

「ええ、お願いします。……ティータもよろしくな?」

ミハイル少佐の確認の言葉に頷いたリィンはティータに視線を向け

「はいっ!準備はバッチリです!」

視線を向けられたティータは力強く頷いた。



「………故郷を持たない俺にとってこのクロスベルは唯一の故郷(ふるさと)だ。先陣きって動けないのは悔しいし、………あいつらも国の思惑でそれぞれ先陣をきれない事は歯がゆくて気が狂いそうになる。」

「……ランディさん……」

「……………………」

胸に手を当てて語ったランディの様子をセレーネとトワは辛そうな表情で見つめた。

「だが、俺はまだ第Ⅱの人間として関われるだけラッキーってもんだ。全力でバックアップさせてもらうからどうか頼むぜ―――リィン、殿下達!」

「ええ……!」

「フッ、任せたまえ!」

「ま、大船に乗ったつもりでいていいわよ♪」

「――――ガイの―――いや、特務支援課(お前達)の代わり、必ずこなして来る。」

ランディの言葉にリィン達がそれぞれ力強く頷いている中オリビエは髪をかきあげ、エルファティシアはウインクをし、アリオスは静かな表情で答えた。



一方その頃ユウナはクルト達のある話をしていた。



「………本当は……助けてもらったお礼を”あの人”や”あの人”の仲間達にずっと言いたかった。でも………どうしても悔しくて………あの時何もできなかった自分が惨めで……反発するしかできなかった……今、こうしてるのだってそうだよ……」

自身の本音を語り終えたユウナは辛そうな表情で顔を俯かせた。

「……そうだったのか………」

「ユウナさん………」

「………やっとわかったわ。ユウナは……リィン教官達に、認めてもらいたかったのね?」

ユウナの様子をクルトとアルティナが見守っている中、ある事に気づいたゲルドはユウナに問いかけた。

「………っ………」

「……私も同じよ。”予知能力”もそうだけど、魔術を教えているレン教官も褒めてくれた私が今まで覚えた魔法なら、様々な大変な事件に関わる事になる教官達の今後の戦いや動きに役に立つと思っていたのに、教官達は私の予知能力や魔法を全然頼ってくれない事に、寂しさを感じているもの。」

「わたしも同じです。特務部隊に所属していた頃もそうですが、今までのメンフィル両皇帝による要請(オーダー)の任務に同行し、サポートをしていた時……子供扱いされて守ってもらったり、何も相談してくれないことにモヤモヤした気分になりました。」

「……僕も同じだ。僕自身のヴァンダールの剣をあの人達に認めてもらいたかった。そして―――またまだ至らないけどサザ―ラントでの演習で少しは変われたんじゃないかと思う。」

