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繰リ返ス世界デ最高ノ結末ヲ

作者:エギナ
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02.生前手記
  黒華琴葉より、大切な部下へ。

 私は、大切な部下が、命が尽きる、その最期まで書き続けた日記の、最後のページに言葉を綴る。

【黒華琴葉より、大切な部下へ。】

 君が私の元まで上り詰めた時、私は喜んでいました。なんせ、自分が拾った宝石を、もっと磨くことが出来ると思ったのですから。

 力量と覚悟を調べる為に、一度君が大切にしていた孤児達を拘束し、船に乗せ、それを沈没させた事がありましたね。あれは、本当に間違った方法を使ってしまいましたね。真逆、一度避難しかけた後、船の中に戻り、孤児達を助けに行くなんて。そして、海水で満ちた船内を泳いで助けに行くなんて。流石の私も、孤児達を殺したくは無いので、海水が入らないようになっている部屋に、孤児達を置いておきましたが、孤児達に怖い思いをさせて、しかもこれで船が沈んでしまったらこの孤児達はどうするつもりだったんだ、と君は言いましたね。そして、答えないで居たら胸倉を掴んで、叫ぶ。如何するつもりも無いけど、と答えたら殴る。殴って如何するのかな、と思っていたら船から突き落とそうとする。危うく死ぬところだったんだよ? 私。

 君は私が幹部だ、と言ったとき、とても驚いていましたね。危険な任務に行って、その事を構成員が話して居るところを見た君は、私を心配していましたね。そう言うところ、響也によく似ていますよね。正直、扱いやすくて良かったです。何て、言ったら絶対殴られますよね。

 君と訓練していると、どうも苛々して来て、いつも少しでも駄目だと、キツく為てしまっていました。それは本当に御免なさい。沢山怪我をさせてしまい、本当に申し訳ない気持ちが一番ありました。信じて貰えないとは思いますけど。如何しても強くなって貰いたかったのと、如何しても兄と姿が重なってしまって。白猫で、幹部から引き摺り下ろされてから、段々感情表現が出来なくなってきたのもあります。それを、君には「不器用」と言って誤魔化していましたね。

 君は訓練にもしっかり着いて来てくれましたね。途中、少し事件がありましたが、それも無事解決出来て良かったです。能力を遣うことも出来て、私の目に狂いは無かったと、胸を張って言えますね。

 初めて人を殺した日。君は私の元にやって来て、泣いていましたね。実を言うと、私も初めて人を殺した日には泣いていました。兄が無理矢理手を引っ張り、そして銃で人を殺しました。その日、涙が枯れるまで泣いて、兄に沢山怒られました。私、優しく出来ましたか?

 段々、君は私のことを探るように為ってきて、とても驚きましたよ。だって、自分の事を知ろうとした人、初めてなんですもの。でも、教えるのは簡単だったので、探して貰うことにしました。それで、単独任務前日に、君を執務室に置いていったのです。そこで、写真を見付けたみたいで、驚きましたが。そして、全部教えてあげました。御褒美です。

 単独任務で怪我をしてきた時、凄く心配しましたよ? だって、私の大切な部下なのですから。久しぶりに泣いて、心配しました。私の蛞蝓以下の優しさを、全て使った気分ですよ。私は本当に優しい訳ではないのに。

 君は私の補佐……正式はそうではないけど、幹部補佐という立場になりました。真逆、此処まで登って来てしまうとは。真逆、毎日兄と共に仕事をしている気分にされるのか。そう思ってしまい、毎日の様に一人で騒いでいたことを思い出します。それだけ兄の事が嫌いなんだよ!

