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メシヤと飯屋

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第三章

「それじゃあね」
「そうしてね、それでだけれど」
 生実は今度は夫に顔を向けて言った。
「もういい時間だし」
「ああ、何か食べに行くか」
 夫も妻の言葉に頷いた。
「そうするか」
「そうしましょう、どのお店に行こうかしら」
「食堂にしようか」
 夫はこう妻に答えた。
「そこにしようか」
「正志が言ったから?」
「それでだけれど」
「そうね、丁度近くにあるし」
 生実の視界に入るところに一軒あった、中華料理店の横だ。
「あそこに入る?」
「そうしようか」
「それでお昼食べて」
「またお買いものしよう」
「そうしましょう」
「それで何を食べるかは」
 正吉はこうしたことも話した。
「それはどうしようか」
「もうそれはね」
「お店に入って決めればいいね」
「ええ、ただこの子もね」
 生実は今度は正吉を見て夫に話した。
「食べるけれど」
「じゃあ正志には子供用か」
「それを食べさせましょう」
「そうだね、しかし今日は笑ったよ」 
 正吉は笑って話した。
「メシヤと飯屋か」
「全然意味が違うけれどね」
「言葉は同じだね、そして」
「そして?」
「人を、世界を救うという意味ではね」
 キリストは救世主だ、まさに世界を救うべき人物だ。そして飯即ち食べものも世界を救うものだ。食べることはそれだけ大事であるが故に。
「同じだね」
「そうね、そう言われると」
 生実は夫のその言葉に笑顔で応えた。
「どちらも一緒ね」
「じゃあ神とメシヤに感謝しながら」
「お昼を食べましょう」
「一家でね」
 正吉は笑顔で妻に言った、そして妻と二人で正志の手を引いてだった。
 食堂に入った、その飯屋でメシヤに感謝しつつ美味く安い料理を楽しんだ。見ればそこには正志が見てその話を聞いたサラリーマン達もいた。彼等は正志達には気付くことも誰か知ることもなく楽しく食事を摂っていた。


メシヤと飯屋   完


                  2018・2・12 
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