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世界に痛みを(嘘) ー修正中ー

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手配書

 メリー号は"モックタウン"を離れ、島の対岸に居を構える"モンブラン・クリケット"に出会うべく舵を切る。
 
 夢物語の幻想を語り、島を追われた"モンブラン・クリケット"
 ルフィ達は彼が"空島"への鍵を握っていることを望み、彼と相まみえた。

 出会った当初は一悶着あったが、今では同じ夢を見る者同士としてルフィ達は彼と言葉を交わす。
 深夜には賑やかな宴が開かれる。
 同志に出会い、彼は心から宴を楽しんでいた。

 好きな上手い酒を飲み、上手い料理を食べる。
 何て今日は恵まれた日であろうか、クリケットは心から歓喜する。


"髑髏の右目に黄金を見た"


 それこそが"空島"に関する鍵
 噓つきの烙印に涙を流しながらもあの"ノーランド"が最後に記した文章
 彼はその後、処刑され、人生に幕を下ろしたと言われている。

 ルフィ達の前に黄金のインゴッドが3つ取り出され、皆の冒険心を刺激する。
 "空島"は夢か現実か、()のノーランドの言葉を真相を確認した者はいない。

「なあ、ひし形のおっさん達も俺達と一緒に"空島"へ行こう!」
「馬鹿言え、俺達は最後までお前達が"空島"へ行くためにサポートに回るんだぞ」

 無論、ルフィ達を援護すべくメリー号に乗ることはない。
 ショウジョウとマシラも同様だ。

 仮に"空島"から帰還する折に、どうやって自分達はこの場所に戻ってくればいいのか。
 問題は山積みだ。

「それなら問題ないぞ、ひし形のおっさん!ウチにはアキトがいるからな!」

 喜色満面の顔でルフィはそう豪語する。
 ルフィの考えはこうだ。

 先ず、クリケットが事前にメリー号に乗り、その後、"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"が発生する際に、アキトとルフィがショウジョウとマシラの二人を船へと連れ込む。
 "空島"から帰還する際には、アキトにこの島まで連れ帰ってもらうという寸法だ。

「いや、まあ、それなら俺達も"空島"へ行くことは出来るかもしれんが、最後の作戦はあの兄ちゃんにかなりの負担がかからないか?」
「大丈夫だ、問題ねェ!きっとアキトならひし形のおっさん達を送り届けてくれるさ!」

 アキトはクリケットさんの心中を察し、嘆息するしかない。

「まったく何を勝手に何を決めているのかしら、ルフィは」
「まあ、そうだな」

 だが、それが船長の意向ならばアキトは従う。
 かなりキツイ作戦となりそうではあるが

「それより口元に食べ残しが残っているぞ、ナミ」
「え、どこ、アキト?」

 同じく嘆息するナミの口元の食べ残しをアキトが指で拭き取り、何の躊躇いもなく口へと運んだ。

「な、な……!」

 ナミは羞恥の余り頬を染め、狼狽える。





「しまったァ──!!」

 しかし、ナミの羞恥の声はクリケットさんの叫びにかき消され、アキトの耳に届くことはなかった。

 クリケットさん曰く、明日の"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"が発生する海域に向かうべく、とある鳥が必要であるらしい。

 その名を"サウスバード"
 南の森に生息する鳥だ。

 偉大なる航路(グランドライン)の出鱈目な気候に対抗し、南へと向かうべく"サウスバード"が必要なのだ。
 明朝まであと残り僅か、ルフィ達に残された時間は少ない。

 ルフィ達は急遽、"空島"を目指すべく夜の南の森へと足を踏み入れることになった。

 