 暫く毎日を楽しんでいると、急に君は貴女を連れて来ました。「珍しい」を通り超えて、「ありえない」と思いました。勿論、貴女を組織に迎え入れ、その弟も組織に入れました。貴女は弟のオマケ、と思い込み、弟は貴女のオマケ、と思い込んでおり、とても思い込みを解くのが面倒臭かったのは覚えています。

 貴女は、日々新人達に混ざって訓練を行っていました。最終日、君が仕事を勝手に抜け出して、新人達の訓練を見に行ったときは、本当に殴ろうかと思いましたが、新人へ対する「思いやり」という事で許しましたね。今でも少し許せませんから。

 その日から、ずっと貴女の所属が何処に為るのかが気になって、仕事に身が入らない君は、執務室に来る度にソワソワしていましたね。でも、しょうがないじゃないですか。私、その時期に丁度西の方へ主張が入ってしまい、忙しかったのですから。まぁ、余り遅れて居ない気もしましたが。

 職権乱用。まさにそれです。本来、首領直轄の部隊に配属される筈だった貴女を、私の権限で私の部隊に引っ張って来たのですから。君と、貴女の為に。

 それから、私は小さな敵組織と交流を持つようになりました。君がまだ私の補佐になるまでの間、よく私達を襲撃して来た組織です。その組織に、「数年前と同じ事を、もう一度する様に」と命令し、そして実行させました。しっかりと、私と同じ行動をとる君。そして、数年前の君と同じ行動をとる貴女。全てが計画通り、と言えました。

 単独任務では、君には敵組織の撲滅の仕事を渡しましたが、貴女には、女性にしか出来ない色の仕事を渡しました。ですが、初めての事は大体失敗する物です。君は重症で帰ってきて、貴女は深いトラウマを負って帰ってきました。そう言えば、私の初任務も貴女と同じ様な仕事でした。当時未だ六か七くらいでしたが、大人に囲まれて育って来て、更に変装技術が優れていた私にとって、幼くても別に問題はありませんでした。その仕事は、無事何もヘマする事無く帰還しましたが。矢張り、才能の差という物ですかね。

 「白猫に突っ込んで、出来るだけ組織を潰して来る」と言う、無茶振りな単独任務。私は能力を駆使して頑張って任務をしていましたが、生憎と向こうには一定範囲の能力を弱くするか、遣えなくすると言う能力者が居て。任務は五日続けた所で断念しました。如何にか戻ると、急に医務室に運ばれる物ですから。驚きましたよ。頭領なのに、情けないと言う気持ちで一杯でした。ですが、成果はとんでもない程だったらしいですね。兄に対しての、良い嫌がらせになりましたかね。

 貴女も私の補佐と言う立場まで上って来てくれました。まぁ、反対する者も多かったですが、貴女の事を話したら納得してくれましたよ。

 二度目の特攻攻撃をする為の単独任務。今度は一夜で戻って来る様に言われているので、構成員共を殺して戻りました。が、途中馬鹿兄に見つかり、見事に攻撃を受けてしまいましたね。上手く隠したつもりでしたが、貴女にはバレてしまいましたね。凄い観察眼の持ち主ですね。

 私の知らないところで、君と貴女は恋仲になり、私に隠しながら日々を過ごしていましたね。ですが、私にはバレバレですよ?

 二人が共同任務を熟している間、私は三度目の特攻攻撃へ。今度は獅子と狼の頭領も一緒でした。見事敵幹部の首を一つ掻き切る事が出来ました。そして、首領を呼んで、祝賀会の様な感じで、ちびちびと葡萄酒を舐めながら、話しをしていると、貴女達が入ってきて、報告に来ました。聞いてたのなら言ってくれれば良かったのに。恥ずかしいのか、それとも不安だったのか。

 段々と特攻攻撃の回数は多くなって行き、貴女達が付き合い始めて四ヶ月程経った頃には、頭領が揃って特攻に行き、白猫を攻撃する事が、一週間に一回程のペースまでに上がって来ました。本部の守備の仕事に駆り出されることも多くなり、執務室に居る時間が急激に減り始めました。それを気付かせない為に、良い感じの雰囲気になったところで部屋を抜け出す、と言った事を繰り返したのです。全て、構成員達を巻き込まないように。

