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塩ラーメン✖カレーラーメン

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第四章

「それを他人に言い張るのはどうじゃ」
「よくない」
「押しつけですか」
「舌の好みはどうしようもないんじゃ」
 塩ラーメンが一番と思えばそうなってカレーラーメンがそうだと思えばそうなってしまうものだというのだ。
「それをあれこれ言っても仕方ないじゃろ」
「言われてみれば」
「そうですね」
「先生達もそうで生徒も同じじゃ」
 言い合う彼等もというのだ。
「そのことわしからあの子達に言うておくわ」
「彼等にもですか」
「そうしますか」
「そうじゃ、わしからしてみればどっちも美味い」
 同じだけそうだとだ、藤熊は二人に話した。
「それでもええじゃろ」
「美味しいと思えば」
「どちらもと思うなら」
「そういうことじゃ、自分が思っていればそれでええんじゃ」
 この考えは実は池田に言われたことだが藤熊も言った。
「それでな」
「ラーメンもですか」
「そういうことで」
「ええことじゃろ」
 こう二人に言ってだ、藤熊は生徒達にも話した。そうしてこの騒動を終わらせたのだった。
 騒動が終わってからだ、藤熊は池田と今度は彼を家に呼んでそのうえで話をした。そしてこんなことを言った。
「話は終わったが何かのう」
「ああ、この話はな」
 池田も頷く、二人で藤熊の家のテーブルに座ってお茶を飲みつつ話している。
「よくある話だな」
「ラーメンだけでなくのう」
「何でもあるな、結局あれだな」
「自分がそれを一番好きならじゃな」
「それでいいんだよ」
「問題はそれを強制したらいかん」
「そういうことなんだよ」
 そうなるというのだ。
「結局はな」
「ほんまにそうじゃのう」
「ああ、人は自分の好みを他人に押し付けたら駄目だ」
「それをしたらのう」
「ああしたことになるし最悪な」
 それこそと言う池田だった。
「おかしな争いにもなるさ」
「ほんまにそうじゃのう」
「何でもそうだな、本当にな」
「自分の好きなものの押しつけはせんことじゃ」
「本当にそうだな、じゃあ今からな」
 ここまで話してだ、池田は藤熊に笑ってこうも言った。
「ラーメン食うか、塩ラーメンとカレーラーメン買ってきたぞ」
「その二つか」
「どっちも食うか」
「そうじゃな、あんたはどっちが好きじゃ」
 藤熊は終わった騒動を思いつつ池田に笑って尋ねた。
「それで」
「どっちも好きさ」
 これが池田の返事だった。
「北海道一番じゃな、けれど一番好きなラーメンはな」
「何じゃ」
「エースカップのワンタン麺だよ」
「あれか」
「ああ、あれが一番好きさ」
 笑って言う池田だった、だがそれを藤熊にも誰にも押し付けることはなかった、それで今はその二つのラーメンを二人で調理して二人で分け合って食べた。するとどれも実に美味かった。


塩ラーメン×カレーラーメン   完


                   2018・5・12 
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