▽▲▽▲







 深夜の森にナミの悲鳴が響く。
 ルフィ達は今、件の"サウスバード"の悪質な歓迎を受け、森の中を必死に逃げ回っていた。

「いやァアア!ゴキブリ──!!」

 反射、反射

「いやァアア!巨大ナメクジ──!アキトさん!」
「何どさくさに紛れてアキトに抱き付いているのよ、ビビ!それなら私はより強く抱き付くわ!」

 いや、その理屈はおかしい

「今度はてんとう虫の大群!?」
「でけェし、痛ェ!」

 ウソップの悲鳴

「そっちはさっきも通ったわ、剣士さん」
「俺に指図すんな」

 相変わらず道に迷うゾロ

「蜂の大群だ、逃げろ、チョッパー!」
「うわあああ──!」

 ルフィとチョッパーは蜂から逃げ惑う。

「蛾もムカデもいやァアア──!」

 前方が見えず、足を止めざるを得ないアキト

「姿さえ見えれば」

 その後、慢心し、姿を現した"サウスバード"はロビンの能力でいとも簡単に捕獲された。
 アキトも姿を現した"サウスバード"を引き寄せ、顔面を掴んでいた。

 "サウスバード"を無事、捕まえたルフィ達は意気揚々とクリケットさん達のもとへと帰還する。







 しかし、周囲は酷い有り様であった。
 
 地は抉れ、幻想溢れる家が倒壊している。
 至る所に血しぶきがの跡が見受けられる。

 クリケットさん達は血だらけの状態で地に伏していた。
 此方も酷い有り様で、直ぐに治療を施さなければ死に直結する大怪我を負っている。
 メリー号は真っ二つの状態で壊れ、船首は海に沈みかけていた。

 鋭利な刃物で斬られ、大出血を引き起こした状態でマシラは倒れ込み、ピクリともその巨体を動かさない。
 ショウジョウは気を失った瀕死の状態で、海へと吹き飛ばされていた。
 仮にも2000万越えの彼らを此処まで一方的にいたぶり、傷み付けるとは一体何者なのか。

「おい、ひし形のおっさん!」
「ショウジョウ!」
「マシラ!」

 即座にルフィ達は彼らを救助し、チョッパーが治療を開始する。
 一体"サウスバード"を捕まえるべく深夜の森に繰り出していた数時間の間に、クリケットさん達の身に何が起きたのか。

「皆!」

 ナミの声が響く。
 ナミは息を荒げ、驚きを隠せない様子で衝撃の事実を述べる。

「クリケットさん達の金塊が無くなっている……」

 心身共に削り、見つけ出した金塊の消失
 クリケットさん達の努力の結晶である金塊が何者かに略奪されていた。

「すまねぇ、俺達がこの場にいながら、お前達の船を守れなくて……」
「それよりも何が起きたのかを話してくれよ、ひし形のおっさん!」
「いや、いいんだ。それよりもお前達、よくサウスバードを捕まえることが出来たな……」
「何、他人事の様に話してんだよ!?10年もの間、身体がイカレるまで海に潜って、やっと見つけた金塊なんだろ!?」
「これは俺達の問題だ。それに、心配するな。お前達の出航には猿山連合軍の力を用いれば十分に間に合う……」

 ゾロが指差すは海賊旗のシンボル
 血が滴る様に、存在を知ら占める様に刻み込まれていた。

「ベラミーのマーク……!」
「ルフィ、俺も行こうか?」
「いや、俺一人で十分だ」
「何言っているの、ルフィ!?出発まで残り3時間も無いのよ!」
「待て、小僧!手前ェ、余計なマネすんじゃねェぞ!これは俺達の不甲斐無さが生み出した問題だ!」

 苦し気にクリケットさんがルフィへと声を荒げる。
 息も切れ切れの状態で止めようとするも、その叫びはゾロに止められる。

「アキトさん……」

 ビビは縋る様にアキトの声を掛け、思わず声を失う。
 アキトの余りにも普段とはかけ離れた様子に

 普段の穏やかで優し気な様子は消え失せ、冷徹な光がその紅き瞳に宿る。
 感情の高ぶりの影響か、アキトの身体からは微風が吹き荒れている。

 辺りに散乱する瓦礫が浮き上がり、崩壊し、地面に亀裂が走っていく。
 静かに、ただ静かに煮えたぎる様な怒りがアキトの中で沸き上がっていた。

 ナミはこの状態のアキトを幾度か見たことがある。
 この状態のアキトはヤバイ、ヤバ過ぎる。
 敵が五体満足の状態で生還出来るかも怪しくなってきた。

「─」

全く人をイラつかせるのが上手い奴らだ

 クリケットさん達が受けた痛みを知るがいい。
 一匹たりとて逃がすものか。
 地の果てまで追い掛け、必ず後悔させてやる。

「ロビン、海岸に沿って走れば昼間の町に着くかな?」
「ええ、着くわよ」

 金塊を奪還すべく、ルフィが動き出す。





「朝までには戻る」





 この場からモックタウンへと向かおうとするルフィへアキトは手を差し出す。
 この手段の方が時間を短縮することが出来る。

 此方の意を理解したルフィが握り返したのを確認したアキトは勢い良く飛翔した。
 大地にクレーターを生み出し、物凄い速度で飛翔し、宙を跳躍し、海を割き、波を荒立て、大気を振動させ、モックタウンへと一直線に飛んで行く。
 クリケットは呆然と彼らを見据えることしか出来なかった。







