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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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子と母の想い

 
前書き
職場が冷房完備のところになったことで肩と肘が痛いですorz
ついでに仕事が忙しすぎてこれを書く時間が全然取れない。 

 
「もうヤダよ~!!」

今まで見せたことのない弱気な姿を見せているソフィア。大号泣の彼女は、顔を俯かせ、手でそれを覆っていた。

ギュッ

弱気な彼女を励まそうとしているのか、後ろから抱き締めてくる人物がいる。

「ありがとうございます・・・ラキさん・・・」
「そ・・・ソフィア?」

恐らくここまで行動を共にしていたラキが抱き締めているのだと思いお礼を言ったが、彼女の声が聞こえたのは後ろからではなく前からだった。

「ちょっと・・・」
「え・・・」
「う!!後ろ後ろ!!」

そこにいたのはルーシィ、ハッピー、ラキ、メルディ、ソフィアの五人だったはず。それなのに、全員の声が前から聞こえてくることにソフィアはようやく気が付いた。

「ソフィア・・・もう泣かなくていいのよ」

その声を聞いた瞬間、少女の表情は困惑の色へと変化した。二度と聞くことはなくなったはずのその優しい声の主に視線を移す。

「お姉ちゃん・・・」

彼女を抱き締めていたのは、死んだはずのリュシーだった。その姿を見たソフィアは、先程までとは違う涙を溢していた。

「あんた・・・生きてたの?」

喜んでいるソフィアだったが、後ろにいるラキたちは驚いていた。完全に息絶えていたはずの彼女が生きていたとなれば、その反応も当然と言える。

「ううん。死んだわよ、あの時確かに」
「え?」

だが、彼女の回答は予期できるものとは違っていた。

「じゃあなんで今生きてるのよ!!」
「そうだよ!!おかしいじゃん!!」

メルディとハッピーの疑問はもちろん正しい。ルーシィとラキ、さらにはソフィアも彼女が生きていた理由に耳を傾ける。

「信じてもらえるかわからないけど、それよりも大事なことが今はあるわね」

そう言って彼女はルーシィの隣を指さす。そこにはそれまで倒れていたはずのナツの姿が見えなくなっていた。

「あれ!?ナツ!?」

死んでいたはずの青年の姿がないことに辺りを見回すルーシィ。すると、リュシーはゆっくりと立ち上がり、どこかへと歩き始めた。

「行きましょう、この戦いを終わらせるために」



















「「アアアアアアアアア!!」」

感情に身を任せ、ひたすらに互いの魔力をぶつけ合っているグレイとローグ。彼らは全身傷だらけになり、今にも事切れそうになっていた。

(止まれねぇ・・・俺はもう・・・)

一番の親友であるナツ、ようやく自分の気持ちに気付けたことで愛していることがわかったジュビア。その二人の死を受け、暴走した自分を命がけで止めようとしたリオン。他にも多くの死を見てきた彼は、拳を下ろすことはできなかった。

(俺は・・・何としてでも生き残ってやる!!)

一方のローグは、グラシアン、スティング、二人が命を賭けてまで自分を生かしてくれたことに報いたかった。そのためには目の前のグレイは邪魔。ましてやフロッシュの命を奪った彼を、生かしておくことなどできない。

「「うおおおおおおおお!!」」

両者の渾身の拳が突き付けられようとした。当たれば致命傷は間違いない。それだけの力を込めた一撃を放とうとした二人。しかし、そんな彼らの体にしがみつき、動きを封じる男たちが現れた。

「グレイ、落ち着け」

銀色の髪をした青年は、弟弟子を宥めるように優しく声をかける。

「無理すんな、ローグ」

紫色の髪をした傷だらけの青年は、別人の表情と化していた彼の心を洗うように耳元でささやく。

「一人で背負い込ませて悪かった」

涙声でそう言った白き竜は、自身の情けなさに顔を上げられない。

「俺たちは・・・生きてるぞ」

桜色の髪をした、もっとも長く時を共にしたと言ってもいい友人の声。
激しく争っていた二人はその声と温もりを感じた途端、これまでがウソだったかのように固まっていた。

「ローグ」
「グレイ様」

そしてそれ以上の存在が現れた。舌足らずな声で話しかけるピンクのカエルの着ぐるみに身を包んだ猫と、水色の髪をした胸元のふくよかな女性。

「フロッシュ・・・」
「ジュビア・・・」

それぞれの一番愛する者の登場で彼らは腰が抜けたかのようにその場に崩れ落ちた。その瞳からは、堪えきれなくなった涙が零れ落ちる。

「ナツゥ!!」
「グレイィ!!」

そこにナツを追いかけてきたルーシィたちも合流する。スティングをずっと揺すっていたレクターと、いつの間にかキセキもこの場にやって来ており、彼らは手を取り喜び合っていた。

