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カー女

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第二章

「それでもね」
「相手がいないっていうの」
「私は別にね。相手の人の外見は」
「車が好きかどうかよね」
「それで性格がよかったよ」
 この二つの条件をクリアーしていればというのだ。
「いいのよ」
「そうなの」
「車が好きでないと」
「それね、あんた本当に車第一ね」
「大抵の国の大抵のメーカーの車は把握してるつもりだし」
「それある意味凄いわ」
「そうしたことは無理でも」
 それでもとだ、玲は肉じゃがで御飯を食べつつ恵美に話した。
「車が好きな人とね」
「お付き合いして」
「結婚したいわ」
「そうなのね」
「ええ、そうした人と出会えたら」
「良縁を期待するわ、私としては」
 友人としてはとだ、恵美は玲に話した。
「あんたレベルの車好きがいるかどうか知らないけれど」
「私位でなくてもいいけれど」
「車好きで性格のいい人ね」
「誰かいないかしら」
「神様に良縁をお願いすることね」
 こう返した恵美だった、とにかく玲は車が第一で結婚するにしてもそうした相手ならと考えていた。その中で。
 休日外出した時にだ、彼にスーツで決めたキザな感じの男が声をかけてきた。見ればすぐ傍に見事な車がある。
「彼女、何処行くの?」
「ポルシェ九六八」
 玲はこう言った。
「一九九三年生産バージョンね」
「えっ!?」
「中古で買ったみたいね、年季があるわ」 
 玲は男ではなくその車、黄色くカラーリングされたそれを見つつ言っていった。
「それでもよく手入れされているわね、ワックスも丁寧にかけてあってタイヤも汚れていないわ」
「あの、車じゃなくてさ」
「車の中も清潔にしてるわね」
 玲は男をよそに車を見て言っていく。
「しかもね」
「いや、しかもって」
「車検もちゃんと出してるわね、しっかりとした人の手入れも感じられるわ」
「いや、車検は当然じゃない」
「このタイプはポルシェの水冷FRスポーツカーの最後のモデルだけれど」
 玲は男をよそにさらに話していった。
「日本でまだ見られたのは幸いだわ」
「僕はどうかな」
「貴方、いい車の趣味してるわ」
 ここでようやく男に顔を向けるがこうした言葉だった。
「とてもね」
「それはどうも」
「このタイプを買うだけでなくて」
「高かったけれどね」
「よく手入れしていて大事にしているのがわかるわ、ただ古い車だから」
 一九九三年生産だけあってだ。
「手入れは忘れないでね、この手入れだったらまだまだ乗れるから」
「うん、元気なものだよ」
「もっと大切にしてね、これは家宝ものよ」
「だから相当に高くて僕もコツコツお金貯めてローンで払っていつも苦しいよ」
「それだけの苦労はあるわ、この車は」
 持って運転することはというのだ。
「だから是非大事にしてね、それじゃあね」
「それじゃあって?」
「そのポルシェ、よく手入れして乗ってね」
 こう言って男がまだ自分に声をかけるのには気付かず目的先に向かった、男はその玲に唖然とするばかりだった。 
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