 君と貴女を長期任務に送り出し、そして過激化する黒猫と白猫の抗争を片付けようとした時期です。これから第三勢力の様な形となる、機械で作られた「軍」と言うものが発達していたのです。この時の黒猫と白猫には、それが分かりませんでした。

 抗争の終結。
第三勢力の確認。
貴女の死。
君の死。
黒猫の崩壊。
白猫の崩壊。

 これらの出来事が、順番に、全て軍によって引き起こされました。
 嗚呼、そろそろ任務に行かなければなりません。
 死ぬ最期の時まで、貴女達は輝いていました。
 最後の炎が燃え尽きるまで、美しく、輝いていました。
 私と言う、「劣等な人間」に、沢山の事を教えてくれてありがとう。
 心から感謝しています。
 最後、無理矢理終わらせてしまったみたいで、御免なさいね。
 最後に、貴女達に未だ伝えられ無かった事を伝えます。





ありがとう。


愛してる。


黒華琴葉より、大切な部下へ。







私は昔居た、大切な部下が書いた日記、計五冊と、その部下と共に撮った写真全てを、黒い箱の様な缶の中に入れて、蓋をする。
 今までずっと宝物にしていた五冊の日記と写真。だが、今日区切りをつけるのだ。
「遅いです。もう、他の構成員を向かわせてしまいましたよ?」
 任務の集合場所に向かうと、其処には軍服を纏った少年が、額に青筋を浮かべながら仁王立ちしている。彼から漂うドス黒いオーラから、どれだけ腹を立てているのかが分かる。
「あ、仕事がはやーい。いつもお疲れ様―、最年少幹部殿―」
「誰の所為だと思っているんですか、この迷惑首領」
 軽く返す私に、少年は突っ込む。
 この組織の名は決まっていない。だが、世間からは「軍」と呼ばれている。
「で、その缶はどうしたんですか? 首領」
 「首領」と言う単語を強くして話す少年。
 今の私は、「軍」の首領―――と言っても、かなり前、それも軍が出来上がった頃から私は首領だが―――である。
 白猫を潰し、黑猫を崩壊させる。それが、私の為たことだ。
「ちょっと、区切りを付けようと思ってね。最年少幹部殿」
 少年は「軍」の幹部。最年少で幹部の座まで上り詰めている。私には敵わないものの、かなり戦闘の技術はある。
「じゃ、ちょっと行ってくるー」
「あ……まぁ、知っていましたけど、ね」
 後ろでそんな声が聞こえたが、私は気にせず走る。
 今回の任務は敵組織の殲滅。なので、敵拠点まで行くと、既に構成員達が激しい銃撃戦を行っていた。まぁ、構成員と言っても、機械だが。
 敵拠点の中央まで来た。其処の床を掘り、缶を埋める。
 そして、敵拠点に火を放った。



「ん……? 此れは」
 僕が敵拠点に残党が残っていないか確認していると、敵拠点の中心辺りまで来た所に、焼け焦げて形が変形している缶が転がっていた。
「此れ、あの迷惑首領が持っていたヤツじゃないですか……」
 短く舌打ちをして、缶を開ける。
「うわ、何ですか此れ……趣味悪っ……盗撮したんですかね……流石迷惑首領」
 言いたい放題だなーそう言えば、と思いつつ、缶の中身を出していく。入っていたのは写真と日記だった。どうやら、写真の方は昔の仲間で、日記の方は仲間の誰かが書いた、生前手記の様な物だった。
「……持っていれば、弱みを握れますか、ね」
 缶から取り出し、持っていた袋に其れを入れる。
「此れで、迷惑首領が静かになればいいのですが」
 僕は、静かにその拠点を後にした。
 
 

 
後書き
謎すぎる回。
完結した生前手記シリーズですが、謎に一回追加されました。
今回できっと終わりです。
これからもお願いします。 
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