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第一話 ガイエスブルグの別れ


キルヒアイスが幽霊でラインハルトを見守りながら、何れ転生します。
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第一話 ガイエスブルグの別れ

帝国暦488年9月6日

■ガイエスブルグ要塞 謁見の間  ジークフリード・キルヒアイス

アンスバッハ准将がハンドキャノンをラインハルト様に向けた!
アンネローゼ様今こそ約束を守ります。

「ラインハルト様!!!」

無我夢中でアンスバッハに躍りかかりハンドキャノンの方向を反らせた。

私の胸で光が輝きながら、アンスバッハを倒した何故か意識が混沌としてくる。
ラインハルト様はご無事だろうか。

ミッターマイヤーが傷口を押さえてくれるのが判る。
「医者だ!医者を呼べ!」
ミッターマイヤー提督、もう遅いですよ、私の体は私が一番よく判るものですから。

「もう・・・・・・おそい」

「ブラウンシュバイク公、お許しください、この無能・・・・・・・・・」
アンスバッハが何か言っているが、良く聞こえないな。


「キルヒアイス・・・・・・・」
「ラインハルトさま・・・・・・ご無事で」
ラインハルト様の姿ももう見えなくなりつつあるな、此が死というものなのか。

今後ラインハルト様と一緒に歩めなくなるのだな・・・・・・・・
生命がつきる前に、言っておかなければならない事があるのだ!

「もう、私はラインハルトさまのお役にたてそうにありません・・・・・・お許しください」
「ばか!なにを言う」

ラインハルト様そんな弱々しい声では怒鳴ったことにはなりませんよ。
まるで幼児のようですよ・・・・・。

「もうすぐ医者が来る。こんな傷、直ぐに治る。治ったら、姉上の所へ勝利の報告に行こう。な、そうしよう」
「ラインハルトさま・・・・・」

「医者が来るまで喋るな」
「宇宙を手にお入れ下さい」
「・・・・ああ」

「それと、アンネローゼさまにお伝え下さい。ジークは昔の誓いを守ったと・・・」
「いやだ」
「俺はそんな事は伝えない。お前の口から伝えるんだ。お前自身で。俺は伝えたりしないぞ、いいか、一緒に姉上の所へ行くんだ」

ラインハルト様、お願いしますよ、私は・・・・アンネローゼ様お慕い致しておりました・・・一度ならずともアンネローゼ様との生活を夢見ましたが・・・・お別れです・・・・・・願わくばアンネローゼ様が末永くご壮健であられることを・・・・・・・嫌だ死にたくない!!・・・・・・・・・・アンネローゼ様・・・アンネローゼ様・・・・アンネローゼ様!!!!!

私の意識は暗闇に永遠に落ちていったのである。

こうして私の人生は僅か21年の生涯を終えたのだった。


しかし気がつくと私の魂は私の体から浮き上がっていた。迷信と思っていたが、幽霊とは実在するらしい。何故なら下では、ラインハルト様が私の体を前にミッターマイヤーに私が『死んだ訳が無い』と叫んでいるのだから。

取りあえず、冷静になって考えると、体に戻れるか試してみようとしたが、何度やっても戻れない、ラインハルト様に触っても触れず、話しかけても聞こえない状態で有った。

どうすればよいのであろうか?大神オーディンに聞けたら聞きたいぐらいだ。

結局、何も出来ないので、せめてラインハルト様の御側で見守るだけでもしようと考えるに至った。

ラインハルト様は落ち込んでおられる。

幾らほど経つたであろうか。オーベルシュタインがやって来た。

アンネローゼ様に私の死を伝えたのか・・・・・余計なことをする。

ラインハルト様そんな奴にお怒りになりますな、捨て置けばいいのです。

アンネローゼ様のお姿とお声を聞ける。
ラインハルト様と共に通信室へ向かおう。

通信スクリーンに映るのは、アンネローゼ様・・・・・。
活きてお会いしとうございました。

「姉上・・・・・・」

『可哀想なラインハルト・・・・・・』

アンネローゼ様、そのお顔に出ている、軽蔑に見える相は・・・・・。

『貴方はもう失うものを持たなくなってしまったわね、ラインハルト』
「・・・・いえ、未だ私には姉上がいます。そうですね、姉上、そうでしょう?」
『そう、私達はお互いの他に、もう何も持たなくなってしまった・・・・』

アンネローゼ様、その様なお寂しいお姿を・・・・・。

『ラインハルト、私はシュワルツェンの館を出ます。何処赤小さな家をいただけるかしら』
「姉上・・・・」
『そして、当分はお互いに会わないようにしましょう』

アンネローゼ様、その様に突き放すのは、ご無体かと・・・・・・。

「姉上!」
『私は貴方の傍にいない方が良いのです。生き方が違うのだから・・・・私には過去があるだけ。でも貴方には未来があるわ』

「・・・・・・」
『疲れたら、私の所へいらっしゃい。でも、未だ貴方は疲れてはいけません』

アンネローゼ様は、お怒りになっている。ラインハルト様は錯乱して気がついていないが・・・・。

「判りました。姉上がそう仰るなら、お望みの通りにします。そして、宇宙を手に入れてからお迎えにあがります。でも、お別れの前に教えて下さい」

ラインハルト様は何を聞くのだろう?