「なんで・・・ここに・・・」

死んだと思っていた・・・いや、本当に死んでいたのをこの目で見たはずの存在が生きていたことに驚きを隠せないグレイとローグ。そんな彼らを見て、ナツたちは笑顔を見せている。

「託されたんだよ、この命を」


















「グスッ・・・クソッ・・・」

地面にうずくまり言葉にならないでいるシリル。彼は母が残した最後の羽根を握り締めたまま、これからどうすればいいのかも考えられずにいた。

「シリル~・・・」

そんな友人の姿を見て、セシリーは心が苦しかった。でも、なんて声をかけても彼の心の傷を癒すことはできない。それだけに、心はどんどん押し潰されそうになっていた。

「・・・」

何か声をかけなければと歩み寄ったまではよかったが、少年に触れることすらできない。しばらく沈黙していると、彼女の目にある人物が映った。

「シリル」

自身を呼ぶその声に反応を示した少年。彼はそこにいる金髪の青年を見て泣きながら笑っていた。

「ラクサスさん・・・」

彼を逃がすために最強の敵との戦いに残った青年。彼が生きていたことに安堵した彼は涙が止まらなかった。

「よかった・・・生きてたんですね・・・」

喜びが大きかったのか、目の前の青年に飛び付く青年。泣きじゃくる彼の頭に手を置いているラクサスだったが、その後ろから信じらない人物の声が聞こえた。

「まさかもう一度あなたたちに会えるとは」

その声を聞いた瞬間、シリル、ラクサス、セシリーはそちらを振り向いた。そこにいたのは誰よりも背の高い天馬のギルドマークを刻んだ美青年。

「タクト・・・さん?」

一番最初に命を落としたはずの彼の姿にシリルとセシリーは困惑していた。だが、ラクサスだけはそれに納得していた。

「お前もか、タクト」
「ええ、ラクサスさんもだったようで」

何やら意思疏通している二人に取り残されているシリルとセシリーは顔を見合わせていた。それに気が付いた彼らは、あることを伝える。

「俺たちはお前に感謝しないといけないな」
「うん、おかげでまたこうして出会えた」

何がなんだかわからない上にさらにそんなことを言われてはシリルは首を傾げることしかできない。それを見てラクサスたちは、なぜ自分たちがここにいるのかを話し始めた・・・


















「カミューニ・・・なぜお前がここに・・・」

突如ガジルと共に現れた最強の助っ人に困惑せずにはいられないエルザ。すると、二人を追いかけるように走ってきた少女がそれに答えた。

「私たちが連れてきたの!!偶然出会ったから・・・」

息を切らしながら駆けてきたのはレビィ。その後ろからはボロボロになってはいるもののなんとか無事であるドロイ、ジェット、リリーがやって来る。

「違う!!私が聞きたいのはそういうことじゃない!!」

レビィの回答はエルザが欲しかったものではない。彼女が欲しいのはもっと根本的な回答・・・

「なぜお前が生きているんだ!?」

メルディを守るために命を賭けたはずのカミューニ。それなのに、なぜ彼はこうして平然とこの場にいることができるのか、それが彼女にとって一番の謎だった。

「俺たちは、ある女性から命を託されたんだよ」

混乱で口調が荒くなっていた緋色の女性の後ろから聞こえたその声に、彼女の動きが止まった。彼女は勢いよくそちらを振り返ると、そこには顔にタトゥーのある青年が傷口を押さえて体を起こしていた。

「ジェラール・・・」

最も愛したと言ってもいい青年の生還に収まったはずの涙が溢れ出してくる。彼はそんな彼女を見て優しそうに微笑んでいた。

「いてて・・・なんつう攻撃だ」

それだけでは終わらない。たった今ティオスから体を貫かれたはずのソーヤまでも無事に生きていたのだ。その事にさらにウェンディたちは困惑する。

「死んだ人たちが・・・生き返って・・・」

奇跡かはたまた幻覚か、訳がわからないフィオーレの魔導士たち。だが、オーガスト、アイリーン、ティオスはなぜこのような事態になっているのかわかっていた。

「ヨザイネが落ちたか」
「えぇ。それも、あの子の一番の幸せな形でね」

仲間が旅立ったことに暗い表情をするオーガスト。それとは正反対に、彼女が幸せな最期を迎えたことを察したアイリーンは微笑んでいた。

「クソッ・・・やはりあの時シリルを追いかけておくべきだったか・・・」

一方、悔しさを隠しきれないのはこの男。右腕は奪われ、これまで奪ってきた命が目の前で再稼働していることに彼は地面を叩いた。

「ヨザイネ?」
「確かスプリガン16(セーズ)の人でしたか?」

ヨザイネの情報もフィオーレの魔導士たちには入っている。自らを堕天使と称する少女とのことしかわかっていないが。

「天使は天界から地上に降りることはない。ゆえに彼女たちは不老不死とされている」
「天使?」
「えぇ。あの子は400年前からずっと生きている本物の天使よ」
「「「「「!?」」」」」