▽▲▽▲


 




 とある酒場で嘲笑と下卑た笑い声が響く。
 略奪品である金塊を酒のつまみにジョッキを口に運び、笑い声が止まることはない。

「大変だァ──!」

 だが、その喧騒も突如、小汚い男が声を張り上げたことで終わりを迎える。
 その男は酷く血相を変え、手配書を握り締めている。

 彼は騒然とする酒場を他所に手配書を掲げ、声を張り上げ、知ら占めた。
 目を見張る金額の賞金首の存在を



 麦わらのルフィ"1億ベリー"
 海賊狩りのゾロ"6千万ベリー"



 昼間にベラミーとその取り巻き達がいたぶり、痛み付けた二人組に間違いない。
 信じられないことにルフィとゾロの懸賞金がベラミーを上回っていた。

 しかし、ベラミーはそれを嘲笑
 嘘偽りだと、中途半端な力を持つ連中を見誤る己の愚かさを笑う。
 全て嘘だと、偽造なのだと酒場の連中に豪語する。

 酒場はベラミーの口先の弁舌に冷静さを取り戻し、再び宴を再開した。
 




「ベラミーィ──!!何処だァアア──!!!」





 ルフィがその場に辿り着く。
 ルフィとアキトはとある建物の屋根に佇み、眼下を見下ろしていた。

 ご指名を受けたベラミーはバネバネの実の能力で飛び跳ね、ルフィと対面する。
 残るアキトは眼下へと降り立ち、取り巻き達の殲滅へと向かう。

「ひし形のおっさんの金塊を返せ」
「お前が俺から奪い返すだと?貧弱者のお前が!?」
「昼の事は別の話だ」

 冷めた目線でアキトはベラミー海賊団の一味を見渡す。

「どうやら臆病者の船長のお仲間のお出ましだ」
「おい、いつまでその手配書を持ってやがんだ!そんなもん破り捨てちまえ!」
「船長が3千万の時点でこいつの実力などたかが知れてる」
「おい、こいつの懸賞金は幾らだ!」

 ククリ刀を振りかざしながら、長身の男、サーキースが吠える。
 口元に円を描き、此方を見下す醜い顔を張り付けている。







「いや、こいつに懸賞金は掛けられていない!0()だ!」







 途端、嘲笑と下卑た爆笑の嵐が湧き上がる。
 周囲に蔓延る連中がアキトを見世物として笑い転げた。

「懸賞金たったの0か!ゴミめ!」
「おい、小僧!良いことを教えてやろうか!中途半端な力と夢を持った奴は早死にするんだぜ!」
「こいつ、自分一人で俺達をやるつもりなんじゃないのか?」
「俺、凄ェカッコイイとか思ってんのか?」
「アハハハ、ダッサ~イ!」
「おいおい、言ってやるなよ。あいつらはウチの船長が5千500万ベリーの大型ルーキーだということを知らないんだ」
「幻想を追い掛けていた、あの汚いボロクズ共はちゃんと片付けておいたのか?」
「ハハハハハ!あの猿共は一生、泥の中だ!」
「俺達が海賊としてやっていることはお遊びではないことをここらで見せてやれ、サーキース!」

 終始、アキトがサーキース達の言葉に応えることはない。
 ただ、その場に佇み、静観する。

 頭上ではルフィとベラミーの戦いが勃発し、屋根が崩壊していた。
 悪魔の実の能力に驕ったあの程度の実力者にルフィが負けることはないだろう。
 恐らく一撃で勝負が決まる。

 アキトも本腰を入れ、サーキースを含むベラミー一味と向き直る。
 一人もこの場から逃がしなどしない。



 サーキース達は気付かない。
 自分達が誰の仲間に手を出し、如何に自分達が井の中の蛙であったのかを

 彼らがその事実に気付くのはそれから数十秒後の事であった。
 
 

 
後書き
はい、アキトさんスイッチ入りましたー

ふと、思いました
"無料(ただ)ほど高いものは無い"ように"懸賞金が0()ほど怖いものはない"ことに……

無論、懸賞金がその者の実力を性格に反映することもありますが、それは本当に稀です
懸賞金の数値から相手の実力を推し量ることは可能ですが、0の場合は全くの未知数ですから……
ドラゴンボールの戦闘力のコントロールが影響し、スカウターが爆発し、汚い花火になったキュイさんや腹に風穴を開けられたザーボンさん然りです 
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