| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

親子の絆・絶望の世界

 
前書き
真島先生の次回作が始まりましたね。
ページ数が多くて内容が頭に入ってきてませんけど・・・ 

 
影に全身が包まれている竜と目の色が反転している悪魔。そこに流れる雰囲気は険悪以外の何物でもない。

「ローグくん!!グレイくんも落ち着いて!!」

亡骸と化しているスティングのそばにいるレクターが懸命に声を張り上げるがそれは二人に届かない。

「「・・・」」

しばしの沈黙。それを先に破ったのは自身の影と一体化した竜。彼はこれまでとは比べ物にならない速度で影になり、グレイへと接近する。

「ハァッ!!」

影から手を出しグレイの顔を掴もうとする。しかし、それは間一髪で回避されてしまった。

「フンッ」

続いて攻撃を仕掛けるのは悪魔を滅する魔を所有する青年。彼は氷の剣を二本作り出すと、それを軽々と振るいローグを攻め立てる。

「二人とも!!やめてください!!やめて!!」

こんなことをしている余裕などどこにもないことはローグもグレイもわかっていた。しかし、暗黒面に落ちた二人はもう止まることができない。
ろくに言葉を発することなくぶつかり合う二人の魔力。その場に響くのは泣き叫ぶレクターの声だけとなっていた。


















風の音だけが周囲に響き渡る戦場。そこで睨み合う少年と少女を見比べていたセシリーは首を傾げた。

(似てる~?でも、どこが・・・)

二人のことを似ていると直感で感じたセシリー。しかし、彼女は二人のどこが似ているのかよくわからなかった。

「水竜の・・・」

地面を蹴り高々とジャンプするシリル。彼は両手を握り合わせ、敵の頭部に狙いを定める。

(アギト)!!」

重力も味方にして一撃を放つ。それに対しヨザイネは純白の翼で身を守る。

「やっぱりまだまだね」
「っ!!」

柔らかそうな翼なのに、それを貫通させることはシリルにはできなかった。悔しそうに奥歯を噛む彼に対し、ヨザイネは右手を振るう。

「天界から降り頻る神の怒りよ、かの少年を焼き尽くせ!!」

その言葉と共に晴れ渡っていた空に黒雲が立ち込める。そこから目にも止まらぬ速度で放たれた雷は、水色の髪をした少年目掛けて降り注いだ。

「くっ!!」

電光石火の一撃に辛うじて回避したシリル。彼のそれまでいた足場は雷で砕け飛び、受けていれば間違いなく命に関わっていたことを物語る。

「よく避けれたわね。じゃあ・・・」

ホッとひと安心していたシリルに向けて今度は左腕を振るう。それにより彼の周りに逃げ道を塞ぐように炎の壁が出来上がる。

「神の与えた万死の力よ、この世の全てを消し去れ!!」

次第に高くなっていく炎の壁。さらには範囲もどんどん広がっていき、中心にいた少年を飲み込もうとしていた。

「さぁ、黒こげになりなさい」

ニヤリと笑みを浮かべたヨザイネ。しかし、それを見ていた彼の相方を見て眉間にシワを寄せた。

「ねぇ、あなた」
「ん~?な~に~?」

間抜けな声で答える少女にますます不信感が募る。ヨザイネはさらに問いかけようとしたところで、炎が弱まっていることに気付いた。

「雲竜水!!」

炎を突き破り向かってくる水の波動。ヨザイネはそれに驚きながらも咄嗟にバリアを張り事なきを得た。

「なるほど、水属性なら確かに炎は効果が薄いわよね」

セシリーが余裕だった理由をここで理解したヨザイネ。それでも彼女は余裕な表情を崩さない。

「あなたは確かに強い。でも、俺は絶対に負けられない!!」

大切な友の死を受けて負けることは許されないという意識を持っているシリル。それを聞いたヨザイネはクスリと笑った。

「何がおかしい?」
「ごめんなさい、あまりに不憫だったから」

不憫という言葉がどういうことなのか、イマイチ察しがつかないシリルとセシリーは首を傾げる。笑いが収まってきたヨザイネはその理由を語り始めた。

「あなたはハルジオン港で命を落としたレオンのために戦ってるのよね?」
「あぁ、そうだ」

自分が強くなったら彼と本気で戦う。そう誓っていた友の死は、彼に取って大きな影響を与えた。
自分はどうやってももう彼を追い越すことはできない。しかし、それを認めるわけにはいかない。だからこそ、手の届かないところまで行ってしまった彼を追いかけるために、勝ち続けなければならない。