「姉上はキルヒアイスを・・・・・・愛していらしたのですか?」

ラインハルト様なんて言う事を聞くんですが!!恐れ多いですよ。
返答ありませんが、アンネローゼ様のお顔を見ると、私の事を・・・・・。
ラインハルト様を見守るつもりだが、アンネローゼ様を見守りたくなってしまったな。


そんな嬉しい気分も吹っ飛ぶ事件が起こるとは!

そうか。リヒテンラーデ公を倒したのか。まあ仕方があるまい、向こうも同じ事を考えていたのだろうからな。しかし・・・・・10歳以上の男子を全員処刑とは・・・・・・・ラインハルト様貴方はヴェスターランドの事といい、冷酷なりすぎではないのですか?

貴方が尤も嫌っている、ルドルフと此では変わらないのでは無いのですか?

オーベルシュタインの献策を取り入れれば取れ入れる程、貴方自身の神経が削られるのですよ。そうしてできあがるのが、冷酷冷徹な独裁者ではないのですか?

些か、守る気が失せてきた気がするのは仕方が無いのでしょうか?
アンネローゼ様とのお約束を途中で投げ出したくなってきました。
しかし、いつまでこの世に居られるか判りませんが、アンネローゼ様とのお約束がある以上は、ラインハルト様を見守る事にします。

あー、言った側から、ロイエンタール提督に反乱するなら反乱しろなどと挑発するとは・・・・・・・・アンネローゼ様、自信が無くなってきました・・・・・。

オーディンへ帰還ですね、バルバロッサはベルゲングリューンとビューローに任せれば良いでしょうから、私はブリュンヒルトヘ乗りましょう。

帝国暦488年10月

■オーディン   

しかし、自分のお葬式に幽霊とはいえ参列するのは滑稽ですね。
今日ばかりは、アンネローゼ様の隣で参列させて頂きます。
アンネローゼ様その様に悲しいお顔は相応しくありません。

ジークは貴方の御側にいますから。早く新しい人生を始めてください・・・・。


帝国暦489年4月

■オーディン   

この時期にガイエスブルグを使って、同盟へ戦闘を仕掛けるとは、あまりにも無謀ではないのであろうか?しかもケンプ提督を使い捨ての駒のように言っている!
段々ラインハルト様に憑いていけなくなる自分が居ることが判るな・・・・・。

5月になり、ガイエスブルグ要塞ごとケンプ提督が戦死しミュラー提督も重傷を負ったと来たが、冷酷にケンプは生きて元帥には成れないとは、余りにも酷でしょう。ケンプ提督にも御家族がいらっしゃるのに、しかも参加戦力の9割、180万人も戦死とは・・・・・必要な戦闘ならば仕方がありませんが。今回の様な無駄な戦闘でいったいどれだけ家族を絶望の淵に立たせれば気が済むのですか!

ラインハルト様がドンドンお変わりになられていく・・・・・・。

モルト中将を犠牲にして、ゲルラッハ子爵も権勢も官職も全て捨てて隠棲していたのに、皇帝誘拐の冤罪を擦り付け、幼い子供を含む家族諸共処刑とは余りにも酷すぎる!

最近来たアンネローゼ様の侍従コンラート・フォン・モーデルは間違え無く、アンネローゼ様に気があるな、この前など恐れ多くもアンネローゼ様の下着の臭いを嗅いでいた!許せない相手だ!!


ラグナロック作戦か、確かに素晴らしいが、どうなるか?

双頭の蛇か、流石だな。

バーミリオン会戦かラインハルト様自身が餌とは、流石と言えるか・・・どうなのだろうか。

ラインハルト様、死を覚悟成されているのか!
お逃げください!!

フロイライン・マリーンドルフ、ミッターマイヤー、ロイエンタール、首都を突くのが正しいでしょうね。しかしラインハルト様がそのプライドで我慢できるだろうか?

ラインハルト様、同盟首都ハイネセンへ始めてお立ちになりましたね。おめでとうございます。私もやっとラインハルト様に憑いていく事がいらなくなりそうですね。願わくば、これ以上無駄な血を流さないようにしてください。


新帝国暦1年6月22日

■オーディン ノイエ・サンスーシ 

ラインハルト様、いよいよ皇帝にお成りですね。しかしこれ以上変わらないでいてください。


何だって。態々同盟の高等弁務官にヤン提督に負けた、レンネンカンプ提督を着けるとは、態々平地に乱を起こす気ですか!


 
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