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僕のヒーローアカデミア〜言霊使いはヒーロー嫌い〜

作者:瑠璃色
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雄英式『体力測定』

「朝から体育なんてハードすぎる〜」

八百万の腰辺りにしがみついて項垂れる緋奈。それに対し、八百万は母親的視点で、

「一緒にがんばりましょう、緋奈さん」

頭を撫でる。その光景を、高校生とは思えない程小柄な体格とブドウのような頭が特徴の男子生徒、峰田実が『クソ。 オイラも女子に抱きつきてぇ!!』と嫉妬の声を漏らしていたが、緋奈と八百万に聞こえることは無かった。 暫くして、測定器を手にした相澤が全員を集合させ、これから何をやるのか説明し始めた。

「と、その前に・・・実技試験トップは緋奈だったな。中学の時、ソフトボール投げ、何mだった?」

「えーと、76mです」

緋奈がそう答え返す。その時に、後ろの方で、つんつん頭のヤンキー(?)が驚いたような顔をしていたが、関わるのも面倒臭いのでスルーする。

「じゃあ『個性』を使ってやってみろ。 円からでなきゃ、何してもいい」

と、相澤はいって、恐らく記録を図る測定器でも埋め込まれているであろうボールを、緋奈に手渡す。少し気は引けるが、やれと言われてやらない訳にはいかない。

(ってか、上位入ってるのは分かってたけど、トップなのは知らなかった)

手の中でボールを転がしながら、円に入り、失敗したと落ち込む。

「どうした? 早く投げろ」

「あ、はい!」

相澤の催促する声に慌てて返事をし、

「【暴風(吹き荒れろ)】!」

球威に風を乗せるようにしてソフトボールを投擲する。 ボールは放物線を描きながら、霞むほどに広大なグラウンドの奥の方を超え、更に学校の壁も超えて・・・未だに結果が出ない。

「お前の測定結果は5分後に分かる。 それまで、他の生徒の測定に入る。 それと最下位のやつは除籍処分だ」

相澤は名簿にある緋奈の名前の隣に『保留』と書いて、一番の生徒から順に投げるように指示する。誰もが『除籍処分』に驚き、動かない。 相澤は『早くしろ。時間は有限って言ったばかりだろ』と微かに威圧の入った声で促す。しぶしぶと言った感じでソフトボール投げを始める生徒達。 どんどんと測定が終わり、保留の緋奈以外の測定が終了する。 すでに5分以上経っているため、最初の測定器の方に記録が映し出されていた。相澤はそれを見て、

「桜兎 緋奈。 記録は『1.000』mだ」

結果を告げる。 その結果に、つんつん頭のヤンキー(?)が『俺より・・・上? ・・・っざけんな!』と後ろの方で元から吊り上がっている目を更に吊り上がらせて苛立ちの声を上げた。 そして、

「ぶっ殺す!」

爆発音が炸裂し、つんつん頭のヤンキー(?)が突撃してきた。その行動に切島達クラスメイトが、「緋奈! 避けろ!」と、その場から動かない緋奈に忠告する。が、その声に緋奈は反応しない。やがて、つんつん頭のヤンキー(?)の拳が、緋奈の後頭部に振り抜かれる瞬間、

バシュッ!

と何かを吐き出す音がし、

「ンムグッ!?」

すぐ後ろから苦しそうな声が聞こえた。緋奈は、なんだろう?と背後を振り返ると、至近距離に、包帯を顔に巻かれたつんつん頭のヤンキー(?)がいた。

「・・・・(ひぃぃ!なんでこの人、僕の真後ろにいたの!?)」

ヤンキーの怖さというより、真後ろにいたという怖さの方が緋奈の心を占め、危うく、禁じ手を使ってないのに、意識を失いかけた。因みに包帯の出処というのは、A組担任の相澤からだった。しかも目が赤い。

確か、聞いたことがある。個性を消す個性を持ったヒーローがいると。 名前は覚えていないが、すごい人には変わらない。ただ、緋奈にとってはヒーローという点で好きになれないが。一応、助けられたことに感謝しつつ、次の競技へと移った。

二種目目『50m走』。 次々と測定していき、緋奈の番。 一緒に走るのは、タラコ唇で厳つい風貌の男。

「お互い頑張ろうね、えーと、ごめん。 名前教えて?」

「俺は砂糖力道。 よろしくな、桜兎」

「あれ? なんで僕の名前・・・。 あ、そうえば席順表に書いてあったね」

「お前がどんな個性か知らないけど、負けないからな」

「うん、僕も負けないよ」

タラコ唇で厳つい風貌の少年、力道にそう返し、準備運動を済ませ、走る構えをとる。2人が準備したのを確認して、相澤がスタートの合図を鳴らした。それと同時に一斉スタート。

「【石】!【風】!」

先に『具現化』を消費し、その後に『自然干渉』で風を身に纏わせ、加速した。結果、タイムは3秒ジャストを叩きだし、3秒54という結果を見せた一位候補の優等生眼鏡を抜き、トップとなった。

三種目目は『握力測定』。 各自でグループを作り、握力を測るとの事で、緋奈は迷わず、女子グループ(八百万、カエル女子、ミーちゃん、麗日、透明人間女子)の輪へと向かった。

