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別伝 キルヒアイスとアンネローゼの最後 後編


塾長より先にパラレルワールドの話の最終回をUPします。
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別伝 キルヒアイスとアンネローゼの最後 後編

「アンネローゼ様!!!」
そう言いながら、キルヒアイスの意識は暗転していった。

光が見える、まぶしい光が。あれがヴァルハラなのだろうか?
はっと目を開けると、照明がまぶしく感じる。
おかしい、自分はアンネローゼ様の館の前で撃たれたはずだ。

助かって病院へ連れて来られたのか?
いやそのまま銃殺だったはずだし体の痛みもない。
だいちあれだけ派手に倒れたのに服は全く汚れていない、

アンネローゼ様はどうなったのだ。
そして此処は何処なんだ?
ベッドに寝ていたが起きて付近を見た!

アンネローゼ様!!
少し離れたベッドにアンネローゼ様が寝ている。
アンネローゼ様、アンネローゼ様、アンネローゼ様が直ぐ其処にいる!

キルヒアイスはアンネローゼの元へ走り行く。
アンネローゼはベッドに寝かされている。

「アンネローゼ様、アンネローゼ様」
胸元を見るとゆっくりとだが息をしているのがわかる。
アンネローゼ様が生きておられる!

「アンネローゼ様、アンネローゼ様」
失礼かと思ったが体を揺する。
「ん・・」

アンネローゼ様が目を覚ましてくれた。
「アンネローゼ様」
「ん・・ジーク・・・」

「アンネローゼ様!!!」
アンネローゼが気がつきキルヒアイスを見つめる。
「ジーク」

「アンネローゼ様」
「ジーク此処は何処なのですか?」
「アンネローゼ様、すみません私も判らないのです」

「私はジークの死刑と弟の死を聞いてもう生きていても仕方がないと、
毒酒を呷ったのです、それなのに何故生きているのかが判りません」

「アンネローゼ様、私もです。アンネローゼ様の館が燃え始めたとき、
アンネローゼ様の元へ走る途中で銃弾に貫かれたのですがその痕もありません」

2人して不思議がる。
そして見つめ合う。

その時である、部屋の扉が開き眩い光が差し込んできた。
扉があること自体を2人とも気がついていなかった。

アンネローゼを庇うキルヒアイス。
「アンネローゼ様」
「ジーク」

輝く光の中から、眩い輝きの鎧を纏った騎士が現れた。
騎士に対して警戒するキルヒアイス。
騎士が語る。

「アンネローゼ・フォン・グリューネワルト、
ジークフリート・フォン・キルヒアイス、
我は、アルヴィト、お前達をヴァルハラへ迎えに来た」

よく見ると女騎士であるが、ビキニアーマーを纏っている。
「ヴァルハラだと!そんな馬鹿な!」
「アルヴィト、全知を有するヴァルキリーなの?」

「小さき者よ、オーディンの元へ向かうのだ、我が案内いたす」
「私たちは死んだのですか?」
アンネローゼの方が年増なだけ冷静である。

「アンネローゼ様、その様な事を」
キルヒアイスは死に対して敏感になっている。
「その通りだ。此処は生と死の狭間、お主たちは死を迎えヴァルハラへ向かうのだ」

「そんな事あるわけがない!」
キルヒアイスは現実から目を反らそうとしていた。
「アルヴィトさん、ジークとヴァルハラでも一緒に居られるのですか?」

アンネローゼは既に現世よりヴァルハラでの事を考えていた。
「アンネローゼよ、キルヒアイスと共に暮らすことは可能だ」
「アンネローゼ様、共に暮らすとは」

「ジーク、そのままの意味ですよ、現世では共に暮らせませんでしたが、
ヴァルハラでは2人で暮らしましょう永遠に」
「アンネローゼ様、アンネローゼ様、アンネローゼ様」

