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夢幻水滸伝

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第五十八話 伏龍と昇龍その七

「皆がね」
「力がか」
「すき焼きよ」
 仲間達に笑って言う麻友だった。
「皆でね」
「へえ、すき焼きか」
「勿論関東風のね」
「やっぱりすき焼きもそっちだよな」
 幸田は東京で生まれ育ってきた、それも所謂江戸っ子として述べた。
「関東のな」
「あの焼き方よね」
「煮方か?まあとにかくな」
「すき焼きはね」
「というかすき焼きもな」
 ここで言葉を訂正もさせた。
「関東だよ」
「というと他のお料理も?」
「当たり前だろ、蕎麦だって鰻だって寿司だってな」
 こうした料理は全てというのだ。
「関東だよ」
「だしが違うのよね、本当に」
「薄口醤油とか八丁味噌とかな」
 幸田はこうした調味料については顔を顰めさせていた、それもかなり強い。
「おいらの口には合わないぜ」
「私達ずっと葛飾だったからね」
「ああ、もう寅さんや両さんの世界だよ」
 まさにその場所だからだというのだ。
「野球は巨人は大嫌いでもな」
「それでもね」
「味は関東よ」
「そうよね」
「それですき焼きもな」
 この料理もというのだ。
「醤油で味付けしてな」
「関東の作り方でね」
「食うのが一番、じゃあな」
「皆ですき焼き食べましょう」
 笑顔で話してだった、東国の軍勢はすき焼きを食べて英気を養うこともした。幸田はそのすき焼きを食べつつだ。
 共に食べている麻友に笑顔で言った、日毬と千歳も一緒である。
「本当に料理上手だな」
「もう何でもね」
 麻友は幸田に笑顔で応えた、牛肉はとじた卵で食べている。
「いけるわよ」
「和食も中華も洋食もな」
「お肉もお魚もお野菜もね」
 どういった食材でもというのだ。
「作られるわ、何しろ私の職業は料理人だから」
「他の国じゃシェフっていうしな」
「神具もお料理関係のものだし」
 勿論今のすき焼きを作る時にも使っている。
「だからね」
「このすき焼きもな」
「美味しいでしょ」
「ああ、幾らでも食えるな。ただな」
 幸田はすき焼きの肉を食いつつさらに話した、勿論東国の牛の肉で上総の牧場で育てている牛のものだ。
「御前起きてる時もな」
「お料理上手でしょ」
「子供の頃からな」
「だってあたし吉君のお嫁さんになるのよ」
 麻友は幸田に満面の笑みで話した。
「だからね」
「おいおい、そこでそれ言うか?」
「駄目?」
「駄目じゃないけれどな」
 こう言いつつもバツが悪そうな顔になる幸田だった、こうしたことは彼にしてもどうにも言いにくいのだ。
「それでもな」
「恥ずかしいのね」
「そうだよ、おいらだってこうしたことはな」
 こと恋愛のことはとだ、幸田は麻友に顔を赤くさせて話した。
「苦手なんだよ」
「言っちゃ駄目だったのね」
「駄目じゃないけれどあまり言うなよ」
 こうも言うのだった。 
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