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オークの農業

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第一章

               オークの農業
 オークの太作はこれまで猟師をして暮らしていた、しかし最近目が悪くなったのを自覚して村人達に話した。
「おらもう猟師は止めるだ」
「それでこれからはどうして暮らすんだ?」
「猟師を止めたら」
「皆と同じで田んぼや畑を耕してな」
 太作はその大きな身体で村人達に答えた、猪の顔にはしっかりと牙がある。
「そうしてな」
「暮らすか」
「それからは」
「そうするか」
「ああ、猟師は弟達がいるしな」
 太作の弟達も猟師をしているのだ。
「もうな」
「猟師を止めてか」
「百姓になるか」
「そうしていくだか」
「そうするな、田んぼを作ってな」
 そうしてというのだった。
「畑も開墾して」
「そうしてか」
「そうして暮らしてくか」
「これからの太作どんは」
「おら達みたいに暮らしてくか」
「そうするな、目が悪くなってな」
 村人達にこのことも話した。
「遠くのもんがあまり見えん様になったからな」
「そうなったら仕方ないな」
「猟師は目がよくないと駄目だからな」
「それでか」
「猟師になるか」
「ああ、そうなるな」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 太作は百姓になった、彼は一からはじめ田んぼを開いて畑もそうした。そこで米や芋を他の村人達に言われるままに作っていったが。
 あぜ道を鍬を持って歩きつつだ、太作は一緒にいる村の若い自分と同じ位の歳の面々にこうしたことを言った。
「いや、百姓仕事もな」
「何かと大変だろ」
「牛の世話もしないかんしな」
「道や溝も作らにゃいかん」
「そんなのだからな」
「ああ、大変だな」
 こう答えるのだった。
「何かと」
「大雨や日照りも怖いしな」
「水は多過ぎでも少な過ぎても駄目だ」
「その辺りの加減もあるしな」
「あとあぜ道にゃあぜ豆も植えてな」
「田んぼのたにしや泥鰌も取って食わないとな」
「やることが多いだよ」
 村人達も彼に口々に話す。
「何かとな」
「農具も作らんといけねえ」
「百姓はやることが多いだ」
「本当にしんどいだよ」
「全くだ、これまではな」
 ここでこうも話した太作だった。
「山の中で獣獲ってりゃよかったが」
「そっちも大変だろ」
「熊とかやっつけないと駄目なんだからな」
「太作どんよく熊倒してたな」
「熊退治の太作って仇名もあったよな」
「いや、また別の大変さだよ」
 太作は村人達にこう答えた。
「でかくておっかない獣を鉄砲でやっつけるのも大変だけんどもな」
「百姓もか」
「百姓も百姓で大変か」
「そう言うだか」
「そうだ、本当にやることが多くてな」
 太作はあらためて話した。 
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