泣き出すキルイアイスを抱きしめるアンネローゼ。

「そろそろ良いか、時間だ」
「はい、さあジーク参りましょう」
こうゆう時女は強い。

「はい。アンネローゼ様」
アンネローゼに付いていくキルヒアイスはまるで犬である。

真っ白な廊下を歩くと突き当たりに重厚な扉が有り、その扉が音もなく開く。
アルヴィトが此処へ入れるようにと示す。
「この扉から中へ入るように」

怖々とアンネローゼとキルヒアイスは手をギュッと握り合って部屋に入る。
部屋はまるで法廷のようであり、目の前の裁判長席に1人の女性が座っている。
その姿は、全身を真っ黒なフードとマントを纏った死神のように見えた。

「お主等が罪人《トガビト》、アンネローゼ・フォン・グリューネワルトと
ジークフリート・フォン・キルヒアイスじゃな」
罪人の声にキルヒアイスが顔色を変える。

「アンネローゼ様は罪人じゃない」
「フ、激高するでない、此処は生と死の狭間、妾はヘルじゃ」
「ヘルの言葉に、固まる2人」

オーディンにより、ヘルは、名誉ある戦死者を除く、
たとえば疾病や老衰で死んだ者達や悪人の魂を送り込み、
彼女に死者を支配する役目を与えたのだ。

つまり自分たちは悪人なのかと、そして騙されたと感じた。
キルヒアイスは確かに自分は、ラインハルト様のヴェスターランドの虐殺を止められなかった。
それだけでも悪人だ、しかしアンネローゼ様はそうじゃないと叫びたかった。

アンネローゼは自分の罪深さをヒシヒシと感じており、
ラインハルトの悪行を助長したのが自分であると考えており、
自分たち姉弟に巻き込んでしまった、
ジークとジークの両親に対してにいくら謝っても過ぎないと考えていた。

シーンとする法廷。遂に審判がくだる。

「ジークフリート・フォン・キルヒアイス。地獄《ヘレ》」
キルヒアイスは審判を聞き、自分の事よりアンネローゼ様がヴァルハラへ向かえるようにと祈っていた。
アンネローゼはジークが地獄に堕ちるなら自分も一緒について行こうと心に決めたのだ。

「アンネローゼ・フォン・グリューネワルト。地獄《ヘレ》」
「そんな馬鹿な!アンネローゼ様が地獄へ堕ちるはず無い!!」
「ジーク、良いのです、私だけがヴァルハラへ行くわけには行かないのです。
貴方が居ない世界などどうでも良いことなのです。一緒に地獄へ堕ちましょう」

「アンネローゼ様」
「ジーク」
抱き合う2人。

「フフフ、アーハハハ」
笑い出すヘル。
笑い声が気になる2人。

「良い姿を見せて貰った。2人の愛情、しかと確かめさせて貰ったぞ」
次第に何処かで聞いた声だと考え始めた。
真面目顔のアルヴィトが苦笑を始める。

「殿下、そろそろ宜しいのではありませんか?
この鎧、凄く恥ずかしいです」
「ズザンナ、その姿凄く似合ってるんだけどね、
その姿流石凛々しいね、父親《オフレッサー》譲りだね。
その姿ネットに流せばファンが山盛りになるよ」

ヘルとアルヴィトの掛け合いを聞きながら、
キルヒアイスとアンネローゼは呆然としている。

「アンネローゼ、キルヒアイス、妾じゃ、テレーゼじゃ」
フードとマントを脱いだ姿は間違えなく、
銀河帝国摂政宮テレーゼ皇女であった。

絶句するアンネローゼとキルヒアイス。
「すまぬの、お主等の心意気を見たかったのでな、一芝居うったのじゃ」
「心意気?」
やはりアンネローゼが先に意識を現世へ呼び戻した。

「そうよ、本来であればシェーンヴェルトの罪科で4人共々死罪が相当じゃ、
だがの、お主等4人は実質的には被害者でもある。
シェーンヴェルトとオーベルシュタインの陰謀の被害者とも言えるのだ」

キルヒアイスは4人と言う言葉にすっかり両親のことを忘れていた事を思い出した。
「父さんと母さんは?」
「無事じゃ、生きておる」
両親がアンネローゼ様と共に生きている事に喜び、騙された怒りもどこかへ行ってしまった。

