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NARUTO日向ネジ短篇

作者:風亜
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【寄り添うという事】

 
前書き
 【寄る辺ない気持ち】の続き物です。至らない部分はご了承下さい。
 

 
 ……その日はせっかくの休みだったが、ナルトはヒナタときちんと家で話し合う事に決め、ボルトとヒマワリは叔母と祖父の居る日向家に預け、ネジにはうずまき家に来てもらう事にした。

本当は夫婦二人でじっくり話し合うべきだったが、ヒナタにとっては従兄、ナルトにとっては義兄のネジも居てくれる事で、話の至らない部分を補い軌道修正する役割を担 ってもらった。


「──それで、話って何かしらナルト君、ネジ兄さん」

「ヒナタ、改めて聴くけどよ……、大筒木の奴らが襲撃して来た時、どうしてた?」

 ナルトとヒナタはテーブルを挟んで向き合う形で座っていて、ネジはその二人を両側から据えられる位置に居る。テーブルの上には、冷たい麦茶が三人分置かれていた。


「ヒマワリとネジ兄さんと中忍試験の試合を観戦していたから……、急な事が起きてその場はヒマワリを連れて逃げるしかなくて──。ネジ兄さんが私とヒマワリを守ってくれながら安全な場所まで誘導してくれていたけど……、試合会場に残ったナルト君の事が私は心配で──もちろん、ボルトもだけど……」

 ヒナタは言葉を選ぶように話し、若干おどおどしながら麦茶の入っているガラスコップを両の手で包んでいる。

「俺とボルトの事が心配で、ヒマワリの事をネジに預けてまで試合会場に戻って来たのか。……ヒマワリがその時、怖くて不安で一杯で母親に傍に居てほしいって気持ちは分からなかったのか?」

 ナルトはなるべく声を荒げないように、冷静に話している。

「でも、私がヒマワリの傍を離れてもネジ兄さんが居てくれればヒマワリも安心でしょう? 私も安心してヒマワリをネジ兄さんに預けられたし……」

 ヒナタはネジに視線を向けるが、当のネジは複雑な表情を浮かべている。

「……俺はヒマワリのおじさんではあるが、あの場は母親であるヒナタが娘の傍に居るべきだった。襲撃真っ只中の試合会場にヒナタが戻って行ってしまった事で、置いて行かれたヒマワリは父や兄、母までも失ってしまうんじゃないかという極度の不安に陥る事になった。俺が傍に居ても、その不安を和らげてやるにも限界がある」

「…………」


「──ヒナタ、どうして火影の俺を信じてくれなかった?」

「信じていたわ、信じていたけど、私はナルト君が心配で──」

 やはりどこかヒナタの論点はズレており、ナルトは少し語調を強めて話す。

「俺を本当に信じてくれてたら、あの場は俺に任せてヒナタはヒマワリの傍に居て守る事を優先するはずだよな。……なのにヒマワリをネジに預けてあの場に特攻して来た。敵に一撃で吹っ飛ばされて気絶しただけで済んだとはいえ、殺された可能性だって十分あったんだぞ。そうなったとしても俺は火影としての責務を果たすだけだが、ボルトとヒマワリはそうはいかねぇ。子供二人に一生拭えないトラウマを植え付けるとこだったんだぞ」

「私……私は、そんなつもりなんて──」


「ヒナタにはそんなつもりはなくとも、ヒマワリは母親に置いて行かれた事で強いストレスと不信感を抱いたのは確かだ。……その上、ボルトとヒマワリの誕生日会仕切り直しの場で大した意味もなく急に怒り、ナルトが用意したケーキを片付けるような事を言ったそうだな。この前ヒマワリが俺の家に来た際話してくれたが、ヒマワリにとってはヒナタの発言が冗談のつもりだったとしても、嫌だったと言っていた」

「あの時は……、私を差し置いてナルト君と一緒にボルトとヒマワリが楽しそうに戯れていて羨ましくなったから、ついあんな事を言ってしまって」

「……子供二人にまで嫉妬してどうするんだ」

 ネジは片手で頭を抱えて呆れ、ナルトは一度大きく溜め息をつく。


「俺もボルトもあの時は冗談としてスルーしちまったけど、ヒマワリには冗談に聞こえなかったんだよな……。ヒマワリの誕生日に俺の影分身が持たなくてケーキ落下させちまって、食べれずに片付けられた事思い出しちまったんだな」

「──⋯ごめんなさい……、ヒマワリがそんな風に感じていたなんて思わなくて。ちゃんと、謝っておかないと……」


「ヒナタが……俺しか見えてないってのは正直嫌いじゃねぇんだけどよ、二人の子供を持つ親だって事を忘れちゃいけねぇんだ。──いつまでも恋人気分でいるような真似は、それこそいい加減やめてくれねぇか」

「はい……。本当に、ごめんなさいナルト君、ネジ兄さん……」

 両手を膝の上に置きヒナタは二人に頭を深く下げた際、麦茶の入ったガラスコップが目の前に置かれているのも忘れて額をぶつけ、ほとんど飲んでいなかった為か中身を全部こぼしてしまい、慌てて立ち上がった際にはコップがテーブルから落ちてしまったが床に落下する寸前ネジがキャッチして事なきを得た。

ヒナタはほとんど泣きそうな顔で謝りながらテーブルの上にこぼれた麦茶を台布巾で拭き取っていた。


 ──ヒナタは本当に判ってくれたのだろうかと、ナルトもネジも正直疑問だった。ヒナタの性格は基本、昔からあまり変わらない。その都度、言って聴かせるしかないのだろう。

ナルトとヒナタが結ばれたのだってある時を境にとんとん拍子に進んだのであって、ネジは特別介入はしていない。好き同士でなければ結婚しないはずではあるが、ナルトにとってヒナタは自分だけを見てくれる存在であってそれでいて、ひとたびナルトの事になれば周りが見えなくなる危うさがある為か、放っておけなくなったのだろうとネジは思う。

とはいえナルトは既に火影であって、妻が自分の為に危険な特攻をしようともそれは自分本位のヒナタの自己責任であってナルトの火影としての責務は揺るがない。


 ……三人での話し合いの後、日向家にヒマワリを迎えに行った際ヒナタは娘のヒマワリをぎゅっと抱きしめ何度も謝ったそうだが、ヒマワリの方は「もう気にしてないよ」と、寧ろ母親を気遣ってみせたらしい。心に受けた傷はまだ癒えてはいないだろうが、ヒマワリはヒナタの“母親らしさ”というものを期待するのはやめたのかもしれない。

ボルトはモモシキ戦前後にナルトの火影としての立場に理解を示し父親との仲は良好だが、ボルトの右手の平の印が気になる所ではあって、ネジの心配事は当分尽きそうにはなかった。



《終》


 
 

 
後書き
 ネジが亡くなっている本来の話だと、ナルトはネジに義理を立て、ヒナタをネジの代わりに守って行くという意味でもナルトはヒナタと結婚せざる得なかったんだと思います。ナルトからヒナタへの愛はあるにしてもそれはネジの死を介しての事だと思っています。

私的にTHELASTのあの展開で結ばれたというのは無しです。

 ネジが亡くなっている状態だと、ナルトのヒナタに対する叱り方も違ってくると思います。それこそネジの死について触れるだろうと思いますし。

アニメ版や小説などの派生の日向家やヒナタには色々思う所があって心配な部分は多いですが、見守れる内は見守って行きたいと勝手ながら思っています。 
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