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真田十勇士

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巻ノ百四十八 適わなかった夢その三

「申し訳ござるな」
「申し訳なくはござらぬ、それならば」
「今の様に船を使い」
「はい」
 そしてというのだ。
「下関に向かい」
「そして下関から」
「再び真田の忍道に入り」
 そうしてというのだ。
「そのうえで」
「駿府にですな」
「後は忍道を使い」
 そうしてというのだ。
「駿府に向かいまする」
「わかり申した」
「駿府に着けば」 
 今度は後藤が言ってきた。
「その時は」
「はい、一気にです」
 まさにというのだ。
「戦に入ります」
「それではな」
「大御所殿が何処におられるか」
 幸村は確かな目で話した。
「もうわかっております」
「駿府城の御殿にじゃな」
「はい、おられて」 
 そしてというのだ。
「周りにはおそらくですが伊賀者が集まっております」
「そうであろうな、甲賀者もおるかも知れぬが」
「大御所殿のお傍には常に服部殿がおられます」
「服部殿は伊賀の棟梁」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「伊賀者が集まっているでしょう」
「それではな」
「はい、我等は伊賀者と戦い彼等を切り抜けるかねじ伏せるかして」
「大御所殿のところに着いてな」
「勝ちましょうぞ」
「ではな、わしはじゃ」 
 後藤は今も肩に担いでいる自身の大槍を見て述べた。
「思う存分戦おうぞ」
「そうして頂けますか」
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「ではな」
 まさにというのだ。
「勝って薩摩に帰ろうぞ」
「そうしましょうぞ」
「ではな」
「殿、ではです」
「駿府に着きましたならば」
 十勇士も幸村に言ってきた、それも勇んで。
「思う存分戦いましょう」
「そして伊賀者達を退け」
「大御所殿を今度こそ」
「そうしましょうぞ」
「頼むぞ、この十五人でじゃ」
 長曾我部に明石に後藤と十勇士、そして幸村父子を入れて十五人だ。
「勝つぞ」
「この十五人なら」
「一騎当千が十五人」
「それならば」
「例えどれだけの忍の者達がいようとも」
「負けることはありませぬな」
「何があろうとも」
「うむ、負ける筈がない」
 幸村も確かな顔で十勇士達に応えた。
「何があってもな、しかしこの度の戦で策はない」
「ありませぬか」
「策はですか」
「うむ、もう策を立ててもじゃ」
 まさにというのだ。
「意味はない」
「十五人だけで戦うならば」
「そして伊賀者達も来るならば」
「それならばですか」
「策はですか」
「意味はない」
 最早というのだ。 
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