「ジーク良かった」
「アンネローゼ様」
両親が無事と聞き安堵する2人。

「それにじゃ、アンネローゼを連れ去ったのは、コルヴィッツじゃが、
その一端を作ったのは、父上でもある。
父上も死の寸前までアンネローゼに苦しみを与えてしまったと悔やんでおられた」

「陛下がその様なお言葉を」
アンネローゼが瞠目しながら涙ぐむ。
「そこで父上は何があってもアンネローゼを助けよと仰ったのじゃ、
思えば今日有ることを予測していたのかもしれんな」

テレーゼがしみじみと話す。
実際はそう仕込んでいたからなのだが。
それを聞き、アンネローゼだけでなくキルヒアイスも驚愕し、
自分は何をしてきたのだろうと考え始めていた。

アンネローゼとキルヒアイスが質問をする。
「私は毒酒を飲んだはずですが」
「私と両親もブラスターで撃たれたはずですが」

「アンネローゼのは睡眠薬じゃ、
キルヒアイスと両親は気絶モードじゃ、
流石に誤魔化すのは大変じゃったぞ」
テレーゼは2人を見ながらニヤリとした。


「しかしな、シェーンヴェルトだけは許せん!」
テレーゼが珍しく怒気を露わにする。
「ラインハルト様はラインハルト様なりに平民の事を考えていました」
キルヒアイスが反論する。

アンネローゼは気が気でない、此処でテレーゼの機嫌を損ねたら又死罪と言う事もあると、
ジークが死ぬなんて嫌だと言う感情が益々大きくなっていった。
「ジーク止めなさい、殿下に謝るのです」

「よい、アンネローゼ、妾も教えてやりたいのだ。
シェーンヴェルトとオーベルシュタインの起こした悪行をな」

何があるのか、2人はラインハルトを思い出しながら話を聞くのである。

「シェーンヴェルトは焦土作戦を行ったが、妾は反対じゃったが、
それは敵を倒す為と押し切られた、その為辺境では阿鼻叫喚が発生したが、
叛徒共をアムリッツァで撃破するさい、辺境に何の処置もせずに追撃しかしなかった。

輸送艦隊を送り物資の補給すらしなかった。
戦果のみを求めて、辺境の臣民の事などどうでも良かったと言う事だ、
結局妾が、メルカッツを送り支援を行ったのじゃ」

キルヒアイスは思い当たり反論が出ない。

「次に、ブラウンシュヴァイク公の部下がシェーンヴェルトを襲った事じゃ。
あれで内乱が起こったが、本来で有ればあれは起こらない内乱だったのじゃ」

「内乱が起こらないとは?」

「実は、あの翌日に父上の遺言状を妾が黒真珠の間で発表することになっておったのじゃ」
「その様な事が」
「なんじゃそちは知らなかったのか」

「はい、何も聞いておりません」
考え始めるテレーゼ。
「やはりな。アンネローゼよ、キルヒアイスは、騙されていたようだな」

「いったい誰に?」
ラインハルト様か?
「恐らくオーベルシュタインじゃな」

「オーベルシュタイン」
「そうじゃ、妾はあの襲撃の翌日の遺言状発表に際して、
帝国全土の貴族とその家族をノイエ・サンスーシへ呼び寄せているはずであった。
そしてノイエ・サンスーシの周りには、
オフレッサー率いる装甲擲弾兵10万人が待機しているはずであった。