ゲルドやアルティナと共に自身の想いを伝えたクルトはユウナの隣に座ったてユウナの肩に手を置いた。



「ユウナ、君の踏ん張りどころは”ここ”じゃないのか―――」

「………ぁ………」

クルトの言葉にユウナが呆けたその時、アルティナはARCUSⅡを取り出してある機能を起動した。

「……教官達からの伝言を再生します。」

ある機能――――録画した声がよく聞こえるようにアルティナがARCUSⅡをユウナに向けると、二人の声が聞こえてきた。

「ユウナ―――確かに”特務支援課”は英雄だろう。俺達が所属していた期間は短かったが……それでも、ロイドも含めて、凄い連中だと思ったよ。」

「―――ですが、ロイドさん達に憧れるだけでいいのですか?ロイドさん達が動けない今――――他の誰でもない、クロスベルの意地を示せるのは”誰”なのですか?」

リィンとセレーネのユウナへの伝言が終わるとアルティナはARCUSを仕舞った。



「……本当に……あの人達は、いつもいつも……フン……そんなの……そんなの貴方達に言われなくてもわかってるんだから……!」

そしてリィンとセレーネの伝言によって元気を取り戻したユウナが決意を叫び、その様子を見たアルティナ達がそれぞれ視線を交わして頷くと扉が開き

「ふふ、それはそうと”場所”がわかったそうですよ?」

「フン、グズグズしてんなら勝手に行かせてもらうぜ?」

「へ……」

開いた扉からそれぞれ聞き覚えのある声が聞こえ、声に気づいたユウナが呆けた様子で視線を向けるとそこにはアッシュとミューズそしてゼシカとルイゼがいた。

「ミュゼさんに、アッシュさん?」

「どうして君達が……」

「――――その様子だと二人も協力してくれるのね?」

「ハッ、ランドルフとランドロスの許可は一応貰ってるからな。」

「ふふっ、私の方もトワ教官にバックアップを任されまして。」

自分達の登場にアルティナとクルトが不思議がっている中事情を察したゲルドは静かな表情で呟き、アッシュは不敵な笑みを浮かべ、ミューズは微笑みを浮かべて答えた。



「ふう、本当だったら私が行きたかったけど……」

「わたしもちゃんと戦えたらついて行きたかったのになぁ~。」

「………ルイゼにゼシカはともかく………アンタたちはどこまで話を聞いてたのよっ!?」

自分達に同行しないゼシカとルイゼが残念がっている中一連の流れをアッシュとミューズが聞いていた事に身体を震わせていたユウナは声を上げて指摘した。その後ユウナ達はリィン達の後を追う為に導力バイクで演習地を出たが、ミューズが演習地の出入り口付近で運転していた導力バイクを停めると、それを不思議に思ったユウナ達も導力バイクを停めた。



~ウルスラ間道~



「どうしたのですか、ミュゼさん?」

「何か忘れ物でもしたのか?」

「ふふっ、ええ。とても大切なものを忘れていますわ。―――――お待たせしました、リーゼアリア先輩。」

「へ……」

アルティナとクルトの問いかけに静かな笑みを浮かべて答えたミューズが間道の木々がうっそうとしている場所に視線を向けて声をかけ、ミューズの言葉を聞いたユウナが呆けたその時リーゼアリアが木々の物陰から姿を現した。

「貴女は確かリィン教官とエリゼの従妹の………」

「リーゼアリアさん!?どうして、リーゼアリアさんがこちらに………」

「フフッ、このタイミングで、しかも昨日の件を考えればリーゼアリア先輩がここに姿を現す理由は一つしかないではありませんか♪」

「き、昨日の件って………――――あっ!も、もしかして……!」

「エリゼ様に見直してもらう為に、教官達の助太刀に向かうつもりなのですか?」

リーゼアリアの登場にゲルドが目を丸くし、クルトが驚いている中微笑みを浮かべたミューズの言葉を聞いてある事を察したユウナは信じられない表情で声を上げ、アルティナは目を丸くしてリーゼアリアに訊ねた。



「―――はい。とは言っても、半分はその娘――――”ミュゼ”に発破をかけられたせいでもありますが………お兄様とお姉様に私がお二人と以前のような関係に戻る事を心から望んでいる私の”本気”を知ってもらう為に……そして、今度こそお兄様とお姉様の”妹”としてお二人の力になる為にも、私自らも弓を取る事を決めたのです。あつかましいと思われますが、どうか私も皆さんに同行する事を許してください……!お願いします……!」

「リーゼアリアさん………」

「ハッ、その女がここにいるのもテメェが関係しているようだな。一体、何を考えてやがる?」

リーゼアリアの決意を知ったクルトが驚いている中アッシュは不敵な笑みを浮かべてミューズに問いかけ

「フフ、リーゼアリア先輩に私はお世話になった恩を返す為に、先輩の悩み事を解決する”提案”をしただけですわ。」

「ホントかしら………まあ、今はそんな事よりも………さっきまで折れていたあたしが言うのもなんだけど、リーゼアリアさんは”覚悟”ができているの?あたし達と一緒に教官達の後を追って行ったら、厳しい戦いに巻き込まれて傷ついたり、最悪は命を落とす事になるかもしれないわよ?」

笑顔で答えたミューズをジト目で見つめたユウナは気を取り直して真剣な表情でリーゼアリアに訊ね

「はい、お兄様達の所に向かう事を決めた時点で”覚悟”もしております。」

「……決意は固いみたいね。――――わかったわ。みんなもいいわよね?」

「後で教官達からリーゼアリアさんまで連れてきた事に怒られるかもしれないが………リーゼアリアさんの気持ちも理解しているから、僕もいいと思う。幸いリーゼアリアさんの戦闘能力は後衛がメインのようだから、前衛の僕達がリーゼアリアさんを含めた後衛のメンバーにまで敵の攻撃が行かないように今まで通り敵の注意を惹きつければいいだけだしな。」

