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戦国異伝供書

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第三話 万石取りその五

 だがその中でだった、足利義秋がだった。
 朝倉家から織田家に転がり込んできた、これで上洛の大義名分を得た織田家は即座に浅井家や徳川家の援軍も受けた合わせて六万の大軍で上洛することになったが。
 その大軍を見てだった、羽柴は驚いた顔になって言った。
「いや、まさか」
「ここまでの大軍での上洛とはな」
 柴田がその羽柴に応えた。
「思わなかったな」
「はい、六角家を攻めるかと思いましたが」
「それがな」
「この大軍で、ですな」
「六角家を蹴散らし」 
 そしてというのだ。
「都に上洛してじゃ」
「そこからさらにですな」
「丹波、若狭、但馬、丹後、大和、播磨にじゃ」
「そして摂津、河内、和泉とですな」
「殿は一気に掌握されるおつもりじゃ」
 この度の上洛を機としてだ。
「まさかここまでとはな」
「殿がお考えとは」
「いや、大きいわ」
「それがしもです」
 羽柴は柴田にこう話した。
「実は近江の南と伊賀」
「つまり六角家を倒すとじゃな」
「そうして都に至るとです」
「考えておったな」
「しかしそれが」
「一気にそこまでの国々となると」
「いや、何と凄いか」
「一見無謀でありましても」
 美濃を手に入れた時に新たに家臣となった軍師役の竹中も言ってきた。
「このことはです」
「充分にじゃな」
「殿には絶対の勝算がありますので」
 それでというのだ。
「確実にです」
「上洛から他の国々を攻め取ることもか」
「出来ます」
「わしは上洛すれば牛助殿と共に又佐や内蔵助、慶次達を率いて伊賀に向かう」
「そこで伊賀に退くであろう六角家をです」
 竹中が柴田に応えた。
「完全に降すことになります」
「そうじゃな」
「そして久助殿は大和、五郎左殿が丹波や但馬、殿ご自身は摂津と河内、和泉の方に向かわれます」
「そしてわしもじゃな」
 羽柴は竹中に問う様にして言った。
「播磨の方に行ってじゃな」
「あの国の国人衆を織田家に引き入れ」
「そうしてじゃな」
「あの国も織田家にしてもらうのです」
「大きいのう、若し全て上手くいったらな」
 その時はと言う羽柴だった。
「織田家は十七国を有する天下最大の家となるぞ」
「都を掌握する三好家を退け」
 そうしてとだ、竹中も話した。
「その代わりにです」
「織田家がじゃな」
「天下最大の家となり」
「天下人もじゃな」
「近付きます」
 それも大いにとだ、竹中は話した。
「十七もの国を手に入れますと」
「それは大きいのう」
「兵を四方に送り」
 織田家が上洛させる兵達をだ。
「都からそうしてです」
「一気にか」
「織田家は大きくなります、ただ気になるのは」
 ここでその眉を曇らせてだ、竹中は話した。 
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