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歌集「冬寂月」

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五十




 眺むれば

  花も緑も

   うつろいて

 想ひ變わらぬ

     われそ置き去り



 ふと…周りを見渡す…。

 花も緑も、知らぬ間に変わりゆく…。

 四季は移ろい、時は確実に過ぎていることを実感させられる…。

 その中にあって…私の想いは未だ変わらず…そんな私を、時は置き去りにしているのではないのか…。

 想いは…あの時のままなのだから…。



 静かなる

  心に落つる

   夕影は

 待ち人もなき

    想ひ染めにし



 昼の喧騒を冷ますかのような静かな夕べ…。

 日は地平へと落ちる刹那、迫るような朱が大地を覆う…。

 どこか懐かしく…どこか寂しい夕の光は、心の中へと染みて行く…。

 ため息を零す…。

 消え行く太陽のものか…寂しさに喘ぐ自分のものか…。

  ただ、夕影は待ち人も今はなき想いに染みて…悲しみさえ呼んでしまうようで…。




 
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