「教官達の所に少しでも早く辿り着く為にも戦力は一人でも多い事は問題ないかと。」

「ハッ、シュバルツァー達の驚いた顔も見てみたいしな。」

リーゼアリアの決意を見たユウナは仲間達に確認し、仲間達はそれぞれ賛成の様子で答えた。

「皆さん……ありがとうございます……!」

「ふふっ、これから導力バイクで目的地まで向かいますのでリーゼアリア先輩は私のバイクのサイドカーに乗ってください。」

「ええ……!お願いするわね、ミュゼ……!」

そしてリーゼアリアを加えたユウナ達は”星見の塔”へと向かった。

「ふふっ、ご武運をお祈りしていますわ、先輩。――――さてと。”ここからが、私にとっての正念場ですわね。”」

ユウナ達の様子をリーゼアリアが隠れていた物陰とは別の場所で隠れて見守っていたミュゼは微笑んだ後真剣な表情を浮かべてクロスベルを見つめた後、物陰に隠していた導力バイクでクロスベルへと向かい始めた。



~星見の塔~



一方その頃、リィン達は森の中に不意にそびえ立つ古めかしい建物―――星見の塔の前に到着した。

「ここが”星見の塔”………」

「暗黒時代の建物らしいですがこの気配は……」

塔の前に到着したアリサは呆けた様子で塔を見つめ、何かに気づいたセシリアは真剣な表情を浮かべ

「な、なんだ……?背中がチリチリするような……」

「………霊感の無い人間がそこまで感じるレベルとはね。」

「それ程までにこの”星見の塔”から凄まじい魔力の中心地になっている証拠ね。」

「……間違いありません。霊脈を通じて、クロスベル中の霊力が吸い上げられています。」

ある事に気づいたマキアスの言葉を聞いたセリーヌは目を細め、エルファティシアとエマは真剣な表情で答えた。



「ああ、僕も感じるよ。……蒼色の……いや、緋も混じっているかな?」

「殿下……おわかりになるんですか?」

「はあ、そう言えばアンタの妹も魔力は大したモンでさっきも上級レベルの魔術を使いこなしていたけど……やっぱり古のアルノールの血ってやつ?」

オリビエまでエマ達のように霊感がある事にエマは驚き、セリーヌは溜息を吐いた後興味ありげな様子でオリビエに訊ねた。

「フッ、そうらしい。自覚はあんまり無いけどね。」

「わたくしも1年半前までは自覚していませんでしたが……リィンさんと結婚してからは、自覚するようになりましたわ。」

「へ………どうして、リィンと結婚してからは自覚するようになったのでしょうか?」

「………………」

オリビエの後に答えたアルフィンの答えが気になったマキアスは不思議そうな表情でアルフィンに訊ね、理由を察していたリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせていた。



「うふふ、大方魔力や身体能力を強化されたエリゼお姉さん達のように”性魔術”で元々備わっていた魔術師としての才能が覚醒したからじゃないのかしら♪」

「うふっ♪確かに二人は”夫婦”なんだから、”そう言った行為”――――”子作り”をする事も当たり前だものね♪」

「ブッ!?」

「レ、レン教官!?エルファティシアさんまで……!」

(実際その通りだから、冗談になっていないわね、レン皇女殿下の推測は……)

からかいの表情を浮かべたレンとエルファティシアの話にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中リィンは吹き出し、セレーネは顔を赤らめて驚き、エリゼは呆れた表情をし

「な、ななななななな……っ!?」

「……そう言えば内戦の時にリィンやエリゼ達が人外じみた身体能力や凄まじい魔力を身に付けている理由が”性行為”による魔術とやらで強化された事を殲滅天使がアタシ達にも解説していたわね………確かに魔王、聖女の娘に竜の姫君、精霊王、そして女神と結ばれた事でそれぞれに秘められている凄まじい霊力(マナ)を宿すリィンとアルフィン皇女が結ばれれば、元々備わっていたアルフィン皇女の魔術師としての才能が覚醒して当然でしょうね…………」

「セ、セリーヌ!」

「ハッハッハッ、アルフィンともしっかりやることはやっていて、アルフィンまで強くしてくれるなんてさすが経験豊富なリィン君だね♪」

「お兄様、お下品ですわよ。」

「あいた。」

我に返ったマキアスは顔を赤らめて慌て、呆れた表情でリィンとアルフィンを見つめて呟いたセリーヌの説明を聞いたエマは顔を赤らめて声を上げ、声を上げて笑ってからかいの表情を浮かべたオリビエの言葉に呆れたアルフィンは常に携帯している突っ込み用のハリセンでオリビエの頭を叩き

