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戦国異伝供書

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第五話 岐阜の城からその一

               第五話  岐阜の城から
 上洛を果たしそこから瞬く間に二十以上の国を手中に収めた信長は領国の政を進めさせていた、その中でだ。
 彼は本城である岐阜城でこうしたことを言っていた。
「出来れば都よりさらに近い地にな」
「本城をですか」
「移したいところじゃ」
 こう森に話した。
「そう考えておる」
「そうですか、では近江にでも」
「あの地なら都まですぐじゃな」
「あの国にされますか」
「それか摂津にとも思うが」
「摂津ですか」
「あそこには本願寺がいるがな」
 そして総本山の石山御坊を置いているがというのだ。
「丁度石山の地にじゃ」
「本城をですか」
「置けたらとも思うが」
「しかし殿」
 ここで池田が信長に言ってきた。
「本願寺もあそこから立ち退くことは」
「ないであろうな」
「それは無理かと」
「若し無理に立ち去れと言ってはな」
「本願寺とことを構えることになり」
 そしてというのだ。
「大きな戦になります」
「そうじゃな」
「本願寺と戦になれば」
「当家もな」
「どうなるか」
「わからぬな」
「はい、ですから」
 本願寺にそう言うことはというのだ。
「避けるべきかと」
「わしもそれはわかっておる」
「では」
「うむ、やがてはな」
「近江にですか」
「本城を移したい。観音寺の辺りか」
 六角家の本城だったこの城のというのだ。
「あそこに大きな城を築いてな」
「本城とされたいですか」
「そう考えておる、しかしな」
「はい、今はです」
 今度は丹羽が応えた。
「領国とした国々の政に忙しく」
「楽市楽座に検地も進めておってな」
「何分家全体が忙しく」
 それでというのだ。
「人手も銭もです」
「足らぬな」
「それにですぞ」
 丹羽は目を光らせて信長にこうも言った。
「今美濃から迂闊に離れては」
「うむ、武田がな」
「あの家がいますので」
 美濃に隣接している信濃が完全に武田家の領国となっている、そうした状況だからだというのである。
「あの家に備える為にも」
「岐阜を本城にしたままでな」
「すぐに動ける様にしましょう」
「それがよいな」
「ですから暫くはです」
「せめてな」
「はい、政が一段落つくまでな」
 武田のことも気になるがというのだ。
「それまではな」
「ここにいましょう」
 岐阜城を本城にしようというのだ。
「そうしていきましょう」
「それではな」
 信長も頷いた、それでだった。
 丹羽にだ、こう言った。
「暫しはな」
「このままですな」
「岐阜におる」
 こう言うのだった。 
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