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歌集「冬寂月」

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五十ニ




 ざわめきて

  野分の風に

    花ぞ散る

 想ひもいたみ

     散るそ虚しき



 風が強くなり、辺りをざわつかせている…台風がやって来たのだ。

 見れば、花も葉も風に煽られ…その身を散らしている…。

 恋心も、この様に強ければ…散らされた花の様に…虚しく散り行くのかも知れないな…。



 思ひては

  いかに久しく

    逢わねども

 隠るゝ月に

     戀もするかな



 ふっと…あの人のことを思い出す…。

 もう会わなくなって、どれ程の時が経ったのか…。

 見上げても、厚い雲に覆われた空に月はなく…その上にある月を恋しく思う様に…思い出したあの人の面影に、私はまた恋をしてしまったようだ…。



 
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