「うふふ、という事は既にリィン様と結ばれたお嬢様も、もし魔術師としての才能がおありでしたら、皇女殿下のように魔術師としての才能が既に覚醒したり、エリゼ様達のように身体能力が強化されているのでしょうか♪」

「みんなの前でとんでもない事を言わないでよ、シャロン!!」

更なる火種を口にしたシャロンの言葉にリィン達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アリサは顔を真っ赤にしてシャロンを睨んだ。



「フッ、それで、話は戻すがこの塔の屋上にいるのが昨日の”神機”というわけか。」

静かな笑みを浮かべたオリビエは気を取り直して塔を見上げ

「ええ、ハーメルで戦った巨大神機とは異なりますが………旧共和国軍を壊滅させた飛行型の後継機みたいですね。」

「”至宝”の力を得ないと満足に動けないみたいだけど………ああやって、霊力を溜め込む事で同等の力を発揮できるみたいね。」

オリビエの言葉に頷いたリィンの話に続くようにアリサは説明を続けた。

「―――旧Ⅶ組並びに特務部隊、協力者と共に”星見の塔”の探索を開始する。目標は屋上の”神機”――――霊力補給を阻止するのが第一の目的だ。各自、全力を尽くしてくれ……!」

「了解だ……!」

「「「「「ええ……!」」」」」

「「「「はい……!」」」」

「かしこまりましたわ……!」

「承知……!」

「フッ、それではいくとしようか……!」

そしてリィン達は星見の塔へと入っていたが、その様子を仮面の男が遠くから見守っていた。

「さて……連中が失敗したら出番というわけか。折角の”リハビリ”の機会、逃したくはないが………――――トールズ士官学院”Ⅶ組”とメンフィル帝国軍”特務部隊”とやら……せいぜいお手並みを拝見させてもらおうか……?」

意味深な事を口にした仮面の男はその場から姿を消した。



その後、リィン達は協力しながら時折襲いかかってくる魔獣や魔導兵達を撃退しながら屋上に到着した。



~屋上~



「いたか……!」

「”道化師”……1年半前の動乱に続いて、今回の騒動でもクロスベルに姿を現したのか………」

「そしてもう片方の執行者―――いえ、亡霊が”劫炎”とやらね。なるほどね……感じられる力からしてあのノイアスとも同等―――いえ、それ以上ね。」

カンパネルラ達と神機を見つけたマキアスは声を上げ、アリオスとエルファティシアはそれぞれ目を細めてカンパネルラ達を睨んでいた。

「クク、もうちょっと待たされると思ったが。」

「どうやら”裏技”と使ってここを掴んだみたいだね?」

「ああ―――幾つもの想いが俺達をここまで導いてくれた。」

「彼らとは何の関わりもなかった私達が出しゃばるのも心苦しいけど……」

「それでも、これ以上あなた方に好き勝手させる訳にはいきません。」

カンパネルラの問いかけに対してリィンとアリサ、エマはそれぞれ決意の表情で答えた。



「フッ、4年前の”ゴスペル”と同じく阻止させてもらおうか?」

「そしてようやく”真の自由”を手に入れたクロスベルを再び騒乱の渦に巻き込もうとするその”業”………お前達の身を持って、償ってもらうぞ。」

「ま、ヴァイスや私達がいるクロスベルに手を出したことが”運の尽き”である事をヴァイス達とロイド達の代わりにたっぷりと思い知らせてあげるわ。」

「あん?なんだアンタ達――――」

「4年前……その格好って。しかもそちらのお二人さんは。」

オリビエとアリオス、エルファティシアもリィン達に続くように答えるとオリビエ達がわからないマクバーンは眉を顰め、カンパネルラはオリビエ達を見回してある事に気づくと驚いた。

「あはは、さすがに想定外すぎるんだけど!何やってるのさ、オリヴァルト皇子!しかも”黄金の戦王”と一緒に”特務支援課”にいた”混沌の森王”に加えて拘置所にいるはずの”風の剣聖”まで……!」

