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人類種の天敵が一年戦争に介入しました

作者: C
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第7話

 航空機部隊の全滅に置いてきぼりを食らったのは機甲部隊だ。衛星はジオン公国軍によって全て潰されているため、全軍を網羅する情報リンク無し。個々の通信機能で結べる最低限の繋がりだけでは、統一した判断も行動も難しい。この状況で早期警戒管制機が落とされたため、彼らは目を失った。口はあるが、三個師団分の寄せ集めだ。皆がわめき散らしたため無線は大混線。彼らは耳も失った。彼らは危険の匂いも嗅ぎ取れなかったが、残された鼻も鈍かったというのは酷だろう。彼らは実戦経験は豊富だが、地球連邦軍なのだ。常勝無敗の彼らは負けを知らない。もっとも、負けの匂いを嗅ぎ取れたとしても逃げ切れたかは疑問だ。なにしろ相手は史上最大の殺人鬼、その食欲は底無しだ。逃げ足の早い連中を食い荒らした『そいつ』は、真後ろから襲い掛かった航空戦とは逆に機甲部隊の正面に降りた。これは単純に、航空機と車両の速度差によるものだ。
 航空機は正面からすれ違うと、攻撃機会はその一度きり。更に、反転して追い付くまでに時間がかかる。それよりは、同じ方向に進む方が攻撃機会が増える。車両なら、前を塞いだ方が逃がしにくい。前進速度より後退速度の方が遅いからだ。来るもの拒まず去るもの追いすがり、片っ端から喰らい尽くすのが人類種の天敵。喰える機会は逃さない。

 逃がす気はない。つまり逃げる気もない。その姿勢も露な謎の巨人を相手に連邦地上軍がとった戦術は単純明快。
 同士討ち覚悟で攻め続けること。
 聞こえていた通信から、戦闘機に追い付く速度と振り切る運動性、短距離なら瞬間移動さながらの高速移動をすることはわかった。本来なら地上を走行する車両が捉えられる動きではないが、宇宙軍の戦争処女とは違って実戦慣れした彼らである。航空機部隊が全滅した相手にすら可能性を見出だしていた。
 瞬間移動さながらの回避を見せるということは、通常機動はミサイルを振り切る程のものではないということ。戦闘機並の速度を出せるが、必ずしも戦闘機以上ではない。つまり、通常機動のタイミングを捉えるか緊急回避が出来ないタイミングならミサイルをかわすことはできない。緊急回避は連続して行えるが、これを連発することで移動に代えることをしないのは、機構の冷却か発動に必要なエネルギーの充填かはわからないが、何らかの使用制限がある。ならば、使えなくなる限界まで追い込めば良い。彼我の速度差は10倍以上の開きがあるが、弾の速度なら見劣りしない。見劣りしないどころか、謎の巨人がどれほど速かろうが、弾の方が速いに決まっている。戦いは巨人と車両でレースをするわけではない。弾を当てられるかどうかなのである。
 謎の巨人は化け物じみた回避性能を持つ。ということは、敵も避けなくてはならないのだ。裏を返せば、当たれば倒せるということ。ならば当たるまで撃ち続けるのみ! 機甲部隊には航空機部隊に致命的に欠けていた手数があるのだ。
 情報を持ち帰らなくてはという思いもあるが、ここで仕留めれば問題ない。だいたい、仲間を殺られてそのまま帰れるものか! その一念が烏合の衆だった彼らを、猟師の群れに変える。

