| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

たったそれだけ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三章

「何がたっただよ」
「人力でやってたんだろ、あそこは」
「重機を投入した地域もあったけれどな」
「重機がなかっただろ、あそこは」
「それでたった、かよ」
「じゃあ御前等が雪かきしろよ」
「自衛隊の人達より出来るんだよな」
 即座にネットでこの発言の動画があげられ批判が殺到した。
「そもそも東京で言うな」
「青森は今大変なんだぞ」
「どうせ暖かい部屋で映像見ながら言ってるだけだろ」
「青森はとんでもなく寒いぞ」
「それで大雪なんだぞ」
 こう言い合うのだった、それでだった。
 その報道番組の関係者はネットで集中砲火を浴びた、その話を聞いてだった。
 知事は自ら雪かきの指揮をしつつだ、大雪の中でこう言った。
「そこまで言うならな」
「はい、そうですよね」
「自分で、ですよね」
「雪かきしてみろですよね」
「この大雪を」
「それも人力で」
「たったじゃない」
 知事は言い切った。
「あれだけの距離を除雪してくれたんだ」
「はい、自衛隊の人達は」
「物凄く頑張ってくれて」
「そうしてくれました」
「人力でな」
 後は数と組織力を使ってだ。
「そうしたんだ」
「その通りです」
「それで何でそう言うのか」
「無神経ですよ」
「本当に」
「元々自衛隊が嫌いだからな、あのテレビ局は」
 その報道番組を持っているテレビ局はというのだ。
「だからな」
「そう言ったんですね」
「たったとか」
「もう自衛隊が嫌いだから」
「そう言ったんですね」
「そうだろう」
 こう読んでいた、知事は。
「そうした人間はマスコミに多いからな」
「学校の先生とか労働組合にも」
「結構いますからね」
「それで、ですね」
「ああして言ったんですね」
「何がたったなんだ」
 知事は今度は苦い声で言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