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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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第59話

~ジオフロントB区画・”SⅡ”~



「はあはあ……やったか!」

「ハア、ハア……魔煌兵を相手にしてもリィン達もそうだけど、アリオスさんやエルファティシア皇妃陛下もまだまだ余裕だなんて、自分達の力不足を思い知らされるわね……」

「ふふっ、比較する相手が少々間違っているだけで、お嬢様達も1年半前とは比べものにならないくらい成長なさっていますわ。」

「ま、”本物の戦場”を何度も経験して、更にメンフィルの”要請(オーダー)”によってアンタ達以上に”実戦”を経験しているリィン達は当然として、八葉一刀流の皆伝者(マスター)にヴィータどころかアタシ達の”長”ですらも足元にも及ばないエルフ族の使い手なんだから、比較する事自体が間違っているわね。」

戦闘終了後マキアスと共に息を切らせて呟いたアリサの言葉を聞いたシャロンは苦笑しながら、セリーヌは呆れた表情で指摘し

「………今のが”魔煌兵”とやらか。クロイス家が使役していた魔導兵達とは桁違いの戦闘能力だな。」

「そうね。ま、倒しても無限に湧いて来たクロスベル奪還での魔導兵達と比べたら、楽な相手よ。」

「フム……旧Ⅶ組やクロスベル側の”助っ人”達はともかく、アルフィン夫人が僅か1年半であれ程の術者に成長している事には驚きましたね。」

「ええ………旧Ⅶ組と違って”実戦”はカレル離宮での救出作戦くらいしか経験していないはずのアルフィン夫人があれ程の術者へと成長した事には驚きました。まあ、アルフィン夫人が1年半前と比べると魔力は当然として、体力も相当つけている”理由”は何となく想像はできますが………」

静かな表情で呟いたアリオスの分析に頷いたエルファティシアはかつての出来事を思い返し、サフィナは息を切らせていない様子のアルフィンを見つめて僅かに驚きの表情を浮かべて呟き、サフィナの意見に頷いたセシリアはアルフィンが1年半前と比べものにならないくらい体力や魔力が上昇している”理由”は察していた為苦笑していた。

「フウ……何とか問題なく撃破できましたわね。」

「ああ。エリゼ、アルフィン。二人とも大丈夫か?」

「はい、私達も問題ありません。」

「ふふっ、ご心配して頂き、ありがとうございます。」

セレーネと共に安堵の溜息を吐いたリィンはエリゼとアルフィンに無事を確認し、リィンの言葉に二人はそれぞれ頷いた。

「うふふ、それにしてもアルフィン夫人が1年半前とは比べものにならないくらい戦闘能力が総合的に大幅に成長している事には驚いたけど…………その大幅に成長した秘訣は性魔術で強化したエリゼお姉さん達のように、”夫婦の役目”でもある”子作り”が関係しているのでしょう?」

「ブッ!?レ、レン教官!お願いしますから、そういう事はもう少し遠回しな言い方で言って頂けませんか……?」

「ふふっ、ですがレン皇女殿下の仰っている事も強ち間違ってはいませんわよね、あ・な・た♪」

自分達に近づいてからかいの表情を浮かべたレンの問いかけに噴きだしたリィンが慌てた様子でレンに指摘している中、アルフィンは微笑んだ後リィンの片腕に自身の両腕を組ませると共に豊満な胸を押し付けてウインクをし

