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塩ラーメン✖カレーラーメン

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第二章

「加納先生食べたことあります?北海道一番のカレーラーメン」
「食べたことがあるから言えるんだよ」
「いえ、食べてもです」
 それでもと言う植野だった。
「よさがわかっていないんですよ、加納先生は」
「そう言う君は塩ラーメン食べたことがあるのかい」
 加納は年下の相棒にかなり強い声で問うた、年齢は二回り位違うが今二人は完全にがっぷり四つに組んで闘っていた。
「そもそも」
「あのシリーズの最古参ですよね」
「それだけに人気があってね」
 それでというのだ。
「確かな味があるんだよ」
「いやいや、新規加入のあのカレーのよさは」
「塩以上かい」
「僕塩も食べていますから」
 それで言うのだった。
「言えるんですよ」
「カレーは塩に勝る」
「はい、カレーしかないですよ」
「何処がだよ、塩以上はないよ」
「カレーに勝てるラーメンはないですよ」
 クラスの担任同士もこんな有様だった、とかく今現在クラスは真っ二つに分かれていた。そしてこの衝突は学校中で話題になり長期化の様相さえ呈していた。
 このことにだ、学年主任の藤熊信雄は懸念する顔で長年の付き合いがある中等部の用務員池田朝雄に夜に居酒屋で一緒に飲みつつ話した。
「参ったのう」
「ああ、二年のな」
「あのクラスでな」
「塩かカレーかで」
「言い合ってるんだよ」
「あれだろ、先生だってな」
 池田はその長方形で眼鏡をかけた顔で述べた、藤熊も眼鏡をかけているが彼は髪の毛がやや薄く何処か人懐っこい感じの飄々とした顔立ちだ。
「担任と副担任が」
「二人共それぞれじゃ」
「塩とカレーに分かれてるんだな」
「そうじゃ、じゃからのう」
 藤熊は焼酎を飲みつつビールを飲んでいる池田に話した。肴は烏賊の姿焼きにたこわさといったものだ。
「わしも今困っとるんじゃ」
「そこは難しいな」
「ラーメンのことか」
「そうじゃ、わしもあのシリーズは知っとる」
 北海道一番のそれはというのだ。
「当然全部な」
「塩もカレーもか」
「どっちも知っとるが」
「あんたはどっちじゃ」
「正直どっちかとは言えん」
 藤熊にしてみればというのだ。
「どうものう」
「そこは難しいか」
「そうじゃ」
 まことにというのだ。
「ましてどっちがいいとかわしが言うたらな」
「学年主任がな」
「一方がええってなってな」
「もう片方がな」
「そうなるからのう」
「ことを収めるにはな」
「難しい状況じゃ」
 藤熊は状況をよく把握していた、だからこうも言うのだった。
「ここはな」
「あんたはどっちも食ったんじゃな」
「かみさんがあのシリーズも買っといてな」
 それでというのだ。
「インスタントラーメンの買い置きの中にあってじゃ」
「あんたも家で食う時があるか」
「それで食うてるが」
 それでもと言う藤熊だった、たこわさと焼酎の見事なハーモニーを口の中で楽しみつつそれで言うのだった。 
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