そして当日、遺言状発表に事欠いて集まりし4000人を超える貴族を一網打尽で捕まえるはずであった。その際家族諸共捕縛する予定じゃった」

「その様な暴挙を行えば、殿下の名声にお傷が」
アンネローゼが心配そうに聞いてくる。

「良いのじゃ、妾1人が悪行、未来永劫残ろうとも、
僅かの犠牲で数千万の内乱における犠牲者が救えるのじゃ。
妾の名誉など塵芥よ」

アンネローゼがそれを聞いて涙ぐむ。
キルヒアイスも絶句する、この方は何という方なのだろうと。

「だがな、それは前夜のシェーンヴェルト元帥府襲撃で潰え、
そのまま内乱に突入してしまった。
此ほどシェーンヴェルトとオーベルシュタインを怨んだことはないぞ」

「お待ち下さい、ラインハルト様は襲撃されたのですから、
悪いのはブラウンシュヴァイク公の周辺の者でしょう」

「キルヒアイス、やはりそちは知らなんだな。
あの襲撃は、オーベルシュタインが行わせたのじゃぞ」

「まさか」
「そのまさかよ、ブラウンシュヴァイクの家臣ハウプトマンがシュトライトとフェルナーを嗾けて襲撃をさせたのじゃ、しかしな奴はオーベルシュタインの犬ぞ」

衝撃の事実にキルヒアイスは愕然とする。
確かに、テレーゼの策を行えば、悪名は残るが門閥貴族を潰し改革が成功しただろう。
内乱に比べて遙かに少ない流血で。
それをオーベルシュタインが潰した。
ラインハルト様は何処までご承知なのだろうか、それが気になった。

アンネローゼは、弟が恐ろしいことをしていたと益々嘆くのである。
弟の権力欲で数千万の人々が不幸に成ったのである。
此ほどアンネローゼの心を掻きむしる事は無いだろう、
そして弟に対する愛情が薄れ、険悪感が沸き上がるのを感じ始めていた。

「そしてヴェスターランド核攻撃の事じゃ、
撃ったブラウンシュヴァイク公も悪いが、
敢えて傍観し権力掌握に使ったシェーンヴェルトも悪いのじゃ」

「しかし殿下もそれを阻止できなかっのではありませんか?」
些か屁理屈を言ってしまう、キルヒアイス。
まだラインハルトを信じたい気持ちがあるのだ。

「そうよの、妾もガイエスブルグに間諜を仕込んでおって、
ブラウンシュヴァイクの核攻撃の情報は得ていた」

「では知っていながら敢えて無視を為さったのですか?」
キルイアイスが厳しく問う。

「勘違いするな、その様な事するわけが無かろう。
妾は情報を受けて直ぐに、ミュラーを遣わしたのじゃ。
そしてミュラーはヴェスターランドへ到着し待機したのじゃ」

「しかしそれで何故核攻撃が起こったのです?」
「それよ、ミュラーは見事にブラウンシュヴァイクの攻撃を防いだのじゃ」
「攻撃を防いでいるのに、何故核攻撃があるのですか?」

キルヒアイスは気がつかないらしい。
「妾はブラウンシュヴァイクの攻撃は防いだと申したのじゃ」
「それは」

混乱するキルヒアイス、ブラウンシュヴァイクの攻撃は防いだと言う事は、
他に攻撃した者が居るということなのか?

「そうよ、判ったかもう一人の攻撃者はシェーンヴェルトの配下じゃ!」
まさかという顔をするキルヒアイス。
アンネローゼは最早そうなのかと、あきらめ顔である。

「まさかラインハルト様がそんな事をするわけがない!」
「いやしたのじゃ。奴らは偵察艦だけでなく、巡航艦を後方から準備し、
ミュラーがブラウンシュヴァイクの攻撃を止めたときに、
隙を突いて核攻撃を行ったのじゃ。あの映像は自作自演じゃ!!」

「そんな、そんな」
「証拠もある核攻撃を行ったのは、巡航艦アヴァロンじゃ」
「ミュラーがヴェスターランドを守る為に広域衛星で監視させていて偶然撮れた映像じゃ」

其処には偵察艦の影から核ミサイル発射する、
アヴァロンの姿が映っており、
その核がヴェスターランドへ次々に着弾するさまが撮されていた。

映像を見せられた。キルヒアイスが力なくつぶやいた。
「ラインハルト様の艦隊の艦です」

どうしてラインハルト様は悪魔の所業をするようになったのか、
俺は何を見てきたんだと、キルヒアイスは嗚咽を始めた。

それを優しく抱きしめるアンネローゼ。
「ジーク、私は、もうあの者を弟とは思いません!」
「アンネローゼ様・・・・」
「ジーク、貴方もあんな男を様付けなど止めなさい!」