「………アルフィン?貴女と兄様は夫婦だからそういう事を人前でするなとは言わないけど、せめて時と場合を考えるべきだと思うのだけど?」

「ア、アハハ………」

その様子をエリゼがジト目でアルフィンに指摘している中セレーネは苦笑していた。



「――――見つけました!」

するとその時クロスベル全土の霊脈をティオと共に調べていたエマが目的を達成した事を口にするとリィン達はエマとティオに視線を向けた。

「エマさん、そのまま集中を――――データ変換します!」

そして目的を終えた二人は霊脈の探索(サーチ)を止めた。

「はあはあ………」

「エマ、ティオ主任……!?」

「二人とも、大丈夫か……!?」

息を切らせているエマの様子にアリサは驚き、マキアスは心配そうな表情で二人に声をかけた。

「ええ……確実に”捉え”ました。」

「こちらも、霊力感知のデータ変換が完了しました。皆さん、本当にお疲れ様です。」

「そうか……!」

「これで何とか敵の拠点の目星がつきそうですわね。」

「エマ、お疲れ様……!」

「ふふっ、ティオさんのサポートと皆さんの力があったからです。でもエイオンシステム――――本当に凄い技術ですね。」

「魔術と技術の合わせ技なんて恐れ入ったわよ、まったく。」

「ふふ、お役に立てたならよかったです。これから座標解析に入るのであとはこちらに任せてください。地図情報と共に送りますので一度インフィニティに戻るといいかと。」

「わかった、よろしく頼む。協力、本当にありがとう。」

「ふふ、こちらのセリフです。――――それではまたあとで。」

こうして目的を果たしたリィン達はインフィニティの本社ビルへと戻り始めるとある人物達がリィン達に声をかけた。



~クロスベル・西通り~



「あ、ねーちゃんの先生だ!」

「君達は……ケンとナナだったか。」

「そう言えば日曜学校に通っているのでしたわね?」

「うん!たのしかったー!」

「ちぇっ、あんなのメンドクサイだけじゃん。」

リィン達に近づいた人物達――――ナナとケンはそれぞれ日曜学校の事についての感想を口にしたがある事に気づいてリィン達に訊ねた。

「あれ、ねーちゃんは?クルトにアル、ゲルドもいないし、メガネのオジサン、だれ?」

「ガクッ、おじさんって………」

「クスクス、ご愁傷様、マキアス”おじさん”♪」

「レ、レン教官………そこで追い打ちをするのはさすがにマキアスさんが可哀想ですわよ……」

子供に”おじさん”呼ばわりされて疲れた表情で肩を落としているマキアスにからかいの表情で追い打ちをしたレンにセレーネは表情を引き攣らせて指摘した。

「うわああっ………みんな、美人さんなの~!おねえちゃんたち、おなまえ何ていうのー?」

一方女性陣――――アリサ達を見回したナナは目を輝かせてアリサ達の名前を訊ねた。



「あはは………可愛いわねぇ。アリサよ、こっちのお姉ちゃんはエマ。」

「アリサお嬢様にお仕えしているメイドのシャロンと申しますわ♪」

「ふふっ、リィンさん達のお知り合いの子たちですか?」

「ああ………ユウナの双子の弟妹(きょうだい)さ。」

「まあ………ユウナさんの。」

「道理で髪の色とかもそっくりな訳ですわね………――――あっと、自己紹介が遅れましたわね。わたくしはアルフィン。こちらの黒髪の女性はエリゼ。よろしくお願いしますわね。」

ケンとナナをアリサ達と共に微笑ましく見守っていたアルフィンはアリサのように自分とエリゼの事を説明し

「―――サフィナと申します。以後、お見知りおきを。」

「エルファティシアよ、よろしくね♪―――と言っても、ひょっとしたらその内日曜学校で私の名前も知ることになるかもしれないわね。」

「私の名はセシリア。貴方達の姉君の教師であるリィンの元教師です。よろしくお願いしますね。」

「ねーちゃんの先生の先生って、なんかヤヤコシイな………」

「三人とも綺麗でカッコイイの~。――――あれ?スミレ色のおねえちゃんって、もしかしてコリン君の話に時々出て来た、”レンおねえちゃん”?」

サフィナは軽く会釈をして自己紹介をし、エルファティシアは自己紹介をした後苦笑し、セシリアが自己紹介をするとケンは首を傾げ、ナナは無邪気な様子で二人を見つめていたがレンに気づくと興味ありげな様子でレンに訊ねた。



「あら、貴方達、コリンの友達でもあるの…………まあ、見た感じ年もあの子に近いし、あの子の実家も近いから仲良くなっていてもおかしくないわね。――――ええ、レンがその”レンおねえちゃん”よ。いつも、”レンにとっては弟のようなコリン”と仲良くしてくれてありがとうね♪」

ナナの口から出て来た意外な人物に目を丸くしたレンは微笑みながら答え

(えっと……”コリン”って、レン皇女殿下とは一体どういう関係なんだ……?)