堕天使と称しているのは痛い子だからなのかと思っていたが、彼女は本当に天界から舞い降りた天使だったのだ。その事はオーガストとアイリーン、それにティオスは気が付いていた。

「あの子の子供に会えたってことね」
「それが奴の心を動かしたのか」
「どういうことですか?」

二人だけで納得してしまうオーガストとアイリーンに突っ込まざるを得なくなるエルザ。それに二人は振り返って答えた。

「あなたたちの仲間の水竜、彼はヨザイネの子供なのよ」
「え・・・」

シリルと最も仲の良いウェンディは衝撃を受けた。敵に彼氏の母親が紛れていたとなれば、彼女としてやらなければいけないことがある。

「わ・・・私、挨拶してこないと」
「落ち着いて!!もういないから!!」

どこかへ駆け出そうとした少女を引き留めるアイリーン。それで興奮していたウェンディも収まったようで、話しを続ける。

「ヨザイネはイシュガルを全滅させるために戦っていた。でも、あの子も母親・・・子供の存在には変えられないのよ」

自分の気持ちにずっと蓋をしてきた彼女だからこそわかる。アイリーンはヨザイネがどんな気持ちになったのかわかっていた。

「でも、あの子は水竜の仲間を殺しすぎたわ。それじゃああの子は自分を許せない」
「だから奴は自らの肉体を捨てたんだ」
「肉体を・・・ですか?」

ますます困惑が色濃くなっていくウェンディたち。オーガストとアイリーンは、話しやすいように結論を先に述べることにした。

「天使である自らの寿命を使い、この戦争で失われた命を蘇らせたんだ。すべてな」
「「「「「!?」」」」」

その結果が今、目の前にいるカミューニ、ジェラール、ソーヤである。その頃フィオーレの至るところで息絶えていた者たちが蘇っていた。ヨザイネの最後の力により。

「でも、あの子だけではこれはできないの。一なる魔法“愛”・・・これがなければ彼女の死はただの無駄」
「恐らく、お互いの愛を分かり合えた息子に自らの翼を託したのだろう。それができれば、如何なる願いも叶えられる」

天使であるヨザイネの命を枯らし、息子に愛の結晶として翼を託したヨザイネ。その際に「如何なる願いも叶える」と教えられたシリルは彼女が・・・彼女を含めた多くの命が戻ってくることを願った。二人のほぼ一致した願いは叶えられ、失われた多くの命がこの地上に舞い戻ったのだ。

「お主がヨザイネとシリルを引き剥がしたかったのは、皆を生き返らせないようにするためか」

いまだにバランス感覚を掴めず起き上がれないティオス。彼は親子の絆で結ばれたシリルとヨザイネを引き合わせたくなかった。自らのこれまでの努力が無駄になることを恐れて・・・

「またか・・・俺には本当・・・」

片腕を失ったことで均衡が崩れた体。それをそう易々と扱えるはずもなく、立ち上がったティオスはふらついている。

「運が悪いな」

ヨザイネにシリルを託してしまった時点でこうなることはわかっていた。それでも彼はリスクを背負い、彼女に彼を倒すことを期待していた。だが結果はご覧の通り。これまでの全ての努力を水の泡にしてしまった。

「それだけじゃねぇよ、ティオス」

だが、それだけでは終わらないことはティオスも、そしてこの場に現れたカミューニもわかっていた。だからこそティオスはこの状況を作りたくなかった。

「お前に殺された奴は何人もいるようだ。そいつらが全員生き返ったってことは、どういうことかわかってるよな?」
「・・・」

ティオスの顔は浮かない・・・カミューニ、オーガストはこれからどのような事態に陥るかわかっており、笑みを溢していた。

「あの~カミューニさん?」
「とういうことだ?」

ただ、数人は彼らの言葉の意味がわかっていないものもいる。これから一体何が起きるというのか、彼女たちは問いかけた。

「簡単だろ、こいつに殺された奴等が全員生き返ったんだ」
「その全員が、ティオスの敵として現れる」

フィオーレもアルバレスも関係なく殺してきたティオス。その代償はあまりにも大きかった。

「お前一人で、どこまで相手にできるのかな」
「っ・・・」

絶対的優勢からまさかの危機的状況に追い詰められたティオス。だが、この戦いはそれだけで終わるほど容易くはなかった。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
ザオリクでしたっけ?ヨザイネの死は大体そんな感じです。
ここからは一気にティオス劣勢になっていきそうな雰囲気ですが、そう簡単にいかないのがこの物語なんですよ・・・ 
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