「私の大事な人はジークだけになってしましました」
涙ぐむアンネローゼはジークをじっと抱きしめる。

「2人とも、シェーンヴェルトが変わったのは、恐らくオーベルシュタインのせいぞ」
「オーベルシュタイン」

「そうじゃ、きゃつが元帥府に入府して以来、
シェーンヴェルトの行動が臣民を思うモノから覇道へと変わっていった。
シェーンヴェルトはオーベルシュタインの負の力に飲み込まれたのじゃろう」

「ラインハルトさ。あっ、ラインハルトが飲み込まれた」
「そうじゃ、オーベルシュタイン、
きゃつは、ゴールデンバウム王朝五世紀の怨嗟や怨念が固まりし化け物よ。
その化け物にシェーンヴェルトは飲み込まれたのじゃ、
シェーンヴェルト自身の野望の為に」

キルヒアイスは確かにオーベルシュタインが来てからのラインハルトの変わり様を思い出していた。
アンネローゼも考えていたのであろう。


暫くして。
「所でお主等の処遇じゃが、
謀反人ラインハルト・フォン・シェーンヴェルトの一族と共謀謀議者じゃから、
アンネローゼ・フォン・グリューネワルト伯爵夫人は毒酒を呷って自害。
ジークフリート・フォン・キルヒアイス家族は銃殺刑。
となっておる、つまり既にお主等は表向き死人なのだ」

うなだれる2人。
「しかし、父上のこともある。そしてキルヒアイスは心優しき人じゃ、
お主等に新たな姓と名前を授けよう、無論父と母にもじゃ。
その代わり、余り顔をだせんから、ローエングラム領に住んでもらうぞよいな」

「しかし私たちは生きる資格が」
「アンネローゼ、安易に死を選ぶな。生き抜くことこそ贖罪と思うのじゃ。
キルヒアイスと子を成し家族を増やしその地に繁栄を起こすのも贖罪ぞ」

「キスヒアイス、卿も同じじゃ、アンネローゼと共に子を成し、
育て慈しみ繁栄をもたらすのじゃ」

「殿下」
「殿下」

アンネローゼとキルヒアイスは涙ぐみながら、崩れ落ちてテレーゼにお辞儀しまくる。
まるで土下座であった。

「此でよいのじゃ、グリューネワルト伯爵夫人は自害の上、館に火を放ち遺体は焼けてしまった。
キルヒアイス元中将は銃殺中に逃げ出し、
グリューネワルト伯爵邸に入り焼け死んで死体も焼けてしまった。
これが公式記録じゃ、のうズザンナ」

「御意」

「さらばじゃ、2度と逢うことは無かろう。名も無き者達よ」
颯爽と退室していくテレーゼを見て、新たな名前を貰った2人はずっとお辞儀をし続けたのであった。




帝国暦503年9月20日
■ローエングラム星系ローエングラム本星トレラント島

雄大な大地一面が黄金色に輝いている。
今年も稲は豊作だ。
其処で仕事をしている、ノッポの赤毛の男が麦わら帽子を被り直しながら汗を拭く。
「父さんー、母さんがお昼だって」
「ああ、ジークフリート、今行くよー」

手を止め、父親似で赤毛の13歳の子供を肩車しながら、
彼は家族の待つ家へ帰っていく。
 
家では金髪の優しい笑みの女性が、
母親似で金髪の11歳の娘と共に昼ご飯の支度をしている。
「アンネローゼ、お爺ちゃんとお婆ちゃんを呼んできてくれる」
「はーい母さん」



家族の団らんである。
祖父と祖母、息子夫婦に、長男、長女、そして次男、
金髪の3歳児は祖母がスプーンから食事をあげている。

「ラインハルト、好き嫌いしちゃだめよ」

ジークフリートが父に話しかけてくる。
「父さん、女帝陛下は凄いね、叛徒の首都を陥落させて降伏させたんだって。
残念だな僕も軍人になりたかったのに、これじゃ軍人に成ることが出来ないや」

「そうだな、テレーゼ様は凄いお方だったな」
「父さん女帝陛下を知ってるの」
「昔、間接的にお仕えしていたことがあったのさ」

「へー凄いね、そのお話してよ」
「ああ。教えよう、嘗て銀河を又に駆けた英雄達の物語を・・・・・・」




        銀河英雄伝説 Fin

 
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