(えっと、それは…………)

(―――――コリン・ヘイワーズ。レン皇女の”本当の両親から産まれたレン皇女と血が繋がっているレン皇女の弟”の事だ。)

(ええっ!?)

(そう言えば”殲滅天使”は”D∴G教団”の件で家族と離れ離れになって、教団の拠点(ロッジ)を襲撃した”英雄王”達に拾われたらしいけど………あの様子だと、本当の家族ともそこそこ上手くやっているようだけど、何で本当の家族は”殲滅天使”を元の関係――――レン皇女を”家族”に戻す事をしなかったのかしら?)

(……色々と複雑な事情があるんだ。)

その様子を見て不思議に思ったマキアスの疑問にセレーネが答えを濁しているとアリオスが代わりに答え、アリオスの答えを聞いたエマが驚いている中困惑の様子で呟いたセリーヌの疑問にリィンは静かな表情で答えた。



「へ~、コリンがいつもジマンしているだけあってスミレ色でキレイなねーちゃんだなー………って、えええええええっ!?おじさん、もしかして………ゆーげきしのアリオスさん!?」

「ふえ……?わあぁぁ……っ!シズクおねえちゃんのお父さんなの~!ロイドおにいちゃん達が集めている”ショメイ”で、ついにシズクおねえちゃんの所に戻って来れるようになったの~?」

アリオスに気づいたケンとナナはそれぞれ驚いた様子でアリオスを見つめ

「フッ、国防軍長官に就任する前にミシェルに辞表を渡した上遊撃士協会本部も俺を除名したから今の俺は遊撃士ではないのだがな…………―――今は事情があって、彼らに協力する為に彼らと共にしているだけだ。それよりもシズクと仲が良いようだが……日曜学校でシズクと知り合ったのか?」

アリオスは苦笑しながら答えた後二人にシズクとの関係について訊ねた。

「ううん、シズクおねえちゃんはナナ達のおウチのゴキンジョさんなの~。」

「近所………という事はガイやセシルの実家の”ベルハイム”の住民か………――――クロスベル全土を巻き込んだ”大罪”を犯した俺の娘であるシズクと仲良くしてくれている事……心より感謝する。」

「アリオスさんは何もワルイ事をしてねぇよ!ワルイ事をしたのはダイトーリョウだよ!それよりもアリオスさんがクロスベルにいる事をねーちゃんが知ったら喜ぶだろうな~――――って、あ、そうだ。また聞くのわすれるトコだった。」

「なの、なの!ちゃんと聞かないと!」

ナナの答えを聞いて二人が”ベルハイム”の住民である事に気づいたアリオスは二人に感謝の言葉を述べ、アリオスの答えに対して反論したケンはある事を思い出し、ケンに続くようにナナもリィンを見つめた。



「あのさ、にーちゃんnたち、”灰いろの騎士”って知ってる?アリオスさんと同じ”ハチヨウイットウリュウ”の剣士で、”トクムシエンカ”にもいてたんだぜ!」

「……えっと。」

「コホン……ああ、よく知ってるが。」

「ふふっ、それがどうしたの?」

ケンの問いかけに仲間達と共に一瞬黙り込んだリィンは困った表情をし、マキアスは咳ばらいをし、アリサは優し気な口調で訊ねた。

「えとね、えとね!おれいが言いたいのー!ナナたちのイノチのオンジンだからー。」

「え………」

「命の……恩人ですか?」

「うん、1年半前……だっけ?ろくじゅうしとトクムシエンカが協力して、ダイトーリョウ達からクロスベルをダッカンしているとき、オレたちを助けてくれたんだぜ!」

「町を歩いていたおっきな人形達が、ナナ達を襲おうとした時にぴゅーんときて、あっという間に人形達を倒してナナ達を助けてくれたのー♪ユウナおねえちゃんもいっしょだったんだよー!」