 一流のプレイヤー同士であれば、互いのことをよく知らなくても、即席の連携が成立することがある。最高峰のスタンドプレーは、周囲がそれに追随できるのであれば、それだけで最高のアシスト足りうる。
 反撃の先陣を切った彼ら三個師団は、その末端まで、間違いなく最高のプレイヤーだった。初めこそ速度差に圧倒されたものの、冷静に全体を眺めれば顔がひきつる程の仲間の犠牲と引き換えに、彼らは速度差に慣れた。捉えられないことを受け入れた。教本通りのきれいな戦い方を諦めた。人類史上最大最強の軍隊、地球連邦軍の意地と見栄を投げ捨てた。その結果が、同士討ち前提の猛射である。そこにあるのは、戦士の矜持。
 地上部隊はプロフェッショナルだ。一目で解った。『奴』は強い、と。だからこそ、何が何でも今ここで潰す。ここで倒せなければ、今日死んだ仲間の何倍もの死体が積み上がるだろう。『奴』は何十万、何百万の命を奪い、現代という戦場に神話じみた伝説を打ち立てる存在だ。言い方を替えれば、英雄と言えるかもしれない。或いは英雄が倒すような、英雄でしか倒せないような怪物だ。その怪物と向かい合うのは、軍隊を構成する万単位の凡人達。とんだ貧乏くじを引いた形になった彼らだが、彼らの心は一周回って穏やかだった。貧乏くじを引いたことへの感謝すら懐いていた。
 ジオンの巨人の話は聞いたことはあっても、『奴』のような『怪物』の話なぞ聞いたことがない。自分たちが『奴』に出会った最初のケースで、『奴』の伝説は始まる前に終わる。否、終わらせなくてはならない。『怪物』を止めなければ、その被害は自分たちの命でも購いきれないほどになる。だから今ここで仕留める。今ならここで仕留められる。『怪物』が動き出す前に。

――逃がすつもりも逃げるつもりもない? こっちの台詞だよバカヤロウ!

 『怪物』を倒せるのは『英雄』だけだが、今ここにいるのはただの戦車乗り、ただの大砲屋、ただの兵隊。ただの人だ。英雄なんて一人もいない。どこにいるのかも知らないが、間に合いそうにもない。
 だからなんだ?
 英雄は最初から英雄だったわけじゃない。怪物を倒したから英雄なんだ。だからこの『怪物』は必ず倒す。凡人の自分達が怪物を倒す。『怪物』を倒して英雄になるのだ。だから今ここに英雄なんか必要ない。英雄になる戦士だけが必要で、それは既にここにいる。どれだけ仲間が倒れようと、たとえ自分が倒れようと、『奴』さえ倒せるなら、自分たち以外の誰かを護ることが出来るなら、それこそが勝利だ。そのためなら、全て差し出す覚悟がある。自分たちの命で手に入るなら安いくらいだ。今ここで『怪物』を倒せるなら、前払いで払ったって惜しくはない。

 その彼らの覚悟が形になる。同じことは二度と出来ないだろうという損害と引き換えに、彼らは分の悪すぎる賭けに勝った。僅かな可能性を掴み取ることが出来たのは、運もあるかもしれないが、何より彼ら自身の研鑽と挺身あればこそであろう。最精鋭が全てを擲ち、命懸けどころか命を棄てて作った形勢。
 ついに謎の巨人をキルゾーンに追い込むことに成功したのである。
 どれだけ回避性能に優れていようとも、空間全体をミサイルと砲弾で埋め尽くせば避けようがない。チェックメイトである。


 だが連邦軍は負けた。現実は非情である。
 後方にいた補給部隊もその後で襲われた。三個師団相当の戦力が全て溶けた。文字通りの全滅である。
 人的損耗も恐ろしいことになった。生存者は100人に満たない。そのほとんどが瀕死或いは重傷で、生存者の数はこれからの数日で更に減る見込みだ。軽傷に見える者もただの一戦で精神を病んでしまい、日常生活に復帰出来る者は多くない。結局、軍務に復帰出来るのは僅か二名のみであった。
 これが会敵から2時間余りの出来事である。この冗談のような損害は連邦軍を震撼させ、早期反攻作戦を撤回させるに至ったのだった。以後の欧州から中央アジアにおいて、連邦軍はジオン公国軍と戦いつつも『怪物』の脅威に怯え続けることとなる。


 
 

 
後書き

 部屋にあるスーパーファミコンでロマサガ3を久々にプレイ。睡眠時間がモリモリ削れていきます。ちょー楽しい。
 エレンとハリードとカタリナとミカエルは前にクリアしたことあるので、今回はユリアンでクリア。残るはモニカとサラとトーマスですが……これはもうカタリナにするしかない流れ!


 
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