「それが可哀想なのよねぇ、真実を知る私たちからすれば」
「もう~!!何が言いたいのか全然わかんない~!!」

なかなか理由を話そうとしないヨザイネにセシリーがキレた。地団駄を踏んでいるその子供のような姿に、シリルは苦笑し、ヨザイネは嘲笑う。

「言ってもいいのかしら?あなたの戦う理由が見出だせなくなるかもしれないわよ?」

どんどん話が見えなくなっていることに苛立ちすら覚えてしまう。

「いいよ、話せよ」

思わず低い声で、怒るわけでもなくそう答えた。それを聞いたヨザイネは彼のこのあとの姿を想像していたのか、ニヤつきが止まらない。

「Rシステムのことは知っているわよね?」
「Rシステム?」

Rシステム・・・正式名称はリバイブシステム。かつてゼレフが弟であるナツを生き返らせるために作成した魔法であり、亡霊に取り付かれたジェラールがゼレフ復活のために仲間たちを使って作り上げた楽園の塔である。

「それがなんだっていうんだ?」
「リバイブシステムを使うためには二つの条件があるの。一つは27奥イデアの魔力。そして・・・」

人指し指を立てたヨザイネは、それをシリルへと向ける。

「死者を器となる肉体」
「・・・」

彼女が何を言いたいのか、すぐにわかった。シリルはこれから、何らかの理由でリバイブシステムの生け贄にされることを。

「でも、残念だったな。それでやる気を無くすほど俺は脆くないぞ?」

自分がこれから生け贄にされるのであれば、それを阻止するために戦えばいい。むしろ自分が勝っていればティオスの存在は矛盾するものとなり、大魔闘演武の時のドラゴンたちのように消えてなくなるかもしれない。そんな希望が見えていた。

「それはあなたが誰の器になるか知らないからでしょ?」

だが、次の一言がシリルの心を深く抉ることになる。

「あのリバイブシステムを使った()()()()()()は、アクノロギアを倒すための唯一にして絶対の魔導士を選んだ」
「未来の・・・ローグさん?」

大魔闘演武でヒスイ姫を騙してドラゴンを400年前から呼び寄せた未来のローグ。彼がティオスを生み出したというだけでも驚愕の代物だった。だが、その次に明かされる真実は、あまりにも無情。

「この戦争で早々に命を落とした氷の神・レオン・バスティアをね!!」
「・・・え?」

その名前を聞いた瞬間、彼の思考は完全に停止した。その言葉がどれだけの大きな衝撃を与えたのかは、ヨザイネからすれば想像に難くない。

「ウソ付くな!!ティオスがレオンだったら、俺らの敵になるはずないだろ!!」

動揺していたものの、すぐにそんな考えが纏まるところは流石だった。それだけ彼は友を信じていた。

「そうね。確かに普通のレオンだったらあなたたちの仲間になることを選んだわね。でも残念!!」

両手を広げて高笑いしてみせるヨザイネ。その姿はあまりにも自信満々で、他の意見など聞く気はないといった印象を与えた。

「あなたたちは彼を失望させた。その結果が今の彼よ」

呆然と立ち尽くし、身動きが取れないシリルとセシリー。最強の敵の真実に、平常心を保つことなどできるはずがなかった。


















「あああああああああ!!」

緋色の剣士の剣に悲鳴を上げるドラゴン。その正体はアイリーンであり、ダメージを受けた彼女は本来の姿へと戻っていく。

「手こずらせやがって・・・小娘がぁ・・・」

両者血まみれの満身創痍な姿。そんな中気力で優位に立ったのは、母であるアイリーン。

「それで終わりよ、もう諦めなさい」

エルザの剣を手に取りそれを向けるアイリーン。勝敗は決したかに思えた。だが、絶体絶命のはずのエルザは、なぜか笑っている。

「笑うなぁぁぁぁ!!」

その瞬間、アイリーンの脳内にある記憶が蘇ってきた。しかし、それを振り払おうと懸命に声を張り上げる。

「まだ・・・諦めてないからな!!」

向けられた剣に突進するエルザ。それは彼女の腕を、体を突き抜けるが、エルザの頭部がアイリーンを襲った。

ズザァン

倒れるエルザ。しかし、アイリーンは何とか持ちこたえていた。

「まだ・・・詰めが甘いわね」
(剣が・・・消え・・・)