ケンとナナがかつての出来事をリィン達に説明している中、演習地ではⅧ組、Ⅸ組がそれぞれ演習をしている中、アルティナ達―――Ⅶ組はユウナの看病をしていた。



~デアフリンガー号~



「……ユウナさん、せめて朝食くらいは。サンディさん自慢のミルク粥だそうです。」

「何か食べないと、倒れたり病気になってケン達を心配させてしまうかもしれないわよ……?」

「…………………」

ミルク粥を乗せたお盆を持っているアルティナと共にゲルドは心配そうな様子でユウナに声をかけたが、ユウナはアルティナ達に背を向けて寝転がったまま何も答えなかった。

「ルイゼやゼシカも心配してたよ。いや、彼女達だけじゃない。第Ⅱの生徒全員が心配している。――――もちろん僕達も。」

「……どうして………3人ともどうして教官達についていかなかったのよ……行きたかったんでしょ?」

クルトが二人に続くようにユウナに声をかけるとユウナはクルト達に背を向けたまま訊ねた。

「……そりゃあ、また置いてけぼりだからね。ただ、君を置いて行くのは”違う”と思ったんだ。」

「…………………」

「僕は……もう知ってるだろうが本当は”本校”に行くはずだった。長きに渡り、皇族を護り続けたヴァンダール家の一員として。セドリック殿下の護衛を兼ねて共に入学することを疑わなかった。……だが去年の秋、政府の決定でヴァンダール家の役目は解かれた。『皇族の護衛という栄誉を一貴族に独占させるべきではない』そして兄は辺境に飛ばされ、父や叔父たちも軍務に封じられ……僕自身も殿下の護衛を禁じられた。………ただの自暴(やけ)だったんだ。本校ではなく分校を選んだのは。」

「…………………」

「……クルトさん………」

「クルト……」

クルトの分校に入学した理由を知ったユウナが黙り込んでいる中アルティナとゲルドは静かな表情で見守っていた。



「―――正直、クロスベルについては伝聞程度しか知らなかった。”六銃士”達による”クロスベル帝国”の建国の経緯はエレボニア人としては複雑だけど、大国へと成りあがり、更には2度もエレボニアを降したメンフィル帝国と盟を結んだのだからこれからは、エレボニアとクロスベルもお互いに対等の関係になるのだと思っていた。でも――――人の誇りや国同士の関係と言うものはそんな単純なものじゃないんだよな。君たちが味わっている無力さと比べたら僕の悩みなんて、なんてちっぽけなんだろう。――――そんな風に思ったらとても君を放っておけなかった。」

「…………………」

「……わたしは、ユウナさんが何故そこまで落ち込むのかわかりません。――――故郷などはありませんし、生物学的な親からも産まれていません。そもそも必要なく感情が動くように”造られて”はいないと思うので……」

「なっ……!?」

「………ぇ……………」

「………編入時に口にしたアルティナの話を聞いて”貴女が何者なのか”は薄々気づいてはいたけど………」

クルトが話し終えると次にアルティナが自身の事について話し始め、アルティナの話を聞いたクルトとユウナが驚いている中、ゲルドは辛そうな表情でアルティナを見つめていた。

「でも昨夜―――ユウナさんが叫んでいるのを見て……なんだか胸がモヤモヤしました。それで教官達に『放っておいていいのか?』と言われて……わたしがここに残っている理由はそのくらいです。」

「…………………」

「……アル………」

「………ここにいるみんなも知っているでしょうけど、私は”予知能力”――――”未来を視る”事ができるわ。だから、昨夜ユウナが”辛い現実を知って、今の状況になる未来”もユウナが執行者達に問い詰める少し前に”視えた”の。……私の”予知能力”はあくまで”可能性”であって、”回避する事もできる”のに、結局ユウナを止められず、ユウナに辛い思いをさせてしまった………だから私はその償いをする為にも……そしてこの世界に来てようやくできた”友達”に立ち上がって欲しいという思いもあるから、ここにいるわ。」

アルティナが話し終えるとゲルドは辛そうな表情で事情を説明した後決意の表情でユウナを見つめ

「そうか……だから君はあの時ユウナを止めようと……」

「未来が見えすぎる事は決して良い事ばかりではないのですね………」

「………ゲルド………あたしこそ……そんな大層な理由じゃないよ……本当はわかってるんだ………どうしようもない現実があっても……歯を食いしばって頑張るしかないんだって……あたしのは……ただの”我儘”だよ………」

ゲルドの事情を知ったクルトとアルティナが辛そうな表情でゲルドを見つめている中仲間達が自分の為に残っているそれぞれの事情を知ったユウナは自分の本音を口にし始めた――――――


 
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