「八百万〜、僕も入れてー!」

手をブンブンと振りながら、八百万に声をかける。

「ええ、いいですわ。 みなさんもよろしいでしょうか?」

八百万は駆け寄ってきた緋奈を抱きとめて、他の女子メンバーに尋ねる。

「私はいいよ!」

「私も〜!」

「ええ、私もいいわよ」

「全然オッケーだよ!」

全員からの承諾を得て、握力測定を始める。

「まずは僕からやるね」

測定器を握りながら、

「そうえば麗日さんと八百万、ミーちゃん以外は初めましてだね。 僕は、桜兎 緋奈。 苗字でも名前でも好きに呼んでね」

「私の名前は蛙吹梅雨よ。 梅雨ちゃんって呼んで」

「私は、葉隠透! よろしくね、緋奈ちゃん!!」

と自己紹介を交わしながら、測定する。結果は、両方とも74キロ。

(これはいい方だね)

中間順位を目指す緋奈は満足満足と頷く。そのあとも芦戸→蛙吹→麗日→葉隠→八百万という順番で握力を測定する。楽しそうに女子グループの中で談笑している緋奈を見て、金髪チャラ男と峰田が嫉妬していたのは知るよしもなかった。

四種目目『立ち幅跳び』。 男子が最初で、女子が最後という順番に測定する。

「これは得意分野かな」

緋奈は、相澤からの説明を受けながら告げる。と、その隣に並んでいた金髪チャラ男(?)が、

「確かにお前の個性、凄かったもんなー!」

話しかけてきた。

「・・・あの、どなたですか?」

「あぁ、わりぃ。 まだ名乗ってなかったな! 俺は上鳴電気。 個性は『帯電』だ」

「そっかぁ。 よろしくね、上鳴君」

「おう、よろしくな! 桜兎」

ただのチャラ男かと思っていたが意外と話の通じるタイプで良かった。 徐々に測定が終わっていき、測定が終了。結果は緋奈が『自然干渉』で風を使用し一位。二位が蛙吹となった。

五種目目『反復横跳び』。 各自二人組を作って、行う競技。 片方が先に測定し、もう片方はそれを数える。緋奈は相変わらず八百万とペアを組む。

「んじゃ、最初にやる奴は準備しろ」

ストップウォッチを手にした相澤の指示に全員が位置につく。 それを確認した後、

「では、始め!」

スタートの合図を告げた。二十秒間、足を止めずに左右に動き続ける。これにはかなりの体力と俊敏性がとわれる競技だ。八百万は体力はある方で俊敏性もまぁまぁあるが、それは同年代の同性と勝負した場合の話だ。暫くして、笛の音がなり、測定が終了する。

「お疲れ様、八百万」

帰ってきた八百万にタオルを渡しながら声をかける。

「ええ、ありがとうございます。 緋奈さんも頑張ってくださいね」

「うん!頑張ってくるよ!」

んしょ、と起き上がり、軽く伸びをした後、準備位置に立つ。自分の前には峰田が立っている。そして、相澤の声がなり、測定が開始する。

(これも個性はいらないかな)

息を乱れさせることなく、自分のペースで無駄な動きを最小限まで抑え、ブヨブヨとした玉(?)の集合体で左右に動きまくる峰田に次ぐ、二位となった。


六種目目『上体起こし』。 これも各自二人組で行う競技。相変わらずの緋奈&八百万ペア。交互に測定し、A組トップは、細目で地味な顔立ちをした尾白猿夫。 最下位は緋奈となった。 というのも、緋奈は昔から上体起こしがとても苦手なのだ。

七種目目『持久走』。 A組全員で同時に測定する。全員がスタート位置につき、相澤がスタートの合図を鳴らす。それと同時に大半の生徒が各々の個性を使い走り始める。勿論、その中には緋奈も含まれている。

「【風】からの、【バイク】!!」

これまで温存していた個性【言霊】で『自然干渉』からの『具現化』を使い、バイクに跨るとともに、風を収束させ、加速する。 五分後には風は消えるが、バイクの方は持続時間無しのため、持久走が終わるまで乗り続けることが出来る。それに、『具現化』の次は『自然干渉』がまた使える。結果的に、バイクで走り続けた緋奈と原付で走り続けた八百万が一位と二位となった。

最終種目『長座体前屈』。 まず男子が測り、次に女子とやっていく。ただ結果は、蛙吹の圧勝勝ち。緋奈は『具現化』しか使えないため、どうしようもなく、頑張ってみたが、中間らへんだった。

「ふぃー、終わった〜」

八百万の腰辺りにしがみついて全てやりきった表情で緋奈は言葉を漏らした。

「じゃあ、最後に成績発表だ」

そう言って、相澤が成績順位表を空中に映し出した。そこには、一位が八百万でその下に緋奈。 その後は、轟焦凍→爆豪勝己で、最下位が緑谷出久と書かれていた。

「あぁ、後、除籍処分ってのは嘘だ。 合理的虚偽ってやつだよ」

最後の最後にそう告げて、相澤は校舎へと戻っていった。 ちなみに緋奈はと言うと、『除籍処分』という言葉よりも、成績順位が二位になった事で、つんつん頭のヤンキーこと、爆豪勝己に目をつけられてしまったことに心の底から落ち込んでいたのだった。 
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