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学生小説家の名推理

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第二章

「実は彼は単独犯ではなく同志がいて」
「その同志達とかい?」
「はい、共にハルビンまで行っていました」
 事件現場、日本の歴史において残念ながら非常に大きな意味を持つことになってしまったこの街の駅前にというのだ。
「そしてです」
「そこでかい」
「はい、伊藤博文を囲む群衆の中に分かれて潜み」
「当然武器を所持して」
 暗殺用のそれをとだ、客も述べた。
「そしてだね」
「誰かが、最初に撃ったのは彼かどうかわかりませんが」
「同志達と一緒に伊藤博文を撃ってか」
「それで暗殺したのでしょう、ですが」
「そう、彼が単独犯になっているね」
「それは彼だけが捕まったからです」
 その現場で捕まったのは、というのだ。実際に捕まったのは彼だけだった。
「そしてです」
「彼だけが取り調べと裁判を受けてだね」
「死刑となりました」
「というと」
 客もここでわかった、そしてそのわかったことを今述べた。
「彼は取り調べや裁判の時に自分が単独犯と言ったのか」
「それが同志を庇ったか自分が暗殺者としても歴史に名前が残る名誉を得たかったかはわかりませんが」
「彼が単独犯と言ったからだね」
「そうなりました、そして当時の日本側も」
 伊藤博文を殺されて彼を逮捕した日本側もというのだ。
「もう犯人が逮捕されていて事件が事件です」
「日本第一の実力者だったからね」
 長い間宰相を務め元老を務め立憲政友会も立ち上げた人物だ、明治日本を創り上げた人物の一人に他ならない。
「その彼が暗殺された」
「しかも当時併合かどうかで揉めていた相手の国の人間が行ったとなると」
「日本そして相手側もです」
「国民が大混乱に陥るね」
「激昂する恐れもありました」
「まさにことが長引けば」
「どうなるかわかりませんでした、下手に彼の言葉を疑って」
 取り調べや裁判のその中でだ。
「捜査を拡大すると」
「話が長引いて」
「はい、そうなって」 
 そしてというのだ。
「どうなるかわかりませんでしたから」
「彼が単独犯と主張するならか」
「もうそうしてです」
「早く死刑にしてだね」
「ことを収めるべきだったのでしょう」
「そうだったんだね」
「最近黒幕がコミュニストだっただの当時のロシア政府だったのだという説があっても」
 若しくはその場に他の派閥の伊藤を暗殺したい者、それがコミュニストなり当時のロシア政府でもである。
「コミュニストは先程お話した通りで」
「そちらにまで手が回らない」
「はい、ロシア政府も今から交渉する相手を暗殺するか」
「それもないね」
「若し暗殺したことが公になれば」
 この危険は常にある、暗殺がばれることは常に有り得ることだ。 
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