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ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~

作者:白泉
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ソードアート・オンライン~剣の世界~
2章 生き様
  18話 狂気

 
前書き
 どうも、白泉です!いやぁ、もう最近部活が忙しすぎて死にそうになっております。思い切り叫びたい気分ですね。


 さて、今回はリアさんが狂っちゃう回です。苦手な方はバックでお願いします。


 では、早速どうぞ! 

 
 ゆっくりと奥へと向かって歩くリアは、一見平静そうに見えるが、内心では動揺し、その心拍数は上がっていた。


 きっと奥には彼がいるだろう。

 



 今回、自分は戦えるのだろうか。ツカサがいなくても。
 いささか再び不安がこみ上げ、思わず歩む足を止め、後ろを振り返ってしまう。




 だが、リアが見たのは、その背から大ぶりの剣が突き出たツカサの姿だった。










 風船に針を刺したように、何かが勢いよく割れ、そしてその中からは、どろりと粘液質で、どこまでも黒い液体が腹の底にぶちまけられる。


 カッと体中が一瞬にして燃えるような熱を帯びたが、不思議と頭は逆にどんどん冷えていく。今までにないほどに澄みきり、視界がクリアになる。



 パーティーを組んでいるため、ツカサのHPはわかる。満タンだったうえに、レベル差は大きかったため、1割程度しか減っていない。だが、彼女にとってはどうでもよいことだった。


 ツカサが傷つけられた。




 それだけで十分だ。








 もう、リアには、ここにいるツカサに対する脅威となるものすべてを排除することしか頭になかった。








 10メートル近くある距離を、たった一度床を蹴っただけで詰めると、その全体重を込め、片手剣突進技レイジスパイクを放つ。


 ツカサのわきを通りすぎ、その剣先は、相手ののどに吸い込まれる。その途端、それはポリゴンと化し、ガラスが割れるような音をあたりに響かせる。






 その音は、今のリアにとって最高に心地良い音楽だった。群れている汚らしい男たちの首を切り裂くと、あっという間にその身を散らし、心地よい音を響かせる。





 愉快だった。思わず声を上げ、笑いだしそうなほどに、愉快だった。


 















 貫かれた刹那だった。ツカサの左わきから、強烈な風が吹き、目の前の男がその身を散らす。そして、ツカサの目に飛び込んできたのは、見慣れた長いダークブラウンの長い髪だった。



 ふっと、髪の間から少しだけ見えた目は、いつもの灰茶ではなく、鮮血のような朱殷(しゅあん)に染まっていた。




 一瞬だけ目が合う。





 その瞳には底光りする冷たい光と、快楽に酔いしれた狂気が宿り、ツカサは全身の産毛が逆立つような感覚を憶える。



 

 リアはそこにとどまらず、すぐに近くのレッドプレイヤーのもとに行く。スキル後硬直の短いソードスキルは、リアのレベルと、筋力値よりに割り振られた攻撃力によって、あっさりとその身を散らす。桜のようにポリゴンたちはリアの周りを取り巻き、あまりにもその様子は幻想的であった。


 だが、行われている行為はそうもいかない。



 
 止まるという言葉を知らないように、リアは殺し続け、すでにレッドプレイヤー全員を葬る勢いだった。



「リア!もういい!もういいから!」



 ツカサは声を上げるが、彼女が止まることはなかった。

 

 その桜色の唇に、狂ったような笑みが浮かぶ。






「アスナ!攻略組を全員下がらせろ!早く!」

「わ、わかった!」



 彼女の変貌に慄いている攻略組たちを、アスナは声をかけて下がらせる。その中にはキリトの姿もあった。




「ツカサ!」
「キリト!お前も早く外に出ろ!今ここにいるのは危険だ!」




 そう叫んだあと、ツカサはリアの目の前に飛び込んだ。



「リア!いい加減目を覚めせ!リア!」


 だが、なんとリアはツカサにさえもその刃を向けたのだ。真っすぐ剣を引き、ツカサの体にそれを突き立てようとして、剣が光を帯びる。











 まさかの予想外の行動に、ツカサは動けなかった。そもそも、攻撃されるということが頭になかったため、ヴェンデッタは構えてない。


 
 だが、不思議と恐怖はなかった。息を浅く吸い、そっと呼びかける。


「リア」


 喉元へと真っすぐ伸びた刃は、その言葉をツカサが紡いだ瞬間、まるで何かの障壁に阻まれたかのように、ぴたりと止まる。


 先ほどまで狂気の光をたたえていた瞳は、今は大きく見開かれ、瞳孔が小刻みに揺れていた。






 ツカサは、そっと右手を伸ばし、その頬を包み込む。そのままその手を背中に回し、リアの体を抱き寄せた。すでに彼女の腕からは力が抜け、剣は降ろされている。



「リア。もういい。いいから。誰も殺さなくていいんだ」


 赤子をあやすように、低いトーンで、ゆっくりと耳元にささやく。




 何回か繰り返すと、リアの体からふっと力が抜け、その全体重がツカサの腕にかかる。恐らく、気を失ったのだろう。


 




 ツカサは安堵のため息を吐くと、リアの膝下に手を入れ、横抱きに抱えた。AGIよりのツカサでも、金属装備をほとんどつけていないリアなら抱えるぐらいできる。





 が、その時だった。



「Wowwowwow…こりゃやってくれたな、オイ」





 なじみ深い美声。流暢な英語。聞き間違えるはずはない。


「…兄さん」


 黒いポンチョにフードをかぶり、その右手には菜切り包丁のような短剣。この世界で最悪のレッドプレイヤー、Pho。このラフコフのギルドリーダーである。そして、そのわきを固めるのは、目の部分だけ穴が開いている紙袋をかぶったジョニー・ブラック。スカル型のマスクをつけたザザ。側近の幹部だ。


 
「まさか、リアが全部殺りやがったのか?」
「……」
「つまりYesか」




 指先でくるくると友斬包丁をもてあそぶ。だが、部下のほとんどを殺されたと知っても、怒りもせず、逆に楽しそうでもあった。



「أنت لم تتغير.(相変わらずだな)」

「يمكنك الاستمرار في قتل الناس دون تعب(兄さんもよく飽きもせず人を殺し続けられますね)」

 アラビア語に切り替え、ツカサは皮肉気に言う。しかし、それでも彼は態度を崩さない。


「أنت تقول ذلك ، لكنها قتلت الكثير(そういうが、そいつだって俺の部下を殺しまくったぞ)」

「……」


 ツカサは黙り込んだ。Phoはその様子をじっと見ている。沈黙の後、Phoが口を開いた。



「لا أعتقد أنني سأقاتلك الآن... اهرب بعيدا إذا كنت أهرب.(別に今戦おうとは思っていないさ。…逃げたいなら逃げろ)」


「…………」



 Phoの視線と交錯するが、そこからは何も読み取れない。結局、ツカサは黙って背中を向けた。


「いいんすかぁ、ヘッドォ。ほとんどの部下殺されちまったじゃないっすか」



「あの、女ともども、殺せる、チャンス、です」


 ジョニーブラックと、ザザの不満の声を聞きながら、ツカサはポーチの中から転移結晶を取り出し、「転移、コラル」とつぶやくと、2人の体はすぐにその場から消えうせた。








 
 

 
後書き
 はい、いかがでしたか?今回は前回よりもさらに短めでした。このラフコフ編は、短く切っていこうと思っているので。


 さて、これからこの二人はどうなるのでしょうか?次回もお楽しみに! 
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