エルザの体に突き刺さっていた剣が消えたかと思うと、それはアイリーンの手に握り締められている。

「エルザさん!!」

今度こそどうすることもできないのかと、ウェンディが叫んだ。アイリーンも身動きを取る余力など微塵もないエルザに、剣を構え振り下ろそうとする。

「これで・・・終わりよ!!」

今度こそ決着が着くかと思われた。エルザとウェンディは思わず目を閉じる。しかし、アイリーンはカタカタと震えると、なかなか剣を振り下ろせないでいる。

「・・・できない・・・」
「「え・・・」

ボソッと呟いた彼女はその剣を落とした。その目には大量の涙が溜まっており、彼女は地面に膝をつくと、そのまま泣き出してしまう。

「私に・・・あなたを殺すことはできない・・・」
「・・・」

突然のその言葉に呆けているエルザ。彼女は痛む体にムチを打ち、言葉を発する。

「なんで・・・」
「あなたの笑う顔を見た時、思い出してしまったのよ・・・」

エルザに自らの人格を付加(エンチャント)しようとしたアイリーン。だが、彼女はそれができなかったといったが、それは真実でない。

本当はしなかったのだ。生まれたばかりのエルザの笑う顔を見た彼女は、その可愛さと愛らしさに負け、付加(エンチャント)をやめた。

ただ、彼女がそばにいてはその決心が揺らいでしまう。そう思った彼女はお腹を痛めて生んだ彼女を置き去りにし、イシュガルの地を後にした。

「こんなことを言っても、信じてもらえないでしょうけど・・・」

血まみれのエルザに近付いた彼女は、その体をそっと引き寄せる。

「愛していたのよ、あなたのことを」

抱き締められたエルザは、彼女の温かさからその言葉にウソ偽りがないことを感じ取った。その安心感からか、エルザは同様に彼女を抱き返す。

「母さん・・・」

ついにわかり合えた親子の愛に見ていたウェンディも笑顔になってしまう。これでハッピーエンドになるかと思われた。しかし、それを許すことができない男が、一人いる。

「子は親を愛し、親は子を愛するものなのか」
「「「!!」」」

近付いてくる足音に全員が振り向いた。彼女たちに迫ってきているのは、いまだ無傷の魔導王。

「オーガスト・・・」
「こいつが・・・」
「すごい・・・なんて魔力なの・・・」

アイリーンの魔力も十分に高い。しかし、目の前にいるその老人は彼女のそれを遥かに越えていた。

「残る16(セーズ)も三人・・・これ以上の醜態を晒すわけにはいかないな」

みるみる膨れ上がっていく魔力。それは大気を、大地を大きく揺るがせていく。

「ハァッ!!」

危険を察知したアイリーンが咄嗟に大気に付加(エンチャント)を行い攻撃を繰り出す。それによりオーガストの攻撃は止められたが、魔法が直撃したはずの彼の体には目立つ傷が付いていなかった。

「バカな・・・」
「これが魔導王の力・・・」

一難去ってまた一難・・・その恐怖はあまりにも大きく、エルザとウェンディは体を震えさせている。

「下がっていなさい、二人とも」

その前に立ちはだかるアイリーン。16(セーズ)として共に戦ってきた二人の戦いが始まろうとしていた。


















「ほう、これはまた面白い展開だ」

そう呟いたティオスは、内心喜びを抑えられずにいた。

「また計算違いが起こっているが、これはいい方に転んだと考えておこう」

ティオスの考えとしては、オーガストとアイリーンが戦うことなどあり得なかった。それゆえに彼は次なる行動に移ろうとしていたのだが、この展開には感謝しかない。

「俺を倒すピースはオーガストとエルザだと思っていたが、潰しあってくれるなら問題ない」

どちらが勝っても自分には利点しかない。お互いの戦力が削れてくれればベスト。それが叶わなくても、どちらかがやられてくれれば御の字だ。

「あと俺が警戒すべきはただ一人」

進めていた歩を止めて立ち止まる。彼は近くの岩に腰掛けると、これまで酷使してきた肉体を休ませる。

「アクノロギアだけだな」

最大にして最強の敵。それを仕留めるために、青年は力を蓄えることにした。






 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
少しですがティオスの存在が明らかになりました。
これからまた少しずつティオスやヨザイネの立ち位置が判明してくると思います。
よろしくお願いします 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