「はああっ………!?なんでエレボニアの皇子やクロスベルの側妃に、犯罪者扱いされて拘置所に幽閉された”風の剣聖”までこんな場所に来てやがるんだ!?」

カンパネルラが口にしたオリビエ達の正体を聞いたマクバーンは困惑の表情でオリビエ達を見つめ、その様子を見たリィン達は冷や汗をかいた。

「……そりゃ、驚くよな。」

「それも交流会の行事の真っ最中だものね………」

「しかもアリオスさんに関しては、本来拘置所にいるはずの方ですものね……」

マクバーンの様子を見たマキアスとアリサ、セレーネはそれぞれ苦笑した。

「うふふ、”混沌”はクロスベルが光と闇が交差する都市だから付けられたのだと思うけど、それにしてもエルファティシアお姉さんの新しい二つ名って、何だかママの仲間のように聞こえるわよね♪」

「全くよ………私が信仰している神は”混沌の女神(アーライナ)”じゃなくて、”森の女神(ルリエン)”なのに、迷惑な話よ。」

小悪魔な笑みを浮かべたレンに問いかけられたエルファティシアは疲れた表情で溜息を吐いて答え

「今の俺は遊撃士でもなく国防軍長官でもなく、クロスベルの(いち)剣士として、クロスベルを再び騒乱の渦に巻き込もうとするお前達を斬るためにここにいる。」

「今のボクは(いち)演奏家。クロスベルの熱い想いを――――ボクなりに表現しに来ただけさ。しかし、やはり魔女殿は来ていないんだね?キミたちが再び動き始めたのならてっきり来ていると思ったんだが。」

アリオスと共に自分達がリィン達と共にいる理由を説明したオリビエは自身の疑問を口にした。



「フフ、言ったように”結社”でも色々あってね。――――『幻焔計画』の奪還。その邪魔をされたくないしね。」

「っ………!」

「……やはりその名前に行き着くのですね。貴方方が姉を狙うならその意味でも捨て置けません。その『計画』の趣旨についてもある程度は話していただきます。」

「エマ………」

魔導杖を取り出して魔力を溜め始めたエマに続くようにリィン達もそれぞれの武装を構えた。



「フフ、いい気合いね……!」

「ああ――――1年半前に残された”謎”に迫る為にも……!」

「三帝国に渦巻く暗雲を少しでも払う為にも……!」

「貴方達の”実験”、阻止させて頂きますわ!」

「お嬢様とリィン様に仇名すならば、この”死線”が貴方達の前に立ちふさがりますわ。」

「フッ、”煌魔城”での続きを始めようか……!」

「うふふ、”碧の大樹”で”紅の戦鬼”を仕留め損ねた”借り”、返させてもらうわよ♪」

「我が祖国メンフィルに………そして教え子達に仇名すならば、この”魔道軍将”、容赦は致しません……!」

「主が滅びてもなお、主の愚かな意志を継ごうとする貴方達の愚かな忠誠心、我が双鎌にて全て斬り裂く……!」

「兄様に仇名すならば、兄様の妹として……未来の伴侶として、私も兄様と共に貴方達を討ちます……!」

「エリゼと同じくリィンさんの妻として……そしてエレボニア皇女として、1年半前の内戦の時のように貴方達の好き勝手にはさせませんわ!」

「”湖上の森王”と呼ばれた私の力、その身を持ってたっぷりと思い知りなさい……!」

「八葉一刀流、二の型奥義皆伝、アリオス・マクレイン……義に従い、我が刃にてクロスベルの仇名す者達を斬る!往くぞ―――――結社”身喰らう蛇”!」

リィン達はそれぞれ決意の表情でカンパネルラ達を睨み

「ははっ……!熱くさせてくれそうじゃねえか!」

「どうやら”本気”で迎え撃つ必要がありそうだね。それじゃあ”結社”の執行者、No.0とNo.Ⅰがお相手するよ。」

「俺の中の”黒き焔”、見事引きずりだしてみろや……!」

リィン達の様子を見たカンパネルラ達もそれぞれ戦意を高めて迎撃の構えをした。



「Ⅶ組並びに特務部隊総員、全力で迎撃する!オリビエさん達もお願いします!」

「おおっ!」

「任せたまえ!」

「承知!」

「任せなさい!」

そしてリィンの号令に力強く頷いたリィンの仲間達はそれぞれ二手に分かれて執行者達との戦闘を開始した―――――


 
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