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戦国異伝供書

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第三話 万石取りその一

                第三話  万石取り
 織田家は美濃の重臣達を引き入れることに成功したうえで木下の知略で墨俣に城を築いたうえで遂に稲葉山城を攻め落とし斎藤龍興を追ったうえで遂に美濃を掌握した。するとそれを見た飛騨の三木氏も織田家に降り織田家は六国二百四十万石の大身となった。
 この時に木下は名をあらためたがその話を共にしたねねに岐阜に新たに建てた屋敷で笑って話をしていた。
「ははは、面白い名前だのう」
「新しい苗字はだね」
「うむ、羽柴とはな」
「確かに織田家といえばお二人でね」
「戦になるとどちらがお強いか」
「柴田様は攻めるとお強いけれど」
 それでもと言うねねだった。
「逆に退きになると佐久間様って言われるくらいで守りはね」
「守りは丹羽殿だからのう」
「だから丹羽様って思ってね」
「羽柴じゃな」
「しかもこの名前だとね」
 ねねは夫に笑ってこうも話した。
「橋場じゃない」
「ほう、橋か」
「人やものを渡すね」
「その意味もあったか」
「それでもとも思ったよ」
「成程、それはよいのう」
「そうだよね、これが柴田様が前だとね」
 どうにもと言うねねだった。
「御前さんも考えてみなよ」
「柴羽、どうものう」
「しっくりこないね」
「言葉の調子としてな」
「それで私も考えたんだよ」
「そうであったか」
「そうさ、しかしこの街もお城も名前が変わったね」
 新しく来たその地のこともだ、ねねは話した。
「これが」
「そのことじゃな」
「そうさ、これまでは稲葉山だったけれどね」
「岐阜になったのう」
「いい名前だね」
「何でも明の古書から取った言葉だそうな」
「あら、学問の話だね」 
 そう言われるとだった、ねねは少し驚いた顔になった。そして夫に対してこんなことを言ったのだった。
「残念だけれど私達はね」
「うむ、学問はのう」
「字を読むのも苦手だしね」
「今も難しい字はわからん」
「そうだよね」
「学問の話はてんで駄目じゃ」
 自ら言う羽柴だった。
「百姓の出で字が読めること自体がな」
「中々だからね」
「だからわしもじゃ」
 かく言う羽柴もというのだ。
「学問の話だとな」
「からっきしだよね」
「どうにもな。しかしな」
「それでもだね」
「うむ、岐阜という名はな」
「あちらの学問からなんだね」
 ねねは夫にまたこのことを言った。
「そうなんだね」
「そうらしい、まあわしは学問はわからぬが」
 それでもとだ、羽柴は自分の女房に話した。
「よい名じゃな」
「そうだね、私もそのことは思うよ」
「全くじゃ、岐阜の街に岐阜城じゃ」
「これからはその名前だね」
「その名前でこれからはな」
「ここで住むんだね」
「そうなる。それでこの度の美濃攻めのことでの論功でじゃ」 
 羽柴は女房に今度はこんな話をした。
「わしは遂にじゃ」
「万石取りだね」
「そうなったわ」
 遂にと言うのだった。
「この度な」
「凄いね。織田家に入ってたった数年でじゃないか」
「足軽で入ってのう」
「殿の草履番をしたりしてね」
「そうじゃ、それがじゃ」
「あっという間にね」
「厩での仕事から侍大将になってな」
 一気にだ、そこまでなったというのだ。 
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